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第二区画
100. オークはどこに? ※一部第三者視点
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俺達はスカベンナーについて行くと、集落の一番奥深くの突き当たりまで来ていた。
「どうやら行き止まりですね」
「ああ、そうだな」
そこでスカベンナーはこちらを見て待っている。いつもにやりと笑う姿もどことなく可愛く見えてきた。
「ここに呼んでどうしたんだ?」
俺の言葉に反応してスカベンナーは横にずれた。
そこにはオークの死体が二体、穴の中に隠すように入っていた。どうやらオークを食料として保存するために隠していたのだろう。
「もう、お前が食べればいいぞ。だけどこれからは横取りせずに堂々と俺達に聞いて来いよ」
「先輩、聞くって……ふふふ、どうやってベンは話せばいいんですか?」
桃乃は俺の後ろでクスクスと笑っている。考えてみれば、確かにおかしなことを話していると思った。
だが、スカベンナーはそれを理解しているのか俺と桃乃に近づきオークと交互に見ている。
うん、恐るべき知能だ。現実世界に存在していたらテレビに紹介されるレベルだろう。
「本当にベンってお利口ね!」
やはり飼い主は親バカなのだろう。また、桃乃はスカベンナーをくしゃくしゃにするように顔を撫でていた。
満更でもない表情は先程までの怯えは、どこかに消えたようだ。
これからはスカベンナーと桃乃を利用して、オーク狩りをするのもいいかもしれない。きっとできるのも、桃乃が気づくまでだろう。
そんな中、オークが収納されている穴に違和感を感じた。
「ベンってここ以外に穴がある場所を知っているか?」
俺の言葉に桃乃も忘れていた穴の存在を思い出した。自動マッピングをしてはいるが、穴を見つけることができなければ現実世界に帰ることができないのだ。
10時間もあった制限時間は残り2時間程度となり、集落内もどこか寒くなり始めていた。
やはりクエストのクリア時間というよりは、異世界に入れる制限時間みたいなものなんだろう。
ベンは少し考えると、やはり知っているのかまた違う場所に向かって歩き始めた。
「ベンって便利だからベンという名前なのか?」
「先輩って最低ですね」
どうやら俺は言葉の選択をミスしたようだ。また桃乃から冷たい視線を感じる。
ベンの後ろをしばらくついていくと、立ち止まりこちらを見ていた。どうやら穴に到着したようだ。
「本当に穴だな」
「穴でしたね」
ベンに案内されたところは、いかにも違和感を感じるほどの怪しさを放っている穴だった。
「ちょっと入りづらいですね」
「前のダンジョンのこともあるからな」
前回は違う穴とわかった状態で中に入ると異世界ダンジョンが始まった。しかし、今回は現実世界へ戻るゲートか異世界ダンジョンかもわからない。
入って異世界ダンジョンの可能性を考慮すると、それ相当の準備も必要となる。
「ありがとな」
穴まで案内してくれたベンを撫でると特に嫌そうな表情はしていなかった。
ついに俺もベンに懐かれたのだろう。オークを渡したお礼だろうがそれでも嬉しい。
「じゃあ、ももちゃん行こうか」
「ベン、また来るね!」
俺達はベンに教えてもらった穴に入ることにした。
俺がふと振り返るとベンはいつものようににやりと笑っていた。
♢
その頃、砂漠の中ではオーク達が仲間を探していた。
「あいつらは偵察に行ったって聞いたがどこまで行ったんだ?」
「すみません、それはオラにもわからないです」
「そうか」
オークは基本的に五体一組のチームで動いている。基本的にどのように行動するかはチーム長の判断に委ねられていた。
「隊長、失礼します」
隊長と呼ばれているオークは椅子に座り、報告しにきたオークの話を聞いていた。
「彼らを発見しました」
「あいつら迷惑かけやがって……。今どこにいるんだ?」
踏ん反り返っていても、仲間のことは心配しているようだ。
「いや、それが……全員全滅しました」
「なに!?」
隊長と呼ばれているオークは驚きのあまり椅子から転げ落ちていた。
この砂漠でもオークは上位の存在になる。少しずつその戦力は広がりつつあり、今では小さな村を作る勢いだ。
「しかし、遺体は三体しか発見できていないため残り二体は無事かもしれないです」
「そうか」
「それで、このようなものが遺体のそばに置いてありました」
オークは隊長オークに硬いあるものを渡していた。ゴツゴツと大きな実を手で叩く。
実が引き締まっているのか、中からは重く鈍い音が返ってくる。
「トレントの実か」
「はい。ですが、さすがにトレントの実でも我らがやられることはないと思います」
「ああ。今後何か動きがあれば教えてくれ」
「はい」
オークは残りの二体を探しに再び砂漠の中に消える。
「隊長、これからどうしましょう?」
「まぁ、魔物同士の争いだ。トレントなんて俺達の敵ではないだろう」
「そんなもんですかね……? このトレントの実はオラが預かってもいいですか?」
「ああ」
少し小柄なオークは隊長オークからトレントの実を預かり部屋から出て行った。その後ろ姿はどこかおもちゃをもらった子供のようにウキウキとしていた。
「どうやら行き止まりですね」
「ああ、そうだな」
そこでスカベンナーはこちらを見て待っている。いつもにやりと笑う姿もどことなく可愛く見えてきた。
「ここに呼んでどうしたんだ?」
俺の言葉に反応してスカベンナーは横にずれた。
そこにはオークの死体が二体、穴の中に隠すように入っていた。どうやらオークを食料として保存するために隠していたのだろう。
「もう、お前が食べればいいぞ。だけどこれからは横取りせずに堂々と俺達に聞いて来いよ」
「先輩、聞くって……ふふふ、どうやってベンは話せばいいんですか?」
桃乃は俺の後ろでクスクスと笑っている。考えてみれば、確かにおかしなことを話していると思った。
だが、スカベンナーはそれを理解しているのか俺と桃乃に近づきオークと交互に見ている。
うん、恐るべき知能だ。現実世界に存在していたらテレビに紹介されるレベルだろう。
「本当にベンってお利口ね!」
やはり飼い主は親バカなのだろう。また、桃乃はスカベンナーをくしゃくしゃにするように顔を撫でていた。
満更でもない表情は先程までの怯えは、どこかに消えたようだ。
これからはスカベンナーと桃乃を利用して、オーク狩りをするのもいいかもしれない。きっとできるのも、桃乃が気づくまでだろう。
そんな中、オークが収納されている穴に違和感を感じた。
「ベンってここ以外に穴がある場所を知っているか?」
俺の言葉に桃乃も忘れていた穴の存在を思い出した。自動マッピングをしてはいるが、穴を見つけることができなければ現実世界に帰ることができないのだ。
10時間もあった制限時間は残り2時間程度となり、集落内もどこか寒くなり始めていた。
やはりクエストのクリア時間というよりは、異世界に入れる制限時間みたいなものなんだろう。
ベンは少し考えると、やはり知っているのかまた違う場所に向かって歩き始めた。
「ベンって便利だからベンという名前なのか?」
「先輩って最低ですね」
どうやら俺は言葉の選択をミスしたようだ。また桃乃から冷たい視線を感じる。
ベンの後ろをしばらくついていくと、立ち止まりこちらを見ていた。どうやら穴に到着したようだ。
「本当に穴だな」
「穴でしたね」
ベンに案内されたところは、いかにも違和感を感じるほどの怪しさを放っている穴だった。
「ちょっと入りづらいですね」
「前のダンジョンのこともあるからな」
前回は違う穴とわかった状態で中に入ると異世界ダンジョンが始まった。しかし、今回は現実世界へ戻るゲートか異世界ダンジョンかもわからない。
入って異世界ダンジョンの可能性を考慮すると、それ相当の準備も必要となる。
「ありがとな」
穴まで案内してくれたベンを撫でると特に嫌そうな表情はしていなかった。
ついに俺もベンに懐かれたのだろう。オークを渡したお礼だろうがそれでも嬉しい。
「じゃあ、ももちゃん行こうか」
「ベン、また来るね!」
俺達はベンに教えてもらった穴に入ることにした。
俺がふと振り返るとベンはいつものようににやりと笑っていた。
♢
その頃、砂漠の中ではオーク達が仲間を探していた。
「あいつらは偵察に行ったって聞いたがどこまで行ったんだ?」
「すみません、それはオラにもわからないです」
「そうか」
オークは基本的に五体一組のチームで動いている。基本的にどのように行動するかはチーム長の判断に委ねられていた。
「隊長、失礼します」
隊長と呼ばれているオークは椅子に座り、報告しにきたオークの話を聞いていた。
「彼らを発見しました」
「あいつら迷惑かけやがって……。今どこにいるんだ?」
踏ん反り返っていても、仲間のことは心配しているようだ。
「いや、それが……全員全滅しました」
「なに!?」
隊長と呼ばれているオークは驚きのあまり椅子から転げ落ちていた。
この砂漠でもオークは上位の存在になる。少しずつその戦力は広がりつつあり、今では小さな村を作る勢いだ。
「しかし、遺体は三体しか発見できていないため残り二体は無事かもしれないです」
「そうか」
「それで、このようなものが遺体のそばに置いてありました」
オークは隊長オークに硬いあるものを渡していた。ゴツゴツと大きな実を手で叩く。
実が引き締まっているのか、中からは重く鈍い音が返ってくる。
「トレントの実か」
「はい。ですが、さすがにトレントの実でも我らがやられることはないと思います」
「ああ。今後何か動きがあれば教えてくれ」
「はい」
オークは残りの二体を探しに再び砂漠の中に消える。
「隊長、これからどうしましょう?」
「まぁ、魔物同士の争いだ。トレントなんて俺達の敵ではないだろう」
「そんなもんですかね……? このトレントの実はオラが預かってもいいですか?」
「ああ」
少し小柄なオークは隊長オークからトレントの実を預かり部屋から出て行った。その後ろ姿はどこかおもちゃをもらった子供のようにウキウキとしていた。
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