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第二区画

101. 自動アイテム生成の力

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 俺達はスカベンナーに教えてもらった穴を通り、その場で立ち止まる。心の中で異世界ダンジョンじゃないのを願うばかりだ。

 ここで異世界ダンジョンであれば、奇妙な声で話しかけられる。

【オークの討伐お疲れ様でした。今回の報酬を計算します】

 聞こえてきたのは脳内に聞こえるいつものようなデジタルな音声だ。

「うぉー!」

 ついに現実世界に戻る穴を無事見つけることができた。

 砂漠の中で穴が見えなくり、消えた時は本当にどうしようかと思った。これで無事に帰れそうで一安心する。

【オーク討伐数は5体です】

【それでは報酬の発表です。オーク1体につき5万円で計25万円になります。計25万円の報酬となりました】

 オーク自体がそこまで強かった印象はないため、ゴブリンとさほど変わらない報酬でも仕方ない。

 それよりも熱中症になり、回復ポーションを使ったことの方が割に合わない。

【マジックバックの中身を売却しますか?】

 俺はマジックバックの中のサンドワームから手に入れた素材を売ることにした。

【サンドワームの体液1つにつき2万円、魔石中1つにつき3万円になります】

 俺はそれぞれ4つずつ売却し20万円の利益を得た。

 自動アイテム生成に今後も素材が必要になることを考慮すると、全ては売らずに残しておく必要がある。

 まさか今回みたいに熱中症予防で、トレントの実が重要になるとは思ってもいない。

 アイテム自体の容量制限はなさそうだ。

【お疲れ様でした。またのご利用をお待ちしております】

 せっかく異世界に行ったが、以前まで行っていた第一区画の方が簡単に稼げた。

 今回の異世界副業で得た利益は45万円と普通に考えたら破格だが、異世界副業では少ない方だろう。

 今までコボルトに頼っていたところが、ここに来て痛手になるとは思いもしなかった。

 ああ、コボルトに会いたいな……。

「先輩、早く帰りますよ? 熱中症にもなったんで、今日は早く休んだ方がいいですよ」

「ああ、そうだったな」

 お金のことばかり考えて体の疲労感を忘れていた。スキルである程度は疲労感は回復できるが、病気まではどうすることもできない。

 初めてなった熱中症は想像していたよりも、しんどかった。それだけ回復ポーションの効果が優れている。

 俺達は家に戻ると軽く汗を流し、おばさんが持ってきたご飯を食べることにした。

「それにしても量が多いですね」

「いつもこんなに作ってどうしてるんだろうな。息子さんが出て行ってから、旦那さんと二人で生活しているけど、流石にあの年齢だとこんなに食べれないだろう」

 俺はいつも通りにコロッケを食べていると、いつもと味が変わっていることに気づいた。

「何か御礼のもの買っていかないとだめですね」

「ああ……」

「どうしたんですか?」

 急に箸を置いたため桃乃が心配した顔で見ている。

「いや、熱中症のせいなのかな。味覚がおかしいんだよな」

「えっ、それなら早く病院に行かないとだめじゃないですか」

 桃乃はテーブルに置いてあるおかずに蓋を閉めていた。その手を俺はゆっくり掴む。

「あー、それなら大丈夫だ。味覚がおかしいって言っても良くなっているだけだ」

 以前より食べているものの味が以前よりわかりやすくなっているのだ。

「先輩手……」

「ああ、ごめん」

 急いで掴んでいた手を離す。男上司の家に来ているだけでもセクハラなのに、スキンシップをしたらさすがに訴えられるだろう。

 ただ、男の家に簡単に付いていかないように注意した方が良い。男は獣ばかりだからな。

「心配だから簡単に付いていかないようにね」

 俺は再び容器の蓋を開けていく。

「先輩だけだもん……」

「ん? 何か言ったか?」

 桃乃は何か呟いていたが、俺には聞こえなかった。少し頬を染めているが、桃乃も異世界に行って少し焼けたのだろう。

「もういいですよ! それより味覚が良くなったってどういうことですか?」

「んー、例えばこのコロッケだけどベースがじゃがいもと玉ねぎとひき肉だよな?」

「そうですね。あとは、揚げるために卵とかパン粉、味付けに醤油とか砂糖とかですよね?」

 桃乃は普段から料理をしているからか、コロッケに必要な材料をあっさり答えていた。

 料理もできる女性ってモテる要素しかない。

「隠し味ってなんだと思う?」

「隠し味ですか……確かにいつも美味しいって思ってたけどそれがわからない……まさか!?」

「ああ、そうだ。そういう細かなところや旨味とかまで、細かく味がはっきりしているというか頭の中に出てくるんだよ」

 コロッケを食べた瞬間に自分の味覚に驚いた。熱中症のせいかと思ったが、その後に基本的な材料がなんとなく頭の中で浮かびあがってくる。

 きっと熱中症じゃなくて"自動アイテム生成"のスキルによる現実世界の影響だろう。

 まさか料理に関係するスキルになるとは、俺は思いもしなかった。
 
「それで隠し味ってなんですか?」

 桃乃はスキルよりも隠し味のほうが気になるようだ。

 ぜひ、料理好きの桃乃に教えてあげよう。

「多分だけど練乳・・を使っているぞ?」

「練乳ですか?」

「ああ、頭の中でさっき俺とももちゃんが言った食材の中で、練乳だけが入ってない。たぶんそれだろうな」

「練乳……それはないですよ」

 桃乃は俺を信じる様子はなかった。いや、俺も流石にないだろうと思ったが、スキルが合っているだろう。その検証にもなるはずだ。

「今度おばさんに聞いてみるよ」

「間違えたらランチ奢ってくださいね?」

「仕方ないな」

 今度おばさんに会ったらコロッケの隠し味を聞くことにした。
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