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第二区画

148.各々のスキル

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「うぉー! 俺もスキルを手に入れたぜー!」

 目が光に慣れる前に俺の耳元で叫ぶ奴がいた。

「笹寺さんうるさいです」

 叫んでいたのは笹寺だ。手を握っているため、自然と距離感も近い。

 どうやら笹寺も一緒に異世界に来れたようだ。

「おいおい、俺の新しいスキルが見たいって?」

「あー、どうでもいいです」

 近くにいた桃乃もうんざりしている。朝から高いテンションに俺達はついていけない。

「おい、慧も気になるよな?」

「あー、うん。そうだな」

 正直言って俺も特に気にはなっていない。どうせ笹寺のことだから魔法使いになれるはずがない。

 脳内が筋肉でできている男が魔法を使えたら、俺は笹寺以下になってしまう。

 見た目も息子も既に負けているのに、ここでも笹寺に劣ったら――。

「先輩!? 急に落ち込んでどうしたんですか?」

「いや、少し考え事をしていた」

 そんなことを考えても変わるわけではない。

「なぁーベンさんはどうだ?」

 一方笹寺はベンの元へ向かっていた。そんな笹寺から逃げるベン。側から見たら追いかけっこをしている。

 なんやかんやで仲は……良くないようだ。

 いつもにやりと笑うベンが必死な顔で逃げている。

 それにしても笹寺の走る速度が異常に速い。足が高速に動いて絡まって見える……あっ、本当に絡まって転んでいた。

「とりあえずスキルの確認から始めようか」

 俺は桃乃の肩を触ると一瞬びくりとした。一瞬怯えているように感じたが、俺の見間違いだろうか。

 あっ……。

 これはセクハラだと勘違いされたやつか。

 俺はすぐに謝るが、桃乃は特に気にしていないようだ。

 俺達は手に入れたスキルをお互いに確認することにした。

 俺は木属性魔法の植物詳細が強化された植物解析ネイチャーアナライズを手に入れた。

 名前だけ聞けば自動鑑定と植物詳細とさほど変わらない。ただ、実際にトレントの実で使ってみると違いが一目瞭然だった。

――――――――――――――――――――

《トレント亜種の実》
攻撃力:100
防御力:0
交配:0

――――――――――――――――――――

 今まで植物系のアイテムにステータスが表示されることがなかった。

――――――――――――――――――――

《トレントの実》
攻撃力:0
防御力:0
交配:100

――――――――――――――――――――

 基本的には合計100が限界値となっているようだ。

 水溜まりに埋めた種や第一区画で手に入れたトレントの実は交配が100になっていた。

 ウィンドウに触れると、どうやらこの数値をいじることができるらしい。

 5ずつ数値を振り変えることができ、最大20は他のステータスに振り分けることが可能な仕組みになっている。

 俺の予想では交配に値が高いほど、埋めると実がなるのだろう。一度水溜りに行って確認したらわかるだろう。

「ももちゃんはどうだった?」

「僕は新しく水属性魔法の上位である氷属性魔法を手に入れました」

「氷!?」

 桃乃はさらに魔法使いとして進化したようだ。それにしても氷属性魔法とは羨ましい限りだ。

「これでかき氷作れますよ!」

 どうやら桃乃は魔法使いとして少し方向性がズレているようだった。確かに砂漠地帯は全体的に暑いため氷は便利だろう。

「さすがシロップがないと……」

 熱中症対策に氷って便利な魔法だ。

 桃乃はドワーフ達に氷削機ひょうさくきを作ってもらおうと意気込んでいる。

 シロップはトレントの実で作るらしい。

 どうやら俺は道を正すことはできなかったようだ。

「うぉー! なんで俺は魔法が使えないんだー!」

 一方ベンを追いかけてた笹寺もスキルの確認ができたようだ。

 俺と桃乃はスキルを獲得するためにETFや個別株も買っている。一方の笹寺はETFや個別株はわからないため、買ってなかったはずだ。

「なんで俺は異世界に来てまで鍛治をしないといけないんだよ」

 気になったのは俺だけではなかったようだ。桃乃とともに俺は笹寺に詰め寄る。

「何か株を持ってるのか?」

「ん? もってるのは慧に言われて買ってる積み立ててるやつと、あとは親父が昔から持ってるやつをもらったぞ?」

 父親が病気になったタイミングで、株を売却するつもりだった。それを笹寺に相続させたらしい。

 父親の亡き知り合いが経営していた会社で、唯一残っている物だと。

 株にも色々な思い出があるのだろう。

「ひょっとしたら笹寺さんって有望ですかね?」

「ああ、俺達の希望だな」

 俺達は基本的に装備できる武器が決まっている。俺はなぜか農具関係で桃乃は杖のみだ。

 しかも、武器が手に入るのは持っている株で得られる配当やドロップ、報酬のみと手に入れる機会がチャンスがあまりない。

「お前便利だな」

 俺は笹寺の肩を叩くとどうやら笹寺は俺達みたいに戦えないことが気に食わないようだ。

「お前らだけずるいぞ」

 拗ねて集落の奥に行ってしまった。

「先輩今のはないですよ」

「そうか? いつものノリで言ったけど……」

「笹寺さんなりに私達の力になりたかったんじゃないですか?」

 確かに桃乃の言う通りかもしれない。桃乃の時は自分から力が欲しいと聞いていたが、笹寺が異世界に行きたい本当の理由を俺は聞いていなかった。

「ちょっと追いかけてくるわ」

 俺は笹寺を追いかけた。
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