148 / 158
第二区画
148.各々のスキル
しおりを挟む
「うぉー! 俺もスキルを手に入れたぜー!」
目が光に慣れる前に俺の耳元で叫ぶ奴がいた。
「笹寺さんうるさいです」
叫んでいたのは笹寺だ。手を握っているため、自然と距離感も近い。
どうやら笹寺も一緒に異世界に来れたようだ。
「おいおい、俺の新しいスキルが見たいって?」
「あー、どうでもいいです」
近くにいた桃乃もうんざりしている。朝から高いテンションに俺達はついていけない。
「おい、慧も気になるよな?」
「あー、うん。そうだな」
正直言って俺も特に気にはなっていない。どうせ笹寺のことだから魔法使いになれるはずがない。
脳内が筋肉でできている男が魔法を使えたら、俺は笹寺以下になってしまう。
見た目も息子も既に負けているのに、ここでも笹寺に劣ったら――。
「先輩!? 急に落ち込んでどうしたんですか?」
「いや、少し考え事をしていた」
そんなことを考えても変わるわけではない。
「なぁーベンさんはどうだ?」
一方笹寺はベンの元へ向かっていた。そんな笹寺から逃げるベン。側から見たら追いかけっこをしている。
なんやかんやで仲は……良くないようだ。
いつもにやりと笑うベンが必死な顔で逃げている。
それにしても笹寺の走る速度が異常に速い。足が高速に動いて絡まって見える……あっ、本当に絡まって転んでいた。
「とりあえずスキルの確認から始めようか」
俺は桃乃の肩を触ると一瞬びくりとした。一瞬怯えているように感じたが、俺の見間違いだろうか。
あっ……。
これはセクハラだと勘違いされたやつか。
俺はすぐに謝るが、桃乃は特に気にしていないようだ。
俺達は手に入れたスキルをお互いに確認することにした。
俺は木属性魔法の植物詳細が強化された植物解析を手に入れた。
名前だけ聞けば自動鑑定と植物詳細とさほど変わらない。ただ、実際にトレントの実で使ってみると違いが一目瞭然だった。
――――――――――――――――――――
《トレント亜種の実》
攻撃力:100
防御力:0
交配:0
――――――――――――――――――――
今まで植物系のアイテムにステータスが表示されることがなかった。
――――――――――――――――――――
《トレントの実》
攻撃力:0
防御力:0
交配:100
――――――――――――――――――――
基本的には合計100が限界値となっているようだ。
水溜まりに埋めた種や第一区画で手に入れたトレントの実は交配が100になっていた。
ウィンドウに触れると、どうやらこの数値をいじることができるらしい。
5ずつ数値を振り変えることができ、最大20は他のステータスに振り分けることが可能な仕組みになっている。
俺の予想では交配に値が高いほど、埋めると実がなるのだろう。一度水溜りに行って確認したらわかるだろう。
「ももちゃんはどうだった?」
「僕は新しく水属性魔法の上位である氷属性魔法を手に入れました」
「氷!?」
桃乃はさらに魔法使いとして進化したようだ。それにしても氷属性魔法とは羨ましい限りだ。
「これでかき氷作れますよ!」
どうやら桃乃は魔法使いとして少し方向性がズレているようだった。確かに砂漠地帯は全体的に暑いため氷は便利だろう。
「さすがシロップがないと……」
熱中症対策に氷って便利な魔法だ。
桃乃はドワーフ達に氷削機を作ってもらおうと意気込んでいる。
シロップはトレントの実で作るらしい。
どうやら俺は道を正すことはできなかったようだ。
「うぉー! なんで俺は魔法が使えないんだー!」
一方ベンを追いかけてた笹寺もスキルの確認ができたようだ。
俺と桃乃はスキルを獲得するためにETFや個別株も買っている。一方の笹寺はETFや個別株はわからないため、買ってなかったはずだ。
「なんで俺は異世界に来てまで鍛治をしないといけないんだよ」
気になったのは俺だけではなかったようだ。桃乃とともに俺は笹寺に詰め寄る。
「何か株を持ってるのか?」
「ん? もってるのは慧に言われて買ってる積み立ててるやつと、あとは親父が昔から持ってるやつをもらったぞ?」
父親が病気になったタイミングで、株を売却するつもりだった。それを笹寺に相続させたらしい。
父親の亡き知り合いが経営していた会社で、唯一残っている物だと。
株にも色々な思い出があるのだろう。
「ひょっとしたら笹寺さんって有望ですかね?」
「ああ、俺達の希望だな」
俺達は基本的に装備できる武器が決まっている。俺はなぜか農具関係で桃乃は杖のみだ。
しかも、武器が手に入るのは持っている株で得られる配当やドロップ、報酬のみと手に入れる機会がチャンスがあまりない。
「お前便利だな」
俺は笹寺の肩を叩くとどうやら笹寺は俺達みたいに戦えないことが気に食わないようだ。
「お前らだけずるいぞ」
拗ねて集落の奥に行ってしまった。
「先輩今のはないですよ」
「そうか? いつものノリで言ったけど……」
「笹寺さんなりに私達の力になりたかったんじゃないですか?」
確かに桃乃の言う通りかもしれない。桃乃の時は自分から力が欲しいと聞いていたが、笹寺が異世界に行きたい本当の理由を俺は聞いていなかった。
「ちょっと追いかけてくるわ」
俺は笹寺を追いかけた。
目が光に慣れる前に俺の耳元で叫ぶ奴がいた。
「笹寺さんうるさいです」
叫んでいたのは笹寺だ。手を握っているため、自然と距離感も近い。
どうやら笹寺も一緒に異世界に来れたようだ。
「おいおい、俺の新しいスキルが見たいって?」
「あー、どうでもいいです」
近くにいた桃乃もうんざりしている。朝から高いテンションに俺達はついていけない。
「おい、慧も気になるよな?」
「あー、うん。そうだな」
正直言って俺も特に気にはなっていない。どうせ笹寺のことだから魔法使いになれるはずがない。
脳内が筋肉でできている男が魔法を使えたら、俺は笹寺以下になってしまう。
見た目も息子も既に負けているのに、ここでも笹寺に劣ったら――。
「先輩!? 急に落ち込んでどうしたんですか?」
「いや、少し考え事をしていた」
そんなことを考えても変わるわけではない。
「なぁーベンさんはどうだ?」
一方笹寺はベンの元へ向かっていた。そんな笹寺から逃げるベン。側から見たら追いかけっこをしている。
なんやかんやで仲は……良くないようだ。
いつもにやりと笑うベンが必死な顔で逃げている。
それにしても笹寺の走る速度が異常に速い。足が高速に動いて絡まって見える……あっ、本当に絡まって転んでいた。
「とりあえずスキルの確認から始めようか」
俺は桃乃の肩を触ると一瞬びくりとした。一瞬怯えているように感じたが、俺の見間違いだろうか。
あっ……。
これはセクハラだと勘違いされたやつか。
俺はすぐに謝るが、桃乃は特に気にしていないようだ。
俺達は手に入れたスキルをお互いに確認することにした。
俺は木属性魔法の植物詳細が強化された植物解析を手に入れた。
名前だけ聞けば自動鑑定と植物詳細とさほど変わらない。ただ、実際にトレントの実で使ってみると違いが一目瞭然だった。
――――――――――――――――――――
《トレント亜種の実》
攻撃力:100
防御力:0
交配:0
――――――――――――――――――――
今まで植物系のアイテムにステータスが表示されることがなかった。
――――――――――――――――――――
《トレントの実》
攻撃力:0
防御力:0
交配:100
――――――――――――――――――――
基本的には合計100が限界値となっているようだ。
水溜まりに埋めた種や第一区画で手に入れたトレントの実は交配が100になっていた。
ウィンドウに触れると、どうやらこの数値をいじることができるらしい。
5ずつ数値を振り変えることができ、最大20は他のステータスに振り分けることが可能な仕組みになっている。
俺の予想では交配に値が高いほど、埋めると実がなるのだろう。一度水溜りに行って確認したらわかるだろう。
「ももちゃんはどうだった?」
「僕は新しく水属性魔法の上位である氷属性魔法を手に入れました」
「氷!?」
桃乃はさらに魔法使いとして進化したようだ。それにしても氷属性魔法とは羨ましい限りだ。
「これでかき氷作れますよ!」
どうやら桃乃は魔法使いとして少し方向性がズレているようだった。確かに砂漠地帯は全体的に暑いため氷は便利だろう。
「さすがシロップがないと……」
熱中症対策に氷って便利な魔法だ。
桃乃はドワーフ達に氷削機を作ってもらおうと意気込んでいる。
シロップはトレントの実で作るらしい。
どうやら俺は道を正すことはできなかったようだ。
「うぉー! なんで俺は魔法が使えないんだー!」
一方ベンを追いかけてた笹寺もスキルの確認ができたようだ。
俺と桃乃はスキルを獲得するためにETFや個別株も買っている。一方の笹寺はETFや個別株はわからないため、買ってなかったはずだ。
「なんで俺は異世界に来てまで鍛治をしないといけないんだよ」
気になったのは俺だけではなかったようだ。桃乃とともに俺は笹寺に詰め寄る。
「何か株を持ってるのか?」
「ん? もってるのは慧に言われて買ってる積み立ててるやつと、あとは親父が昔から持ってるやつをもらったぞ?」
父親が病気になったタイミングで、株を売却するつもりだった。それを笹寺に相続させたらしい。
父親の亡き知り合いが経営していた会社で、唯一残っている物だと。
株にも色々な思い出があるのだろう。
「ひょっとしたら笹寺さんって有望ですかね?」
「ああ、俺達の希望だな」
俺達は基本的に装備できる武器が決まっている。俺はなぜか農具関係で桃乃は杖のみだ。
しかも、武器が手に入るのは持っている株で得られる配当やドロップ、報酬のみと手に入れる機会がチャンスがあまりない。
「お前便利だな」
俺は笹寺の肩を叩くとどうやら笹寺は俺達みたいに戦えないことが気に食わないようだ。
「お前らだけずるいぞ」
拗ねて集落の奥に行ってしまった。
「先輩今のはないですよ」
「そうか? いつものノリで言ったけど……」
「笹寺さんなりに私達の力になりたかったんじゃないですか?」
確かに桃乃の言う通りかもしれない。桃乃の時は自分から力が欲しいと聞いていたが、笹寺が異世界に行きたい本当の理由を俺は聞いていなかった。
「ちょっと追いかけてくるわ」
俺は笹寺を追いかけた。
36
あなたにおすすめの小説
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
合成師
あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。
そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-
すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン]
何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?…
たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。
※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける
縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は……
ゆっくりしていってね!!!
※ 現在書き直し慣行中!!!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。
平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。
どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる