異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品

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第一章 少年との出会い

16.聖男、少しだけ胸が熱くなる

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 ご飯を食べてから、僕とルシアンはパソコンの前に座って操作を教えることにした。
 ルシアンの手をマウスの上に載せて、その手を握るようにクリックしていく。

「映画を見たい時はここをクリックして検索してね。わからないことがあったら、このページを――」
「……」
「ルシアン、聞いてる?」

 ルシアンはなぜかずっとマウスを見ていた。
 きっとマウスとパソコンがどうやって繋がっているのか気になっているのだろう。

「このマウスはパソコンと繋がっていてね……」
「あっ……うん! 繋がっているんだね!」

 説明しようとしたが、ルシアンの返ってきた反応がどこか違っていた。
 ひょっとしたら、パソコンの凄さがわかっていないようだ。
 僕はその場で〝痩せた土地でも育ちやすい野菜〟ついて調べることにした。

「おすすめなのはじゃがいも、かぶやだいこん、キャベツがあるみたいだね」
「これ、すごいね! まるで魔法みたい!」
「魔法じゃなくて〝インターネット〟って言うんだよ」
「インターネット……インターネット……」

 ルシアンは口の中でその言葉を何度も転がしていく。
 こうやって聞いたことのない言葉は何度も発音して覚えている。

「まとめた本が読める感じに近いのかな?」
「じゃあ、便利だね!」

 どうやらパソコンの凄さを理解したようだ。
 その後も色々と検索してみては、ルシアンは画面を隅々まで見ていた。
 日本語もある程度は読めるようになったようだ。
 一緒に電子辞書の使い方を教えたら、便利だと喜んでいた。

「危ないサイトもあるから、見る時は注意してね」
「危ないサイト?」
「えーっと……」

 さすがルシアンにエッチな動画の説明をするのは早い気がする。
 性に興味を持つことは悪いことじゃないけど、まだ中学生にもなっていない年頃だもんね。

「中には年齢を確認するものがあるから、それは見たらダメなやつだからね」
「はーい!」

 ルシアンは首を傾げていたが、パソコンを触っていたら何かしら行きついちゃうだろう。
 そうなったらその時だね。

「みにゃとは明日からお仕事なんだよね?」
「そうだよ! 昼間はルシアン一人でお留守番だね」
「大丈夫! お留守番まかせて!」

 胸を張って笑うその顔に僕は少し目を細めた。

「ちゃんと鍵は閉めておいてね。変な人には付いて行かないこと!」
「はーい!」

 何度も同じことを説明しているのはわかっているが、ルシアンは嫌な顔をせずに聞いてくれた。
 少し心配ではあるが、仕事を休めないから仕方ない。
 僕が生活するのにもお金がかかるし、ルシアンと良い思い出を作るのにも最低限は必要だからね。

「じゃあ、そろそろ寝ようか」
「今日も一緒に寝てくれる?」

 そういえば、この間来た時は一緒に寝たんだっけな。
 せっかく布団を敷いたけど、寂しそうな顔をするルシアンを見て、僕は一緒に寝ることにした。

「わかったよ」

 部屋の電気を消すとルシアンとともにベッドに潜り込む。
 すぐ隣には少しだけ大人ぽくなったルシアンがニコニコとしていた。

「どうしたの?」
「また一緒に寝られて嬉しいなって!」

 ルシアンはそう言って僕をギュッと抱きしめた。
 体は大きくなっても甘えん坊なのは変わらない。

「来たばかりだから、ちゃんと休むんだよ」
「はーい」

 優しく背中を撫でてると、すぐに小さな寝息が聞こえてきた。
 夜の静けさが、部屋をまるごと包みこんでいく。
 ルシアンはすでに夢の中。
 僕の腕に顔を埋めたまま、すうすうと気持ちよさそうな寝息を立てている。
 街灯の明かりがカーテン越しに差し込み、少し濡れた髪がきらりと照らした。
 まるで月光が降りてきたみたいに、儚くて綺麗だった。

「少し見ないうちに大きくなったな……」

 小さな頃の面影はそのままなのに、肩も腕も少しだけ逞しくなっている。
 それなのに、寝ているときの顔は昔のまま、無防備。
 ずるいよな、こういうの……。
 同じ男なのにたまに胸が締め付けられる。

 僕の腕を抱く手がギュッと力を込められた。
 その感触に、胸の奥がちょっとだけ熱くなる。
 守ってあげたいって気持ちと、もう守られそうだなって予感が変なふうに混ざっていく。
 ルシアンは僕よりも早く成長していく。
 異世界に帰るたび、少しずつ遠くに行ってしまうみたいで少し寂しい。
 でも、それでいいのかもしれない。
 僕が教えたことを自分の世界でちゃんと活かしてくれているからね。

 僕は彼の頭をそっと撫でた。
 指先に触れる髪がさらさらと音を立てる。

「おやすみ、ルシアン」
「みにゃと……」

 小さな声で呟くと、寝言が返ってきた。
 相変わらず夢の中でも僕と遊んでいるんだね。
 その声が可愛くて思わず笑ってしまう。
 まったく反則だよ。
 そんな顔で呼ばれたら、明日から仕事なんて行きたくなくなるじゃないか。
 それでも僕は眠気に身を委ねる。
 ルシアンの寝息に合わせて、ゆっくりと目を閉じた。
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