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第二章 君は宰相になっていた
43.聖男、騎士の見舞いに行く
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「ご飯がないのは残念だけど……」
僕はできたばかりのお味噌汁とスクランブルエッグ、焼いたばかりのパンをテーブルに並べる。
すでにルシアン、アシュレイ、アリスが座っていた。
……美形が揃うと、なんか自分が場違いな気がして落ち着かない。
「みにゃとはここだからな」
「あっ……うん」
ルシアンに言われた通りに椅子に腰掛けるが、やけに距離が近い。
アシュレイとアリスは等間隔なのに、ルシアンとだけ椅子がほぼくっついている。
「本当は膝の上に――」
「さぁ、食べようか!」
小さいルシアンの時は膝に乗せていたけど、さすがに今は無理だ。
しかも、体格の差が入れ替わったからって、僕が膝の上に座るなんて恥ずかしくてできない。
「くくく、ルシアン様が拒否られてる」
「中々手強いわね」
その様子をアシュレイとアリスは笑って見ていた。
「いただきます!」
僕は手を合わせて、お味噌汁を一口飲む。
やはり出汁が入っていないから物足りないね。
「ルシアン、美味し……うぇ!?」
チラッと見たルシアンの瞳からは涙がポロポロと溢れ出ていた。
スフレパンケーキを食べていた時は、何も変わらなかったのに……。
「懐かしいみにゃとの味だ……」
ルシアンにしたら10年以上振りのお味噌汁だもんね。
スフレパンケーキはいつものホットケーキとはちょっと違うから、美味しいけど思い出の味とは少しかけ離れていたのだろう。
「どこかホッとする味だな」
「力が抜けちゃうような気がするわ」
アシュレイやアリスにも、お味噌汁は好まれているようだ。
こんなに喜んでくれるなら、しっかり出汁から取って作ってあげたいな。
椎茸や鰹節、昆布とか使えるものがあるか探してみよう。
ゆっくりと穏やかな時間は過ぎていき、僕たちは城に向かっていく。
「アシュレイ、みにゃとから目を離すなよ」
「まるで僕が迷子の子みたいだね」
「実際に迷子になってたよ?」
「くっ……」
いまだにルシアンから屋敷で迷ったことを突かれる。
そんなに僕が迷子になると思っているのだろうか。
アシュレイはジーッと僕を見つめていた。
「どうしたんですか?」
「いや……確かに目を離さない方がいいとは思って……」
「もう! アシュレイさんまで!」
アシュレイまで僕をバカにするつもりか。
少しイライラして、歩幅が大きくなる。
さすがにそこまで方向音痴でも――。
「ねぇ、こっちだっけ?」
「「くふっ!?」」
そんな僕の言葉にルシアンとアシュレイは吹き出していた。
だって、昨日はルシアンに運ばれていたから、道なんて覚えているはずがない。
わずかに見える城に向かって、僕は突き進む。
町は城を中心に区間が分けられている。
中央に城、その周りにルシアンの屋敷がある貴族街、商店街や一般人のいる市民街となっている。
ただ、農民の人は外に畑があったりするから、外に住んでいるらしい。
「絶対、騎士には気をつけろよ。アシュレイ頼んだぞ」
そう言って、城に着いたルシアンは執務室に向かって行った。
「騎士ってそんなに危ないんですか?」
「あー、あいつらはバカですからね」
きっと体育会系の男たちってイメージなんだろう。
あんな臭かったマヨネーズを食べちゃうぐらいだもんね。
「ここが治療室になりますね」
アシュレイに付いていき、目的地である騎士たちが休んでいる部屋に到着した。
「えーっと……やけにうるさいですよ?」
部屋に入ろうと、扉に手をかけるがやけに声が響いていた。
中からははしゃいでいるのか、楽しそうな声が聞こえてくる。
「だから行かなくて良いとルシアン様が……」
ルシアンが行かなくても良いと言った理由が、今になってわかった気がする。
ただ、アシュレイは話を途中でやめて、その場で地面に座り込み頭を下げた。
「えっ……アシュ――」
「君が騎士たちを救った聖男かな?」
声が聞こえた方に振り向くと、金色の髪に薄紫の瞳をした男性が立っていた。
ルシアンも端正な顔立ちをしているが、どちらかといえば品の良さが溢れ出ているような見た目をしている。
僕はどうしたら良いのかわからず、戸惑っているとアシュレイは僕の手を引いて座らせた。
僕もその場でアシュレイのマネをして頭を下げる。
「それで君が騎士たちを救った聖男なのかね?」
優しい声をしているが、早く答えろと言わんばかりの口調に僕はすぐに立ち上がる。
「はい、昨日倒れている騎士の元に駆けつけたのは僕です。あっ、自己紹介が遅れました。橘湊と申します」
僕がその場で頭を下げると、彼はどこか嬉しそうに笑っていた。
「君がミナトくんか」
「僕のことご存知なんですか?」
「ええ、ルシアンから聞いているからね」
彼は自己紹介する前から、僕の名前を知っていた。
きっとルシアンと親密な関係があるようだ。
アシュレイが頭を下げているくらいだからね。
「騎士たちの容態を見にきたんですか?」
「あっ……ああ、そうだね!」
どこか焦っているような気もするが、目的が違ったのだろうか。
ただ、返事があるくらいだから、チラッと顔を出しに来たのかな?
「お先に入られますか?」
「ありがとう。それよりも私のことはユリウスと呼んでくれないか?」
さすがに全く知らない人を名前で呼ぶのはどうなんだろうか。
「さすがに……」
僕は断ろうとしたが、ジーッと見つめられた。
どうすればいいのか戸惑っていると、彼の後ろにいる男性が大きなため息をついていた。
きっとそれくらいもできないのかと言われているような気がする。
「わかりました。ユリウス……さんお先にどうぞ!」
僕が扉を開けると、部屋の中は枕が飛び交っており、プロレスのように取っ組み合いをしている人たちまでいた。
ただ、一瞬にして視線がこっちに集まってくる。
すぐに姿勢を正すと、胸の前に拳を作り敬礼のようなポーズをしていた。
「「「国王様! 騎士団長!」」」
騎士たちの声が重なる。
どうやら僕に話しかけてきたのは国王と騎士団長だったようだ。
僕はできたばかりのお味噌汁とスクランブルエッグ、焼いたばかりのパンをテーブルに並べる。
すでにルシアン、アシュレイ、アリスが座っていた。
……美形が揃うと、なんか自分が場違いな気がして落ち着かない。
「みにゃとはここだからな」
「あっ……うん」
ルシアンに言われた通りに椅子に腰掛けるが、やけに距離が近い。
アシュレイとアリスは等間隔なのに、ルシアンとだけ椅子がほぼくっついている。
「本当は膝の上に――」
「さぁ、食べようか!」
小さいルシアンの時は膝に乗せていたけど、さすがに今は無理だ。
しかも、体格の差が入れ替わったからって、僕が膝の上に座るなんて恥ずかしくてできない。
「くくく、ルシアン様が拒否られてる」
「中々手強いわね」
その様子をアシュレイとアリスは笑って見ていた。
「いただきます!」
僕は手を合わせて、お味噌汁を一口飲む。
やはり出汁が入っていないから物足りないね。
「ルシアン、美味し……うぇ!?」
チラッと見たルシアンの瞳からは涙がポロポロと溢れ出ていた。
スフレパンケーキを食べていた時は、何も変わらなかったのに……。
「懐かしいみにゃとの味だ……」
ルシアンにしたら10年以上振りのお味噌汁だもんね。
スフレパンケーキはいつものホットケーキとはちょっと違うから、美味しいけど思い出の味とは少しかけ離れていたのだろう。
「どこかホッとする味だな」
「力が抜けちゃうような気がするわ」
アシュレイやアリスにも、お味噌汁は好まれているようだ。
こんなに喜んでくれるなら、しっかり出汁から取って作ってあげたいな。
椎茸や鰹節、昆布とか使えるものがあるか探してみよう。
ゆっくりと穏やかな時間は過ぎていき、僕たちは城に向かっていく。
「アシュレイ、みにゃとから目を離すなよ」
「まるで僕が迷子の子みたいだね」
「実際に迷子になってたよ?」
「くっ……」
いまだにルシアンから屋敷で迷ったことを突かれる。
そんなに僕が迷子になると思っているのだろうか。
アシュレイはジーッと僕を見つめていた。
「どうしたんですか?」
「いや……確かに目を離さない方がいいとは思って……」
「もう! アシュレイさんまで!」
アシュレイまで僕をバカにするつもりか。
少しイライラして、歩幅が大きくなる。
さすがにそこまで方向音痴でも――。
「ねぇ、こっちだっけ?」
「「くふっ!?」」
そんな僕の言葉にルシアンとアシュレイは吹き出していた。
だって、昨日はルシアンに運ばれていたから、道なんて覚えているはずがない。
わずかに見える城に向かって、僕は突き進む。
町は城を中心に区間が分けられている。
中央に城、その周りにルシアンの屋敷がある貴族街、商店街や一般人のいる市民街となっている。
ただ、農民の人は外に畑があったりするから、外に住んでいるらしい。
「絶対、騎士には気をつけろよ。アシュレイ頼んだぞ」
そう言って、城に着いたルシアンは執務室に向かって行った。
「騎士ってそんなに危ないんですか?」
「あー、あいつらはバカですからね」
きっと体育会系の男たちってイメージなんだろう。
あんな臭かったマヨネーズを食べちゃうぐらいだもんね。
「ここが治療室になりますね」
アシュレイに付いていき、目的地である騎士たちが休んでいる部屋に到着した。
「えーっと……やけにうるさいですよ?」
部屋に入ろうと、扉に手をかけるがやけに声が響いていた。
中からははしゃいでいるのか、楽しそうな声が聞こえてくる。
「だから行かなくて良いとルシアン様が……」
ルシアンが行かなくても良いと言った理由が、今になってわかった気がする。
ただ、アシュレイは話を途中でやめて、その場で地面に座り込み頭を下げた。
「えっ……アシュ――」
「君が騎士たちを救った聖男かな?」
声が聞こえた方に振り向くと、金色の髪に薄紫の瞳をした男性が立っていた。
ルシアンも端正な顔立ちをしているが、どちらかといえば品の良さが溢れ出ているような見た目をしている。
僕はどうしたら良いのかわからず、戸惑っているとアシュレイは僕の手を引いて座らせた。
僕もその場でアシュレイのマネをして頭を下げる。
「それで君が騎士たちを救った聖男なのかね?」
優しい声をしているが、早く答えろと言わんばかりの口調に僕はすぐに立ち上がる。
「はい、昨日倒れている騎士の元に駆けつけたのは僕です。あっ、自己紹介が遅れました。橘湊と申します」
僕がその場で頭を下げると、彼はどこか嬉しそうに笑っていた。
「君がミナトくんか」
「僕のことご存知なんですか?」
「ええ、ルシアンから聞いているからね」
彼は自己紹介する前から、僕の名前を知っていた。
きっとルシアンと親密な関係があるようだ。
アシュレイが頭を下げているくらいだからね。
「騎士たちの容態を見にきたんですか?」
「あっ……ああ、そうだね!」
どこか焦っているような気もするが、目的が違ったのだろうか。
ただ、返事があるくらいだから、チラッと顔を出しに来たのかな?
「お先に入られますか?」
「ありがとう。それよりも私のことはユリウスと呼んでくれないか?」
さすがに全く知らない人を名前で呼ぶのはどうなんだろうか。
「さすがに……」
僕は断ろうとしたが、ジーッと見つめられた。
どうすればいいのか戸惑っていると、彼の後ろにいる男性が大きなため息をついていた。
きっとそれくらいもできないのかと言われているような気がする。
「わかりました。ユリウス……さんお先にどうぞ!」
僕が扉を開けると、部屋の中は枕が飛び交っており、プロレスのように取っ組み合いをしている人たちまでいた。
ただ、一瞬にして視線がこっちに集まってくる。
すぐに姿勢を正すと、胸の前に拳を作り敬礼のようなポーズをしていた。
「「「国王様! 騎士団長!」」」
騎士たちの声が重なる。
どうやら僕に話しかけてきたのは国王と騎士団長だったようだ。
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