26 / 141

26.プレゼント

しおりを挟む
 初めての川遊び……いや、ポーターパーティーの依頼は成功に終わった。その後メジストに渡したマンドラゴラは、見たこともないほど状態が良いと言っていた。

 孫達だから優しく言っているのかと思ったら、本当に質が良いらしい。

 そもそもマンドラゴラは抜いた瞬間に叫ぶため、細かく刻まれて持ってくるのが一般的だ。

 引っこ抜かれた瞬間に刻まれるとは、不運なマンドラゴラ達。

 歌っている時に討伐されるのも、そこまで変わらないか……。

 ちなみにマンドラゴラはスキル玉を作るために必要な材料になる。そのため質の良いマンドラゴラは高く売ることができた。

 ちゃんとお金は三等分にして、ロンとニアにも渡したが、本人達の意思で必要な分以外は俺が預かることとなった。

「あっ、忘れ物をした」 

 俺達は初依頼を終えて宿屋に帰ろうと歩いていたら、ロンが忘れ物をしたと言ってきた。

「一緒に取りに行こうか?」

「大丈夫! ニアと行ってくる」

「えっ? 私?」

 若干強制的にニアは引っ張られる形でメジストの錬金術店に戻って行く。

 一人になった俺はせっかくの初依頼の記念に、二人へプレゼントを用意することにした。

「んー、プレゼントって何がいい……あっ、ルースさーん!」

 俺が悩んでいると買い物途中なのか、宿屋で働く女性のルースさんがいた。彼女は初めて子供達を連れてきた時も、頼りになる近所のお姉さんみたいな存在だった。

 ただ、ロビンといる時はどこか視線が厳しくなる今も謎めいている人でもある。

「ウォーくんどうしたの?」

「プレゼントを買おうかと思いまして」

 俺はちょっと恥ずかしさもあり照れると、ルースさんは握り拳を作っていた。

「プププ……推し同士がついにくっつ――」

「何が良いと思いますか?」

 俺は単純に気になって聞いてみることにした。

「向こうならネクタイとか日用品がいいだろうけど何が……」

 彼女はぶつぶつと独り言を呟いている。

「ネクタイってなんですか?」

「ああ、それは気にしなくてもいいわ! 成人男性が喜ぶものよね? ふふふ、もうウォーレンくんでいいんじゃないかしら?」

 彼女は何を想像しているのだろうか。プレゼントを男性にあげる予定は全くない。

「成人男性ですか? あげるのはロンとニアですよ?」

 俺の言葉にハッとした表情をしている。何か勘違いしていたようだ。

 ロンとニアに渡すと伝えると、彼女は少し落ち込んでいた。

「ロンとニアにあげるなら子供らしく光った物とかはどうかしら?」

「ああ、ならブローチとか良いかもしれないですね。ありがとうございます」

 彼女にお礼を伝えると、再び何かぶつぶつと呟いていた。

 イケオジと年下攻めも捨てがたいとはなんのことだろうか。

 変わった彼女に挨拶をして、僕はブローチを買いに行った。

 見つけたのはみんなとお揃いでつけられるブローチだ。パーティーメンバーの証にもなりそうなブローチを買って、宿屋に戻ると既にロアとニアは帰って来ていた。

「お兄ちゃんどこに行っていたの?」

「ああ、少し買い物に行ってたよ」

「にいちゃ! にいちゃ!」

 二人はウキウキしているような印象だった。そんなにご飯が待ち遠しいのだろうか。

 最近よく食べるようになって、少しずつ大きくなって成長が楽しみだ。

 俺達はしばらくゆっくり過ごすと、食事の準備ができたと呼ばれ食堂に向かった。そこには普段よりも豪華な食事が置いてあった。

「今日はあんた達の初依頼だろ? 少し豪華にしておいたわよ」

 なんと宿屋の店主は僕達を祝うために、普段よりも豪華な食事を用意していた。

「ちょ、ロンよだれが垂れてきてるよ」

 ロンは待ち切れないのか口元からよだれが垂れている。二人とも耳と尻尾が立って今にも食べたい様子だ。

 先に挨拶の祈りをして食べることにした。やはり二人は初めての依頼でお腹が空いていたのか、食べる速度が異常に早かった。

 飲み込む勢いで食べていたため、詰まらないか心配だ。

「あっ、そういえば二人にプレゼントがあるんだ」

 俺はポケットからブローチを取り出す。値段もお手頃だが、キラキラと光るブローチに二人の視線は釘付けだ。

「せっかくだからみんなでお揃いの物をつけても良いかと思ってね?」

 俺は自分の胸元に付いているブローチを二人に見せると大喜びをしていた。

 二人の胸元につけるとお互いに自慢しあっている。これだけ喜んでくれたら買ったかいがあるもんだ。

「実はオラ達からもプレゼントがあるんだ!」

 二人の言葉に何を言っているのか分からず、頭が追いついていない。

「オラとニアからのプレゼント」

 俺は言われた通りに手を出すと、そこには風属性魔法が入ったスキル玉が置かれていた。

「おい、これって宝物じゃ――」

「今日じいじに頼んで買ってきた」

「前じいじからもらった時にお兄ちゃんだけ貰えなくて悲しそうな顔をしていたからさ」

 どうやらこの間のことを言っているらしい。単純にスキル玉は使えていいなとは思ったが、顔に出ていたようだ。

「ロン、ニアありがとう」

 俺はロンとニアを抱き締めた。ロンはどこか照れくさそうにしているが耳と尻尾は伸ばし、ニアは撫でて欲しいのか頭を突き出していた。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...