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89.魔物の大群

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 王都に向かうと少しずつ剣がぶつかる音と人間の叫び声が響いていた。俺達の目の前にはたくさんの魔物の群れがいた。

「ゴードンさん本当にいいんですか?」

「ああ、私も王都でやるべきことがありますからね」
 今からその魔物の群れに後ろから突撃して中に入ることになったのだ。

 実はこの提案をしたのはゴードンだった。

 護衛の依頼もあり命の安全を第一に考えて王都に行かないという選択をしたが彼は違った。

 彼の中でも昔の後悔から王都を自身で守ることを優先に考えたのだろう。

「ロンは馬車を通る道を開けて、ニアは魔法の準備を!」

「わかったー!」
 ロンは馬車から降りると前にいる魔物達の中へ飛び込んで行った。ロンは自身の体格の小ささから魔物の足を狙って攻撃を仕掛けた。

 また、スキルの影響で魔物達がロンに注意が向くことで隙を生むことができるのだ。

「お兄ちゃん準備出来たよ」

「頼む!」

「アイスシールド」
 ニアが魔法を発動すると地面から氷の板が何枚も突き出てきた。

「みんな振り下ろされるなよ」
 魔物の群れがアイスシールドによって分裂させ、王都までの道ができた瞬間にゴードンは馬を操作し王都に向かって馬車を操作した。

 普通の人であれば魔物に囲まれて怖いはずだが、ゴードンは何事もないように馬を走らせた。本当にこの人は商会で働いている人なのだろうか。

「お兄さん右からもきます」
 俺は声に反応して右に短剣を切りつけると魔物の触手が落ちた。

 ハリスとホークスの報告では全ての魔物から触手のようなものが体から出ていた。そのため事前に攻撃に注意するように事前に聞いていた。

 そのため獣人の中で視力が良い子に馬車の周りに配置して敵の攻撃がどこから来るかを見極めて俺が切り落としている。

 アイスシールドを使っても流石に隙間から触手が馬車を狙ってくるのだ。

「ロン!」
 俺は途中にいるロンに声をかけると気づいてフードを被り馬車に飛び乗った。

「お兄ちゃんもういいね」

「ああ」

「ダイアモンドダスト」
 ニアが魔法を唱えると空に大きな魔法陣が展開された。

「わぁ……綺麗!」
 魔物達の上空には白い雪が降り注ぐと俺も獣人達も初めてみる魔法に釘付けになっていた。

「凍れー!」
 ニアが叫んだと同時に雪に触れた魔物は急速に凍り始めた。

「にいちゃ……」

「ああ、言いたいことはわかるぞ」
 今まで見た氷属性の魔法が比ではないぐらいの威力だった。ニアに凍らされたことのある俺にとっては恐怖にしか感じなかった。

「ニアちゃんすごいね」

「へへへ」
 ニアもハリスに褒められて喜んでいた。そんな中、ミンは獣化した耳を大きくアンテナのように音を聞き取っていた。

 ミンの獣化は聴力を強化して音の聞き分けをする力に特化していた。

「いや、まだ生きてるよ!」

「えっ?」
 ミンの声とともに凍りつけられた魔物は自身の体を砕き雪に触れたところを全て触手で切り落としていた。

「あいつら痛みも恐怖もないのか?」
 俺の目には魔物は何かに操られているような状態に見えた。

「あの時と同じなのか……」

「あの時って?」

――ドゴーン!!

 ゴードンが俺に聞いた瞬間、近くで爆発音が鳴り響いた。その勢いにアイスシールドから抜け出そうとしていた魔物達は飛ばされていた。

「あら、ウォーレンちゃんおかえり!」

「ローガ――」

「今なんて……?」
 ローガンは地面に拳を叩きつけると地面は割れ魔物は風圧で飛ばされていた。

 俺はこの瞬間魔物より危ないのはローガンだとすぐに感じた。つい出てしまった名前に何事もないように訂正した。

「いえ、ローナさんただいまです」

「ははは、私の聞き間違いだったようね」
 やはり聞こえていたのだろう。それにしてもやはり王都のギルド長と言われるだけ魔物を倒す威力が高かった。

「おー、お前らも帰ってきたのか」
 ローガンの反対側にはロビンがいた。周りの魔物の体は切り刻まれて触手だけが動いていた。

「やっぱりこいつら魔物か?」

「それは私に言われてもわからないわよ!」

「お前達は早く王都の中に入れ!」
 ゴードンは馬車のスピードを速くするとそのまま王都へ近づいたタイミングで閉じていた門が開いた。

 俺達は怪我人なく無事全員で王都に戻ることができた。




 
 
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