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94.スキル【吸収】 ※一部別視点

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 気づいたら辺りは真っ暗で何もない空間に横たわっていた。正確に言えば体の感覚がないため横たわっているのかもわからない。

「二人とも泣いてたな……」
 最後の記憶はロンとニアが泣いた顔だった。

「そもそも俺って死んだのか?」
 声が出てる気はするが本当に口から出ているのかも感覚がないためなんとも言えない。

 これが死後の世界なのかと俺は考えていると急に強い光で照らされた。俺は目を開けることができず思わず目を閉じた。





――ジリリリリ!

 アラームの音に俺は目を覚ました。どこか真っ暗な部屋で寝ている夢を見ていたが実際はベットの上で寝ていた。

「パパ朝だよ」
 扉を開けて覗いていたのは長女のそらだ。

「そーらー!」
 俺はベットから体を起こすといつものように空に抱きつきリビングに向かった。

「あなたおはよう」
「父ちゃんおはよう」
 先に起きていた妻と長男のかいはテーブルに座って俺を待っていた。

「おはよう! 遅くなってすまない」

「昨日忙しかったから仕方ないよ」
 昨日は今日のために必死に準備をしていたため寝るのが遅くなったのだ。

「パパ今日なんの日かわかる?」
 空はニヤニヤと笑いながらこちらを見ている。もちろん俺はわかっているがあえて知らないふりをすることにした。

「あっ……今日は何の日だったか?」

「えっ!? パパ忘れちゃったの?」
 冗談で言ったはずがあまりにも悲しそうな顔をする空の顔を見て俺は少し申し訳ない気持ちになった。

「あー、今日はお前達の誕生日だろ?」
 今日は双子の空と海が生まれてきた日。いわゆる誕生日だ。

「ふふふ、あんまり空をいじめちゃだめよ」

「あまりの可愛さについね」

「私のことは?」

「あー、一番可愛いと思ってるぞ」
 俺は自分で言うのも恥ずかしいが家族を溺愛している。愛した妻が生んだ空と海が可愛くないはずがない。

「パパそんなにゆっくりしてると仕事遅れるよ?」

「本当か!?」
 この中で1番しっかりしている海は時計を指差していた。

「あっ、ほんとだ! 仕事に行ってくるよ」
 俺は急いで朝ごはんを掻き込むと身支度をして玄関に向かった。

「今日は何時に帰ってくるの?」

「夕方には帰ってくるよ」

「みんなで待ってるわね」
 いつも仕事に追われている俺は今日のために定時に終われるように仕事を進めている。

「パパいってらっしゃい」

「ああ、行ってくるよ」
 俺は3人にキスをしてから仕事場に向かった。





 仕事は順調に終わり帰ろうとした時に問題が起きた。

「ちょっと今手空いてるやついるか!」
 突然上司がオフィスで声を上げた。俺以外はまだ自分の仕事が終わっていないため俺は手を挙げた。

「少しなら大丈夫です」

「ああ、助かるよ! 取引先でミスが発覚して少しだけ手伝ってもらいたんだ」

「わかりました」
 俺は残業をすることになったことを妻に連絡を入れた。彼女は仕方ないと言っていたが電話から聞こえる声は寂しそうだった。

 それからしばらく仕事をしていると、後輩達が一緒に対処してくれたためミスはどうにか解決した。

「先輩、今日お子さんの誕生日ですよね? お店に早く行かないと間に合わないですよ」

「うわ、やべぇ!」
 今日はプレゼントを持って登場すると妻と事前に相談していた。

 だからプレゼントをおもちゃ屋に取りに行く予定だったが、どうやら閉店時間までに間に合ったようだ。

 俺は子供達の荷物を両手に抱えて持って帰ると普段聞こえる子ども達の声が聞こえなかった。

 逆に俺が帰ってくるのを静かに待っているのか寝ているのかのどちらかだろう。

「あいつら疲れて寝てるのか?」
 俺は玄関の扉を開けた瞬間に何か違和感を感じた。あまり嗅いだことないような腐臭が鼻の奥を突き刺している。

「ただい……おい、大丈夫か!」
 扉を開けるとそこには血だらけでうつ伏せに倒れている妻の姿あった。

 俺は急いで妻の体を起こそうとするが彼女の腕はだらんと垂れ下がっていた。
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