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137.ドラゴン

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 俺は今夢を見ているのだろうか。もしくは絵本の世界に入っているのだろう。あの伝説の生き物がいるはずがない。

「あっ、ワイバ――」

「あれはドラゴンよ? あまりにもお前達が遅いからこっちから迎えにきたぞ」

 ワイバーンだと思ったが空に飛んでいるのはドラゴンだった。

 どうやら話を聞くとドラゴンのスキルでモーリンは浮いているらしい。

「おい、急に暴れてどうしたんだ」

「大丈夫ですか?」

 急に馬車が止まると馬が暴れていた。

「ははは、きっとドラゴンに驚いて逃げ出そうとしているのね。ついさっきまで姿を隠していたからね」

「……」

 馬が暴れた原因はモーリンとドラゴンのせいだった。

「あのー、これからどうしますか?」

「これじゃあ馬が落ち着くまで何もできないぞ」

「……」

「ばあばのせいだね」

「あー、そうだね」

 俺達は御者に謝ると馬車から降りて歩いて行くことを告げた。冒険者だと説明することで特に止められることもなかった。

「ばあばドラゴンを連れてきたらダメだよ」

「そうだよ! 抜けているのはお兄ちゃんだけでお腹いっぱいだよ」

「ほほほ、あんなトカゲでびっくりするのが悪いのよ」

 ニアは俺のことをなんだと思っているのだろうか。そしてそれを忘れるほどのモーリンの言葉に驚きだ。

 ドラゴンをトカゲ呼びしているのはこの国……いや、この世界の中でモーリンしかいないのだろう。

 結局俺達はドラゴンの上に乗ってメジストがいる都市ガイアスに向かうことになった。

 ドラゴンはモーリンの合図で地面に降りてくるとあまりの大きさに俺達は驚いた。

 大きくギョロっとした目は俺達を見ると何かを訴えているように感じた。

「よくこんな怖いものをトカゲって言えるね……」

「おい、孫達を怖がらせるんじゃないの!」

「グォ!?」

 その時なんとなく感じた。ドラゴンは俺達に助けを求めているのだと……。

 モーリンに話しかけられるとわずかに震えていたのだ。

 伝説の生き物は思ったよりも小心者らしい。

「それで馬車を降りたけどどうやっていくの?」

「そりゃーこのトカゲに乗って――」

「いやいや、怖いじゃんか! それに見知らぬ俺達を乗せて――」

「嫌とは言わないだろう?」

 モーリンの圧にドラゴンは大きく頭を縦に振っていた。だんだんドラゴンが可哀想に見えてくるぐらいだ。

「ほら早くあいつを迎えにいくわよ」

 モーリンはそのままドラゴンの背中に跨るとロンとニアを乗せていた。

「なんかお前大変なんだな」

「グオ……」

 俺は優しくドラゴンを撫でると喉を鳴らしながら泣いていた。

「ほら、ウォーレン早く乗りなさい」

「王都までよろしくね」

 モーリンに声がかかり俺はドラゴンに跨った。その後声をかけたことを後悔することになるとは思いもしなかった。
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