貞操逆転国の亡命代行

空の小説マン

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第十一話 真実

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ルィフメー王国 港町の宿屋にて。

海の見える薄暗い宿屋の客室で、ローブを被った青年が蹲っている。
ローブから覗かせる彼の顔は、
正真正銘、ロビンそのものだった。
静かな港町の宿屋に、身を隠す彼は、一人物思いに耽る。

◇◆◇◆◇◆◇

数週間前の出来事。

夜風の吹く、軍学校の野外演習場で、剣の素振りに勤しむロビンの前に、
一人の男が、音も無く姿を現した。

存在に気付いたロビンが、視線を向けると、そこにはウルフの姿があった。
「お前が、亡命を希望するロビン・アダムスカだな。
俺はウルフ、ニカルクアの使いの者だ」
ウルフと名乗る男に対し、ロビンは、薄暗い表情を浮かべ、彼の話を聞いた。
「お前が、船でニカルクアに移動する間、
俺がお前に成り代わって、学校に滞在する。
ようは俺は、囮の役割を担う存在だ。
お前の性格や習慣は、資料を見て、頭に叩き込んである。
あとは最後に、お前に頼みがあるんだが...」
小首を傾げるロビンに対し、ウルフは、彼の持つ剣を指差し言った。
「お前の戦闘の動きを、ラーニングしておきたいんだ。
滞在中に戦闘を行う際、お前の動きを、極力真似しないと、怪しまれる可能性がある。
少し俺を相手に、剣を降ってみてくれ」
ウルフに言われ、ロビンは、彼と向かい合い、剣を真っ直ぐ構える。
構えの姿勢も、事細かに観察するウルフは、ロビンに対し、声を飛ばした。
「遠慮はいらない、どんどん打ち込んできてくれ」
躊躇いを抱きながらも、ロビンはウルフに向けて、模擬戦用の剣を振るった。
次々と、繰り出される攻撃を、寸前で全て回避するウルフは、
避けながらロビンの動きを、よく観察した。
踏み込む速度、打ち込む姿勢、一撃の速度と、振る際の動き、
全てを脳に記憶したウルフは、素早く間合いを離し、ロビンに告げた。
「ありがとう、もう十分だ。今ので大体掴んだ」
息の上がるロビンは、剣を鞘に納めると、ウルフの言葉を耳に入れる。
「ニカルクアじゃ、剣をあまり使わないから、慣れるのに時間がかかるかもしれない。
しばらく素振りの一つでもしておこう。
それと、これをお前に渡しておく」
するとロビンは、変装用のローブと服を、ウルフに差し出され、彼は両手で受け取った。
「お前には、ニカルクアへの船が到着するまで、
我々が手配した港町の宿屋で、身を隠してもらうことになる。
必要な物があれば、宿屋の店主に言ってくれ。
彼も協力者だ」
するとウルフは、渡航用の荷物をロビンに渡すと、
ロビンは最後に、彼へ質問を飛ばした。
「どうやって、俺に成り代わるんだ?何か手立てがあるのか?」
質問を受けたウルフは、懐からフラスコを取り出すと、指差してロビンに見せた。
「コイツで、お前の姿に変化するんだ。
簡単に言えば、即効性の整形薬ってやつさ。
お前の服も自前で用意した。さ、人目がない内に入れ替わるぞ」
ウルフに渡された、服とローブを被り、
ロビンはこの瞬間、彼に成り代わりを任せた。

◇◆◇◆◇◆◇

時は現在に戻り、一人静かに、宿屋で身を隠す本物のロビンは、
ニカルクアからの船が、港に到着しないかと、海を眺めて待機していた。

すると水平線の先に、一隻の貨物船が、ロビンの視界に映り込む。
彼が窓に手を当て、凝視して船に焦点を当てると、
そこには、驚くべき光景が映り込んだ。
「な、なんだよあれ...!」
遠くに映る船の元から、大きな黒煙が上がっていたのだ。

◇◆◇◆◇◆◇

ルィフメー王国 港町から少し離れた海域にて。

海に揺られる貨物船の上で、一人の男が佇む。
男は船員達を、次々とボウガンで撃ち殺し、
火炎瓶を投げて、船に火を放った。
逃げ惑う船員の背中を、無情にも矢で射抜く男。

その姿は、紛れもなくウルフのものであった。

操舵する舵取りを、背後から撃ち抜き、鮮血に染まる貨物船の上で、
ウルフは燃え広がる炎を、ただひたすら見つめていた。
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