貞操逆転国の亡命代行

空の小説マン

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第十二話 襲撃

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数日後、軍学校内の寮にて。

届けられた書状の内容を、確認するロビンは、青ざめた表情を浮かべた。
彼が目を通した書状は、以下の内容だった。

『至急、任務状況を報告されたし。

数日前、ニカルクアから送り出した、ルィフメー行きの貨物船が、
"貴殿の姿をした者"に襲撃された。
貨物船は、此度の亡命希望者を、渡航させる予定のものであり、
現在、海域深海へと沈没している模様。
事実確認の為、至急、軍本部への報告を命ずる』

テーブルに置いた書状を握り、冷や汗を流すロビン。
亡命用の船が、自身の姿をした者の襲撃により、沈没したとの報告を受け、
彼は自身の潔白を証明する為、すぐさま手紙を執筆しようとした。

すると、部屋の扉が静かに開き、
ロビンの背後に、何者かが訪れた。

気配を悟ったロビンが、振り返った先には、
ウルフの顔をした男が、佇んでいた。
「お、お前は...」
言葉を呟くロビンを待たず、ウルフはボウガンを差し向け、引き金に指をかけた。
すかさずロビンは、部屋のテーブルを倒すと、陰に隠れ、放たれた矢から身を守った。
構わずボウガンを装填し、再び矢を放つウルフを前に、
ロビンは身を隠しながら、テーブルを押して、敵に接近した。
至近距離に近づいた彼は、剣を鞘から抜くと、
テーブルの陰から現れ、ウルフに刺突を繰り出した。
剣先を回避するウルフに、ロビンは、刃を薙ぎ払おうとすると、
寸前のところで、ウルフに腕を掴まれ、腹部に膝を蹴り込まれる。
「ごふっ!!」
怯んだロビンの手に持つ剣の柄を、ウルフは蹴り上げて、床に落とさせる。
ボウガンを差し向けた彼の手を、ロビンはすかさず掴み取り、
床に向けて、矢を発射させると、武器を奪い取りながら、
勢いよく彼を、地面に投げ飛ばした。
ロビンは、矢の込められてないボウガンを、遠くに投げ捨て、
互いに素手の状態で、立ち上がったウルフと睨み合った。

真っ先に拳を放つ、ウルフの腕を掴み上げ、
ロビンは足をかけ、地面に投げ伏せた。
すかさず、拳を叩き込もうとするロビンの一撃を、瞬時に躱したウルフ。
再び向かい合う、両者の均衡を破り、
ロビンは、敵の胸ぐらを掴み取ろうとした。
しかしウルフに見切られ、両腕を掴み上げられたロビンは、
勢いよく、床に投げ飛ばされる。
ロビンは倒れながらも、ウルフに、足蹴りを繰り出すと、
ウルフは両腕で、咄嗟にガードする。
するとロビンは、床に落ちた剣へと、視線を向け、
武器を手にするため、素早く腕を伸ばした。

次の瞬間、ウルフは、懐から煙幕を手に取り、
ロビンに向かって投げつけた。
部屋の中に、煙が充満し、両者の視界が晴れた刹那、
ロビンは、ウルフ目掛けて突進し、胴を掴んで、彼を窓際に追いやると、
そのままガラスを突き破り、窓からウルフを投げ落とした。

襲撃してきた敵を、部屋から追い出したロビンは、
しばらく窓の下を見つめると、一人部屋で息を整えた。

◇◆◇◆◇◆◇

しばらくすると、大きな音を立てたロビンの部屋に、クロミネが、急いで駆けつけてきた。
「どうしたロビン!何があった!?」
するとロビンは、落ちた剣を拾い上げ、鞘に納めて、彼女に答える。
「正体不明の襲撃者が、俺を奇襲してきた。
誰の差し金かは分からないが、既に撃退した」
クロミネは、割れた窓の下を覗くと、
ロビンを案じるように語りかける。
「災難だったな。この件は、教官の耳にも入れておく。
後日、事情聴取を受けることになるだろう。
今日はもう休め、私が別室を用意しておこう」
ロビンは、クロミネに連れられ、自室を後にするのだった。

◇◆◇◆◇◆◇

クロミネが用意してくれた別室にて、ロビンは、手紙にペンを下ろしていた。
彼の書いた手紙は、以下の内容だった。

『先日の貨物船襲撃の後、
軍学校寮内に、件の襲撃者が、奇襲を仕掛けてきた。
速やかに撃退に成功した故、任務に支障はない。
引き続き、亡命希望者ロビン・アダムスカに成り代わり、
渡航までの時間を稼ぐべく、任務を遂行する』

手紙に封をしたロビンは、伝書鳩の脚に括り付けると、ニカルクアへと飛翔させる。
ロビンは、窓の外を眺めながら、静かに瞼を下ろし、息をついた。

◇◆◇◆◇◆◇

後日、軍学校の取調室にて。
襲撃当時の出来事を聴取する為、ロビンは、教官と二人きりで、取調室に訪れていた。
調書を手に、椅子へ腰掛ける教官へ、ロビンは、静かに尋ねる。
「ここには俺達しかいませんね?我々の会話を聞いている者は?」
質問を飛ばすロビンに、教官は、ペンを置いて答えた。
「いいや、私以外に聞いている者は居ない。
部屋も防音になっている。
正真正銘、一対一の事情聴取だ」
教官の言葉を聞き、ロビンは、椅子に座りながら、
じっと虚空を見つめた。
「そうですか、なら音を立てても大丈夫だ」

◇◆◇◆◇◆◇

取調室の扉を開き、一人で出てくるロビン。
すると部屋の前で、待機していた別の教官は、彼に話しかけた。
「事情聴取は終わったのか?意外と早かったな...」
教官が口を閉じる前に、ロビンは、懐からボウガンを取り出し、
教官の頭部に向けて、引き金を引いた。

足音を立てて、廊下を歩くロビンは、校舎に次々と火を放つ。
投げつけられる火炎瓶の炎が、光を帯びて、建物に燃え広がり、
瞬く間に、火の手は大きく膨れ上がる。

突如、凶行を起こすロビンの瞳は、光なき暗闇を抱いていた。
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