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結局再び屋上へと避難したところで息を切らした水城がやって来た。
屋上へ足を踏み入れると同時に口元を手で覆う。
「うっ!?二人共ヤバイって……!特に東っ!!」
水城もまた圭の匂いに反応してしまったのだろう。
しかしその目にはまだ理性の色がはっきりと見て取れる。
口を押さえた状態で差し出したもう片方の手には白い紙袋が握られていた。
力が入りすぎたのか紙袋はグシャグシャによれている。
それに反応したのは圭だった。
「水城、それ……」
「ごめん東!勝手に鞄漁ったけどコレ必要でしょ?っていうか今すぐ飲んで!っていうか常日頃から携帯しよう!?」
そう言って水城は圭に向かって紙袋を勢い良く投げるが、当然軽いそれは圭には届かずすぐ床に落ちた。
普段の彼女であれば拾って渡しに来るだろうが、というかそもそも投げることなく手渡してくれるだろうが、水城はごめんと一言叫んで走り去ってしまった。
唐突に嵐が来て去っていった後の静けさに、二人発情していることも忘れ呆然とする。
しかし風に吹かれカサカサと存在を示す紙袋の音に我に帰った。
「とりあえず圭は薬飲んで」
「……あ、あぁ」
圭はフラつきつつ拾い上げた紙袋からすぐさま薬を用量分取り出し口に入れた。
それを見ながら少し圭と距離を取る。
手が届く範囲にいるとより一層触れたい欲求が抑えられそうにない。
たかが数メートル。それでも精神面には大きく働く。
幸い、屋上はそこそこの広さがあるし貯水タンクなどの障害物もあるため姿を隠せる。
「理々子?」
「駄目、止まって。別に嫌いになったとかそんなんじゃないから。我慢できなくなるから」
「っ……わかった」
まるで引き寄せられるように近づく圭を止めれば悲しそうな顔をする。
圭はこうして予め理由を述べないとマイナスにばかり物事を捉える傾向にある気がする。
これはもう疑いようのないくらい言葉で落としにかかるしかないだろう。
行動でも示したいところだが、こうして直接会って近くにいては本能に邪魔されてしまう。
また全身を熱に侵される前に圭に伝えなければならない。
「私達まだ高校生で、まだ子供なんだ」
「……理々子?」
「今もだいぶ、かなり辛い……近くにいると圭を犯したくなるの、項に噛みつきたくなるの」
「っ!」
「私、圭と番になるって決めた。でもそれは今じゃない。せめて卒業してから……って思ってる」
包み隠さず今思っていることを打ち明けた。
私の言っていることはごく当然、普通のことだと思う。
今ここで圭と番ったとして、心は満たされるだろうが現実的な面において無責任としか言いようがない。
双方親の了解も得ないままなんて今後確実に障害になりうる。
いくら運命の番であっても出会ったばかりでお互いのこともそこまで知り合っていない。
「焦って仕損じたくない。私はバレた可能性が高いと思う。周囲の反応が変わってくると思う。でもまだ大丈夫な範囲だと思ってる……でも」
「これからは極力顔を合わせないって、言いたいのか」
「うん」
正規の手順で焦らず確実に圭と番えてこそ本当の幸せを掴める考えている。
そのためには会わないでいるのが一番良い。
「幸い圭の事情は一部しか知らないし、これからより気をつければバレることは防げるはず……私なんかよりよっぽど大変だとは思うけど」
「絶対だぞ」
「?」
圭は目に溜めていた涙を拭い、真っ直ぐ私と目を合わせる。
その顔は何か吹っ切れたように見えた。
「絶対に俺と番うって約束しろ」
「……何に誓おうか」
「そんなの………………俺しかないだろ」
既に赤い顔を背け恥ずかしそうにする圭は私にとってただただ愛しく可愛いものでしかなかった。
今すぐ抱きしめたいのを我慢し圭との距離を詰める。
「誓うよ、絶対。直接は会えないけどたくさん連絡取り合おう」
「……あぁ」
お互い手は握りしめたまま触れるだけのキスを交わした。
屋上へ足を踏み入れると同時に口元を手で覆う。
「うっ!?二人共ヤバイって……!特に東っ!!」
水城もまた圭の匂いに反応してしまったのだろう。
しかしその目にはまだ理性の色がはっきりと見て取れる。
口を押さえた状態で差し出したもう片方の手には白い紙袋が握られていた。
力が入りすぎたのか紙袋はグシャグシャによれている。
それに反応したのは圭だった。
「水城、それ……」
「ごめん東!勝手に鞄漁ったけどコレ必要でしょ?っていうか今すぐ飲んで!っていうか常日頃から携帯しよう!?」
そう言って水城は圭に向かって紙袋を勢い良く投げるが、当然軽いそれは圭には届かずすぐ床に落ちた。
普段の彼女であれば拾って渡しに来るだろうが、というかそもそも投げることなく手渡してくれるだろうが、水城はごめんと一言叫んで走り去ってしまった。
唐突に嵐が来て去っていった後の静けさに、二人発情していることも忘れ呆然とする。
しかし風に吹かれカサカサと存在を示す紙袋の音に我に帰った。
「とりあえず圭は薬飲んで」
「……あ、あぁ」
圭はフラつきつつ拾い上げた紙袋からすぐさま薬を用量分取り出し口に入れた。
それを見ながら少し圭と距離を取る。
手が届く範囲にいるとより一層触れたい欲求が抑えられそうにない。
たかが数メートル。それでも精神面には大きく働く。
幸い、屋上はそこそこの広さがあるし貯水タンクなどの障害物もあるため姿を隠せる。
「理々子?」
「駄目、止まって。別に嫌いになったとかそんなんじゃないから。我慢できなくなるから」
「っ……わかった」
まるで引き寄せられるように近づく圭を止めれば悲しそうな顔をする。
圭はこうして予め理由を述べないとマイナスにばかり物事を捉える傾向にある気がする。
これはもう疑いようのないくらい言葉で落としにかかるしかないだろう。
行動でも示したいところだが、こうして直接会って近くにいては本能に邪魔されてしまう。
また全身を熱に侵される前に圭に伝えなければならない。
「私達まだ高校生で、まだ子供なんだ」
「……理々子?」
「今もだいぶ、かなり辛い……近くにいると圭を犯したくなるの、項に噛みつきたくなるの」
「っ!」
「私、圭と番になるって決めた。でもそれは今じゃない。せめて卒業してから……って思ってる」
包み隠さず今思っていることを打ち明けた。
私の言っていることはごく当然、普通のことだと思う。
今ここで圭と番ったとして、心は満たされるだろうが現実的な面において無責任としか言いようがない。
双方親の了解も得ないままなんて今後確実に障害になりうる。
いくら運命の番であっても出会ったばかりでお互いのこともそこまで知り合っていない。
「焦って仕損じたくない。私はバレた可能性が高いと思う。周囲の反応が変わってくると思う。でもまだ大丈夫な範囲だと思ってる……でも」
「これからは極力顔を合わせないって、言いたいのか」
「うん」
正規の手順で焦らず確実に圭と番えてこそ本当の幸せを掴める考えている。
そのためには会わないでいるのが一番良い。
「幸い圭の事情は一部しか知らないし、これからより気をつければバレることは防げるはず……私なんかよりよっぽど大変だとは思うけど」
「絶対だぞ」
「?」
圭は目に溜めていた涙を拭い、真っ直ぐ私と目を合わせる。
その顔は何か吹っ切れたように見えた。
「絶対に俺と番うって約束しろ」
「……何に誓おうか」
「そんなの………………俺しかないだろ」
既に赤い顔を背け恥ずかしそうにする圭は私にとってただただ愛しく可愛いものでしかなかった。
今すぐ抱きしめたいのを我慢し圭との距離を詰める。
「誓うよ、絶対。直接は会えないけどたくさん連絡取り合おう」
「……あぁ」
お互い手は握りしめたまま触れるだけのキスを交わした。
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