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町宮理々子とは三年間変わることなくクラスメイトという間柄。
ぶっちゃけ一年の時から気になっていた。ずっと話しかけたかった。
だが物静かな町宮と関わることなんて事務的な用事以外ない。
三組のムードメーカーなんて言われている俺が話しかけてくるのを町宮は煙たがるだろうと思ってできなかった。
それが三年に上がってチャンスが巡ってきた。
ただのクラスメイトから“隣の席の”クラスメイトになった。俺にとってかなりの昇進だ。
隣の席であれば多少の雑談くらい町宮も許してくれるはず。
どんな話題を振ろう、町宮はどんな話なら楽しんでくれるだろう。
決して表に出さないようにしていたが内心かなり浮足立っていた。
だというのに、
「ねぇ、町宮さんあれ……αだよね?」
「絶対そうだって!私αの人が発情してるとこ居合わせたことあるけど正にあの時の町宮さんみたいだったよ!ていうかそれより凄いかも」
「私は初めてだから比べようないけど確かに昨日の町宮さん凄かったよね……」
「同性には興味ないんだけど昨日の町宮さんはドキッとしちゃったな」
「いやいや当然だって。てかクラス全員圧倒されてたし。Ωと違って影響あるフェロモンは無いはずなのにね」
「だよね!まぁそれがα特有のオーラでしょ」
「あ~確かに。αの人ってうちら凡人とはオーラが全然違うもんね」
三組は今や昨日の町宮の話題でもちきりだ。
嫌でも聞こえてくる同じような内容。
町宮のオーラに圧倒された者にもれなく自身も含まれる。
俺もまた昨日の町宮に圧倒され、そして思い知らされた。
(無傷ですんで良かったじゃん……いや、無傷とは言えねぇか……)
想いを抱く前にこうなっていたら無傷でいられだろうに。
町宮がαとわかっていたらこんな感情抱かなかっただろう。
αということは即ち運命の番がいるかもしれないということ。
運命の番に会える確率はかなり低いため絶対いるとは言い切れない。
しかし数は少なくとも運命の者同士で結ばれたαとΩがいるのも事実。
そんな相手がいるかもしれない者との恋愛を楽しむ余裕が自分にあるはずもなく。
何よりあの町宮を見て悟らざるを得なかった。
(どんな確率だよ……同じ学校に番がいるとか都合良すぎだろ)
三年間ずっと見ていたからこそよくわかった。
あんなに表情豊かで感情を顕にした町宮を見たのは初めてだった。
苦悶が大半を締めていたがその中に隠しきれない色があった。
あれは誰かを想っている目だった。
(経験者は語るってか、くそっ)
伊沼明の何度目かの恋は伝えることなく終わりを迎えた。
「あ!町宮さん来たよ!」
「気のせ……いや、やっぱ町宮さん以前より何か存在感が増してるっていうか……」
「ほんと急にって感じだよね?何かあったのかな?すごい気になるんだけど!」
あちこちでこそこそ話が展開されている最中、件の町宮が姿を表し教室内がざわつき始める。
その反応を受けた町宮はやはりといった顔をし席に着くかと思ったら、まさかの教壇に登った。
町宮が声を掛けるまでもなく静まる教室。
三組全員の視線が町宮へと注がれていた。
「皆おはよう。後で何回も聞かれるのも面倒だから言うね。先日の身体検査で後天性αと診断を受けました。こうしてαになったわけだけど後一年だしクラスはこのまま。卒業まで今まで通りよろしくね。それからほとんどの人が“察してる”と思うけど…………三組に詮索してくるような野暮な人はいないよね?」
そう言って微笑を浮かべ小首を傾げてみせた町宮に何人もが生唾を飲み込んだ。
βだからこそ余計に際立つ町宮の威圧感。
(こんなん御せるわけねぇ)
こうして再び思い知らされた。βの町宮はもういない。
教壇に立つ彼女は紛れもなくαだった。
ぶっちゃけ一年の時から気になっていた。ずっと話しかけたかった。
だが物静かな町宮と関わることなんて事務的な用事以外ない。
三組のムードメーカーなんて言われている俺が話しかけてくるのを町宮は煙たがるだろうと思ってできなかった。
それが三年に上がってチャンスが巡ってきた。
ただのクラスメイトから“隣の席の”クラスメイトになった。俺にとってかなりの昇進だ。
隣の席であれば多少の雑談くらい町宮も許してくれるはず。
どんな話題を振ろう、町宮はどんな話なら楽しんでくれるだろう。
決して表に出さないようにしていたが内心かなり浮足立っていた。
だというのに、
「ねぇ、町宮さんあれ……αだよね?」
「絶対そうだって!私αの人が発情してるとこ居合わせたことあるけど正にあの時の町宮さんみたいだったよ!ていうかそれより凄いかも」
「私は初めてだから比べようないけど確かに昨日の町宮さん凄かったよね……」
「同性には興味ないんだけど昨日の町宮さんはドキッとしちゃったな」
「いやいや当然だって。てかクラス全員圧倒されてたし。Ωと違って影響あるフェロモンは無いはずなのにね」
「だよね!まぁそれがα特有のオーラでしょ」
「あ~確かに。αの人ってうちら凡人とはオーラが全然違うもんね」
三組は今や昨日の町宮の話題でもちきりだ。
嫌でも聞こえてくる同じような内容。
町宮のオーラに圧倒された者にもれなく自身も含まれる。
俺もまた昨日の町宮に圧倒され、そして思い知らされた。
(無傷ですんで良かったじゃん……いや、無傷とは言えねぇか……)
想いを抱く前にこうなっていたら無傷でいられだろうに。
町宮がαとわかっていたらこんな感情抱かなかっただろう。
αということは即ち運命の番がいるかもしれないということ。
運命の番に会える確率はかなり低いため絶対いるとは言い切れない。
しかし数は少なくとも運命の者同士で結ばれたαとΩがいるのも事実。
そんな相手がいるかもしれない者との恋愛を楽しむ余裕が自分にあるはずもなく。
何よりあの町宮を見て悟らざるを得なかった。
(どんな確率だよ……同じ学校に番がいるとか都合良すぎだろ)
三年間ずっと見ていたからこそよくわかった。
あんなに表情豊かで感情を顕にした町宮を見たのは初めてだった。
苦悶が大半を締めていたがその中に隠しきれない色があった。
あれは誰かを想っている目だった。
(経験者は語るってか、くそっ)
伊沼明の何度目かの恋は伝えることなく終わりを迎えた。
「あ!町宮さん来たよ!」
「気のせ……いや、やっぱ町宮さん以前より何か存在感が増してるっていうか……」
「ほんと急にって感じだよね?何かあったのかな?すごい気になるんだけど!」
あちこちでこそこそ話が展開されている最中、件の町宮が姿を表し教室内がざわつき始める。
その反応を受けた町宮はやはりといった顔をし席に着くかと思ったら、まさかの教壇に登った。
町宮が声を掛けるまでもなく静まる教室。
三組全員の視線が町宮へと注がれていた。
「皆おはよう。後で何回も聞かれるのも面倒だから言うね。先日の身体検査で後天性αと診断を受けました。こうしてαになったわけだけど後一年だしクラスはこのまま。卒業まで今まで通りよろしくね。それからほとんどの人が“察してる”と思うけど…………三組に詮索してくるような野暮な人はいないよね?」
そう言って微笑を浮かべ小首を傾げてみせた町宮に何人もが生唾を飲み込んだ。
βだからこそ余計に際立つ町宮の威圧感。
(こんなん御せるわけねぇ)
こうして再び思い知らされた。βの町宮はもういない。
教壇に立つ彼女は紛れもなくαだった。
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