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「最悪……」
「な、何がですかなっ!」
結局何一つ解決しないまま東達と別れ帰路についている途中、制服の上着ポケットに入れているはずの携帯がないことに気付いた。
険しい顔をしていたらしく志帆をビクつかせてしまった。
それも思い至った忘れ場所のせいだ。
「図書準備室に携帯落としてきたかも」
「あー……もしかしなくても私が叩いちゃった時に?取り行こうか?」
「いや、戻るのも面倒だし明日回収する」
「そっか。何かゴメンね……」
「志帆が謝る必要ないし、私は止めてくれて感謝しかないんだから。この話はもう終わり」
「了解っす」
言葉通り志帆には助けられてばかりでむしろ謝りたいのはこちらのほうだ。
気にするなと意を込めて肩を少し強めに叩けば、志帆は痛いと文句を言いつつ嬉しそうに笑った。
やっと体のほうも調子が戻ってきつつあったが、後ろから聞き慣れない声に呼び止められた。
「町宮さん」
「はい?…………え」
「その反応だと俺のこと知ってる?」
「……存在は」
「ははっ、存在はとか初めて言われた。俺、朝桐 純也、よろしく」
「……私は、」
「町宮 理々子、さん、でしょ」
「……です」
突然の事態、完全に相手のペースに飲まれる。
正直あまりよろしくしたくない相手だった。
彼、朝桐はαの一人で当然ながら有名人。
名前はうろ覚えであったため間違えては失礼かと思い先のような回答になってしまった。
名前を知らないのも十分失礼だとは思うが。志帆は完全に自ら進んで空気と化していた。
朝桐はそれを気にした様子もなく私に片手を差し出す。
つられて視線をそこへ向ければ、落としてきたはずの私の携帯だった。
(何でこの人が持ってんの?)
取りに行く手間は省けたが、嬉しさなど微塵もなく妙な胸騒ぎがした。
「これ、」
「東が持ってた。明らかに東の携帯じゃなさそうだったから気になってさ。東調子悪そうだったし俺が代わりに届けに来たってわけ」
「そうなん、ですか」
「うん。どうぞ?」
「……どうも」
特に何てことはないやり取り。
そのはずなのだが、朝桐の行動一つ一つに何か裏があるように思えてならない。
一拍遅れて携帯を受け取り、形だけの礼を言う。
どうして朝桐がわざわざ東からこの携帯を取り上げ私の元に来たのだとか、東の弱々しいあの姿を見てしまったのかとか、私達の“事情”を知ってしまったのだろうかとか、気になることがあり過ぎた。
だが、それらを朝桐本人聞くのは良くないと漠然とそう思った。
だから頭を下げてすぐに志帆の腕を引き踵を返した。
「βごときが東に近寄るな」
その呟きはとても小さかったはずなのに、私の耳は聞き逃してくれなかった。
顔が見えずとも、朝桐の表情を察するにはその声音だけで十分だった。
「な、何がですかなっ!」
結局何一つ解決しないまま東達と別れ帰路についている途中、制服の上着ポケットに入れているはずの携帯がないことに気付いた。
険しい顔をしていたらしく志帆をビクつかせてしまった。
それも思い至った忘れ場所のせいだ。
「図書準備室に携帯落としてきたかも」
「あー……もしかしなくても私が叩いちゃった時に?取り行こうか?」
「いや、戻るのも面倒だし明日回収する」
「そっか。何かゴメンね……」
「志帆が謝る必要ないし、私は止めてくれて感謝しかないんだから。この話はもう終わり」
「了解っす」
言葉通り志帆には助けられてばかりでむしろ謝りたいのはこちらのほうだ。
気にするなと意を込めて肩を少し強めに叩けば、志帆は痛いと文句を言いつつ嬉しそうに笑った。
やっと体のほうも調子が戻ってきつつあったが、後ろから聞き慣れない声に呼び止められた。
「町宮さん」
「はい?…………え」
「その反応だと俺のこと知ってる?」
「……存在は」
「ははっ、存在はとか初めて言われた。俺、朝桐 純也、よろしく」
「……私は、」
「町宮 理々子、さん、でしょ」
「……です」
突然の事態、完全に相手のペースに飲まれる。
正直あまりよろしくしたくない相手だった。
彼、朝桐はαの一人で当然ながら有名人。
名前はうろ覚えであったため間違えては失礼かと思い先のような回答になってしまった。
名前を知らないのも十分失礼だとは思うが。志帆は完全に自ら進んで空気と化していた。
朝桐はそれを気にした様子もなく私に片手を差し出す。
つられて視線をそこへ向ければ、落としてきたはずの私の携帯だった。
(何でこの人が持ってんの?)
取りに行く手間は省けたが、嬉しさなど微塵もなく妙な胸騒ぎがした。
「これ、」
「東が持ってた。明らかに東の携帯じゃなさそうだったから気になってさ。東調子悪そうだったし俺が代わりに届けに来たってわけ」
「そうなん、ですか」
「うん。どうぞ?」
「……どうも」
特に何てことはないやり取り。
そのはずなのだが、朝桐の行動一つ一つに何か裏があるように思えてならない。
一拍遅れて携帯を受け取り、形だけの礼を言う。
どうして朝桐がわざわざ東からこの携帯を取り上げ私の元に来たのだとか、東の弱々しいあの姿を見てしまったのかとか、私達の“事情”を知ってしまったのだろうかとか、気になることがあり過ぎた。
だが、それらを朝桐本人聞くのは良くないと漠然とそう思った。
だから頭を下げてすぐに志帆の腕を引き踵を返した。
「βごときが東に近寄るな」
その呟きはとても小さかったはずなのに、私の耳は聞き逃してくれなかった。
顔が見えずとも、朝桐の表情を察するにはその声音だけで十分だった。
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