24 / 48
24
しおりを挟む
(βごときが、かぁ……)
つい最近までαと接触したことなど一度もなかった。
東はΩであったし、事実上ファーストコンタクトとなるαは水城だ。
αも同じ人間であるからには十人十色とわかっているつもりだったが、今日朝桐の本音を聞いてしまってから自分の考えは甘かったのだと知らされた。
世間一般の常識として初めに刷り込まれる第二性別の関係、αはΩを嫌いβも同等とは見做さないというもの。
水城に慣れつつあったせいでそのことを念頭から外してしまっていた。
朝桐のあの一言で一気に現実に引き戻されたようだった。
志帆も同じであったらしく、あの後はほぼ会話もないまま帰宅した。
(もう会わないほうがいいな)
帰宅してから制服のままベッドに寝そべり考え、導き出された結論がそれだった。
東は当然として、水城とも接触は避けるべきだ。
自分でも薄情とは思うが、念入りな下準備をしてまで直接会って交流したいという気は私にはない。
そうなれば東と話をつける手段は電話かメールくらいだ。電話は即却下した。
文章のほうがお互い落ち着いて考えられるはずだ。
手紙も考えないでもなかったが、セキュリティ面でメールのほうが断然安心できる。
幸いにも水城とアドレスを交換していたし、東の連絡先を入手するのに困ることはなかった。
水城にその旨をメールで伝えれば、頑張れ!という応援と共に東のメールアドレスと電話番号まで添付されたメールが返ってきた。
登録もせず、早速文章を打ち込んでいく。
この話は早い内に決着をつけなければならないとそう思っている。
長引くほど後戻りできなくなりそうな、そんな不安が常に付き纏っていた。
私は早く東との縁を切ってしまいたかった。
(これで、いい加減伝わる……よね)
今まで言ってきた通り、番う気はないことに加え接触も避けたほうがいい旨を自分なりに丁寧に文章に書き起こした。
これまでことごとく私の話を聞き入れようとしない東への信頼などないに等しい。
しかし今回は対面していないし、文章としてであれば少しは私の考えを理解してもらえるだろう。そのはず。
そんな望みを託しメールを送信した。
結構な長文であったから返信が来るまで勉強でもしていようとベッドから立ち上がったところで、常にサイレントモードの携帯がバイブで震えた。
そんなはずはないと思いつつ嫌な確信を持って画面を見ると、先程送信したアドレスからの返信だった。
暫くアドレスを眺めてから恐る恐るメールを開く。
“嫌だ”、その一言だけだった。
「……何それ」
長文で返せとは言わない。けどその一言で片付けられたことに腹が立った。
気付いたら先程水城から送られてきたメールを開き、東の電話番号を選択し発信ボタンを押していた。
数コール後に聞こえた声が東であると確信したところで、何の前置きもなく本題に入った。
「東圭、いい加減にして」
「……り、……町宮?」
「そんなに私と番いたいの」
「…………」
「私と番ってどうするの」
「どうするって……」
「その先を考えたことがあるのかって聞いてる」
「……そんなん、考えたとこでわかるもんじゃ、」
「そういういい加減な奴、とても嫌い」
「っ……」
「そうやって深く考えもしないから簡単に番いたいだなんて言えるんだろうね」
「俺と町宮が、一緒になるのに……問題があるのか」
「問題だらけでしょ。まず価値観が違う。あと家柄。それと君が周りにαだと思われてることが大問題。私と一緒になれば自然と周りにバレるんだよ?」
「…………」
東の態度は相変わらずだが、やっと言いたいことを言い切った気がする。
何より匂いに惑わされる心配がないのが一番大きい。
今度こそ自分の望む終着点へ向けて根気よく話し合おうと決めた矢先だった。
「好きなだけじゃ、駄目なのか」
「は?」
「理々子が、好きだから……俺はずっとそばに……」
東はどんな顔でそう告げたのか、見えないはずなのに手に取るようにわかる。
東の言葉を脳が理解したと同時に全身に鳥肌が立つ。
そして私の中に何かが芽生えてしまったのを、確かに感じた。
つい最近までαと接触したことなど一度もなかった。
東はΩであったし、事実上ファーストコンタクトとなるαは水城だ。
αも同じ人間であるからには十人十色とわかっているつもりだったが、今日朝桐の本音を聞いてしまってから自分の考えは甘かったのだと知らされた。
世間一般の常識として初めに刷り込まれる第二性別の関係、αはΩを嫌いβも同等とは見做さないというもの。
水城に慣れつつあったせいでそのことを念頭から外してしまっていた。
朝桐のあの一言で一気に現実に引き戻されたようだった。
志帆も同じであったらしく、あの後はほぼ会話もないまま帰宅した。
(もう会わないほうがいいな)
帰宅してから制服のままベッドに寝そべり考え、導き出された結論がそれだった。
東は当然として、水城とも接触は避けるべきだ。
自分でも薄情とは思うが、念入りな下準備をしてまで直接会って交流したいという気は私にはない。
そうなれば東と話をつける手段は電話かメールくらいだ。電話は即却下した。
文章のほうがお互い落ち着いて考えられるはずだ。
手紙も考えないでもなかったが、セキュリティ面でメールのほうが断然安心できる。
幸いにも水城とアドレスを交換していたし、東の連絡先を入手するのに困ることはなかった。
水城にその旨をメールで伝えれば、頑張れ!という応援と共に東のメールアドレスと電話番号まで添付されたメールが返ってきた。
登録もせず、早速文章を打ち込んでいく。
この話は早い内に決着をつけなければならないとそう思っている。
長引くほど後戻りできなくなりそうな、そんな不安が常に付き纏っていた。
私は早く東との縁を切ってしまいたかった。
(これで、いい加減伝わる……よね)
今まで言ってきた通り、番う気はないことに加え接触も避けたほうがいい旨を自分なりに丁寧に文章に書き起こした。
これまでことごとく私の話を聞き入れようとしない東への信頼などないに等しい。
しかし今回は対面していないし、文章としてであれば少しは私の考えを理解してもらえるだろう。そのはず。
そんな望みを託しメールを送信した。
結構な長文であったから返信が来るまで勉強でもしていようとベッドから立ち上がったところで、常にサイレントモードの携帯がバイブで震えた。
そんなはずはないと思いつつ嫌な確信を持って画面を見ると、先程送信したアドレスからの返信だった。
暫くアドレスを眺めてから恐る恐るメールを開く。
“嫌だ”、その一言だけだった。
「……何それ」
長文で返せとは言わない。けどその一言で片付けられたことに腹が立った。
気付いたら先程水城から送られてきたメールを開き、東の電話番号を選択し発信ボタンを押していた。
数コール後に聞こえた声が東であると確信したところで、何の前置きもなく本題に入った。
「東圭、いい加減にして」
「……り、……町宮?」
「そんなに私と番いたいの」
「…………」
「私と番ってどうするの」
「どうするって……」
「その先を考えたことがあるのかって聞いてる」
「……そんなん、考えたとこでわかるもんじゃ、」
「そういういい加減な奴、とても嫌い」
「っ……」
「そうやって深く考えもしないから簡単に番いたいだなんて言えるんだろうね」
「俺と町宮が、一緒になるのに……問題があるのか」
「問題だらけでしょ。まず価値観が違う。あと家柄。それと君が周りにαだと思われてることが大問題。私と一緒になれば自然と周りにバレるんだよ?」
「…………」
東の態度は相変わらずだが、やっと言いたいことを言い切った気がする。
何より匂いに惑わされる心配がないのが一番大きい。
今度こそ自分の望む終着点へ向けて根気よく話し合おうと決めた矢先だった。
「好きなだけじゃ、駄目なのか」
「は?」
「理々子が、好きだから……俺はずっとそばに……」
東はどんな顔でそう告げたのか、見えないはずなのに手に取るようにわかる。
東の言葉を脳が理解したと同時に全身に鳥肌が立つ。
そして私の中に何かが芽生えてしまったのを、確かに感じた。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる