イマジネーション

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 あの時は内容が強烈過ぎたために冷静な判断ができていなかった。
自分だけが聞こえるからといって、必ずしもあの妄想が自分に向けられたものだとは限らない。
このクラスは全員でちょうど四十人。
自分は男子生徒Dとかモブ容姿もいいとこ、クラス内に似たような生徒だって数人いる。
それにこのクラスではなく、別クラスまたは別学年の可能性だってなくはない。
家に帰ってクソ暑いのにベッドに潜り込んでやっと落ち着きその考えに至った。

(慣れたと思ったけどまだまだだな)

 今一度この不可思議な能力とは初心に帰って向き合うべきだと反省した。
そうしていればあんなに慌てることもないだろう。
自分が妄想相手でない可能性が高まり安心はしたが、それでも不安は消えない。
というより妄想相手が気になってしょうがない。

(あんな妄想されてるなんて知ったら……いや、自分は関係ないんだ、聞きたくて聞いたわけじゃない)

 元よりこの年頃の男共の妄想なんてそういうことばかり。
進んで覗いてみようなんて思わない。
しかも相手は同性の可能性大。知らない扉は閉じたままでいい。
以前、小学校で尊敬していた先生♂の心を出来心で覗いてみた時にすっかりトラウマとなってしまった。
トラウマ妄想を思い出しそうになり慌てて別のことに考えを移す。

(勝手に聞こえてしまうのはどうしようもないな……表情に出さず無心に流すしかないよな)

 耳栓は今までに何度か試したが、頭の中にダイレクトに聞こえてくるし普通の会話がままならなくなってしまうというデメリットだけしかない。
ただでさえ厄介な能力なのにトンデモナイ問題までも追加されてしまった。
覗きもしないのに聞こえてくるなんて迷惑でしかない。
愚痴は尽きないがどうしようもない。

(慣れるしかないってわかっても嫌だな。あのぶっ飛んだ妄想)

 まさに卑猥としか言い様のないあの妄想に慣れる時が来るだろうか。
今までにそうして不安に思うことは多々あったが結局は慣れつつあった。
今回もきっと大丈夫だろう。
翌日まで、そう楽観的に捉えていたことが悔やまれる。

「なぁ、町谷まちたにって図書委員だったよな?借りたい本どこにあるかわかんなくてさ、一緒に探してくんね?『近くで見るとやっぱり肌白いな……精液のが色濃いんじゃねぇのこれ。てかこいつの最中の顔とかスゲー気になる。あ、勃ちそう』」
「…………」
「町谷?」

 誰か助けて。
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