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15話
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翌日。
私はいつも通り、ギルドの受付に立っていた。
けれど今日は――レンの姿が見えなかった。
なんだかんだ、ここ最近は毎日顔を合わせていた。
だから急にいなくなると、胸の奥にぽっかりと穴が空いたような気がする。
視線が無意識に彼の姿を探している自分に、少し驚いた。
「今日は彼氏来ないねぇ」
マリアが椅子に腰かけながら、にやにやと笑う。
「そんなんじゃないわ、本当に」
「とか言って、もうキスくらいしてるんじゃないの?」
「そ、それは……」
否定しようとして、言葉が喉につかえた。
あの夜の、唇のぬくもりがよみがえる。
思い出した瞬間、胸がどきっとする。
「やっぱりしたんだ~! きゃ~! おめでとう!」
マリアが子どものようにはしゃいで、私の背中をバシバシ叩く。
「いたっ、痛いってば!」
「おーい、そこの受付二人、どっちか資料室までこれ運んでくれ」
補佐官のヴェルナーが重そうな箱を抱えて現れた。
「あ、はい! 私が!」
私は即答した。マリアの追撃から逃げられる口実ができて、ほっとする。
「重いけど、気をつけて」
「ありがとうございます、持ちます!」
ヴェルナーと並んで資料室へ向かう。
箱の中には分厚い本がぎっしり。背表紙には“魔法石”“毒物・薬草学大全”“呪術体系”の文字。
新しい採集クエストの準備だろうか、とぼんやり思う。
資料室に着くと、ヴェルナーは時計を見て眉を上げた。
「うわ、もうこんな時間か。悪いが、これジャンル別に棚に戻しておいてくれ。会議が始まっちまう」
「大丈夫です。行ってきてください」
私が微笑むと、ヴェルナーは軽く頷いて、足早に部屋を出ていった。
静かな資料室に、紙をめくる音だけが響く。
「えーっと……魔法石関係はこっちの棚で……薬草学はあっち、呪術はこの列……」
背表紙のラベルを確認しながら、本を戻していく。
その途中で、机の上に一枚の新聞が置きっぱなしになっているのに気づいた。
「もう……誰か出しっぱなしにしてる。新聞は――」
文句を言いかけて、私は手を止めた。
新聞の隅に載った、小さな記事が目に飛び込む。
――“フェリエ男爵夫妻、殺害される”“娘のリーナも重体”
(……これ、転生前の“リーナ”の……?)
息が止まった。
震える手で活字を追う。
“フェリエ男爵夫妻が、はらわたを裂かれた状態で発見された。
現場には何らかの儀式の痕があり、魔導警察は呪術的犯罪の可能性を調査中。
娘のリーナも重体で、意識は戻っていない。”
(……そんな……)
胸が冷えていく。
人づてに、リーナの両親は事故で亡くなったと聞かされていた。
でも――これは惨殺だ。前世では考えられないひどい事件。
ぞっとするような現実。
新聞をそっと閉じようとしたとき、
ページの間から紙切れがひらりと落ちた。
「……何これ」
小さく折りたたまれたメモ。
そこには、乱暴な筆跡でいくつかの言葉が書かれていた。
――“違法魔導実験”
――“魔法石の暴走をゾルフは知ってた?”
――“犯人はギルドの中に?”
――“受付のリーナは同一人物”
心臓が、跳ねた。
(なに……? どういうこと……?)
誰がこんなものを――
どうして、私の名前が?
冷たい汗が背筋をつたう。
私はメモを折りたたみ、そっとポケットにしまった。
私はいつも通り、ギルドの受付に立っていた。
けれど今日は――レンの姿が見えなかった。
なんだかんだ、ここ最近は毎日顔を合わせていた。
だから急にいなくなると、胸の奥にぽっかりと穴が空いたような気がする。
視線が無意識に彼の姿を探している自分に、少し驚いた。
「今日は彼氏来ないねぇ」
マリアが椅子に腰かけながら、にやにやと笑う。
「そんなんじゃないわ、本当に」
「とか言って、もうキスくらいしてるんじゃないの?」
「そ、それは……」
否定しようとして、言葉が喉につかえた。
あの夜の、唇のぬくもりがよみがえる。
思い出した瞬間、胸がどきっとする。
「やっぱりしたんだ~! きゃ~! おめでとう!」
マリアが子どものようにはしゃいで、私の背中をバシバシ叩く。
「いたっ、痛いってば!」
「おーい、そこの受付二人、どっちか資料室までこれ運んでくれ」
補佐官のヴェルナーが重そうな箱を抱えて現れた。
「あ、はい! 私が!」
私は即答した。マリアの追撃から逃げられる口実ができて、ほっとする。
「重いけど、気をつけて」
「ありがとうございます、持ちます!」
ヴェルナーと並んで資料室へ向かう。
箱の中には分厚い本がぎっしり。背表紙には“魔法石”“毒物・薬草学大全”“呪術体系”の文字。
新しい採集クエストの準備だろうか、とぼんやり思う。
資料室に着くと、ヴェルナーは時計を見て眉を上げた。
「うわ、もうこんな時間か。悪いが、これジャンル別に棚に戻しておいてくれ。会議が始まっちまう」
「大丈夫です。行ってきてください」
私が微笑むと、ヴェルナーは軽く頷いて、足早に部屋を出ていった。
静かな資料室に、紙をめくる音だけが響く。
「えーっと……魔法石関係はこっちの棚で……薬草学はあっち、呪術はこの列……」
背表紙のラベルを確認しながら、本を戻していく。
その途中で、机の上に一枚の新聞が置きっぱなしになっているのに気づいた。
「もう……誰か出しっぱなしにしてる。新聞は――」
文句を言いかけて、私は手を止めた。
新聞の隅に載った、小さな記事が目に飛び込む。
――“フェリエ男爵夫妻、殺害される”“娘のリーナも重体”
(……これ、転生前の“リーナ”の……?)
息が止まった。
震える手で活字を追う。
“フェリエ男爵夫妻が、はらわたを裂かれた状態で発見された。
現場には何らかの儀式の痕があり、魔導警察は呪術的犯罪の可能性を調査中。
娘のリーナも重体で、意識は戻っていない。”
(……そんな……)
胸が冷えていく。
人づてに、リーナの両親は事故で亡くなったと聞かされていた。
でも――これは惨殺だ。前世では考えられないひどい事件。
ぞっとするような現実。
新聞をそっと閉じようとしたとき、
ページの間から紙切れがひらりと落ちた。
「……何これ」
小さく折りたたまれたメモ。
そこには、乱暴な筆跡でいくつかの言葉が書かれていた。
――“違法魔導実験”
――“魔法石の暴走をゾルフは知ってた?”
――“犯人はギルドの中に?”
――“受付のリーナは同一人物”
心臓が、跳ねた。
(なに……? どういうこと……?)
誰がこんなものを――
どうして、私の名前が?
冷たい汗が背筋をつたう。
私はメモを折りたたみ、そっとポケットにしまった。
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