転生受付嬢はもう恋なんてしない――なのに最強剣士からの溺愛が止まりません!

人妻あず。

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31話

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私たちはそのまま動けないでいた。

やがてレンは私の中からそっと自分自身を引き抜くと、布で丁寧に私の秘密の場所を拭いた。
アソコがじんじんして、お腹の中にまだ熱が残っている感じがする。


 レンの左腕が、そっと私の頭の下に差し込まれた。
 そのまま肩を抱き寄せられると、
 胸の奥に残る鼓動が、ゆっくりと落ち着いていくのがわかった。

 しばらく、互いの呼吸だけが聞こえていた。
 外では夜の風が窓を叩き、遠くで鳥の鳴き声がした。

「……明日も、ギルド行くのか?」

 低く掠れた声。

「うん。そのつもり」

 返事を聞いたレンが、ほんの少しだけ腕に力を込める。

「約束してくれ。無理は……しないって」

 その声には、叱るでも責めるでもない、
 どうしようもなく優しい寂しさが混じっていた。

「……うん、わかった」

 私はそっと顔を彼の胸に寄せる。
 硬い筋肉の奥から、規則正しい鼓動が伝わってくる。
 それがまるで、遠い海の音みたいに心地よくて、私は目を閉じた。

 カーテンの隙間から、淡い朝の光が差し込んでいた。
 鳥のさえずりが、遠くでかすかに聞こえる。

 私はゆっくりと目を開けた。
 最初に見えたのは、すぐそばで眠るレンの顔だった。

 彼の腕の中に自分がいる――それに気づいて、
 頬が少し熱くなる。
 けれど、どこか胸の奥が締めつけられた。

 彼のまつげの下に、乾いた涙の跡があった。

「……レン……?」

 小さく呼んでみても、返事はない。
 ただ、穏やかに寝息を立てている。
 けれど、その眉のあたりには、まだどこか苦しげな影が残っていた。

 そっと手を伸ばし、彼の頬を撫でた。
 硬い指先の感触。
 その温もりが、自分を包み込む夜のぬくもりを思い出させる。

(……何か、怖い夢でも見たのかな)

 彼の指が無意識に自分の手を握り返す。
 その強さが、切ないほどに優しかった。

 リーナは小さく息を吐き、彼の胸に顔をうずめた。

「……大丈夫。私、ここにいるよ」

 囁いた声は、朝の光に溶けていった。
 外では、人々の足音が少しずつ動き出している。
 新しい一日が始まる――けれど、
 この小さな静寂だけは、壊したくなかった。

 レンが寝言のように、かすかに呟く。

「……リーナ……行かないでくれ……」

 (もう……子供みたいなんだから)
 私は眠るレンの額にそっとキスをした。
 
 淡い光が窓越しに差し込むころ、私はギルドに出勤していた。

 夜の出来事の余韻はまだ胸の奥に残っていたけれど――
 今日は、はっきりとした“目的”があった。

(ソーマと約束した通り。ロイズ君の死――あの事件の不審な点を、私の手で確かめよう)

 ギルドの資料室には、冒険者たちの依頼記録や報酬明細、
 クエスト結果の報告書が日付順に整理されている。
 ロイズ君が最後に受けた依頼、その同行者、報酬の受け取り……
 何か、見落とされた手がかりがあるかもしれない。

(もし――誰かが彼を“殺した”のだとしたら……)

 喉の奥が少し乾く。
 

 私は報酬記録の束を抱えて立ち上がった。

「ちょっと資料室に、これ保管してくるね」

 カウンターの向こうから、マリアがこちらをちらりと見る。
 カップを片手に、にやりと笑った。

「はーい、今日も熱心ねぇ、リーナ~。働きすぎ注意よ?」
 

「うん、大丈夫」

 そう言って笑い返す。
 そのまま、私は資料室の奥へと向かった。

 冷たい空気の中で紙の匂いが漂う。
 扉を閉めると、外のざわめきがすっと消えた。
 私は机に資料を広げ、指先でページをめくり始めた。
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