転生受付嬢はもう恋なんてしない――なのに最強剣士からの溺愛が止まりません!

人妻あず。

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32話

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 ページをめくっていくうちに、私はふと手を止めた。

 ロイズ君が三か月前に受けた依頼――
 それは、“旧フェリエ家地下室の調査任務”。

 ……フェリエ家。

 ”リーナ”の実家。
 あの新聞記事が脳裏をよぎる。
 ”リーナ”の両親が惨殺された、あの家。

 なんでこんなクエストが、よりによって――。

 同行者として記されていたのは、たった一人。
 ……ゾルフ・サイモン。

「……ゾルフ?」

 思わず声が漏れる。
 そうだ、彼もモンスターにやられて死んだんだ。
 死んだ二人が、同じ任務に――しかも、惨殺事件のあったフェリエ家に。

(まさか……)

 私は報告書をめくり、二人の任務記録を照らし合わせた。

 どちらも“任務中の事故”。
 原因は“モンスターとの戦闘”。
 文面は驚くほど似通っていて、署名までも同じ筆跡。
 まるで――同じ“雛形”を流用したような報告書。

「……これは、偶然?」

 指先が震えた。
 冷たい汗が紙の端に落ちる。

 報告書の下部には、検死を担当したギルド医の名――
 それは、フェリエ家の惨殺事件の検死報告にも載っていた人物だった。

 胸の奥がどくん、と跳ねる。
 息がうまく吸えない。

(フェリエ家、ゾルフとロイズの死、妙な薬、同じ検死医……)

 バラバラだった点が、一本の線になっていく。
 誰かが、何かを――意図的に、隠している。

 息を整えようとしても、胸が詰まったように動かなかった。

「リーナ?」

 資料室の扉が軋み、ソーマが顔をのぞかせた。
 いつもの軽い声が、わずかに心配を帯びている。

「あれ、どうしたの? 顔、真っ青だよ」

「……ううん、ちょっと古い記録を見てただけ」

 私は無理やり笑って報告書を閉じた。

「ソーマは、何しに?」

「ロイズの手掛かり、何かないかと思ってな。リーナは?」

「私もそう。資料を整理してたら……これを見つけたの」

 報告書を差し出すと、ソーマが眉を寄せた。

「ああ、ゾルフと一緒に行ったやつか。……思い出した」
 彼は腕を組み、目を細める。

「ゾルフはこのクエストのあと、急に大人しくなって付き合い悪くなった。
 で、ゾルフが死んでからはロイズが同じようになって、今度は資料室にこもるようになったんだ。
 だから気になって来てみたら……」

 ソーマの視線が報告書に落ちた。
 そして小さく唸る。

「このフェリエ家って、前に惨殺事件があった家だよな。……リーナ、何か知ってるか?」

「……私の実家。多分、だけど」

「多分?」

「ギルドに来るより前の記憶がないの。高熱で、全部忘れちゃったみたい」

「さらっと言うなよ、そういうこと……」
 ソーマが頭をかきむしる。

「俺の仮説なんだが」
 声が一段低くなった。

「ゾルフとロイズは、このフェリエ家で“何か”を見た。
 ――それで、誰かに殺された」

 息をのむ私。

「そんな……」

「あくまで仮説だ。でも、もし当たってたら相当やばい」

「どうして?」

「レイが、ゾルフの死体から“手帳”を回収してる。ギルド長も知らない」

「えっ……」

「中身は俺にも教えてくれない。けど、レンも独自に何か調べてる」

「じゃあ……」

「ああ」
 ソーマの声が低く響いた。

「次に狙われるのは――レンだ」
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