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それから何日か、ギルドはずっとバタバタ続きだった。
書類は山、依頼は渋滞、マリアは「新人戦士かわいいぃぃ」と妙なテンションで暴走気味、ソーマは毎日私の生存確認にやって来てはギルド長に怒られていた。
そんなある日のこと。
「リーナ!」
廊下を歩いていた私の名前を、聞き慣れた声が勢いよく呼んだ。
振り返ると――レン、アレク、そしてカイルの3人が入口の方に立っていた。
「レン! アレクさん! カイル!」
レンはもう、理性とか社会性とか全部忘れたみたいにダッシュしてきて、
「リーナぁぁぁぁ……!」
そのまま勢いよく抱きしめ、私の髪に顔をうずめた。
ぎゅううう。
「会いたかった……限界だった……リーナの枕抱いて寝たけど全然ダメだった……」
(それで枕無くなってたんだ……)
「いや待て、俺もいるんだが?」
アレクが咳払いしつつ、気まずそうに視線を逸らした。
「レン隊長、ここ数日ずっと寝言で“リーナ……柔らかい……”って言ってましたから、会えてよかったですよ」
カイルが涙ぐみながら言う。
「お前は余計なことを言うなッ!!」
アレクがカイルの頭を小突き、
「いや事実ですし」
とカイルは淡々と返す。
しかしレンはというと、私の髪に顔を埋めたまま動かない。
「もう……何日も触れてない……耐えられない……」
「レン、ちょ、ちょっと!? 人目あるから離れて!」
私は必死で腕をこじ開けようともがいたけれど、
「やだ」
「やだ、じゃない!」
「一週間会えなかったんだぞ……俺は死ぬかと思ったんだからな……」
「お前が離れろぉぉぉ!」
アレクがレンの背中を引っ張るが、びくともしない。
「隊長、抱きしめスキルがMAXです」
「レアスキルじゃねぇんだよ!」
アレクのツッコミが響く。
「レン、お願い、いったん呼吸して?」
「する。リーナの匂いで」
「やめてぇぇ!」
廊下を通るギルドの人たちはみんな遠巻きに苦笑いしていた。
「――で、何してるのあんたたち」
その場の空気が凍りつく。
ギルド長が腕を組み、ゆっっっくりとこちらを見下ろしていた。
「げ、ギルド長……!」
「リーナ、勤務中でしょ?」
「す、すみません……!」
私が慌ててレンから離れようとすると、レンは逆に腕に力を込めた。
「いやだ。あと五秒だけ……」
「カウントダウン始めるわよ。
5、4――」
「はい離れます!」
レンが即座に離れた。ギルド長、圧が強い。
「まったく……うちのギルドはいつから幼稚園になったのかしら」
と呆れつつも、どこか笑っている。
「おい、リーナにベタベタすんな!」
そこへソーマが走り込んできた。
「ソーマまで!?」
「当たり前だろ、レン達が帰ってきたって聞いて……暴走してねぇだろうなと思って!」
「暴走? 俺はただ必要な補給を――」
「“補給”って言うな!!」
アレクのツッコミが鋭く入る。
カイルはというと、なぜか私のほうを見て爽やかに微笑んだ。
「リーナさん、具合はもう大丈夫ですか?
隊長、リーナさんが心配で壁パンしてましたよ」
「カイルてめぇ余計なこと言うなって言っただろ!!」
アレクがカイルを小突く。
「ひっ……壁は無事だったぞ……」
と小声で言うレン。
「そういう問題じゃねぇ!!」
ギルドの人たちは、また遠巻きに生ぬるい目で見ている。
「とにかく、再会のハグはもう十分でしょ。
はい、全員仕事戻って!」
「「「はーーい」」」
ギルド長の声で三人はしぶしぶ散っていった……かと思いきや。
レンはこっそり戻ってきて、私の手をそっと握った。
「……仕事終わったら話したい。ちゃんと、ゆっくり」
小声で囁かれ、胸が少し熱くなる。
「う、うん……」
「ギルド長、怖ぇ……」
ソーマが小声で震え、
「だが正しい」
アレクがうなずき、
「俺は隊長の恋路を応援してます」
カイルだけ爽やかに笑っていた。
「……で、仕事戻れって言われたけどよ」
アレクが腕を組んで私たちを横目で見る。
「レン、お前まだ帰る気ゼロだろ?」
「当たり前だ。リーナ不足で死ぬかと思った」
「いや死なねぇよ!? どんだけ依存してんだよ!」
アレクが頭を抱える横で、カイルがほわっと微笑む。
「隊長、クエスト中ずっと言ってましたよ。
“リーナに触れたい……いや見たい……せめて匂いを……”って」
「カイル!!!」
レンが赤面し、アレクの拳がカイルの後頭部に落ちた。
「お前は余計なことを全部言うな!
言っていいことと悪いことが――」
「悪いこと今全部聞いた気がするんだけど……」
私は顔を真っ赤にして俯いた。
するとレンがそっと近づき、小声で言う。
「……本当のことだ。全部」
視界がまた熱くなる。
アレクがその様子を見てため息をついた。
「おい隊長、せめて落ち着いてからにしろよ。
リーナさん照れてんだぞ」
「落ち着いてる。俺はいつでも冷静だ」
「絶対嘘だろ!!」
アレクの叫びにカイルが爽やかに補足を入れる。
「レン隊長、昨日なんて洞窟で“この岩肌はリーナの髪色に似ている……”って詩人みたいなこと言ってましたよ」
「カイルお前マジで後で覚悟しろ」
レンが低い声で呟くが、カイルは全然気にしていない。
「でもリーナさん、安心してください」
とカイル。
「レン隊長、クエスト中ずっとリーナさんのことを守るために最善の判断してました。
……たまにうざったいだけで」
「フォローになってねぇ!!!」
アレクが怒鳴る。
私は思わず笑ってしまった。
「ふふ……みんな、ありがとう」
その笑顔を見た瞬間、レンの手がそっと私の髪に触れた。
「……リーナ。
今日の夜、ちゃんと二人で話したい。
無理させたくないけど……会いたい」
胸がくすぐったくなる。
「うん。私も話したい」
するとアレクが、ため息交じりに言った。
「よーしカイル、撤収するぞ。
これ以上いたら甘さで俺の糖度がぶっ壊れる」
「僕は甘いの好きなんだけどなぁ」
「そういう問題じゃねぇ!!」
バタバタと二人が去っていき、廊下には私とレンだけが残った。
「……リーナ」
レンが少し照れたように、指先だけ私の手に触れる。
「戻ってきてくれて、ありがとう」
「ちょっとこっちに来て」
手を引かれてきたのは……資料室だった。
書類は山、依頼は渋滞、マリアは「新人戦士かわいいぃぃ」と妙なテンションで暴走気味、ソーマは毎日私の生存確認にやって来てはギルド長に怒られていた。
そんなある日のこと。
「リーナ!」
廊下を歩いていた私の名前を、聞き慣れた声が勢いよく呼んだ。
振り返ると――レン、アレク、そしてカイルの3人が入口の方に立っていた。
「レン! アレクさん! カイル!」
レンはもう、理性とか社会性とか全部忘れたみたいにダッシュしてきて、
「リーナぁぁぁぁ……!」
そのまま勢いよく抱きしめ、私の髪に顔をうずめた。
ぎゅううう。
「会いたかった……限界だった……リーナの枕抱いて寝たけど全然ダメだった……」
(それで枕無くなってたんだ……)
「いや待て、俺もいるんだが?」
アレクが咳払いしつつ、気まずそうに視線を逸らした。
「レン隊長、ここ数日ずっと寝言で“リーナ……柔らかい……”って言ってましたから、会えてよかったですよ」
カイルが涙ぐみながら言う。
「お前は余計なことを言うなッ!!」
アレクがカイルの頭を小突き、
「いや事実ですし」
とカイルは淡々と返す。
しかしレンはというと、私の髪に顔を埋めたまま動かない。
「もう……何日も触れてない……耐えられない……」
「レン、ちょ、ちょっと!? 人目あるから離れて!」
私は必死で腕をこじ開けようともがいたけれど、
「やだ」
「やだ、じゃない!」
「一週間会えなかったんだぞ……俺は死ぬかと思ったんだからな……」
「お前が離れろぉぉぉ!」
アレクがレンの背中を引っ張るが、びくともしない。
「隊長、抱きしめスキルがMAXです」
「レアスキルじゃねぇんだよ!」
アレクのツッコミが響く。
「レン、お願い、いったん呼吸して?」
「する。リーナの匂いで」
「やめてぇぇ!」
廊下を通るギルドの人たちはみんな遠巻きに苦笑いしていた。
「――で、何してるのあんたたち」
その場の空気が凍りつく。
ギルド長が腕を組み、ゆっっっくりとこちらを見下ろしていた。
「げ、ギルド長……!」
「リーナ、勤務中でしょ?」
「す、すみません……!」
私が慌ててレンから離れようとすると、レンは逆に腕に力を込めた。
「いやだ。あと五秒だけ……」
「カウントダウン始めるわよ。
5、4――」
「はい離れます!」
レンが即座に離れた。ギルド長、圧が強い。
「まったく……うちのギルドはいつから幼稚園になったのかしら」
と呆れつつも、どこか笑っている。
「おい、リーナにベタベタすんな!」
そこへソーマが走り込んできた。
「ソーマまで!?」
「当たり前だろ、レン達が帰ってきたって聞いて……暴走してねぇだろうなと思って!」
「暴走? 俺はただ必要な補給を――」
「“補給”って言うな!!」
アレクのツッコミが鋭く入る。
カイルはというと、なぜか私のほうを見て爽やかに微笑んだ。
「リーナさん、具合はもう大丈夫ですか?
隊長、リーナさんが心配で壁パンしてましたよ」
「カイルてめぇ余計なこと言うなって言っただろ!!」
アレクがカイルを小突く。
「ひっ……壁は無事だったぞ……」
と小声で言うレン。
「そういう問題じゃねぇ!!」
ギルドの人たちは、また遠巻きに生ぬるい目で見ている。
「とにかく、再会のハグはもう十分でしょ。
はい、全員仕事戻って!」
「「「はーーい」」」
ギルド長の声で三人はしぶしぶ散っていった……かと思いきや。
レンはこっそり戻ってきて、私の手をそっと握った。
「……仕事終わったら話したい。ちゃんと、ゆっくり」
小声で囁かれ、胸が少し熱くなる。
「う、うん……」
「ギルド長、怖ぇ……」
ソーマが小声で震え、
「だが正しい」
アレクがうなずき、
「俺は隊長の恋路を応援してます」
カイルだけ爽やかに笑っていた。
「……で、仕事戻れって言われたけどよ」
アレクが腕を組んで私たちを横目で見る。
「レン、お前まだ帰る気ゼロだろ?」
「当たり前だ。リーナ不足で死ぬかと思った」
「いや死なねぇよ!? どんだけ依存してんだよ!」
アレクが頭を抱える横で、カイルがほわっと微笑む。
「隊長、クエスト中ずっと言ってましたよ。
“リーナに触れたい……いや見たい……せめて匂いを……”って」
「カイル!!!」
レンが赤面し、アレクの拳がカイルの後頭部に落ちた。
「お前は余計なことを全部言うな!
言っていいことと悪いことが――」
「悪いこと今全部聞いた気がするんだけど……」
私は顔を真っ赤にして俯いた。
するとレンがそっと近づき、小声で言う。
「……本当のことだ。全部」
視界がまた熱くなる。
アレクがその様子を見てため息をついた。
「おい隊長、せめて落ち着いてからにしろよ。
リーナさん照れてんだぞ」
「落ち着いてる。俺はいつでも冷静だ」
「絶対嘘だろ!!」
アレクの叫びにカイルが爽やかに補足を入れる。
「レン隊長、昨日なんて洞窟で“この岩肌はリーナの髪色に似ている……”って詩人みたいなこと言ってましたよ」
「カイルお前マジで後で覚悟しろ」
レンが低い声で呟くが、カイルは全然気にしていない。
「でもリーナさん、安心してください」
とカイル。
「レン隊長、クエスト中ずっとリーナさんのことを守るために最善の判断してました。
……たまにうざったいだけで」
「フォローになってねぇ!!!」
アレクが怒鳴る。
私は思わず笑ってしまった。
「ふふ……みんな、ありがとう」
その笑顔を見た瞬間、レンの手がそっと私の髪に触れた。
「……リーナ。
今日の夜、ちゃんと二人で話したい。
無理させたくないけど……会いたい」
胸がくすぐったくなる。
「うん。私も話したい」
するとアレクが、ため息交じりに言った。
「よーしカイル、撤収するぞ。
これ以上いたら甘さで俺の糖度がぶっ壊れる」
「僕は甘いの好きなんだけどなぁ」
「そういう問題じゃねぇ!!」
バタバタと二人が去っていき、廊下には私とレンだけが残った。
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