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43話
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「……誰もいないな」
レンは資料室に入るなり一度だけ周囲を見回し、ためらいもなく扉に鍵をかけた。
カチャリ、と小さく響く金属音がやけに胸に刺さる。
「れ、レン……?」
(まさか、フェリエ家の記事のこと――?何かわかったの?)
胸の鼓動がドクンドクンと、落ち着いてくれない。
「リーナ」
呼ばれた瞬間、腕が伸びてきて、腰を引き寄せられた。息を飲む間もなく、唇を塞がれる。
「――っ⁉ ちょ、ちょっとレン!」
慌てて肩を押すけれど、レンは微動だにしない。
むしろ抱きしめる力が強くなる。
「ここ、資料室だから! ほんとに人来るかも……!」
「知ってるよ」
低くて、妙に余裕のある声。
わかっててやってる声。
その自信満々な響きに、逆に心臓の音がさらにうるさくなる。
レンは私のスカートに手を突っ込みショーツを下ろした。
「れ、レン! だめだってば……っ!」
必死に小声で制止すると、レンは私の耳元へ顔を寄せた。
吐息がふわりとかかるだけで、膝が思わず震える。
「声、抑えて。……誰かに気づかれる」
囁きはひどく落ち着いていて、逆に心をかき乱す。
わざとじゃないはずなのに、耳に触れるその声が熱すぎる。
「やっぱり……夜まで待てないんだよ」
レンは苦しそうに、でもどこか甘えるみたいに言った。
その言い方がズルい。
胸の奥が一気にきゅっと締まる。
「……だから今、少しだけでいい。リーナに触れさせて」
「れ、レン……ほんとに……だめ……っ」
押し返そうとする手は自分でも情けないくらい弱くて、
逆にレンの胸の鼓動の強さだけが指先に伝わってくる。
「……反応してる」
低い声が耳の後ろをかすめた瞬間、背筋がびくっと震えた。
「ち、ちが……っ」
否定の言葉はちゃんと出たのに、声が震えていて説得力がない。
自分が一番よくわかってしまう。
レンは私の腰を軽く引き寄せる。
その動作がやさしいのに、逃げ道は完全に塞がれる。
「押す力、弱くなってる。……ね?」
そう囁かれてしまうと、胸の奥がじん、と熱を持った。
顔まで一気に熱がのぼる。
「……っ、だから……近すぎ……」
「近くにいたいんだよ。リーナが、俺をそんな目で見るから」
言い返そうとしても、喉の奥がきゅっと閉まって、声にならない。
押されているはずなのに、体のほうが勝手にレンの熱を求めてしまう――
そんな自分に気づいて余計に混乱する。
「……リーナ、逃げないで」
レンの腕がゆっくりと私の背中を包み込む。
耳元に、レンの呼吸が触れた。
「こんな顔して……俺だけが見るものだろ?」
ぞくり、と背筋を何かが走る。
耳のすぐ近く、触れないくらいの距離でレンの声が震えを作る。
「他の誰にも……見せたくない。聞かせたくない」
耳朶の近いところに温かな息がかかって、
思わず肩がびくっと跳ねた。
「……いまの、可愛い」
低く押さえた声なのに、胸の奥まで落ちてくるみたいで息が止まる。
「そんな反応するの、俺の前だけにして」
「れ、レン……そんな、言い方……っ」
囁きが耳の内側に溶け込むようで、
抵抗しなきゃと思うのに、指先から力が抜けてしまう。
レンの唇が、耳に触れるか触れないかの距離でふわりと止まる。
触れてこない。
なのに、触れられた以上に体が熱くなる。
「……震えてる。可愛すぎて、困る」
そんな風に言われると、ますます体がいうことをきかなくなる。
「リーナが反応すればするほど……俺、余計に離れられなくなるんだよ」
「れ、レン……ほんとに、ここは……っ」
勇気を振り絞って、私は彼の胸を軽く押した。
押したはずなのに、レンの体温が逆に近づいてくる。
「そんな弱い押し方して……“やめてほしくない”って言ってるのと同じ」
「ち、違……っ」
「違わない。だってリーナ……」
レンの指が、私の手の甲をゆっくりなぞった。
その優しい触れ方が、逆に逃げ道をふさぐ。
「さっきから、触れるたびに震えてる」
耳の後ろを風のようにくすぐる声。
私の心臓が、彼に伝わってしまいそうで怖い。
「ほら。今も」
レンが私の髪をすくうように耳をもう一度そっと覆う。
指がかすかに触れただけで、息が詰まった。
「……リーナって、こんなに素直だった?」
「う……!」
「ふふ。抵抗する声、可愛い」
囁きながら、レンの腕がふわりと強くなる。
力任せではなく、離れられなくする抱きしめ方。
「ねぇ……俺のこと、少しは拒んでみてよ」
「してる……っ、してるよ……!」
「嘘。だって――」
レンの指先が私の腰に触れる。
「手、俺の服つかんでる」
見下ろすと、無意識にレンの服を握っていた。
「……ほらね」
耳のすぐ近くで、低く甘い声が落ちる。
「そんな可愛い反応されたら……独占したくなるに決まってるだろ?」
胸がきゅっと痛いほど熱くなった。
「リーナが逃げたいなら……ちゃんと俺を突き放して?」
「……できない、けど……」
「じゃあ、俺のそばにいなよ」
レンの囁きが、まるで誓いみたいに耳の奥を震わせた。
レンは資料室に入るなり一度だけ周囲を見回し、ためらいもなく扉に鍵をかけた。
カチャリ、と小さく響く金属音がやけに胸に刺さる。
「れ、レン……?」
(まさか、フェリエ家の記事のこと――?何かわかったの?)
胸の鼓動がドクンドクンと、落ち着いてくれない。
「リーナ」
呼ばれた瞬間、腕が伸びてきて、腰を引き寄せられた。息を飲む間もなく、唇を塞がれる。
「――っ⁉ ちょ、ちょっとレン!」
慌てて肩を押すけれど、レンは微動だにしない。
むしろ抱きしめる力が強くなる。
「ここ、資料室だから! ほんとに人来るかも……!」
「知ってるよ」
低くて、妙に余裕のある声。
わかっててやってる声。
その自信満々な響きに、逆に心臓の音がさらにうるさくなる。
レンは私のスカートに手を突っ込みショーツを下ろした。
「れ、レン! だめだってば……っ!」
必死に小声で制止すると、レンは私の耳元へ顔を寄せた。
吐息がふわりとかかるだけで、膝が思わず震える。
「声、抑えて。……誰かに気づかれる」
囁きはひどく落ち着いていて、逆に心をかき乱す。
わざとじゃないはずなのに、耳に触れるその声が熱すぎる。
「やっぱり……夜まで待てないんだよ」
レンは苦しそうに、でもどこか甘えるみたいに言った。
その言い方がズルい。
胸の奥が一気にきゅっと締まる。
「……だから今、少しだけでいい。リーナに触れさせて」
「れ、レン……ほんとに……だめ……っ」
押し返そうとする手は自分でも情けないくらい弱くて、
逆にレンの胸の鼓動の強さだけが指先に伝わってくる。
「……反応してる」
低い声が耳の後ろをかすめた瞬間、背筋がびくっと震えた。
「ち、ちが……っ」
否定の言葉はちゃんと出たのに、声が震えていて説得力がない。
自分が一番よくわかってしまう。
レンは私の腰を軽く引き寄せる。
その動作がやさしいのに、逃げ道は完全に塞がれる。
「押す力、弱くなってる。……ね?」
そう囁かれてしまうと、胸の奥がじん、と熱を持った。
顔まで一気に熱がのぼる。
「……っ、だから……近すぎ……」
「近くにいたいんだよ。リーナが、俺をそんな目で見るから」
言い返そうとしても、喉の奥がきゅっと閉まって、声にならない。
押されているはずなのに、体のほうが勝手にレンの熱を求めてしまう――
そんな自分に気づいて余計に混乱する。
「……リーナ、逃げないで」
レンの腕がゆっくりと私の背中を包み込む。
耳元に、レンの呼吸が触れた。
「こんな顔して……俺だけが見るものだろ?」
ぞくり、と背筋を何かが走る。
耳のすぐ近く、触れないくらいの距離でレンの声が震えを作る。
「他の誰にも……見せたくない。聞かせたくない」
耳朶の近いところに温かな息がかかって、
思わず肩がびくっと跳ねた。
「……いまの、可愛い」
低く押さえた声なのに、胸の奥まで落ちてくるみたいで息が止まる。
「そんな反応するの、俺の前だけにして」
「れ、レン……そんな、言い方……っ」
囁きが耳の内側に溶け込むようで、
抵抗しなきゃと思うのに、指先から力が抜けてしまう。
レンの唇が、耳に触れるか触れないかの距離でふわりと止まる。
触れてこない。
なのに、触れられた以上に体が熱くなる。
「……震えてる。可愛すぎて、困る」
そんな風に言われると、ますます体がいうことをきかなくなる。
「リーナが反応すればするほど……俺、余計に離れられなくなるんだよ」
「れ、レン……ほんとに、ここは……っ」
勇気を振り絞って、私は彼の胸を軽く押した。
押したはずなのに、レンの体温が逆に近づいてくる。
「そんな弱い押し方して……“やめてほしくない”って言ってるのと同じ」
「ち、違……っ」
「違わない。だってリーナ……」
レンの指が、私の手の甲をゆっくりなぞった。
その優しい触れ方が、逆に逃げ道をふさぐ。
「さっきから、触れるたびに震えてる」
耳の後ろを風のようにくすぐる声。
私の心臓が、彼に伝わってしまいそうで怖い。
「ほら。今も」
レンが私の髪をすくうように耳をもう一度そっと覆う。
指がかすかに触れただけで、息が詰まった。
「……リーナって、こんなに素直だった?」
「う……!」
「ふふ。抵抗する声、可愛い」
囁きながら、レンの腕がふわりと強くなる。
力任せではなく、離れられなくする抱きしめ方。
「ねぇ……俺のこと、少しは拒んでみてよ」
「してる……っ、してるよ……!」
「嘘。だって――」
レンの指先が私の腰に触れる。
「手、俺の服つかんでる」
見下ろすと、無意識にレンの服を握っていた。
「……ほらね」
耳のすぐ近くで、低く甘い声が落ちる。
「そんな可愛い反応されたら……独占したくなるに決まってるだろ?」
胸がきゅっと痛いほど熱くなった。
「リーナが逃げたいなら……ちゃんと俺を突き放して?」
「……できない、けど……」
「じゃあ、俺のそばにいなよ」
レンの囁きが、まるで誓いみたいに耳の奥を震わせた。
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