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46話
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ガラガラッ。
ギルドの入口が開き、夕暮れ色の風と一緒に三人が戻ってきた。
「リーナ。ただいま!」
一番に視界へ飛び込んできたのは、濡れ髪を無造作に後ろへ撫でつけたレン。
浴場帰りだからか、いつもより爽やかで、少しだけ色っぽい。
(……いや、さっきの資料室のこと思い出すからやめて)
私をよそに、アレクがタオルを肩へかけながら軽く手を挙げた。
「よう。仕事終わったか?」
「お疲れ様です、リーナさん」
「飯いこう、メシ」
カイルは相変わらず爽やか。ソーマは相変わらず明るい。
四人とも湯気が残っているみたいで、ギルドの空気が一瞬ふわっとあったかくなる。
レンがまっすぐ私の方へ歩み寄ってきて、近くに来るとそっと私の髪先をふれた。
「本当は二人で行きたかった」
「れ、レン。みんな見てる……」
「気にしない」
(気にして、お願いだから)
横からアレクが咳払いをする。
「レン、ギルドの真ん中でイチャつくのやめろ。俺たちもいるんだが?」
「仕方ないだろ。何日も触ってないんだ」
「触ってないって言うな!」
私は小声で抗議したが、ソーマがすかさず口を挟む。
「いやー、資料室で何してたかは知らないけど~?」
「なっ⁉」
レンの動きが一瞬止まり、アレクとカイルが同時にこちらを見る。
やめて、その目はやめて。
「あ、ちょっと待て。資料室って……」
アレクが眉をひそめると、カイルが「なるほど」と妙に納得した顔をした。
「なるほどじゃないの!なんでもないの!」
私が慌てて否定する中、レンはなぜか満足そうに笑っていた。
カイルが明るく手を叩く。
「まぁまぁ! それよりご飯行きましょう! 今日は俺、肉が食べたいです!」
アレクも肩を竦める。
「ったく……まぁリーナの顔も見れたし、今日はうまい酒が飲めそうだ」
レンが私の手をそっと握った。
「行こう、リーナ」
その声はどこか優しくて、胸がきゅっとなる。
私は小さく頷き、六人でギルドの外へ歩き出した。
らくだ亭の木の扉を押し開けると、香ばしい肉とスパイスの匂いがもわっと広がった。
「うわぁ~、もういい匂い!」
ソーマが真っ先にテンションを上げる。
「……腹減った」
アレクが不機嫌そうに言うが、これは単なる“お腹すいた顔”だと知っている。
「お席六名様ね~、奥どうぞ~」
店主のおかみさんの声に案内され、私たちは長テーブルに並んで腰を下ろした。
レンは私の隣。
当然のように、まるで当たり前の指定席のように座る。
「リーナはこっち」
腕を軽く引かれて、なんとなく照れてしまう。
向かい側にはアレクとカイル。
その隣にマリアとソーマ。
席につくと同時に、ソーマが真っ先に手を挙げた。
「おかみさーん!肉盛りプレート六つー!」
「待て、六つは多い!」
アレクがすかさずツッコむ。
「いや、六人いるだろ?」
ソーマが当然の顔で言う。
「ソーマは1人前の量がバグってますから」
カイルが苦笑した。
「えっ、そうなの?」
本気で分かっていないソーマ。
「ソーマはいいのよ。あんなに動くんだから」
マリアが笑う。
「いや、動いてなくてもソーマは食うぞ」
アレクがぼそり。
「え、それ誉めてる?」
「誉めてない」
そんな会話をしているうちに、料理が次々とテーブルに運ばれてきた。
じゅうじゅうと音を立てる鉄板。
スパイスの効いた肉の香り。
焼き野菜に、ふかふかのパン。
「うまそー!!!」
ソーマが勢いよくフォークを構える。
「ちょっと待って、まずは乾杯でしょ~!」
マリアがジョッキを掲げた。
「そうだな」
レンが頷き、みんなのジョッキがカチンとぶつかる。
「じゃあ……一週間のクエスト終了お疲れ様!」
ソーマが叫ぶ。
「いや、レンが数日リーナ不足で死にかけてたからな」
アレクが淡々と言い放つ。
「死にかけてない」
レンが真顔で否定する。
「資料室でのレンは生き返った顔してたけどな?」
ソーマがニヤニヤして、私がむせる。
レンはと言えば、隣で静かに肉を切りながら小声で囁いた。
「……後で、また会えるから大丈夫」
「なにが『大丈夫』なの!?食事中!」
「うるせぇ、イチャつくなら帰ってやれ」
アレクが呆れた表情をした。
「帰らない」
レンが即答。
「居座る気満々かよ!」
そんなツッコミが飛び交う中、ソーマは淡々と肉をもりもり食べ続け、気づけば皿が3枚空いていた。
「ソーマ……もうそれ四皿目?」
カイルが眉を上げる。
「うん、今日めっちゃ腹減っててさ!」
嬉しそうに言うソーマ。
「ソーマ、さっきカウンターに隠れてサンドイッチ食べてたじゃん」
マリアがじっとり見つめる。
「え、あれは別腹」
「どの方面の別腹よ!?」
マリアのツッコミに、店中が笑いに包まれた。
そんな賑やかな空気の中で、私はふと気づいた。
――このギルドの仲間と食べるご飯が、こんなに楽しいなんて。
レンが横で、私の手の甲にそっと触れながら尋ねた。
「……疲れてないか?」
「ううん。すごく楽しい」
この時間が、ずっと続けばいいのに――そう思えるほどに。
「よかった」
レンは満足そうに微笑む。
ギルドの入口が開き、夕暮れ色の風と一緒に三人が戻ってきた。
「リーナ。ただいま!」
一番に視界へ飛び込んできたのは、濡れ髪を無造作に後ろへ撫でつけたレン。
浴場帰りだからか、いつもより爽やかで、少しだけ色っぽい。
(……いや、さっきの資料室のこと思い出すからやめて)
私をよそに、アレクがタオルを肩へかけながら軽く手を挙げた。
「よう。仕事終わったか?」
「お疲れ様です、リーナさん」
「飯いこう、メシ」
カイルは相変わらず爽やか。ソーマは相変わらず明るい。
四人とも湯気が残っているみたいで、ギルドの空気が一瞬ふわっとあったかくなる。
レンがまっすぐ私の方へ歩み寄ってきて、近くに来るとそっと私の髪先をふれた。
「本当は二人で行きたかった」
「れ、レン。みんな見てる……」
「気にしない」
(気にして、お願いだから)
横からアレクが咳払いをする。
「レン、ギルドの真ん中でイチャつくのやめろ。俺たちもいるんだが?」
「仕方ないだろ。何日も触ってないんだ」
「触ってないって言うな!」
私は小声で抗議したが、ソーマがすかさず口を挟む。
「いやー、資料室で何してたかは知らないけど~?」
「なっ⁉」
レンの動きが一瞬止まり、アレクとカイルが同時にこちらを見る。
やめて、その目はやめて。
「あ、ちょっと待て。資料室って……」
アレクが眉をひそめると、カイルが「なるほど」と妙に納得した顔をした。
「なるほどじゃないの!なんでもないの!」
私が慌てて否定する中、レンはなぜか満足そうに笑っていた。
カイルが明るく手を叩く。
「まぁまぁ! それよりご飯行きましょう! 今日は俺、肉が食べたいです!」
アレクも肩を竦める。
「ったく……まぁリーナの顔も見れたし、今日はうまい酒が飲めそうだ」
レンが私の手をそっと握った。
「行こう、リーナ」
その声はどこか優しくて、胸がきゅっとなる。
私は小さく頷き、六人でギルドの外へ歩き出した。
らくだ亭の木の扉を押し開けると、香ばしい肉とスパイスの匂いがもわっと広がった。
「うわぁ~、もういい匂い!」
ソーマが真っ先にテンションを上げる。
「……腹減った」
アレクが不機嫌そうに言うが、これは単なる“お腹すいた顔”だと知っている。
「お席六名様ね~、奥どうぞ~」
店主のおかみさんの声に案内され、私たちは長テーブルに並んで腰を下ろした。
レンは私の隣。
当然のように、まるで当たり前の指定席のように座る。
「リーナはこっち」
腕を軽く引かれて、なんとなく照れてしまう。
向かい側にはアレクとカイル。
その隣にマリアとソーマ。
席につくと同時に、ソーマが真っ先に手を挙げた。
「おかみさーん!肉盛りプレート六つー!」
「待て、六つは多い!」
アレクがすかさずツッコむ。
「いや、六人いるだろ?」
ソーマが当然の顔で言う。
「ソーマは1人前の量がバグってますから」
カイルが苦笑した。
「えっ、そうなの?」
本気で分かっていないソーマ。
「ソーマはいいのよ。あんなに動くんだから」
マリアが笑う。
「いや、動いてなくてもソーマは食うぞ」
アレクがぼそり。
「え、それ誉めてる?」
「誉めてない」
そんな会話をしているうちに、料理が次々とテーブルに運ばれてきた。
じゅうじゅうと音を立てる鉄板。
スパイスの効いた肉の香り。
焼き野菜に、ふかふかのパン。
「うまそー!!!」
ソーマが勢いよくフォークを構える。
「ちょっと待って、まずは乾杯でしょ~!」
マリアがジョッキを掲げた。
「そうだな」
レンが頷き、みんなのジョッキがカチンとぶつかる。
「じゃあ……一週間のクエスト終了お疲れ様!」
ソーマが叫ぶ。
「いや、レンが数日リーナ不足で死にかけてたからな」
アレクが淡々と言い放つ。
「死にかけてない」
レンが真顔で否定する。
「資料室でのレンは生き返った顔してたけどな?」
ソーマがニヤニヤして、私がむせる。
レンはと言えば、隣で静かに肉を切りながら小声で囁いた。
「……後で、また会えるから大丈夫」
「なにが『大丈夫』なの!?食事中!」
「うるせぇ、イチャつくなら帰ってやれ」
アレクが呆れた表情をした。
「帰らない」
レンが即答。
「居座る気満々かよ!」
そんなツッコミが飛び交う中、ソーマは淡々と肉をもりもり食べ続け、気づけば皿が3枚空いていた。
「ソーマ……もうそれ四皿目?」
カイルが眉を上げる。
「うん、今日めっちゃ腹減っててさ!」
嬉しそうに言うソーマ。
「ソーマ、さっきカウンターに隠れてサンドイッチ食べてたじゃん」
マリアがじっとり見つめる。
「え、あれは別腹」
「どの方面の別腹よ!?」
マリアのツッコミに、店中が笑いに包まれた。
そんな賑やかな空気の中で、私はふと気づいた。
――このギルドの仲間と食べるご飯が、こんなに楽しいなんて。
レンが横で、私の手の甲にそっと触れながら尋ねた。
「……疲れてないか?」
「ううん。すごく楽しい」
この時間が、ずっと続けばいいのに――そう思えるほどに。
「よかった」
レンは満足そうに微笑む。
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