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第二章
教室崩壊!? 先生の胸と知識が大炸裂!!
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「サキさん! 早速来ていただいたんですね!」
リン先生――昨日ベア魔獣をぶっ飛ばしたとき、ぶるんぶるん揺れながら颯爽と登場した、あの巨乳美人教師である。
彼女は今日もテンション高めで笑顔全開。いやもう、天気が悪くてもこの人だけ快晴。
ここは“ブルズ・アイ”の会議室――の、はずだった。
だが昨日のベア襲撃のせいで、見事に半壊しており、もはや“屋外教室”と化している。
壁? ない。屋根? ない。あるのは空と風と焦げた匂いだけ!
「リン先生……生徒、私だけみたいですけど」
「昨日の騒ぎでみんな近寄らなくなってしまいました!」
にっこにこの笑顔で言われた。
……うん、怖い。笑顔が一番怖い。
「さて、サキさん。あなた、この世界(=東証)をどう捉えてる?」
唐突に哲学みたいな質問をしてくるリン先生。授業の導入からしてパンチ強めである。
「えっと……お金の流れが力になって武器や攻撃になり、逆方向の流れが魔獣になる……? みたいな……?」
「うん、半分正解! 初心者にしては、なかなかセンスあるわね!」
ちょっととげのある言い方。いや、気のせいじゃない。
「じゃあ、順番に説明していこうか」
リン先生が手にした小型デバイスをタップ。
すると、空間に青白いスクリーンが浮かび、情報が次々に展開された。
ちなみに、あたしとレイのは腕時計型デバイスだが、先生のは板状のタブレットタイプ。
たぶん“講師仕様”だ。見た目からして高そう。
「まず、この世界は“市場(マーケット)”と呼ばれる巨大都市群でできているの。
それぞれの都市には異なる銘柄(ストック)や指数(インデックス)が存在して、人々はそれぞれの町でトレード(戦い)ながら生きているのよ」
先生の声に合わせ、ホログラムが立体的に動く。
複雑な都市群が光の網目で繋がれ、その上を金色の粒子――資金が流れていく。
「資金は命、メンタルは魔力。
それらを掛け合わせて戦うのが、この世界の戦士――トレーダーなの」
「……お金と心で戦う、か」
ちょっと詩的。でも、命懸け。
「先生質問!」
「なんでもどうぞ!」
「レイが前に『インデックスの町に行け』って言ってたんですけど、『指数の町』ってここ(日経レバ)も似たようなもんじゃないですか?」
「ああ、それはね――」
リン先生の目が光を反射して、少し鋭くなる。
美人ってこういう時ずるい。なんか説得力ある。
「指数っていうのは国が定めた“バランス銘柄の集合体”なの。
銀行も小売りもテックも、いろんな産業を少しずつ混ぜて、一つの平均値にしたもの。
一社が沈んでも、他が支える。だから全体が安定して上昇するの」
「まるで……栄養バランスみたいですね」
「その通り! 投資とは食事よ。炭水化物だけじゃ倒れるの。
……でも、脂っこい銘柄ばかり食べて太る人も多いけどね♪」
ドキッ。
昨日の全力ロングが頭をよぎる。
「でも、先生。バランスがいいってことは、儲けも少ないんじゃ?」
リン先生が一瞬、寂しそうに微笑んだ。
「レイは……あなたに“損して欲しくなかった”のよ。指数の町は安全圏。派手さはないけど、地に足のついた世界なの」
「先生……レイに何が?」
リン先生の視線が遠くに沈む。
ほんの一瞬だけ、笑顔が消えた。
「……昔、ね。リーマンショックっていう、地獄絵図を見たの」
――空気が変わった。
講義室(という名の更地)に、風が吹き抜ける。
「国が、企業が、家族が……一瞬でゼロになった。
その時、私はまだ若くて……市場を“信じすぎてた”のよ」
その目には、光ではなく、深い闇が映っていた。
「――でも、レイが助けてくれたの。
“下げてもいい、上がるまで待てばいい”ってね」
その言葉に、あたしの胸の中で、何かが静かに灯った。
場の空気を戻すように、先生が画面を切り替える。
ぱっと出てきたのはトレードデバイスの構造図。
「さて! ここからは実践寄りにいくわよ!」
■チャート魔法陣
戦闘時に展開される「戦闘視界拡張システム」。
ローソク足(赤い線、希望・緑の線、悲観)、移動平均線(資金の軌道)、エネルギー量などが視覚化され、
トレーダーは過去・現在・未来の資金の流れを“光の軌跡”として読むことができる。
「つまり、これを開かずに戦うのは――」
「目をつぶってケーキ食べるようなもんですね!」
「正解☆ ……あとでちゃんと練習してもらうから覚悟してね」
にこっと笑って言う。怖い。
■小型デバイス(Portable Trader Device)
腕時計型・スマホ型の二系統。どちらも“資金とメンタル”を媒介する魔導端末。
戦闘時は音声詠唱またはタップ操作で売買を行い、武器形態に変形する。
「そして……資金が尽きた時――」
「退場(死)、ですよね」
「そう。あと心が折れてもね。お金が命、メンタルが魂。どっちかが欠けても、もう戦えないの」
リン先生の表情がふと曇る。
たぶん、過去に誰か……失ったんだ。
「さて、次は危険な領域に入るわよ」
画面が変わる。禍々しい黒銀の腕輪が映し出された。
■信用呪具(レバレッジバンド)
信用取引を現実化する禁呪。
倍率を上げるほど重くなり、精神を侵食する。
呪いが溜まると“強制ロスカット(シャットダウン)”が発動。
「あなたの腕についてるそれ……私は正直、オススメできないの」
「でも、レイが“つけろ”って」
先生は沈黙した。
やがて、小さく笑った。
「……どういうつもりなのかしらね、あの男」
そんなにヤバいものなの?これ。
「じゃ、次。あの男のファッション解説コーナーよ!」
ドンッと画面が切り替わる。
映し出されたのは、レイのあの黒光りする鎧。
■甲冑(Bear Armor)
ベアマーケットの骨と皮で作られた戦闘鎧。
下落局面(ベア相場)で防御力上昇。
上昇局面(ブル相場)では損耗・減価。
着こなすにはヘッジ(損失回避技術)の理解が必要。
「つまり、“下げ相場を受け流す術”が詰まってるのよ。
レイのやつ、ああ見えて理論派だからねぇ」
「……ただの変態鎧コレクターかと思ってました」
真顔で言ったら、先生が肩を震わせて笑った。
「失礼ねぇ! でもまあ、半分当たってるかも。次は音声認識呪文の例ね」
■呪文詠唱例(小型デバイスに呪文を音声認識させ、技を出す)
・《ロング・インヴォーク!》買いエントリー
・《ショート・ディセント!》売りエントリー
・《テイクプロフィット・スパーク!》利益確定
・《ロスカット・パージ!》損切り
・《リバーストレンド・スラッシュ!》逆張り必殺技
「……レイが叫んでたのってこれですか」
「そう。“詠唱トレード”。上級者ほど声がでかいのよ」
「やっぱり痛い人じゃん!!」
ケラケラ笑うリン先生。
この人、講師なのにノリが軽い。でも嫌いじゃない
「次、基本的なバトルのやり方ね」
また画面が切り替わる。
敵出現(暴騰・暴落)
チャート魔法陣展開
呪文詠唱でエントリー
↓
チャートブレードオン
↓
防御・攻撃
↓
決済魔法で収束
「――これが“トレードバトル”の基本よ。
簡単そうに見えるけど、実際は命懸け」
リン先生の指が止まる。
画面が――勝手にノイズを走らせた。
「……え?」
ホログラムが一瞬、歪む。
そして映し出されたのは、黒い熊の紋章。
ズズ……ズズズ……。
『ベア教団の審判は近い……』
空間が低く唸り、会議室の空気が凍る。
リン先生の目が細まり、声が鋭くなった。
「……やっぱり来たわね。昨日の残滓(のこりかす)か……」
「残滓?」
「ベア魔獣を召喚した奴らの“呪詛データ”よ。完全には消えてないの。
彼らは“暴落こそ救い”と信じてる。市場の崩壊を――神の再臨だと」
リン先生の背後に魔法陣が浮かぶ。
風が唸り、髪がなびく。
その姿は、まるで経済の女神のようだった。
「サキ、今日は授業のつづきじゃなくて――実地演習よ」
「実地……?」
地面が震えた。
遠くで、何かが鳴いている。
低く、重く、地の底から響く咆哮。
「まさか――また!?」
リン先生が笑った。
獰猛で、美しく、そして恐ろしく。
「ええ、ベアの連中、今度は“教団ごと”で来るわよ!」
リン先生――昨日ベア魔獣をぶっ飛ばしたとき、ぶるんぶるん揺れながら颯爽と登場した、あの巨乳美人教師である。
彼女は今日もテンション高めで笑顔全開。いやもう、天気が悪くてもこの人だけ快晴。
ここは“ブルズ・アイ”の会議室――の、はずだった。
だが昨日のベア襲撃のせいで、見事に半壊しており、もはや“屋外教室”と化している。
壁? ない。屋根? ない。あるのは空と風と焦げた匂いだけ!
「リン先生……生徒、私だけみたいですけど」
「昨日の騒ぎでみんな近寄らなくなってしまいました!」
にっこにこの笑顔で言われた。
……うん、怖い。笑顔が一番怖い。
「さて、サキさん。あなた、この世界(=東証)をどう捉えてる?」
唐突に哲学みたいな質問をしてくるリン先生。授業の導入からしてパンチ強めである。
「えっと……お金の流れが力になって武器や攻撃になり、逆方向の流れが魔獣になる……? みたいな……?」
「うん、半分正解! 初心者にしては、なかなかセンスあるわね!」
ちょっととげのある言い方。いや、気のせいじゃない。
「じゃあ、順番に説明していこうか」
リン先生が手にした小型デバイスをタップ。
すると、空間に青白いスクリーンが浮かび、情報が次々に展開された。
ちなみに、あたしとレイのは腕時計型デバイスだが、先生のは板状のタブレットタイプ。
たぶん“講師仕様”だ。見た目からして高そう。
「まず、この世界は“市場(マーケット)”と呼ばれる巨大都市群でできているの。
それぞれの都市には異なる銘柄(ストック)や指数(インデックス)が存在して、人々はそれぞれの町でトレード(戦い)ながら生きているのよ」
先生の声に合わせ、ホログラムが立体的に動く。
複雑な都市群が光の網目で繋がれ、その上を金色の粒子――資金が流れていく。
「資金は命、メンタルは魔力。
それらを掛け合わせて戦うのが、この世界の戦士――トレーダーなの」
「……お金と心で戦う、か」
ちょっと詩的。でも、命懸け。
「先生質問!」
「なんでもどうぞ!」
「レイが前に『インデックスの町に行け』って言ってたんですけど、『指数の町』ってここ(日経レバ)も似たようなもんじゃないですか?」
「ああ、それはね――」
リン先生の目が光を反射して、少し鋭くなる。
美人ってこういう時ずるい。なんか説得力ある。
「指数っていうのは国が定めた“バランス銘柄の集合体”なの。
銀行も小売りもテックも、いろんな産業を少しずつ混ぜて、一つの平均値にしたもの。
一社が沈んでも、他が支える。だから全体が安定して上昇するの」
「まるで……栄養バランスみたいですね」
「その通り! 投資とは食事よ。炭水化物だけじゃ倒れるの。
……でも、脂っこい銘柄ばかり食べて太る人も多いけどね♪」
ドキッ。
昨日の全力ロングが頭をよぎる。
「でも、先生。バランスがいいってことは、儲けも少ないんじゃ?」
リン先生が一瞬、寂しそうに微笑んだ。
「レイは……あなたに“損して欲しくなかった”のよ。指数の町は安全圏。派手さはないけど、地に足のついた世界なの」
「先生……レイに何が?」
リン先生の視線が遠くに沈む。
ほんの一瞬だけ、笑顔が消えた。
「……昔、ね。リーマンショックっていう、地獄絵図を見たの」
――空気が変わった。
講義室(という名の更地)に、風が吹き抜ける。
「国が、企業が、家族が……一瞬でゼロになった。
その時、私はまだ若くて……市場を“信じすぎてた”のよ」
その目には、光ではなく、深い闇が映っていた。
「――でも、レイが助けてくれたの。
“下げてもいい、上がるまで待てばいい”ってね」
その言葉に、あたしの胸の中で、何かが静かに灯った。
場の空気を戻すように、先生が画面を切り替える。
ぱっと出てきたのはトレードデバイスの構造図。
「さて! ここからは実践寄りにいくわよ!」
■チャート魔法陣
戦闘時に展開される「戦闘視界拡張システム」。
ローソク足(赤い線、希望・緑の線、悲観)、移動平均線(資金の軌道)、エネルギー量などが視覚化され、
トレーダーは過去・現在・未来の資金の流れを“光の軌跡”として読むことができる。
「つまり、これを開かずに戦うのは――」
「目をつぶってケーキ食べるようなもんですね!」
「正解☆ ……あとでちゃんと練習してもらうから覚悟してね」
にこっと笑って言う。怖い。
■小型デバイス(Portable Trader Device)
腕時計型・スマホ型の二系統。どちらも“資金とメンタル”を媒介する魔導端末。
戦闘時は音声詠唱またはタップ操作で売買を行い、武器形態に変形する。
「そして……資金が尽きた時――」
「退場(死)、ですよね」
「そう。あと心が折れてもね。お金が命、メンタルが魂。どっちかが欠けても、もう戦えないの」
リン先生の表情がふと曇る。
たぶん、過去に誰か……失ったんだ。
「さて、次は危険な領域に入るわよ」
画面が変わる。禍々しい黒銀の腕輪が映し出された。
■信用呪具(レバレッジバンド)
信用取引を現実化する禁呪。
倍率を上げるほど重くなり、精神を侵食する。
呪いが溜まると“強制ロスカット(シャットダウン)”が発動。
「あなたの腕についてるそれ……私は正直、オススメできないの」
「でも、レイが“つけろ”って」
先生は沈黙した。
やがて、小さく笑った。
「……どういうつもりなのかしらね、あの男」
そんなにヤバいものなの?これ。
「じゃ、次。あの男のファッション解説コーナーよ!」
ドンッと画面が切り替わる。
映し出されたのは、レイのあの黒光りする鎧。
■甲冑(Bear Armor)
ベアマーケットの骨と皮で作られた戦闘鎧。
下落局面(ベア相場)で防御力上昇。
上昇局面(ブル相場)では損耗・減価。
着こなすにはヘッジ(損失回避技術)の理解が必要。
「つまり、“下げ相場を受け流す術”が詰まってるのよ。
レイのやつ、ああ見えて理論派だからねぇ」
「……ただの変態鎧コレクターかと思ってました」
真顔で言ったら、先生が肩を震わせて笑った。
「失礼ねぇ! でもまあ、半分当たってるかも。次は音声認識呪文の例ね」
■呪文詠唱例(小型デバイスに呪文を音声認識させ、技を出す)
・《ロング・インヴォーク!》買いエントリー
・《ショート・ディセント!》売りエントリー
・《テイクプロフィット・スパーク!》利益確定
・《ロスカット・パージ!》損切り
・《リバーストレンド・スラッシュ!》逆張り必殺技
「……レイが叫んでたのってこれですか」
「そう。“詠唱トレード”。上級者ほど声がでかいのよ」
「やっぱり痛い人じゃん!!」
ケラケラ笑うリン先生。
この人、講師なのにノリが軽い。でも嫌いじゃない
「次、基本的なバトルのやり方ね」
また画面が切り替わる。
敵出現(暴騰・暴落)
チャート魔法陣展開
呪文詠唱でエントリー
↓
チャートブレードオン
↓
防御・攻撃
↓
決済魔法で収束
「――これが“トレードバトル”の基本よ。
簡単そうに見えるけど、実際は命懸け」
リン先生の指が止まる。
画面が――勝手にノイズを走らせた。
「……え?」
ホログラムが一瞬、歪む。
そして映し出されたのは、黒い熊の紋章。
ズズ……ズズズ……。
『ベア教団の審判は近い……』
空間が低く唸り、会議室の空気が凍る。
リン先生の目が細まり、声が鋭くなった。
「……やっぱり来たわね。昨日の残滓(のこりかす)か……」
「残滓?」
「ベア魔獣を召喚した奴らの“呪詛データ”よ。完全には消えてないの。
彼らは“暴落こそ救い”と信じてる。市場の崩壊を――神の再臨だと」
リン先生の背後に魔法陣が浮かぶ。
風が唸り、髪がなびく。
その姿は、まるで経済の女神のようだった。
「サキ、今日は授業のつづきじゃなくて――実地演習よ」
「実地……?」
地面が震えた。
遠くで、何かが鳴いている。
低く、重く、地の底から響く咆哮。
「まさか――また!?」
リン先生が笑った。
獰猛で、美しく、そして恐ろしく。
「ええ、ベアの連中、今度は“教団ごと”で来るわよ!」
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