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第二章
宗教勧誘⁉怪しいパンフにご用心!
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「いやー、お強いですねぇ!」
ぱちぱちぱちぱち――。
まるで観客みたいな拍手が、戦場の静寂を破った。
「……誰?」
あたしとレイが同時にそっちを向くと、そこにはローブ姿の男が立っていた。
そのローブ、黒に赤の刺繍、胸元にはベア魔獣の刺繡が金糸ではいっている。ちょっとかわいい。
「ばさっ」
男がゆっくりとフードを上げた。
額にくっきり刻まれたタトゥー――“-30%”。
うん、やっぱりダサい。
「ベア教団か」
レイが眉をひそめ、デバイスを構える。
一瞬で空気が張り詰めた。風が止まる。
背後のチャート魔法陣がピリッと緑に点滅する。
「サキ、下がってろ」
低く、鋭い声。完全に戦闘モード。
「おやおや、怖がらないでくださいよ」
男はにこやかな笑顔を浮かべ、両手を広げて見せた。
その仕草だけはやたら優雅。
「私はあなた方に危害を加えるつもりはありません」
「じゃあ、何しに来たんだ」
レイの声には、微妙な殺気が混じっている。
「スカウトですよ」
男はさらりと答え、懐から一枚のパンフレットを取り出した。
「……スカウト?」
あたしが眉をひそめると、男は誇らしげにパンフを広げる。
“ベア教団新規メンバー募集!”
“成績優秀者は幹部昇進あり!”
“楽しい仲間と一緒に信仰し、利益も上げちゃおう♪”
“知識がなくても優しい先輩たちが教えてくれます!”
“キツいノルマ一切なし!”
「…………」
……うさんくさい。満点でうさんくさい。
ていうか、“信仰しながら利益も上げちゃおう♪”ってどういうノリ。
「あなた方もベア教団に入りませんか?」
男は爽やかスマイルを崩さない。
「今なら入会特典として“ベア魔獣ぬいぐるみキーホルダー”プレゼント中です!」
……そのぬいぐるみ、絶対呪われてるやつじゃん。
「さらに、今なら紹介キャンペーンで信者ランクが二段階アップ!」
「ランク制度あんの!?」
「ありますとも。ゴールドベア、プラチナベア、そして最上位“アルティメットベア”!」
「ネーミングセンス……!」
男はさらに続ける。
「ちなみにアルティメットベアの特典は、教祖さまから“特別投資アドバイス”をもらえるんです!」
「それ絶対、損するやつだ……!」
「入らん」
レイが即答した。無駄のない一刀両断。
あまりの早さに男が一瞬まばたきを忘れる。
「えぇ、そんなこと言わずに。信じる者は救われますよ?」
「信じる者は溶かされる、の間違いだろ」
「ぐっ……手厳しいですねぇ」
男の笑顔がぴくりとひきつる。
あ、効いてる効いてる。
「サキ、関わるな。こういうのは無視が一番だ」
「う、うん。でも、パンフもらっちゃったんだけど……」
「燃やせ」
「え、いきなり!?」
レイが指を鳴らすと、あたしの手のパンフがボッと燃えた。
「きゃああ!? なにこれ!? 紙燃やしたの!? 魔法!?」
「“情報セキュリティ・フレイム”だ。怪しい資料を自動削除する術だ」
「便利ぃぃぃ……!」
「騙されるな! このクソ教団に!!」
――ズバァンッ!!
背後から、まるで正義の味方みたいな声が響いた。
……ていうか、正義の味方っていうより、食後の満腹でぼーっとしてた頭にめっちゃ響くんですけど。
「えっ!? だ、誰!?」
振り返ると、そこには――
さっきベア魔獣に吹っ飛ばされてた、小柄な戦士の姿があった!
茶色の短髪、くりくりした瞳、年はたぶんあたしと同じくらの美少年。
レンみたいにゴツいアーマーは着てなくて、あたしと同じようなTシャツ・ジーンズ・スニーカーのラフスタイル。
……ただし、ぼろっぼろ。服は裂け、顔は土まみれ。
それでも、その瞳だけはまっすぐ光っていた。
「いや……騙されてない騙されてない! 今ちょっと話聞いてただけだから!」
ぶんぶん首を振るあたし。
でもその美少年、まるで聞く気なし!
「入ったら詰むぞ!」
「つ、詰む!?」
「そうだ! あいつらなぁ――“儲けるやり方教えます”とか言って高額商材売りつけてくるんだよ! “簡単に月利20%!”とか、“ベアの加護で含み損ゼロ!”とか言って!」
「うわぁ……やばいやつじゃんそれ……!」
少年は止まらない。勢いだけでしゃべってる。
「新聞の勧誘にノルマ課したり! “お布施”って名目で現金巻き上げたり! 挙げ句、信者を洗脳してタトゥー入れさせたり! やりたい放題なんだよ!」
「……あのタトゥーって洗脳の証だったんだ……」
「逆に洗脳じゃなかったら、あのセンスはちょっと救いがないな」
ひそひそと話すあたしとレイ。
「――あのう」
やたら穏やかな声が割り込む。
ローブの男はニコニコ笑顔のまま、こちらに向き直っていた。
……でも、その目。ぜんぜん笑ってない。笑顔なのに、冷たい。ぞくっとするほど。
「困りましたねぇ……商材もタトゥーも、すべて個人の意思なんですがねぇ?」
「はい出た、“自己責任”理論!」
美少年が叫ぶ。
「まあ、投資は自己責任だからなぁ」
レイがうんうん頷く。
「納得するなぁぁぁ!!」
思わず突っ込むあたし。
男は微笑んだまま、ふっと目を細めた。
「まあ、今日は彼――ソウマくんに免じて引き上げますよ」
「ソウマくん!? 名前知ってんの!?」
「一度、教団にも遊びに来てくださいね……レイ・キムラさん」
「……っ!」
レイの表情が一瞬で変わった。
あたしは息を呑む。
空気が、凍りついたみたいに重くなる。
「ふわっ」
男はローブを翻し、霧のように消えた。
最後に残ったのは、あのいや~な匂い。
“含み損のにおい”――冷たい数字の霧。
しばしの沈黙。
「……レイの苗字って、キムラだったんだ……」
ついぽろっと出た言葉。
レイは反応しない。
ただ、さっき男が消えた方向を見つめていた。
その顔は、普段の飄々とした笑顔じゃなくて――
まるで過去の“相場”を見ているみたいな、鋭く、冷たい目だった。
「レイ……?」
そうして、あたしたちは再び空を見上げた。
夕陽が闘技場を黄金色に染め、風が静かに吹き抜ける。
……嵐の前の、ほんの一瞬の静寂。
ぱちぱちぱちぱち――。
まるで観客みたいな拍手が、戦場の静寂を破った。
「……誰?」
あたしとレイが同時にそっちを向くと、そこにはローブ姿の男が立っていた。
そのローブ、黒に赤の刺繍、胸元にはベア魔獣の刺繡が金糸ではいっている。ちょっとかわいい。
「ばさっ」
男がゆっくりとフードを上げた。
額にくっきり刻まれたタトゥー――“-30%”。
うん、やっぱりダサい。
「ベア教団か」
レイが眉をひそめ、デバイスを構える。
一瞬で空気が張り詰めた。風が止まる。
背後のチャート魔法陣がピリッと緑に点滅する。
「サキ、下がってろ」
低く、鋭い声。完全に戦闘モード。
「おやおや、怖がらないでくださいよ」
男はにこやかな笑顔を浮かべ、両手を広げて見せた。
その仕草だけはやたら優雅。
「私はあなた方に危害を加えるつもりはありません」
「じゃあ、何しに来たんだ」
レイの声には、微妙な殺気が混じっている。
「スカウトですよ」
男はさらりと答え、懐から一枚のパンフレットを取り出した。
「……スカウト?」
あたしが眉をひそめると、男は誇らしげにパンフを広げる。
“ベア教団新規メンバー募集!”
“成績優秀者は幹部昇進あり!”
“楽しい仲間と一緒に信仰し、利益も上げちゃおう♪”
“知識がなくても優しい先輩たちが教えてくれます!”
“キツいノルマ一切なし!”
「…………」
……うさんくさい。満点でうさんくさい。
ていうか、“信仰しながら利益も上げちゃおう♪”ってどういうノリ。
「あなた方もベア教団に入りませんか?」
男は爽やかスマイルを崩さない。
「今なら入会特典として“ベア魔獣ぬいぐるみキーホルダー”プレゼント中です!」
……そのぬいぐるみ、絶対呪われてるやつじゃん。
「さらに、今なら紹介キャンペーンで信者ランクが二段階アップ!」
「ランク制度あんの!?」
「ありますとも。ゴールドベア、プラチナベア、そして最上位“アルティメットベア”!」
「ネーミングセンス……!」
男はさらに続ける。
「ちなみにアルティメットベアの特典は、教祖さまから“特別投資アドバイス”をもらえるんです!」
「それ絶対、損するやつだ……!」
「入らん」
レイが即答した。無駄のない一刀両断。
あまりの早さに男が一瞬まばたきを忘れる。
「えぇ、そんなこと言わずに。信じる者は救われますよ?」
「信じる者は溶かされる、の間違いだろ」
「ぐっ……手厳しいですねぇ」
男の笑顔がぴくりとひきつる。
あ、効いてる効いてる。
「サキ、関わるな。こういうのは無視が一番だ」
「う、うん。でも、パンフもらっちゃったんだけど……」
「燃やせ」
「え、いきなり!?」
レイが指を鳴らすと、あたしの手のパンフがボッと燃えた。
「きゃああ!? なにこれ!? 紙燃やしたの!? 魔法!?」
「“情報セキュリティ・フレイム”だ。怪しい資料を自動削除する術だ」
「便利ぃぃぃ……!」
「騙されるな! このクソ教団に!!」
――ズバァンッ!!
背後から、まるで正義の味方みたいな声が響いた。
……ていうか、正義の味方っていうより、食後の満腹でぼーっとしてた頭にめっちゃ響くんですけど。
「えっ!? だ、誰!?」
振り返ると、そこには――
さっきベア魔獣に吹っ飛ばされてた、小柄な戦士の姿があった!
茶色の短髪、くりくりした瞳、年はたぶんあたしと同じくらの美少年。
レンみたいにゴツいアーマーは着てなくて、あたしと同じようなTシャツ・ジーンズ・スニーカーのラフスタイル。
……ただし、ぼろっぼろ。服は裂け、顔は土まみれ。
それでも、その瞳だけはまっすぐ光っていた。
「いや……騙されてない騙されてない! 今ちょっと話聞いてただけだから!」
ぶんぶん首を振るあたし。
でもその美少年、まるで聞く気なし!
「入ったら詰むぞ!」
「つ、詰む!?」
「そうだ! あいつらなぁ――“儲けるやり方教えます”とか言って高額商材売りつけてくるんだよ! “簡単に月利20%!”とか、“ベアの加護で含み損ゼロ!”とか言って!」
「うわぁ……やばいやつじゃんそれ……!」
少年は止まらない。勢いだけでしゃべってる。
「新聞の勧誘にノルマ課したり! “お布施”って名目で現金巻き上げたり! 挙げ句、信者を洗脳してタトゥー入れさせたり! やりたい放題なんだよ!」
「……あのタトゥーって洗脳の証だったんだ……」
「逆に洗脳じゃなかったら、あのセンスはちょっと救いがないな」
ひそひそと話すあたしとレイ。
「――あのう」
やたら穏やかな声が割り込む。
ローブの男はニコニコ笑顔のまま、こちらに向き直っていた。
……でも、その目。ぜんぜん笑ってない。笑顔なのに、冷たい。ぞくっとするほど。
「困りましたねぇ……商材もタトゥーも、すべて個人の意思なんですがねぇ?」
「はい出た、“自己責任”理論!」
美少年が叫ぶ。
「まあ、投資は自己責任だからなぁ」
レイがうんうん頷く。
「納得するなぁぁぁ!!」
思わず突っ込むあたし。
男は微笑んだまま、ふっと目を細めた。
「まあ、今日は彼――ソウマくんに免じて引き上げますよ」
「ソウマくん!? 名前知ってんの!?」
「一度、教団にも遊びに来てくださいね……レイ・キムラさん」
「……っ!」
レイの表情が一瞬で変わった。
あたしは息を呑む。
空気が、凍りついたみたいに重くなる。
「ふわっ」
男はローブを翻し、霧のように消えた。
最後に残ったのは、あのいや~な匂い。
“含み損のにおい”――冷たい数字の霧。
しばしの沈黙。
「……レイの苗字って、キムラだったんだ……」
ついぽろっと出た言葉。
レイは反応しない。
ただ、さっき男が消えた方向を見つめていた。
その顔は、普段の飄々とした笑顔じゃなくて――
まるで過去の“相場”を見ているみたいな、鋭く、冷たい目だった。
「レイ……?」
そうして、あたしたちは再び空を見上げた。
夕陽が闘技場を黄金色に染め、風が静かに吹き抜ける。
……嵐の前の、ほんの一瞬の静寂。
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