東証バトルロワイヤル

人妻あず。

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第二章

無事到着!?ささやかな宴

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「あーあ! つっかれたぁあ!」
 ソウマがソファにどかっと腰を落とした瞬間――

 「ぐぎゅ!?」

 お尻のポケットから悲鳴があがった。
 「うおっ、わりぃわりぃ!」
 ソウマが慌てて取り出したのは、例のベア魔獣。

 「ぐぎゅう……」
 目をぐるぐる回しながら、頭をぷるぷる振っている。

 「もう……かわいそうでしょ!」
 あたしは呆れて言った。

 テーブルの上に置かれたベア魔獣は、ちょこんと座ると、手足をぺろぺろと舐めて毛づくろいを始めた。
 ――ぬぅ……なんという破壊力。
 敵として現れたときは猛獣だったくせに、今は完全に“もふもふ系癒やし生物”だ。

 「こうして見ると可愛いんだね」
 「まーな。このサイズでも噛まれると痛ぇけどな」

 小休止。静かな空気。
 気まずいなぁ。

 「ちょっと棟内見てくるわ」
 「いってら~」
 ソウマはそのままソファに寝転がり、秒で昼寝モード突入。
 のんきすぎる……。

 階段を上りながら、あたしは研究棟の中を見て回った。
 一階は、さっきの応接室兼研究室。隣に分析ルームっぽい小部屋が並び、奥に倉庫。
 洗面所とトイレもある。
 二階に上がると、仮眠室と小さなシャワールーム、ベッドルームが数部屋。

 「ここで研究者たちが暮らしながら研究してるのね……」
 ぽつりとつぶやいた、その時――

 バン!
 一階から勢いよくドアが開く音がした。

 「サキ! ソウマ! 着替えと食べ物持ってきたわよー!」
 リン先生の明るい声が響く。

 「はぁい!」
 慌てて階段を駆け下りる。

 「サキ、二階にいたのね。ソウマは……寝ちゃってるわね」
 見ると、ソファから半分ずり落ちながら口を開けて寝てるソウマ。
 「……よっぽど疲れたのねぇ」
 リン先生が目を細めて笑う。

 テーブルの上ではベア魔獣も丸まって、すやすやと寝息を立てていた。
 「この子、ソウマの召喚獣でしょ? コントロールがこんなに安定してるなんて、なかなかのセンスよ」
 「……ソウマが、ですか?」
 思わず聞き返す。

 「ふざけてるようで、頭は悪くないのよ。あなたを連れて逃げたのも、三人で動くより確実に逃げ切れるって判断したんだと思う」
 「……そうなのかなぁ」
 ただのバカショタだと思ってたけど、意外と考えてるのかも。

 「レイは強いし、利用価値がある。教団もすぐには手を出せないわ。だから、今は安心して大人に任せて」
 「はぁい」

 「さ、シャワーでも浴びてきなさい! 着替えも持ってきたわよ。あんたたち、どろっどろよ?」

 渡された服を抱えてシャワー室へ。
 脱衣所の鏡に映ったあたしは――うわ。
 Tシャツとデニムは破けて土埃だらけ、髪にもベア魔獣の毛が絡んでる。

 「昨日から大変だったからなぁ……」

 服と下着を脱ぎ、コックをひねる。

 シャアアアアアアア――

 温かいお湯が、首筋を伝って流れていく。
 疲れと埃が溶け出すみたいに、体がじんわりとほぐれていく。
 「あぁ~……生き返る~」

 指先で髪を泡立て、シャンプーの香りがふわっと広がる。
 湯気の中で目を閉じると、レイの顔が浮かんだ。
 「レイ、今頃どうしてるかな……」
 リン先生は“教団は無茶しない”って言ってたけど、ロイ町長の顔を思い出すと不安になる。

 「なるべく早く助けるから、待ってて」
 呟いて、髪をわしゃわしゃと洗い流した。

 ――数分後。

 シャワールームを出たあたしは、タオルで髪を拭きながら戻った。
 「サイズ、合ってよかったわね」
 リン先生が微笑む。

 用意してくれた服も下着も、サイズぴったり。
 ……なんでサイズ知ってるんだろう。ちょっと怖い。

 真新しい白のTシャツと細めのデニム。
 生地が肌にさらっと馴染んで、清潔感のある柔軟剤の匂いがした。
 ――ちょっと、気分が上がる。

 「サキずるい! 俺もシャワーいこーっと!」
 寝ぼけ顔のソウマが、タオルと着替えを抱えて二階へ駆け上がる。

 「ま、今日は元気出しましょうってことで、ね!」
 リン先生が笑い、持ってきた包みを広げた。

 ふわっ、と部屋に香ばしい匂いが満ちる。
 「……うわ、フライドチキンだ!」

 黄金色に揚がったチキン。衣はカリッと音がしそうなほど香ばしく、油がきらりと光っている。
 付け合わせのポテトがこんがり揚がって、ハーブの香り。
 サラダには瑞々しいトマトとレタス、それにドレッシングの香りが食欲を刺激する。

 「先生、また飲む気ですか!?」
 「晩酌しないと、その日が終わった気がしないのよねぇ」
 コルクを“ポンッ”と開けて、赤ワインを注ぐ。

 「今から飲む気!?」
 「若い人が固いこと言わないの! ご神体の正体も分かったし、前祝いよ!」
 ウインクひとつ。

 「え、ご神体の正体って……」
 「ま、ソウマが来てからね! ソウマー! 早くおいでー!」

 「ちょっと待ってー姐さん!」
 二階からソウマの声が響く。

 「男の子のくせにお風呂長いわねぇ」
 「それ、ジェンダー差別です」
 「そう?」
 首を傾げるリン先生。

 「おー! フライドチキン!! 俺も食うー!」
 髪を拭きながらソウマが階段を駆け降りてきた。

 「はい、二人ともこれ持って」
 リン先生がグラスを二つ差し出す。ジュース入りだ。

 「レイ奪還がんばるぞ! おー!」
 三人でグラスを掲げる。

 グラスが軽くぶつかり、カチンと澄んだ音が響いた。
 その瞬間、ほんの少しだけ、胸の中の不安が薄れていく気がした。

 きっと大丈夫。
 レイは――必ず、帰ってくる。
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