東証バトルロワイヤル

人妻あず。

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第二章

爆弾落下!?閃光のロングの真実

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 「てか、サキってぶっちゃけアニキと“そういう関係”なの?」

 ――朝のギルドに、爆弾が落ちた。
 いやマジで。言葉の爆弾ってこういうのを言うんだと思う。

「ぶっ……!!」

 思わず紅茶を盛大に吹いた!
 あたりに紅茶の霧が舞い、カップがカタンと揺れる。

「な、な、なに言ってんのよソウマ!?!?」
「あ、やっぱ図星?」
「ないないないない!百パーない!!」
 ぶんぶんぶん!あたしは首を全力で横に振った。

 テーブルの向かいで、ソウマはニヤリと悪戯っぽく笑う。
「いや~、サキってそういうの疎そうだな~って思ってたけどさ、一応確認しようと思って。
 ひょっとして彼氏もいたことない感じ?」

「…………ない。」

 うっ。図星。
 ちょっとムッとしつつも、事実だから否定できない。

「こじらせ残念イケメンと恋愛初心者の恋……ふふ、可愛いじゃないの」

 カウンターから、リン先生がコーヒーを啜りながらにっこり。
 あの胸の揺れ方まで余裕たっぷりで、もうなんか腹立つ。

「勝手に人を恋に落とさないでください!!ていうか、なんでソウマがここにいるのよ!?」

「アニキ二日酔いだって聞いたから~、つまんなくて来ちゃった♪
 サキ~、後で闘技場行こうよ!寝てばっかだと体なまっちゃうよ~?」

「う、うん……」

 そうだ、いつまでも落ち込んでばかりじゃいられない。
 ここで止まってたら、何も変わらないんだ。

「闘技場が開くまでまだ時間あるでしょ? サキ、今から分析室にいらっしゃいな。ちょっと見せたいものがあるの」

 リン先生の目が、いつもの軽さを消して真剣そのものになる。

「はーい……なんだろ」

 あたしは先生の手招きに従って席を立った。

***

 分析室。
 以前、あたしが飛び出したままだった場所。

 中に入ると、立体ホログラムがふわりと光を放ち、
 そこに――見慣れた“知恵の実”の紋章が浮かび上がる。

 途端に、胃のあたりがぎゅっと痛んだ。

「あなたの才能――“チャート魔法陣解読”のスキルがあれば、きっと理解できるはずよ」

 リン先生が操作する指先から、光が走る。
 次の瞬間、青白いチャート魔法陣が目の前いっぱいに広がった。

「これって……3年前の暴落データ?」

「ええ。知恵の実に記録されていた“その時の戦場”よ。」

 赤――希望の陽線。
 緑――悲嘆の陰線。
 無数の光点が、まるで命のように瞬いている。
 戦士たちが買いを入れ、売りを放った“痕跡”が魔法陣の中に刻まれていた。

「……すごい。今までただの線にしか見えなかったのに。流れが……読める」

「知恵の実の才能の力ね。せっかく代償払ってまで手に入れたんだから、有効活用しないと」

 魔法陣の端に、浮かぶ名前。

「“ケンジ・トウジョウ”……これ、父さんのデータ?」

「そう。どこで買って、どこで売ったか。今のあなたなら読めるでしょ?」

 目を細める。チャートの軌跡が、心の中に刺さる。

「……父さん、ヘタクソ過ぎ。上がったときに買って、下がったときに売るとか。逆でしょそれ……」

 乾いた笑いが、喉の奥で引きつる。
 だけど、涙が出るほど懐かしいデータだった。

「次、レイの売買データ」

 リン先生が操作すると、魔法陣の光が変化し――
 端に新たな名前が浮かぶ。

「“レイ・キムラ”」

 見慣れたその名前に、あたしは思わず息をのんだ。

「……流石。低い位置から買ってる。
 あれ? でも、なんで売るときこんなに細かく分けて……?」

 首を傾げたあたしを、リン先生が静かに見つめる。

「気づいた? レイはね、自分のポジションを一気に手放すとチャート全体が崩れるの。
 でも利確しないと、自分が死ぬ。だから――細かく分けて、少しでも他の人が逃げられるように立ち回ってるのよ。
 一見非効率だけど……まさに“プロの仕事”ね」

 リン先生の声が、どこか誇らしげに響く。

 あたしは、言葉を失った。
 胸の奥で、熱いものが込み上げてくる。

「アニキ、かっけぇなぁ。俺なら一気に売っちゃうけどね」

 後ろで見ていたソウマが、ぽかんと呟いた。

「いろんな考え方があるけどね……チャート魔法陣に込められたレイの“思い”。
 今のあなたなら、わかるんじゃない?」

「……うん。なんか、分かった気がします。
 レイの思いも、父さんの思いも。」

 ふっと息を吐いた。
 胸の中のもやが、少し晴れた気がする。

「少し、すっきりした顔になったわね。サキ。」

 リン先生が柔らかく笑う。

「よっしゃー! そろそろ闘技場開くぞ! 行こうサキ!」

 ソウマがあたしの腕を引っ張る。
 勢いに押されて立ち上がるあたし。
 紅茶の香りが、ふと残っていた。

「よーし、今日こそリハビリ兼トレード修行だな!勝負だサキ!
」 ソウマに引きずられるように、あたしは研究棟を出た。
 朝の光が差し込む道を、彼のテンションだけが異様に高い。

「えっ!? ソウマと勝負するの?」
「たまにはいいだろー? サキがどれだけ強くなったか、俺も見てみたいし!」

「がうっ」

 ……お尻のポケットから、もふっと茶色い毛玉が顔を出した。

「ベ、ベアちゃん!?!?」

 ぴこぴこ耳を揺らしながら、ベア魔獣がソウマの背中にへばりついている。
 あたしは思わずしゃがみこんで、その頭をそっと撫でた。

「ベアちゃん……助けに来てくれて、ありがとね」
「ぐるる……♪」

 小さく喉を鳴らして気持ちよさそうに目を細めるベア魔獣。
 その様子を見て、ソウマがぽりぽりと頬をかく。

「なあ、サキ」
「ん?」

「俺さぁ、スーパーポジティブだからさ。後ろ向きなヤツの気持ちが、マジで分かんねーんだわ」

「あー、そんな感じする」

 即答したら、ソウマがジト目になった。
 でも気にせず、彼は続ける。

「でな。分かってみようと思って、さっき“えっくす亭”から研究棟まで――後ろ向きで歩いてみたんだ」

「ちょ、何やってんのよ!?」
 思わず吹き出した。

「そしたらさぁ、10メートルくらいで看板にドカン!ってぶつかって、
 次の瞬間、猫踏んづけてガリッて引っかかれて――このザマよ!」

 そう言って、手の甲の引っかき傷を見せてくる。

「あんた……バカなの?」
「あーっはっは! バカって言ったな! まあ聞けよ!」

 あたしが呆れながらも笑ってると、ソウマも笑いながら言った。

「で、諦めて普通に前向いて歩いたら――小銭拾ったんだ。
 だからさ、思ったんだよ。後ろ見るのって全然意味ねぇなって。
 前向いて歩いたほうが、お得だろ?」

「……」

 あたしは言葉を失った。
 ソウマの馬鹿みたいな話なのに、なんか、胸にぐっと来た。
 まっすぐで、バカで、でも――やさしい。
 そういうやつなんだ、ほんとに。

「よし、着いたぞ!」

 気づけば、闘技場の前に立っていた。
 今日も人が多い。ざわざわと歓声と金属音が入り混じっている。

「よし、この辺なら大丈夫だな。――全力でかかってこい、サキ。遠慮はいらねぇ!」

 ソウマが空いたスペースを見つけて、チャート魔法陣を構える。
 あたしも息を吸い込んだ。

「うん……! チャート魔法陣展開――チャートブレード、オン!」

 足元から魔法陣が浮かび上がる。
 緑の光が螺旋を描き、手の中にショートソードが形を成す。

「チャート魔法陣展開! チャートブレード、オン!」

 ソウマの周囲にも赤い光が炸裂。
 彼の手に現れたのは、バスタードソード並みの大剣。
 光刃が唸りを上げ、空気を焦がした。

「あれ、ソウマ。今日は剣、赤なんだね」
「おう。俺は天才だからな、二刀流も余裕。……行くぞ!」

 言うが早いか、ソウマが踏み込んできた。

 ――速いっ!!

 魔法陣は読める。動きの意図も、波の流れも分かる。
 でも、読み終わる前にソウマの一撃が――来る!

 ガキィンッ!!

 あたしのブレードが弾かれ、金属音が闘技場に響いた。
 手がしびれる。くっ、重い!

「ソウマって……ほんとに、速いし強いんだね……!」

 あたしが言うと、ソウマは口角を上げて、どや顔。

「言ったろ? 俺、天才だから。
 チャート魔法陣の読みの才能くらいじゃ――俺様には勝てねぇぞ!」

 ふふん、と鼻を鳴らして剣を構え直す。
 ベア魔獣が「がう!」と応援の声を上げた。

 ……まったく。
 バカで、単純で、でも――あたし、ちょっと笑ってた。
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