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第三章
魔法展開!?ロイの正体
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「チャート魔法陣展開――チャートブレード、オン!」
轟音とともに、真紅の光陣が地を焦がした。
空間が歪む。石の床が鳴動し、光のラインが奔る。
その中心に立つソウマの手には、灼けた鉄のように赤く輝くバスタードソード。
刃先が唸り、空気が火花を散らすたび、観客席の影がぱっと明滅した。まるでソウマ自身の持つの明るさみたい。
「俺のことも忘れんなよっ!」
ソウマの声が闘技場に響く。
その笑いには、恐怖も迷いもない。ただ、戦いの瞬間を楽しむ少年の鋭い光。
――この状況でよくそんなこと言えるな、ほんと。
「セーフゾーンウォール!」
リン先生の声が、音の波を切り裂くように高く響いた。
次の瞬間、透明なドームが展開。紅の光を反射して、球状の結界が四人と一匹をふわりと包み込む。
壁面を流れる文字のラインが、優しく脈動している。
「防御は任せて!」
「がうっ!」
ベア魔獣が低く吠えた。結界の縁を爪で引っかくと、そこに赤いスパークが弾ける。
戦闘前の緊張と、獣の血の昂ぶり――空気がびりびり震えた。
ソウマがこちらをちらりと見た。
その瞳が言っている――「行けるか?」
あたしは息を吸い込んで、うなずく。
「チャート魔法陣展開――チャートブレード、オン!」
床に走る光の文様があたしの足元で重なり合い、次の瞬間、赤い閃光が立ち上がった。
思わず目を閉じる。熱気が頬をなで、髪がふわりと浮いたのがわかった。
目を開けると、あたしの右手には真紅のショートソード。
まるで心臓の鼓動とリンクするように、刀身がトクトクと脈を打つ。
――この力は、誰かのためじゃない。
もう、絶望に震えてる時代は終わりだ。
「今度こそ――あたしは、あたしのために戦う!」
叫ぶと同時に、赤い光の波が天井を貫いた。
爆音とともに、魔力の粒が火花みたいに散る。
その赤は、全員の武器を照らしていた――ソウマも、リン先生も、レイも、そしてあたしも。
真紅の光が、まるで一つの意思を持つように、燃え上がる。
赤。それは絶望でも、復讐でもない――希望の色。
この瞬間、闘技場が、戦場に変わった。
「武力で解決、ですか……野蛮ですが――」
ロイ町長はふぅっと息を吐いた。その笑みは、あくまで余裕のまま。
「――たまにはいいでしょう。」
その言葉と同時に、足元の石畳がバリバリと音を立てた。
緑の光が吹き上がり、空気が震える。
風が逆巻き、砂塵が舞う。
まるで大地そのものが息を吸い込むみたいに。
「変身。」
ひとこと。その直後――轟音が炸裂した。
緑の奔流がロイ町長の身体を包み込み、肉体が螺旋状にねじれていく。
ローブの布が裂け、皮膚が鱗に変わり、背骨が異様な角度でしなりながら伸びてゆく。
骨が砕ける音。肉が再構築される音。
光の中から現れたのは――人間ではない。
「悲観と絶望は……すべての力を凌駕する……」
仮面の男が静かに呟いた。
緑の光がやみ、そこに現れたのは闇よりも黒い巨蛇。
全長十メートルを超える禍々しい影が、ズズズッと音を立てて地を這う。
鱗は油のように鈍く光り、動くたびに青緑の反射が走った。
眼は、まるで液体エメラルド。冷たく、どこか湿った光。
蛇の口元からは、毒液がポタリと落ち、石畳をジュッと焦がした。
「シューゥゥゥ……!」
吐息ひとつで空気が湿り、硫黄のような臭いが鼻をつく。
観客席の残骸が風圧で砕け飛んだ。
「うげっ……気持ち悪っ!」
ソウマが心底嫌そうに顔をしかめる。
「毒ガス仕様とか聞いてねぇぞ!?」
「これが……ロイ町長の本当の姿……」
リン先生が思わず息をのむ。
その声には、恐れと――ほんの少しの哀しみが混じっていた。
「人でもイナゴでもなく、蛇かよ……いいセンスしてやがるな。」
レイが視線を逸らさず言う。
剣を構えた姿勢のまま、冷たい瞳で相手を見据えていた。
「こいつを倒さなきゃ……あたしは前に進めない。」
あたしは拳を握りしめた。
首輪がじり、と熱を帯びる。
まるで内側から試されてるみたいに。
「まずは――俺からッ!」
ソウマが地を蹴る。
足元の魔法陣が一瞬で燃え上がり、炎の残光を引いて跳躍。
赤い残光を引くバスタードソードが唸りを上げ、蛇の胴体を一閃した――!
ザシュッ!!
鋼を裂くような手応えと同時に、緑色の液体が弾け飛ぶ。
しかし――それは血ではなかった。
蛇が大口を開け、シューシューと毒を吐く。
空気が一瞬で霧のように変わる。
「シャアアアアアアアアッ!!」
風圧が爆ぜ、ソウマの身体が弾き飛ばされる。
とっさに横へ跳ねて避けたが――顔に冷たい霧がかかった。
「だあああああああッ! 冷たっ……くっさぁぁ!!」
ソウマが涙目でのたうちまわる。
「鼻が、鼻が死ぬぅっ!」
蛇がゆっくりと首をもたげ、あたしたちを見下ろした。
その舌が、湿った音を立てながら、ゆらりと揺れる。
光を反射するたび、まるで“欲望そのもの”がうねっているみたいだった。
轟音とともに、真紅の光陣が地を焦がした。
空間が歪む。石の床が鳴動し、光のラインが奔る。
その中心に立つソウマの手には、灼けた鉄のように赤く輝くバスタードソード。
刃先が唸り、空気が火花を散らすたび、観客席の影がぱっと明滅した。まるでソウマ自身の持つの明るさみたい。
「俺のことも忘れんなよっ!」
ソウマの声が闘技場に響く。
その笑いには、恐怖も迷いもない。ただ、戦いの瞬間を楽しむ少年の鋭い光。
――この状況でよくそんなこと言えるな、ほんと。
「セーフゾーンウォール!」
リン先生の声が、音の波を切り裂くように高く響いた。
次の瞬間、透明なドームが展開。紅の光を反射して、球状の結界が四人と一匹をふわりと包み込む。
壁面を流れる文字のラインが、優しく脈動している。
「防御は任せて!」
「がうっ!」
ベア魔獣が低く吠えた。結界の縁を爪で引っかくと、そこに赤いスパークが弾ける。
戦闘前の緊張と、獣の血の昂ぶり――空気がびりびり震えた。
ソウマがこちらをちらりと見た。
その瞳が言っている――「行けるか?」
あたしは息を吸い込んで、うなずく。
「チャート魔法陣展開――チャートブレード、オン!」
床に走る光の文様があたしの足元で重なり合い、次の瞬間、赤い閃光が立ち上がった。
思わず目を閉じる。熱気が頬をなで、髪がふわりと浮いたのがわかった。
目を開けると、あたしの右手には真紅のショートソード。
まるで心臓の鼓動とリンクするように、刀身がトクトクと脈を打つ。
――この力は、誰かのためじゃない。
もう、絶望に震えてる時代は終わりだ。
「今度こそ――あたしは、あたしのために戦う!」
叫ぶと同時に、赤い光の波が天井を貫いた。
爆音とともに、魔力の粒が火花みたいに散る。
その赤は、全員の武器を照らしていた――ソウマも、リン先生も、レイも、そしてあたしも。
真紅の光が、まるで一つの意思を持つように、燃え上がる。
赤。それは絶望でも、復讐でもない――希望の色。
この瞬間、闘技場が、戦場に変わった。
「武力で解決、ですか……野蛮ですが――」
ロイ町長はふぅっと息を吐いた。その笑みは、あくまで余裕のまま。
「――たまにはいいでしょう。」
その言葉と同時に、足元の石畳がバリバリと音を立てた。
緑の光が吹き上がり、空気が震える。
風が逆巻き、砂塵が舞う。
まるで大地そのものが息を吸い込むみたいに。
「変身。」
ひとこと。その直後――轟音が炸裂した。
緑の奔流がロイ町長の身体を包み込み、肉体が螺旋状にねじれていく。
ローブの布が裂け、皮膚が鱗に変わり、背骨が異様な角度でしなりながら伸びてゆく。
骨が砕ける音。肉が再構築される音。
光の中から現れたのは――人間ではない。
「悲観と絶望は……すべての力を凌駕する……」
仮面の男が静かに呟いた。
緑の光がやみ、そこに現れたのは闇よりも黒い巨蛇。
全長十メートルを超える禍々しい影が、ズズズッと音を立てて地を這う。
鱗は油のように鈍く光り、動くたびに青緑の反射が走った。
眼は、まるで液体エメラルド。冷たく、どこか湿った光。
蛇の口元からは、毒液がポタリと落ち、石畳をジュッと焦がした。
「シューゥゥゥ……!」
吐息ひとつで空気が湿り、硫黄のような臭いが鼻をつく。
観客席の残骸が風圧で砕け飛んだ。
「うげっ……気持ち悪っ!」
ソウマが心底嫌そうに顔をしかめる。
「毒ガス仕様とか聞いてねぇぞ!?」
「これが……ロイ町長の本当の姿……」
リン先生が思わず息をのむ。
その声には、恐れと――ほんの少しの哀しみが混じっていた。
「人でもイナゴでもなく、蛇かよ……いいセンスしてやがるな。」
レイが視線を逸らさず言う。
剣を構えた姿勢のまま、冷たい瞳で相手を見据えていた。
「こいつを倒さなきゃ……あたしは前に進めない。」
あたしは拳を握りしめた。
首輪がじり、と熱を帯びる。
まるで内側から試されてるみたいに。
「まずは――俺からッ!」
ソウマが地を蹴る。
足元の魔法陣が一瞬で燃え上がり、炎の残光を引いて跳躍。
赤い残光を引くバスタードソードが唸りを上げ、蛇の胴体を一閃した――!
ザシュッ!!
鋼を裂くような手応えと同時に、緑色の液体が弾け飛ぶ。
しかし――それは血ではなかった。
蛇が大口を開け、シューシューと毒を吐く。
空気が一瞬で霧のように変わる。
「シャアアアアアアアアッ!!」
風圧が爆ぜ、ソウマの身体が弾き飛ばされる。
とっさに横へ跳ねて避けたが――顔に冷たい霧がかかった。
「だあああああああッ! 冷たっ……くっさぁぁ!!」
ソウマが涙目でのたうちまわる。
「鼻が、鼻が死ぬぅっ!」
蛇がゆっくりと首をもたげ、あたしたちを見下ろした。
その舌が、湿った音を立てながら、ゆらりと揺れる。
光を反射するたび、まるで“欲望そのもの”がうねっているみたいだった。
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