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ねこSAM

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三 邂逅(かいこう)

邂逅

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ほどなくして、女性の悲鳴というか、声にならない叫び声というか異様な声を聞いたような気がして起きた。起きてから耳をすましても何も聞こえなかった。もしかしたら夢の中だったのかもしれない。
スマホで時間を確認するとまだ日付が変わって間もないころだ。思えばトイレにも行きたい。寝る前に行ったのだが、少々飲みすぎただろうか。普段は飲んだときは朝まで目が覚めないものだが。
月明りで電気をつけてなくても足元は確認できるほどなのでそのままトイレに向かう。この時間だから廊下は静まり返っている。トイレの脇に設置してある自動販売機の「ジー」という音だけが響いている。たっぷりと用をたしてから部屋へと戻る。
もう何度も出入りしているので自分の部屋には目をつぶってでも辿り着けるようになった。玄関ドアを開けて入る。内側のドアも閉めて出てきたので、そのドアを半ば開けたとき。

「@&%*#!」

先ほどまで寝ていた私の布団の枕の上に黒っぽい物体がいた。そう、人の形はしていないが、あった、ではなく、いた、と感じた。とっさにドアを閉めて、一旦廊下まで戻ってしまった。
落ち着いて考えよう。あれは一体?高さは80cmくらいだろうか。形や模様はよくわからなくてただぼやっと黒く見える。子どもの落書きで黒のクレヨンで塗りつぶしたような。あれが座敷童子の姿なのだろうか。
数分だろうか、廊下で気持ちを整理してもう一度入室をチャレンジする。玄関ドアを開けて入り、内側のドアを恐る恐る開けてみる。

いなかった。

気のせいだったのだろうか、いや、確実にさっきはいた。ちょうどこの枕の上に立っていたのだ。枕を確かめてみるが濡れていたり、冷たかったりという異常はなかった。不安に駆られながらも布団に入り、寝るよりほかにすることが思いつかなかったので、もう一度寝ることにする。
いや、しかし、先ほどとは違って簡単に寝られる状況ではないよな。先ほどの光景を思い出していろいろと考えてしまう。大きさからすると小学校に上がるか上がらないかの年齢だろうか。性別は全くわからないな、何しろ形がなくて真っ黒なのだから。そしてこの枕のところで何をしていたのか。悪さをするものではないと聞いているのでそこまで恐怖ではないのだが、何しろそういう霊的な存在を見たことがなかったので、興奮が収まらない。目をつぶったまま何度も寝返りを繰り返す。

十分ほど寝付けない状態だっただろうか、ふと、気配を感じて、恐る恐る半目を開いてみる。

「ん?渦巻き?」

目の前に直径30cmほどの大きな渦巻きが左右に二つ見える。自分の頭がおかしくなったのか?半目だった目をもう少し見開いてよく見てみる。
渦巻きの正体は着物の柄だった。白地に黒で振り袖の部分に渦巻き模様が描かれている。先ほどはただ黒い塊のようにしか見えなかったものが、今度は人の形で着物の柄まで見える。しかし、月明りだけで暗いということもあるかもしれないが、色を失ったようにモノクロの状態で見える。
背の高さは先ほど見た塊と同じくらいの80cmくらい。年齢で言うと五、六歳くらいの身長だろうか。間違いなく先ほどもいた座敷童子だ、と思った。ただ、顔の辺りはまだ黒くもやっとしていて、表情はおろか、性別も判別できない。まあ、振り袖を着ているのだから女の子であろう。
その子が立っているのは私からは1mほどの距離で、テーブルの上に立っているようだ。振り袖の柄がはっきりと見えているのは、その子が両の腕を前に突き出していて、振り袖がちょうどきれいに真っ直ぐ垂れているからだ。そして、その手に何やら箱のようなものを持っている。
もう少しはっきりと見たくて、眼鏡を取ろうとしたのだが、先ほどテーブルに置いた眼鏡のちょうどそのあたりに立たれているので、取ろうにも取れない状態だった。

「・・・・・。」

「・・・・・。」

お互いに何も言葉を発せず、というか発することができず。ただ向かい合っている。しかし、どうやら、手に持った箱を受け取れと言っているような気がする。
果たして受け取ってもいいのだろうか。悪さをしないとはわかっているが、いざこれを受け取るとなると勇気がいる。

一旦目を閉じてしばらく考えてみよう。箱の中身は何なのだろうか。いや、想像もつかない。箱を受け取ったとして、自分の身に何か起こらないだろうか。いや、それもわからない。ただ、実際に相対してみて悪意があるようには思えなかった。これを受け取ったらいなくなってくれるのだろうか。

再び目をゆっくりと開けてみる。
先ほどと全く同じ状態で立っていた。
何ということだ、このままでは埒が開かないので、もう受け取ることにする。しかし、それでも実際に手を伸ばして受け取るのはさすがに怖いので、もう一度目を閉じて念じてみた。

「いただきます。」

こういう人知を超えた存在には言葉ではなく、テレパシーで念じただけで通じるような気がした。
念じてから数秒後だっただろうか、目を閉じたままであったが、脳裏がパーっと明るくなり、キラキラ星のようなものがまたたいた。
やばい、やばい、このまま死んでしまうのではないか、なんて思いながらも何ができるわけでもなく、ただ目を閉じたまま様子を見るしかできない。

その後次第に暗くなっていき、最後には漆黒の闇となった。
次に三つの数字がピンクのネオンサインが光るような感じで、パッ、パッ、パッ、と映し出された。

24、25、23

そして再び漆黒の闇となり、静寂が訪れた。恐る恐る目を開いてみるとそこに座敷童子の姿はなかった。
座敷童子は私にこれを伝えるために現れたのだろうか。そして、23、24、25、ではなくなぜこの順番なのだろうか。
あまりにも衝撃的な体験だったので興奮して寝られそうにないように思えるが、なぜか強烈な眠気に襲われ、意識を失うように眠っていた。
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