お気楽少女の異世界転移――チートな仲間と旅をする――

敬二 盤

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第三章後編『やっとついた?アストロデクス王国!』

関話 魔物の大群と筋肉 後編

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ピリピリとした空気が漂うリバの町の正門前。

そこには様々な武装をした冒険者達が緊張した面構えで大勢居た。

「冒険者諸君! 良く集まってくれた!」

そんな空気の中門の上の狙撃台から大声で演説を行うのは『冒険者ギルドリバの町支店』のギルドマスター、テック。

「これより! この町を守る為の防衛戦の説明をする!」

そうテックは宣言し、説明を始めた。

「まず戦闘職の冒険者はあの黒い魔物と戦って町を攻撃させない様にしてくれ! 近接職の場合は『魔法付与士エンチャンター』に《フレイムエンチャント》を武器に掛けてもらってから討伐に向かってくれ! 遠距離職の場合は炎で攻撃するんだ!」

冒険者達は士気を上げる為に一度雄叫びを上げた。

「《魔力遮断》を所持している者は魔物を出現させている魔法陣の破壊を頼む! この魔物の数だ、恐らく大量にあるだろうから支給された爆弾を使い、魔法陣を爆破してくれ!」

冒険者達はまた雄叫びを上げる。

「生産職は回復薬と爆弾を作り続けてくれ! きっとそれが皆の助けになる!」

冒険者達は三度目の雄叫びを上げる。

その光景を見ながら、テックは右手を払った。

「そして今回は! 非常に協力な仲間も居る!」

テックの右手の先に居た人物は跳び、テックの隣に着地した。

「はぁい♪ 皆♪ 私よぉ~♪」

そのムッキムキに鍛え上げられた筋肉、フリフリの衣装、ウッフ~ン♪ とでも言いたげな口元。

その協力な仲間とは………ジャスミンだ。

そしてその後ろから三つの影が狙撃台へと跳んだ。

「「「ふはははははは!」」」

その三人は笑い声を上げながら着地した。

「安心しろ! 皆の衆!」

「軟弱者の魔物になど!」

「我らの筋肉の前では無力だ!」

「「「筋肉こそ強さ! 強さこそ筋肉!」」」

筋肉三兄弟は、三人でポーズと取って決め台詞を言った。

その強大な力を持った四人に向けて、四度目にして最大の雄叫びが皆の鼓膜を震わせた。

そして丁度良いタイミングで、テックの元に誰かが走ってきた。

その人はテックに耳打ちをすると、またどこかへ走っていった。

「冒険者諸君! どうやら魔物達がもう少しで到着するみたいだ!」

その報告に、冒険者達はザワザワし始めた。

「大変な戦いになるはずだ………冒険者諸君! 覚悟は良いか!?」

その言葉の後の雄叫びと共に、開戦の火蓋は切って落とされるのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「『うぉぉぉぉぉぉぉ!』」

漆黒の魔物が大量に町に攻めてくる様子をその目で直接みた彼等は、勇敢にも声を上げて魔物へと突撃していく。

「『『万能なる魔の力よ』』」

魔法使い達は杖を魔物に向けて魔法の詠唱をしている。

弓士は矢に火を火を付け、魔物に向けて放った。

その矢に当たった魔物は、身体中に火が回り倒れ込んだが、後列の魔物に踏み潰されたり蹴飛ばされたりして火は消えた。

そして近接職の冒険者達と狼の魔物がぶつかり合った。

「よっと!………当たるかよっ!」

魔物が一人の冒険者に飛びかかって来るが、それを躱し、燃え盛る剣で切り付けた。

魔物は真っ二つになって暴れたが、切断面が焼かれているので復活できずに溶けていった。

「ふぅ………これなら復活もしなさ「グルァウッ!」」

その様子を見て一安心した冒険者の後ろから一回り大きな熊の魔物が爪を振り下ろす。

「危ない!」
 
しかしその爪は、大盾の冒険者に止められた。

「《カウンター》!」

そしてその爪の攻撃力が上乗せされた短剣が、熊の頭を切り裂いた。

「………大丈夫か?」

「おう! ありがとな!」

こんな助け合いや救助等がありながら向かえた後半戦、ギルドマスターはついに協力な一手を切ったのだった。

「四人共、魔法使い達の防壁も安定してきた………もう暴れて良いぞ?」

その言葉に、ジャスミン達は準備体操筋トレを止めた。

「やっとなのね………貴方達、またお願いね♪」

「「「ふはははは! 貴様とのトレーニング! なかなか楽しかったぞ! 次は本命のトレーニングだっ!」」」

ジャスミンと三兄弟は、左右の要所へと向かって跳躍した。


《ジャスミンside》


ドスゥゥンと大きな音を立てて着地したジャスミン。

その姿はまさに小さな巨人。

そんなジャスミンが魔物達を目の前にして放った第一声は………。

「うっふ~ん♪」

謎の声だった。

謎の声と共にお色気ポーズをしたジャスミンを見た周りの冒険者達は、なにやら悪寒を感じた。

それもその筈だ………何故ならそのポーズを視界に捉えた魔物達は、仲間割れを引き起こしているのだから。

「きゃ~♪ 私の為に争わないで~♪」

楽しそうにくるっと一回転したジャスミンの手には、黒をベースにピンクの装飾が付いている鞭があった。

「え~い♪」

その低音ボイスの掛け声と共に鞭はジャスミンを見ていなかった魔物に放たれる。

そしてその鞭に触れた魔物は………弾けとんだ。

「あっは~ん♪」

またもやセクシーポーズをしながら横に鞭を振るうと、鞭に触れた魔物が片っ端から弾けとんでいき、運良く避けられた魔物も、その攻撃の正体を見ようとした瞬間《魅了》されてしまった。

「まだまだ夜はこれからよ~♪」

まだ昼だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《筋肉side》


「「「ふはははははは! 筋肉こそ正義! 正義こそ筋肉!」」」

地面に小さめのクレーターを作りながら着地してそうそう叫んだ三兄弟は、魔物達の注目を集めた。

「「「さぁ! 今こそ筋肉の力を見せる時だ! 《パンプアップ》!」」」

三兄弟がそう叫ぶと、着ていた危ない水着は弾け飛び、その美しい筋肉の全身が露になった。

そして三兄弟の筋肉の周りには、水蒸気の様な物がモヤモヤと浮かんでいた。

「行くぞ! 魔物共! たぁっ!」

長男が凄まじい上腕二頭筋を見せつけながら、熊の魔物を殴ると、熊の魔物は他の魔物を巻き込んで吹き飛んでいった。

「うわぁぁ!」

別の熊の魔物に武器を吹き飛ばされ、その場にヘタリこんでいた冒険者に向かって、熊の爪が振り下ろされる。

「ふんぬぅ!」

しかしその爪は次男の美しい腹筋により防がれた。

「おりゃぁっ!」

そして今にも脈動しそうな三男の下腿三頭筋による跳躍からの飛び蹴りによって、熊の魔物は先程長男が吹き飛ばした熊の魔物の所まで吹き飛ばされた。

そんな調子で、魔物達は一塊になってバタバタと蠢いている。

そこへ魔法使い達の火魔法が飛んできて、魔物達は溶けた。

その様子を見ていたギルドマスターの元に、とある知らせが届いた。

「ギルドマスター! 魔法陣は全て破壊しました! ですが魔物が消えません!」

「何!?」

「しかもどうやら別動隊の魔物が眠っていたドラゴンを起こしました! そのドラゴンは現在こちらに向かってきています!」

「………その様子を見ていた者達は無事なのか?」

「えぇ、魔物達を止めようと戦って負傷した者が多いのですが………なんとか帰還の札で撤退を果たしました」

ギルドマスターは、それを聞いて口元に魔力を集めた。

「『冒険者諸君! 魔物の大群はもうすぐ片付く! しかしどうやらドラゴンがこちらに向かってきている様だ! しかしこちらには心強い味方が居る! 恐れる事無く魔物共を殲滅せよ!』」

そう《伝令》し、ギルドマスターは秘書を呼んだ。

「ミルタナ、もしかしたら俺の杖が必要になるかもしれん。 今すぐ取ってきてはくれないか?」

「ギルドマスター、お戦いになるのですか?」

ギルドマスターは、首を振る。

「念の為だ………もしSランク冒険者が倒れたら士気がどん底に落ちるだろう、その時は俺が出なければならないが………まぁ念には念を、と言う感じだな。 あのジャスミンが倒れてる所など想像できるか?」

「無理です」

即答であった。

「だろ? ほら、杖を取ってきてくれ」 

「わかりました」

そんな会話の数分後、突如空から一匹の巨大な影が降り立ってきた。

「貴方達~♪ 町の中へ戻りなさ~い♪ ここからは私達の出番よ♪」

「そうだとも!」

「敵がどんなに強大であろうとも!」

「我らの筋肉の前には無力!」

「「「筋肉こそ最強! 最強こそ筋肉!」」」

ドラゴンがブレスを放ち、魔物を焼き払いながら冒険者を丸焦げにしようとしてくるが、ぎりぎり魔法使い達の詠唱が間に合い、巨大な水の壁がブレスを遮った。

しかしその壁は、一回防いだだけで蒸発してしまった。

だがそれだけで十分だった。

冒険者達は避難し、ドラゴンに退治するのは四人の筋肉とジャスミンのみだ。

「グルァァァッ!」

ドラゴンが何かを感じとり、翼を広げ、町に向かって飛び立とうとする。

「あら♪ 行かせないわよ~♪」

ジャスミンは飛び立つドラゴンの翼に鞭を振るった。

するとドラゴンの翼に大きな穴が空き、バランスを崩して落ちた。

「今よ!」

「「「おう!」」」

筋肉三兄弟は、足に力を込めて空高く跳躍した。

そして三人はドラゴンを見据える。

「行くぞ! 長男よ!」

「おうっ!」

次男が腹筋に力を込めると、腹筋は輝き、それを空中で踏んだ長男は物凄いスピードで射出された。

「行くぞ! 三男よ!」

「来いっ!」

そして低めに跳躍していた三男の足の裏を、スピードを付けた拳で殴り付けた。

「「「食らえ! 我ら筋肉三兄弟の奥義! 筋肉こそ大正義マッスルイズパーフェクトジャスティス!」」」

三男は空中で半回転し、足をドラゴンに向けた。

その勢いのまま、ドラゴンに蹴りを食らわせ、めり込んだ。

ドラゴンの背中からは大量の血が吹き出て、その周囲は巨大なクレーターへと変化している。

そして空から降ってきた二人、ドラゴンの中から飛び出してきた三男がジャスミンの近くに着地した。

「やったわね♪」

「「「ふははははは! これで貴様も立派な兄弟だ!」」」

「そうね!」

「「「「筋肉こそ正義! 正義こそ筋肉(よ)!」」」」

こうして、リバの町の危機は去ったのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『といった感じに今回の危機は去りました』

(………あの三兄弟、まだ生きてたんだ)

『いやー、驚きですよねー! まさかあの方達が魔物だったなんて!』

(………ま、町が無事なら良いかな?)

『あっ、町の被害はありませんでしたが周辺の集落と地面のクレーターがありますので修復が得意な騎士達は派遣した方が宜しいかと。 ギルドマスターにはその事を報告しておきました』

(了解………じゃ、明日は休んでも良いよ)

『やったー! 久しぶりの休暇ですよ!』

(少し前までは『出番が無ーい!』って叫んでたのに)

『それとこれとは話が別です!』

(………あっ、明日はゼロクも休みだから………一緒に喫茶店でも行ってきたら? この前の調査中に二人共行きたいって言ってた店があったでしょ?)

『おぉ! ゼロクも!? こうしちゃいられません! あの店の情報を調べに行ってきます!』

(調査レポート纏めるの忘れないでよー)

連絡が切れ、ライトは頭を片手で押さえた。

「ライト? どうしたの?」

トランプを四枚持った実穂が、ライトを心配そうに見る。

「いや、何でもないよ………」

そう言いながらライトは王様に念話を繋げるのであった。
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