144 / 188
第三章後編『やっとついた?アストロデクス王国!』
関話 魔物の大群と筋肉 後編
しおりを挟む
ピリピリとした空気が漂うリバの町の正門前。
そこには様々な武装をした冒険者達が緊張した面構えで大勢居た。
「冒険者諸君! 良く集まってくれた!」
そんな空気の中門の上の狙撃台から大声で演説を行うのは『冒険者ギルドリバの町支店』のギルドマスター、テック。
「これより! この町を守る為の防衛戦の説明をする!」
そうテックは宣言し、説明を始めた。
「まず戦闘職の冒険者はあの黒い魔物と戦って町を攻撃させない様にしてくれ! 近接職の場合は『魔法付与士』に《フレイムエンチャント》を武器に掛けてもらってから討伐に向かってくれ! 遠距離職の場合は炎で攻撃するんだ!」
冒険者達は士気を上げる為に一度雄叫びを上げた。
「《魔力遮断》を所持している者は魔物を出現させている魔法陣の破壊を頼む! この魔物の数だ、恐らく大量にあるだろうから支給された爆弾を使い、魔法陣を爆破してくれ!」
冒険者達はまた雄叫びを上げる。
「生産職は回復薬と爆弾を作り続けてくれ! きっとそれが皆の助けになる!」
冒険者達は三度目の雄叫びを上げる。
その光景を見ながら、テックは右手を払った。
「そして今回は! 非常に協力な仲間も居る!」
テックの右手の先に居た人物は跳び、テックの隣に着地した。
「はぁい♪ 皆♪ 私よぉ~♪」
そのムッキムキに鍛え上げられた筋肉、フリフリの衣装、ウッフ~ン♪ とでも言いたげな口元。
その協力な仲間とは………ジャスミンだ。
そしてその後ろから三つの影が狙撃台へと跳んだ。
「「「ふはははははは!」」」
その三人は笑い声を上げながら着地した。
「安心しろ! 皆の衆!」
「軟弱者の魔物になど!」
「我らの筋肉の前では無力だ!」
「「「筋肉こそ強さ! 強さこそ筋肉!」」」
筋肉三兄弟は、三人でポーズと取って決め台詞を言った。
その強大な力を持った四人に向けて、四度目にして最大の雄叫びが皆の鼓膜を震わせた。
そして丁度良いタイミングで、テックの元に誰かが走ってきた。
その人はテックに耳打ちをすると、またどこかへ走っていった。
「冒険者諸君! どうやら魔物達がもう少しで到着するみたいだ!」
その報告に、冒険者達はザワザワし始めた。
「大変な戦いになるはずだ………冒険者諸君! 覚悟は良いか!?」
その言葉の後の雄叫びと共に、開戦の火蓋は切って落とされるのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「『うぉぉぉぉぉぉぉ!』」
漆黒の魔物が大量に町に攻めてくる様子をその目で直接みた彼等は、勇敢にも声を上げて魔物へと突撃していく。
「『『万能なる魔の力よ』』」
魔法使い達は杖を魔物に向けて魔法の詠唱をしている。
弓士は矢に火を火を付け、魔物に向けて放った。
その矢に当たった魔物は、身体中に火が回り倒れ込んだが、後列の魔物に踏み潰されたり蹴飛ばされたりして火は消えた。
そして近接職の冒険者達と狼の魔物がぶつかり合った。
「よっと!………当たるかよっ!」
魔物が一人の冒険者に飛びかかって来るが、それを躱し、燃え盛る剣で切り付けた。
魔物は真っ二つになって暴れたが、切断面が焼かれているので復活できずに溶けていった。
「ふぅ………これなら復活もしなさ「グルァウッ!」」
その様子を見て一安心した冒険者の後ろから一回り大きな熊の魔物が爪を振り下ろす。
「危ない!」
しかしその爪は、大盾の冒険者に止められた。
「《カウンター》!」
そしてその爪の攻撃力が上乗せされた短剣が、熊の頭を切り裂いた。
「………大丈夫か?」
「おう! ありがとな!」
こんな助け合いや救助等がありながら向かえた後半戦、ギルドマスターはついに協力な一手を切ったのだった。
「四人共、魔法使い達の防壁も安定してきた………もう暴れて良いぞ?」
その言葉に、ジャスミン達は準備体操を止めた。
「やっとなのね………貴方達、またお願いね♪」
「「「ふはははは! 貴様とのトレーニング! なかなか楽しかったぞ! 次は本命のトレーニングだっ!」」」
ジャスミンと三兄弟は、左右の要所へと向かって跳躍した。
《ジャスミンside》
ドスゥゥンと大きな音を立てて着地したジャスミン。
その姿はまさに小さな巨人。
そんなジャスミンが魔物達を目の前にして放った第一声は………。
「うっふ~ん♪」
謎の声だった。
謎の声と共にお色気ポーズをしたジャスミンを見た周りの冒険者達は、なにやら悪寒を感じた。
それもその筈だ………何故ならそのポーズを視界に捉えた魔物達は、仲間割れを引き起こしているのだから。
「きゃ~♪ 私の為に争わないで~♪」
楽しそうにくるっと一回転したジャスミンの手には、黒をベースにピンクの装飾が付いている鞭があった。
「え~い♪」
その低音ボイスの掛け声と共に鞭はジャスミンを見ていなかった魔物に放たれる。
そしてその鞭に触れた魔物は………弾けとんだ。
「あっは~ん♪」
またもやセクシーポーズをしながら横に鞭を振るうと、鞭に触れた魔物が片っ端から弾けとんでいき、運良く避けられた魔物も、その攻撃の正体を見ようとした瞬間《魅了》されてしまった。
「まだまだ夜はこれからよ~♪」
まだ昼だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《筋肉side》
「「「ふはははははは! 筋肉こそ正義! 正義こそ筋肉!」」」
地面に小さめのクレーターを作りながら着地してそうそう叫んだ三兄弟は、魔物達の注目を集めた。
「「「さぁ! 今こそ筋肉の力を見せる時だ! 《パンプアップ》!」」」
三兄弟がそう叫ぶと、着ていた危ない水着は弾け飛び、その美しい筋肉の全身が露になった。
そして三兄弟の筋肉の周りには、水蒸気の様な物がモヤモヤと浮かんでいた。
「行くぞ! 魔物共! たぁっ!」
長男が凄まじい上腕二頭筋を見せつけながら、熊の魔物を殴ると、熊の魔物は他の魔物を巻き込んで吹き飛んでいった。
「うわぁぁ!」
別の熊の魔物に武器を吹き飛ばされ、その場にヘタリこんでいた冒険者に向かって、熊の爪が振り下ろされる。
「ふんぬぅ!」
しかしその爪は次男の美しい腹筋により防がれた。
「おりゃぁっ!」
そして今にも脈動しそうな三男の下腿三頭筋による跳躍からの飛び蹴りによって、熊の魔物は先程長男が吹き飛ばした熊の魔物の所まで吹き飛ばされた。
そんな調子で、魔物達は一塊になってバタバタと蠢いている。
そこへ魔法使い達の火魔法が飛んできて、魔物達は溶けた。
その様子を見ていたギルドマスターの元に、とある知らせが届いた。
「ギルドマスター! 魔法陣は全て破壊しました! ですが魔物が消えません!」
「何!?」
「しかもどうやら別動隊の魔物が眠っていたドラゴンを起こしました! そのドラゴンは現在こちらに向かってきています!」
「………その様子を見ていた者達は無事なのか?」
「えぇ、魔物達を止めようと戦って負傷した者が多いのですが………なんとか帰還の札で撤退を果たしました」
ギルドマスターは、それを聞いて口元に魔力を集めた。
「『冒険者諸君! 魔物の大群はもうすぐ片付く! しかしどうやらドラゴンがこちらに向かってきている様だ! しかしこちらには心強い味方が居る! 恐れる事無く魔物共を殲滅せよ!』」
そう《伝令》し、ギルドマスターは秘書を呼んだ。
「ミルタナ、もしかしたら俺の杖が必要になるかもしれん。 今すぐ取ってきてはくれないか?」
「ギルドマスター、お戦いになるのですか?」
ギルドマスターは、首を振る。
「念の為だ………もしSランク冒険者が倒れたら士気がどん底に落ちるだろう、その時は俺が出なければならないが………まぁ念には念を、と言う感じだな。 あのジャスミンが倒れてる所など想像できるか?」
「無理です」
即答であった。
「だろ? ほら、杖を取ってきてくれ」
「わかりました」
そんな会話の数分後、突如空から一匹の巨大な影が降り立ってきた。
「貴方達~♪ 町の中へ戻りなさ~い♪ ここからは私達の出番よ♪」
「そうだとも!」
「敵がどんなに強大であろうとも!」
「我らの筋肉の前には無力!」
「「「筋肉こそ最強! 最強こそ筋肉!」」」
ドラゴンがブレスを放ち、魔物を焼き払いながら冒険者を丸焦げにしようとしてくるが、ぎりぎり魔法使い達の詠唱が間に合い、巨大な水の壁がブレスを遮った。
しかしその壁は、一回防いだだけで蒸発してしまった。
だがそれだけで十分だった。
冒険者達は避難し、ドラゴンに退治するのは四人の筋肉とジャスミンのみだ。
「グルァァァッ!」
ドラゴンが何かを感じとり、翼を広げ、町に向かって飛び立とうとする。
「あら♪ 行かせないわよ~♪」
ジャスミンは飛び立つドラゴンの翼に鞭を振るった。
するとドラゴンの翼に大きな穴が空き、バランスを崩して落ちた。
「今よ!」
「「「おう!」」」
筋肉三兄弟は、足に力を込めて空高く跳躍した。
そして三人はドラゴンを見据える。
「行くぞ! 長男よ!」
「おうっ!」
次男が腹筋に力を込めると、腹筋は輝き、それを空中で踏んだ長男は物凄いスピードで射出された。
「行くぞ! 三男よ!」
「来いっ!」
そして低めに跳躍していた三男の足の裏を、スピードを付けた拳で殴り付けた。
「「「食らえ! 我ら筋肉三兄弟の奥義! 筋肉こそ大正義!」」」
三男は空中で半回転し、足をドラゴンに向けた。
その勢いのまま、ドラゴンに蹴りを食らわせ、めり込んだ。
ドラゴンの背中からは大量の血が吹き出て、その周囲は巨大なクレーターへと変化している。
そして空から降ってきた二人、ドラゴンの中から飛び出してきた三男がジャスミンの近くに着地した。
「やったわね♪」
「「「ふははははは! これで貴様も立派な兄弟だ!」」」
「そうね!」
「「「「筋肉こそ正義! 正義こそ筋肉(よ)!」」」」
こうして、リバの町の危機は去ったのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『といった感じに今回の危機は去りました』
(………あの三兄弟、まだ生きてたんだ)
『いやー、驚きですよねー! まさかあの方達が魔物だったなんて!』
(………ま、町が無事なら良いかな?)
『あっ、町の被害はありませんでしたが周辺の集落と地面のクレーターがありますので修復が得意な騎士達は派遣した方が宜しいかと。 ギルドマスターにはその事を報告しておきました』
(了解………じゃ、明日は休んでも良いよ)
『やったー! 久しぶりの休暇ですよ!』
(少し前までは『出番が無ーい!』って叫んでたのに)
『それとこれとは話が別です!』
(………あっ、明日はゼロクも休みだから………一緒に喫茶店でも行ってきたら? この前の調査中に二人共行きたいって言ってた店があったでしょ?)
『おぉ! ゼロクも!? こうしちゃいられません! あの店の情報を調べに行ってきます!』
(調査レポート纏めるの忘れないでよー)
連絡が切れ、ライトは頭を片手で押さえた。
「ライト? どうしたの?」
トランプを四枚持った実穂が、ライトを心配そうに見る。
「いや、何でもないよ………」
そう言いながらライトは王様に念話を繋げるのであった。
そこには様々な武装をした冒険者達が緊張した面構えで大勢居た。
「冒険者諸君! 良く集まってくれた!」
そんな空気の中門の上の狙撃台から大声で演説を行うのは『冒険者ギルドリバの町支店』のギルドマスター、テック。
「これより! この町を守る為の防衛戦の説明をする!」
そうテックは宣言し、説明を始めた。
「まず戦闘職の冒険者はあの黒い魔物と戦って町を攻撃させない様にしてくれ! 近接職の場合は『魔法付与士』に《フレイムエンチャント》を武器に掛けてもらってから討伐に向かってくれ! 遠距離職の場合は炎で攻撃するんだ!」
冒険者達は士気を上げる為に一度雄叫びを上げた。
「《魔力遮断》を所持している者は魔物を出現させている魔法陣の破壊を頼む! この魔物の数だ、恐らく大量にあるだろうから支給された爆弾を使い、魔法陣を爆破してくれ!」
冒険者達はまた雄叫びを上げる。
「生産職は回復薬と爆弾を作り続けてくれ! きっとそれが皆の助けになる!」
冒険者達は三度目の雄叫びを上げる。
その光景を見ながら、テックは右手を払った。
「そして今回は! 非常に協力な仲間も居る!」
テックの右手の先に居た人物は跳び、テックの隣に着地した。
「はぁい♪ 皆♪ 私よぉ~♪」
そのムッキムキに鍛え上げられた筋肉、フリフリの衣装、ウッフ~ン♪ とでも言いたげな口元。
その協力な仲間とは………ジャスミンだ。
そしてその後ろから三つの影が狙撃台へと跳んだ。
「「「ふはははははは!」」」
その三人は笑い声を上げながら着地した。
「安心しろ! 皆の衆!」
「軟弱者の魔物になど!」
「我らの筋肉の前では無力だ!」
「「「筋肉こそ強さ! 強さこそ筋肉!」」」
筋肉三兄弟は、三人でポーズと取って決め台詞を言った。
その強大な力を持った四人に向けて、四度目にして最大の雄叫びが皆の鼓膜を震わせた。
そして丁度良いタイミングで、テックの元に誰かが走ってきた。
その人はテックに耳打ちをすると、またどこかへ走っていった。
「冒険者諸君! どうやら魔物達がもう少しで到着するみたいだ!」
その報告に、冒険者達はザワザワし始めた。
「大変な戦いになるはずだ………冒険者諸君! 覚悟は良いか!?」
その言葉の後の雄叫びと共に、開戦の火蓋は切って落とされるのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「『うぉぉぉぉぉぉぉ!』」
漆黒の魔物が大量に町に攻めてくる様子をその目で直接みた彼等は、勇敢にも声を上げて魔物へと突撃していく。
「『『万能なる魔の力よ』』」
魔法使い達は杖を魔物に向けて魔法の詠唱をしている。
弓士は矢に火を火を付け、魔物に向けて放った。
その矢に当たった魔物は、身体中に火が回り倒れ込んだが、後列の魔物に踏み潰されたり蹴飛ばされたりして火は消えた。
そして近接職の冒険者達と狼の魔物がぶつかり合った。
「よっと!………当たるかよっ!」
魔物が一人の冒険者に飛びかかって来るが、それを躱し、燃え盛る剣で切り付けた。
魔物は真っ二つになって暴れたが、切断面が焼かれているので復活できずに溶けていった。
「ふぅ………これなら復活もしなさ「グルァウッ!」」
その様子を見て一安心した冒険者の後ろから一回り大きな熊の魔物が爪を振り下ろす。
「危ない!」
しかしその爪は、大盾の冒険者に止められた。
「《カウンター》!」
そしてその爪の攻撃力が上乗せされた短剣が、熊の頭を切り裂いた。
「………大丈夫か?」
「おう! ありがとな!」
こんな助け合いや救助等がありながら向かえた後半戦、ギルドマスターはついに協力な一手を切ったのだった。
「四人共、魔法使い達の防壁も安定してきた………もう暴れて良いぞ?」
その言葉に、ジャスミン達は準備体操を止めた。
「やっとなのね………貴方達、またお願いね♪」
「「「ふはははは! 貴様とのトレーニング! なかなか楽しかったぞ! 次は本命のトレーニングだっ!」」」
ジャスミンと三兄弟は、左右の要所へと向かって跳躍した。
《ジャスミンside》
ドスゥゥンと大きな音を立てて着地したジャスミン。
その姿はまさに小さな巨人。
そんなジャスミンが魔物達を目の前にして放った第一声は………。
「うっふ~ん♪」
謎の声だった。
謎の声と共にお色気ポーズをしたジャスミンを見た周りの冒険者達は、なにやら悪寒を感じた。
それもその筈だ………何故ならそのポーズを視界に捉えた魔物達は、仲間割れを引き起こしているのだから。
「きゃ~♪ 私の為に争わないで~♪」
楽しそうにくるっと一回転したジャスミンの手には、黒をベースにピンクの装飾が付いている鞭があった。
「え~い♪」
その低音ボイスの掛け声と共に鞭はジャスミンを見ていなかった魔物に放たれる。
そしてその鞭に触れた魔物は………弾けとんだ。
「あっは~ん♪」
またもやセクシーポーズをしながら横に鞭を振るうと、鞭に触れた魔物が片っ端から弾けとんでいき、運良く避けられた魔物も、その攻撃の正体を見ようとした瞬間《魅了》されてしまった。
「まだまだ夜はこれからよ~♪」
まだ昼だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《筋肉side》
「「「ふはははははは! 筋肉こそ正義! 正義こそ筋肉!」」」
地面に小さめのクレーターを作りながら着地してそうそう叫んだ三兄弟は、魔物達の注目を集めた。
「「「さぁ! 今こそ筋肉の力を見せる時だ! 《パンプアップ》!」」」
三兄弟がそう叫ぶと、着ていた危ない水着は弾け飛び、その美しい筋肉の全身が露になった。
そして三兄弟の筋肉の周りには、水蒸気の様な物がモヤモヤと浮かんでいた。
「行くぞ! 魔物共! たぁっ!」
長男が凄まじい上腕二頭筋を見せつけながら、熊の魔物を殴ると、熊の魔物は他の魔物を巻き込んで吹き飛んでいった。
「うわぁぁ!」
別の熊の魔物に武器を吹き飛ばされ、その場にヘタリこんでいた冒険者に向かって、熊の爪が振り下ろされる。
「ふんぬぅ!」
しかしその爪は次男の美しい腹筋により防がれた。
「おりゃぁっ!」
そして今にも脈動しそうな三男の下腿三頭筋による跳躍からの飛び蹴りによって、熊の魔物は先程長男が吹き飛ばした熊の魔物の所まで吹き飛ばされた。
そんな調子で、魔物達は一塊になってバタバタと蠢いている。
そこへ魔法使い達の火魔法が飛んできて、魔物達は溶けた。
その様子を見ていたギルドマスターの元に、とある知らせが届いた。
「ギルドマスター! 魔法陣は全て破壊しました! ですが魔物が消えません!」
「何!?」
「しかもどうやら別動隊の魔物が眠っていたドラゴンを起こしました! そのドラゴンは現在こちらに向かってきています!」
「………その様子を見ていた者達は無事なのか?」
「えぇ、魔物達を止めようと戦って負傷した者が多いのですが………なんとか帰還の札で撤退を果たしました」
ギルドマスターは、それを聞いて口元に魔力を集めた。
「『冒険者諸君! 魔物の大群はもうすぐ片付く! しかしどうやらドラゴンがこちらに向かってきている様だ! しかしこちらには心強い味方が居る! 恐れる事無く魔物共を殲滅せよ!』」
そう《伝令》し、ギルドマスターは秘書を呼んだ。
「ミルタナ、もしかしたら俺の杖が必要になるかもしれん。 今すぐ取ってきてはくれないか?」
「ギルドマスター、お戦いになるのですか?」
ギルドマスターは、首を振る。
「念の為だ………もしSランク冒険者が倒れたら士気がどん底に落ちるだろう、その時は俺が出なければならないが………まぁ念には念を、と言う感じだな。 あのジャスミンが倒れてる所など想像できるか?」
「無理です」
即答であった。
「だろ? ほら、杖を取ってきてくれ」
「わかりました」
そんな会話の数分後、突如空から一匹の巨大な影が降り立ってきた。
「貴方達~♪ 町の中へ戻りなさ~い♪ ここからは私達の出番よ♪」
「そうだとも!」
「敵がどんなに強大であろうとも!」
「我らの筋肉の前には無力!」
「「「筋肉こそ最強! 最強こそ筋肉!」」」
ドラゴンがブレスを放ち、魔物を焼き払いながら冒険者を丸焦げにしようとしてくるが、ぎりぎり魔法使い達の詠唱が間に合い、巨大な水の壁がブレスを遮った。
しかしその壁は、一回防いだだけで蒸発してしまった。
だがそれだけで十分だった。
冒険者達は避難し、ドラゴンに退治するのは四人の筋肉とジャスミンのみだ。
「グルァァァッ!」
ドラゴンが何かを感じとり、翼を広げ、町に向かって飛び立とうとする。
「あら♪ 行かせないわよ~♪」
ジャスミンは飛び立つドラゴンの翼に鞭を振るった。
するとドラゴンの翼に大きな穴が空き、バランスを崩して落ちた。
「今よ!」
「「「おう!」」」
筋肉三兄弟は、足に力を込めて空高く跳躍した。
そして三人はドラゴンを見据える。
「行くぞ! 長男よ!」
「おうっ!」
次男が腹筋に力を込めると、腹筋は輝き、それを空中で踏んだ長男は物凄いスピードで射出された。
「行くぞ! 三男よ!」
「来いっ!」
そして低めに跳躍していた三男の足の裏を、スピードを付けた拳で殴り付けた。
「「「食らえ! 我ら筋肉三兄弟の奥義! 筋肉こそ大正義!」」」
三男は空中で半回転し、足をドラゴンに向けた。
その勢いのまま、ドラゴンに蹴りを食らわせ、めり込んだ。
ドラゴンの背中からは大量の血が吹き出て、その周囲は巨大なクレーターへと変化している。
そして空から降ってきた二人、ドラゴンの中から飛び出してきた三男がジャスミンの近くに着地した。
「やったわね♪」
「「「ふははははは! これで貴様も立派な兄弟だ!」」」
「そうね!」
「「「「筋肉こそ正義! 正義こそ筋肉(よ)!」」」」
こうして、リバの町の危機は去ったのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『といった感じに今回の危機は去りました』
(………あの三兄弟、まだ生きてたんだ)
『いやー、驚きですよねー! まさかあの方達が魔物だったなんて!』
(………ま、町が無事なら良いかな?)
『あっ、町の被害はありませんでしたが周辺の集落と地面のクレーターがありますので修復が得意な騎士達は派遣した方が宜しいかと。 ギルドマスターにはその事を報告しておきました』
(了解………じゃ、明日は休んでも良いよ)
『やったー! 久しぶりの休暇ですよ!』
(少し前までは『出番が無ーい!』って叫んでたのに)
『それとこれとは話が別です!』
(………あっ、明日はゼロクも休みだから………一緒に喫茶店でも行ってきたら? この前の調査中に二人共行きたいって言ってた店があったでしょ?)
『おぉ! ゼロクも!? こうしちゃいられません! あの店の情報を調べに行ってきます!』
(調査レポート纏めるの忘れないでよー)
連絡が切れ、ライトは頭を片手で押さえた。
「ライト? どうしたの?」
トランプを四枚持った実穂が、ライトを心配そうに見る。
「いや、何でもないよ………」
そう言いながらライトは王様に念話を繋げるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる