お気楽少女の異世界転移――チートな仲間と旅をする――

敬二 盤

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第三章後編『やっとついた?アストロデクス王国!』

関話 クルミはアスター

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………ここはどこなのだろう?

ぼんやりとした意識の中、私は真っ暗な辺りを見回した。

真っ暗と言ってもただ暗いだけでは無い。

まるでその空間が存在していなくて、少しでも触れたら飲み込まれるかの様な暗さだ。

………夢か。

私は昔から良くこんな夢を見る。

真っ暗で何も存在しない空間に自分だけがポツンと立っている。

徐々に時間の感覚がわからなくなり、妙な不安感に教われる。

そして狂いかけた頃に目が覚める。

その時には寸前まで感じていた狂気も、妙な恐怖と共にやってきていた虚しさも全て消え失せている。

この夢を見る様になったのは村を焼かれたその日から。

この夢を見なくなったのはご主人様と出会った時からだったはずだ。

………やっぱり来た。

私は妙な不安感に襲われ始めた。

この感覚だけは、何をしても慣れない。

昔、この感覚に陥った時は叫んでみたり、走り回ったり、自分を傷付けてみたりしたけど全て無意味だった。

それ所か不安感がもっと増大した。

だから私はこうやって何もせずに夢が覚めるのを待つ。

夢が覚めるまで……….何か聞こえた。

おかしい。 今までこの夢に声が入る事なんて無かった筈………。

『………ルー………』

………何だろう? この声、聞き覚えがある。

この声を聞いていると、妙な不安感も恐怖も、全てが消え去った。

『……ア……………ター』

その声は、まるで近付いて来る様に鮮明になっていく。

しかし、その声は止んでしまった。

私は不思議に思い、その声の主を見ようと振り返った瞬間、私の視界は闇に覆われた。

それと同時に、懐かしく、安心感のある声で、私に質問をしてきた。

『………アスター、私は誰だと思う?』

「………その呼び方をする女性は………お母さんしかいないじゃないですか……」

私は、震える声で答えた。

『………当たりよ』

そして声の主………お母さんは私を抱き締めた。

「………おかぁ………さん?」

『えぇ』

………嘘だ、お母さんは私の目の前で死んだ筈。

今でもその光景は鮮明に思い出せる。

消える事の無い深い傷になった筈だ。

『………信じられないのはわかるわよ?』

そうだ、これは夢だった。

この夢を怖がった私が出した幻なんだ。

そうだ、きっとそうに違いない。

『でもね? これだけは言わせて?』

私はご主人様にずっと付いていくと誓ったのに。

守る為に強くなろうと誓ったのに。

こんな所でお母さんに会ってしまったら………

『大好きよ。 アスター』

泣いてしまうじゃないですか………。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「………ぅ……グスッ………」

『………落ち着いたかしら?』

「………はい、落ち着きました」

私がそう言って顔を上げると、半透明のお母さんが私の頭を撫でる。

『好きなだけ泣いても良いのよ? ここには私とアスターしか居ないんだから』

「………もう大丈夫です」

久しぶりに見たお母さんの顔は、若々しく、若干若返っている様に見える。

『………私には敬語を使わなくても良いのよ? 家族でしょう?』

「いえ、もう癖となってしまったので………」

『そう………』

お母さんは、私の頬を撫でた。

『………アスターの新しい主人はどんな人なの? 酷い事されてない?』

「ご主人様は良い方ですよ。 奴隷の筈の私に『友達の様に振る舞ってほしい』等と言い出す程です」

『確かにそれは良い人ね』

久しぶりに聞いたお母さんの声は、少し透き通って聞こえる。

「………お母さんは、どうやってここに?」

『え? あっ、それは………まだ言えないのよ』

お母さんは一瞬動揺して、誤魔化す様に笑った。

『………良いネックレスね? 主人に買ってもらったの?』

お母さんは、私が服の間に隠していたネックレスを取り出し、問い掛けてきた。

「はい、足音を消す事ができるそうです」

私がそう答えると、お母さんはネックレスの飾り部分を手で包み込み、何かを祈る様な姿勢を取った。

『………クルミがいつまでも、幸せで居られます様に』

私は動揺の気持ちと、恥ずかしい気持ちが混ざり、何もできなかった。

お母さんはネックレスから手を離し、服の中へと戻してくれた。

『クルミが幸せで居られる様におまじないを掛けてあげたわ』

お母さんはそう言いながら優しく微笑んできた。

「………ありがとうございます」

私がお礼を言うと同時に、お母さんの半透明の体から光の泡?が出始めた。

『………もう時間切れみたいね?』

お母さんは悲しそうに呟くが、すぐに笑顔に戻って私を優しく撫でた。

「………お母さんに会えて嬉しかった」

『私もよ………あっ、まだ良い忘れてた事があった気がするわね』

「えっ」

………本当に昔から変わっていない。

大人びていてゆったりとしているのに、どこか抜けている。

そんなお母さんを私は大好きだった。

『ちょっと待っててね? すぐに思い出すから………え? 後数分? もう少し長くできないの?………そう、この子が危険になるなら仕方無いわね………』

………お母さん、誰と話してるんだろう?

『アスター………いや、クルミ? お母さんはいつも、貴女の側にいるからね? そして、すぐに会いに行くわ』

「………もう死んでいるから会えませんよ?」

お母さんのこんな天然な所が好きだった。

『うーん………そうだけどそうじゃないのよ………クルミ、今の主人を大切にしなさい。 愛の力は他のどの力よりも強いのよ?』

お母さんはそう言って、私を正面から抱き締めた。

『………"またね"、クルミ』

「さようなら、お母さん」

そしてお母さんは………光になって消えていった。

それと同時に周りの真っ暗な景色も変化していき、光に包まれた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「………」

朝にしては眩しすぎる日差しを目に受け、目が覚める。

そして先程まで訓練をしていて、自分で難易度を上げて力を使い果たして倒れた所までは覚えている。

勿論、夢の事も。

………あの夢のお母さんは、私が作り出した幻かもしれない。

本物みたいだったが、所詮は夢だ。

しかし、私に与えてくれた愛情は本物だった。

私が起き上がると、そこには《スコープアイ》を使用しているのか、目を瞑りながら唸っているご主人様と、ご主人様を心配そうに見つめる双子の姿があった。

………ご主人様の周りでは、大変な出来事が良く起こりますね。

それでも私はご主人様に付いていく。

そう、心に決めたから。

私はベットから出て、ご主人様に声を掛けた。

色が変わり、装飾も地味になったネックレスに気が付かないまま。

「どうされたのですか? ご主人様」
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