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第一部【霧夏邸幻想 ―Primal prayer-】
十九話 ひとまずの帰還
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地下での探索を終え、103号室へ戻った俺たちは、ハルナたちに温かく迎えられた。
椅子に腰を下ろして足を休ませながらその成果を報告すると、皆一様に驚いたのだった。
「そっか……怪しい実験は本当にあったんだ。でも、それは湯越さんがしていたんじゃなかった……」
「もっと昔の人たちが、何らかの目的のために人体実験をしていたんですね……」
ハルナもユリカちゃんも、目を潤ませながら言う。サツキも、黙ったままではあったが、等しくショックを受けている様子だった。
「まあ、それに着想を得て降霊術の深みに堕ちていった……なんて考えられなくもないけど。邪推しても仕方ないよね」
マヤはまだ、湯越郁斗への不信感を拭えてはいないようだったが、彼の予想が正しい可能性もゼロではない。
否定したい気持ちはあれど、口に出すのは止めておいた。
それよりも今は、清めの水を手に入れられたことが重要だ。
「何とか手に入れた、清めの水。これを使ってボスの霊を浄化する必要があるわけだ」
「ソウくん、ボスなんてゲームみたいに……」
「悪い悪い」
「で、ソウシの言うボスっていうのが要するに……湯越留美さんだな」
「留美さんの霊を鎮められれば、僕たちは脱出できる……?」
脱出できる。その言葉で、皆の表情が僅かに和らいだ気がした。
そうとも……脱出できるのだ。俺たちは、ここに閉じ込められたままむざむざ殺されたりするものか。
「……というわけで、だ。今度は留美さんの遺体を見つけに、探索へ出ることにするぜ。湯越さんは留美さんの遺体を持ち帰った後、葬儀を行った形跡がなかったらしいからな。この邸内に遺体があるはずなんだ」
「そう言えば、葬儀をしてないって噂もあったわね……遺体がこの邸内にあったからこそ、留美さんの悪霊が現れたとも言えるわけか」
「ああ。ハルナの言う通り、悪霊が現れた以上留美さんの体の一部はどこかにあるだろう。……それを俺たちで見つけに行くよ」
「水だって手に入ったんだ、次も上手くいくさ。だからのんびり待っててくれ」
ソウシは四人を安心させるようにそう言った。ちょっとフラグのようにも聞こえてしまうが、そんなものはフィクションのネタだ。
大丈夫、俺たちなら上手くいく。
「じゃ、行ってくる。戻って来たときは、皆で脱出しよう」
「よろしくね、二人とも。頼りにしてるんだから」
「任せとけ、マヤ。必ず生きてここを出るぞ」
ソウシの力強い言葉に、六人全員で頷き合い、脱出を誓うのだった。
椅子に腰を下ろして足を休ませながらその成果を報告すると、皆一様に驚いたのだった。
「そっか……怪しい実験は本当にあったんだ。でも、それは湯越さんがしていたんじゃなかった……」
「もっと昔の人たちが、何らかの目的のために人体実験をしていたんですね……」
ハルナもユリカちゃんも、目を潤ませながら言う。サツキも、黙ったままではあったが、等しくショックを受けている様子だった。
「まあ、それに着想を得て降霊術の深みに堕ちていった……なんて考えられなくもないけど。邪推しても仕方ないよね」
マヤはまだ、湯越郁斗への不信感を拭えてはいないようだったが、彼の予想が正しい可能性もゼロではない。
否定したい気持ちはあれど、口に出すのは止めておいた。
それよりも今は、清めの水を手に入れられたことが重要だ。
「何とか手に入れた、清めの水。これを使ってボスの霊を浄化する必要があるわけだ」
「ソウくん、ボスなんてゲームみたいに……」
「悪い悪い」
「で、ソウシの言うボスっていうのが要するに……湯越留美さんだな」
「留美さんの霊を鎮められれば、僕たちは脱出できる……?」
脱出できる。その言葉で、皆の表情が僅かに和らいだ気がした。
そうとも……脱出できるのだ。俺たちは、ここに閉じ込められたままむざむざ殺されたりするものか。
「……というわけで、だ。今度は留美さんの遺体を見つけに、探索へ出ることにするぜ。湯越さんは留美さんの遺体を持ち帰った後、葬儀を行った形跡がなかったらしいからな。この邸内に遺体があるはずなんだ」
「そう言えば、葬儀をしてないって噂もあったわね……遺体がこの邸内にあったからこそ、留美さんの悪霊が現れたとも言えるわけか」
「ああ。ハルナの言う通り、悪霊が現れた以上留美さんの体の一部はどこかにあるだろう。……それを俺たちで見つけに行くよ」
「水だって手に入ったんだ、次も上手くいくさ。だからのんびり待っててくれ」
ソウシは四人を安心させるようにそう言った。ちょっとフラグのようにも聞こえてしまうが、そんなものはフィクションのネタだ。
大丈夫、俺たちなら上手くいく。
「じゃ、行ってくる。戻って来たときは、皆で脱出しよう」
「よろしくね、二人とも。頼りにしてるんだから」
「任せとけ、マヤ。必ず生きてここを出るぞ」
ソウシの力強い言葉に、六人全員で頷き合い、脱出を誓うのだった。
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