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第二部【三神院幻想 ―Dawn comes to the girl―】
二十四話 降霊術の誘い①(現実世界)
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黒木家での窮地を脱し、何とか逃げ切れた僕たちは、ミオくんの家までやって来ていた。
命の恩人である、法月東菜ちゃんとともに。
「狭くて申し訳ない……」
「そんなことないよ。それより、さっきのことについて話してくれないかい?」
ハルナちゃんの紹介もまだだったので、僕はそのことも含め、これまでの経緯の説明を求めた。
彼が今までに何をしてきたのか。
――と、そのとき。
「私も気になるわね」
という声とともに、部屋の片隅からぼんやりと人の輪郭が浮かび上がってきた。
……ヨウノだった。
「えっ? よ……ヨウノさん?」
ミオがすっかり驚いて、座ったまま仰け反ってしまう。
ヨウノはそんな彼を見て笑いつつ、
「ごめんね、驚かせちゃって。このメンバーなら出てきてもよさそうだと思ったから」
「本当に……ヨウノさんなんですね」
「ええ、そうよ」
こうして実体――というより霊体か――が存在しているし、ミオくんも疑うことはしなかった。
「恐らく……私はあなたの行った降霊術によって呼び出されちゃったの。だから、詳しく聞かせてちょうだい。あなたがどうして降霊術を知り、それを行ったのか」
「……分かりました」
一度だけハルナちゃんの方を見てから、諦めたようにミオくんは話し始める。
降霊術にまつわる彼の物語を。
「降霊術について知ることになったきっかけは、隣にいるハルナちゃんなんです。ハルナちゃんは、霊の仕業だと噂になったあの霧夏邸で起きた事件の、生存者だったから」
「広めないでほしいんですけどね。……ま、あのときは色々あって、なんとか生きて帰ってはこれたんですけど」
ハルナちゃんは照れ臭そうに頭を撫でつけながら言った。
「あの事件で、清めの水っていうのをお守り代わりに持ってたんですよ。二人を襲った怪物に水が効いたってことは、アレも悪霊的なものだったのかなあ……」
「……うーん、流石はあの事件の当事者だね。霊や怪物なんて非常識なものを見て、そんなに冷静でいられるとは……」
「いえ、怖いですけどね……まあ、見てない人よりかは幾分マシなだけですよ」
怖い、という言は嘘でないらしく、彼女の表情は何となく固かった。
「えと、それでですね。ハルナちゃんは大学の同級生なんですけど、出会ったのは三神院だったんです。伊吹というお医者さんと知り合いみたいで、お見舞い帰りの僕と遭遇したんですよ」
「三神院か……僕もミオくんも、見舞いには行くもんね」
「ええ。偶然の出会いから交流するようになった僕たちは、同じ講義のときは隣に座ってお喋りしたりするようになりました。ハルナちゃん、大体が彼氏の話なんですけどね……」
と、そこでハルナちゃんがミオくんをキッと睨んだので、余計なことを言ったようだと彼はすぐに話を本筋に戻す。
「ま、まあそんな話の中で、一度だけ降霊術のことが話題に上ったんです。霧夏邸での事件は僕も知っていたので、あの事件の生き残りがハルナちゃんだったんだと、僕はびっくりしました」
「あのときは口が滑っちゃったなあって、ちょっと後悔してるんですけどねー」
「あはは……それでまあ、降霊術のことがぼんやりと頭の中に残り続けていたんですよ。そして一昨日、僕はハルナちゃんに連絡を取った……」
命の恩人である、法月東菜ちゃんとともに。
「狭くて申し訳ない……」
「そんなことないよ。それより、さっきのことについて話してくれないかい?」
ハルナちゃんの紹介もまだだったので、僕はそのことも含め、これまでの経緯の説明を求めた。
彼が今までに何をしてきたのか。
――と、そのとき。
「私も気になるわね」
という声とともに、部屋の片隅からぼんやりと人の輪郭が浮かび上がってきた。
……ヨウノだった。
「えっ? よ……ヨウノさん?」
ミオがすっかり驚いて、座ったまま仰け反ってしまう。
ヨウノはそんな彼を見て笑いつつ、
「ごめんね、驚かせちゃって。このメンバーなら出てきてもよさそうだと思ったから」
「本当に……ヨウノさんなんですね」
「ええ、そうよ」
こうして実体――というより霊体か――が存在しているし、ミオくんも疑うことはしなかった。
「恐らく……私はあなたの行った降霊術によって呼び出されちゃったの。だから、詳しく聞かせてちょうだい。あなたがどうして降霊術を知り、それを行ったのか」
「……分かりました」
一度だけハルナちゃんの方を見てから、諦めたようにミオくんは話し始める。
降霊術にまつわる彼の物語を。
「降霊術について知ることになったきっかけは、隣にいるハルナちゃんなんです。ハルナちゃんは、霊の仕業だと噂になったあの霧夏邸で起きた事件の、生存者だったから」
「広めないでほしいんですけどね。……ま、あのときは色々あって、なんとか生きて帰ってはこれたんですけど」
ハルナちゃんは照れ臭そうに頭を撫でつけながら言った。
「あの事件で、清めの水っていうのをお守り代わりに持ってたんですよ。二人を襲った怪物に水が効いたってことは、アレも悪霊的なものだったのかなあ……」
「……うーん、流石はあの事件の当事者だね。霊や怪物なんて非常識なものを見て、そんなに冷静でいられるとは……」
「いえ、怖いですけどね……まあ、見てない人よりかは幾分マシなだけですよ」
怖い、という言は嘘でないらしく、彼女の表情は何となく固かった。
「えと、それでですね。ハルナちゃんは大学の同級生なんですけど、出会ったのは三神院だったんです。伊吹というお医者さんと知り合いみたいで、お見舞い帰りの僕と遭遇したんですよ」
「三神院か……僕もミオくんも、見舞いには行くもんね」
「ええ。偶然の出会いから交流するようになった僕たちは、同じ講義のときは隣に座ってお喋りしたりするようになりました。ハルナちゃん、大体が彼氏の話なんですけどね……」
と、そこでハルナちゃんがミオくんをキッと睨んだので、余計なことを言ったようだと彼はすぐに話を本筋に戻す。
「ま、まあそんな話の中で、一度だけ降霊術のことが話題に上ったんです。霧夏邸での事件は僕も知っていたので、あの事件の生き残りがハルナちゃんだったんだと、僕はびっくりしました」
「あのときは口が滑っちゃったなあって、ちょっと後悔してるんですけどねー」
「あはは……それでまあ、降霊術のことがぼんやりと頭の中に残り続けていたんですよ。そして一昨日、僕はハルナちゃんに連絡を取った……」
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