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第二部【三神院幻想 ―Dawn comes to the girl―】
三十一話 向かうべき場所(現実世界)
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重苦しい空気の中を裂くように、突然部屋の中に眩い光が生じた。
「わっ……今度は何!?」
目元を腕で覆いながら、ミオくんが驚いて叫ぶ。
光が消えたとき、そこには見慣れた少女の姿があって。
ヨウノに続いて降臨したその少女に――ミオくんは再び驚きの声を発した。
「え――ツ、ツキノちゃん……!?」
「あ……」
現れたツキノちゃん自身も、ここに来れたことを驚いている様子だ。
けれども僕たちの姿を認めると、照れ笑いを浮かべてくれた。
「本当に、ツキノちゃんだ……!」
「わっ」
感情のままに飛び込もうとするミオくんを、何とか受け止めようとしたツキノちゃんは、しかしその体を実体化させることができなくて、すり抜けてしまう。
危うく壁にぶつかりそうになったミオくんだったが、そこはギリギリ踏み止まって、ああ……という声を漏らした。
「……ご、ごめん。嬉しくて、つい」
「ううん、いいよ。こっちこそごめん、力が弱くて物理的に干渉するのは無理みたい……」
ヨウノは扉の鍵を開けることができたが、ツキノちゃんはそういう力を使えないらしい。
心なしか、彼女の姿の方が薄いような感じがした。
「……ツキノまでここに現れるなんて。ちょうど、どうしてツキノが出て来られないのかを説明していたところなんだけど……」
「君が出てきたってことは、魂が回復したってことなのかい? じゃあ、アキノちゃんは……」
「目を覚ました? いえ、違うわね……ツキノの力を使って目覚めようとしてたはずだし」
マスミさんとヨウノお姉ちゃんが、すぐさま状況の考察を始める。
だけど、それを悠長に聞いている暇はなかった。
答えなら私が知っている。
「ごめん、皆に会えて嬉しいけど……それどころじゃなくて、大変なことになっちゃったの!」
「大変なこと?」
「アキノが、記憶の世界で黒い影に連れていかれちゃったんだ……!」
「……何ですって?」
黒い影。
それだけでヨウノお姉ちゃんはピンと来たようだ。
「ヨウノお姉ちゃんは気付いてるみたいだけど、私はアキノを目覚めさせる手伝いをさせられてたんだ。そのことを問い詰めたとき、黒い影――多分、黒木圭をイメージしたものだと思うんだけど、そいつが現れて」
「……イメージした、影……」
私の言葉に、ヨウノお姉ちゃんは顎に手を当ててしばらく唸り、
「ねえ、黒木って獄中死したのよね」
「ああ、そうだけど……」
そう言いかけて、マスミさんはハッとした様子で、
「ま、まさかヨウノ……君が言いたいのって」
「そのまさかだったら……」
黒木が獄中死したことについてはまるで知らなかったので、私は一瞬、展開についていけなくなる。
その間にもミオくんが冷や汗を流しながら、マスミさんとヨウノお姉ちゃんを交互に見ながら問いかけた。
「ねえ、もしかしてマスミさんもヨウノさんも、変なこと考えてない? ケイが自殺して霊になってまで、姉妹全員を消し去ろうとしてるとか、さ……」
「……ミオくんもか」
「……そんな」
「黒木……死んだの?」
耐え切れなくなって、私は訊ねる。すると三人が三人とも頷いて、
「そうよ。少年刑務所の中で亡くなっているのが発見されたそう。死因がまだ分からないみたいだったけど……なるほどね。吐き気がするほど恐ろしい奴だわ」
「ねえ、急がないとアキノちゃんが危ないんじゃない……!?」
あれこれ考えるヨウノお姉ちゃんに、ミオくんがそう投げかける。
確かに、黒木がアキノを狙っているなら、一秒でも早く駆けつけないと危険な気がする。
「でも、どこを探せばいいんだろう……」
記憶世界から連れ去られたアキノ。あの子の魂が今どこへ連れていかれたのか……それが分からない。
「向かう場所は決まってるよ。あの子のところに行けばいいだけさ」
「あ……」
マスミさんの答えは、とてもシンプルだった。
「三神院だ」
アキノが静かに眠り続ける場所。
そこが、最後に行くべき場所だ。
「わっ……今度は何!?」
目元を腕で覆いながら、ミオくんが驚いて叫ぶ。
光が消えたとき、そこには見慣れた少女の姿があって。
ヨウノに続いて降臨したその少女に――ミオくんは再び驚きの声を発した。
「え――ツ、ツキノちゃん……!?」
「あ……」
現れたツキノちゃん自身も、ここに来れたことを驚いている様子だ。
けれども僕たちの姿を認めると、照れ笑いを浮かべてくれた。
「本当に、ツキノちゃんだ……!」
「わっ」
感情のままに飛び込もうとするミオくんを、何とか受け止めようとしたツキノちゃんは、しかしその体を実体化させることができなくて、すり抜けてしまう。
危うく壁にぶつかりそうになったミオくんだったが、そこはギリギリ踏み止まって、ああ……という声を漏らした。
「……ご、ごめん。嬉しくて、つい」
「ううん、いいよ。こっちこそごめん、力が弱くて物理的に干渉するのは無理みたい……」
ヨウノは扉の鍵を開けることができたが、ツキノちゃんはそういう力を使えないらしい。
心なしか、彼女の姿の方が薄いような感じがした。
「……ツキノまでここに現れるなんて。ちょうど、どうしてツキノが出て来られないのかを説明していたところなんだけど……」
「君が出てきたってことは、魂が回復したってことなのかい? じゃあ、アキノちゃんは……」
「目を覚ました? いえ、違うわね……ツキノの力を使って目覚めようとしてたはずだし」
マスミさんとヨウノお姉ちゃんが、すぐさま状況の考察を始める。
だけど、それを悠長に聞いている暇はなかった。
答えなら私が知っている。
「ごめん、皆に会えて嬉しいけど……それどころじゃなくて、大変なことになっちゃったの!」
「大変なこと?」
「アキノが、記憶の世界で黒い影に連れていかれちゃったんだ……!」
「……何ですって?」
黒い影。
それだけでヨウノお姉ちゃんはピンと来たようだ。
「ヨウノお姉ちゃんは気付いてるみたいだけど、私はアキノを目覚めさせる手伝いをさせられてたんだ。そのことを問い詰めたとき、黒い影――多分、黒木圭をイメージしたものだと思うんだけど、そいつが現れて」
「……イメージした、影……」
私の言葉に、ヨウノお姉ちゃんは顎に手を当ててしばらく唸り、
「ねえ、黒木って獄中死したのよね」
「ああ、そうだけど……」
そう言いかけて、マスミさんはハッとした様子で、
「ま、まさかヨウノ……君が言いたいのって」
「そのまさかだったら……」
黒木が獄中死したことについてはまるで知らなかったので、私は一瞬、展開についていけなくなる。
その間にもミオくんが冷や汗を流しながら、マスミさんとヨウノお姉ちゃんを交互に見ながら問いかけた。
「ねえ、もしかしてマスミさんもヨウノさんも、変なこと考えてない? ケイが自殺して霊になってまで、姉妹全員を消し去ろうとしてるとか、さ……」
「……ミオくんもか」
「……そんな」
「黒木……死んだの?」
耐え切れなくなって、私は訊ねる。すると三人が三人とも頷いて、
「そうよ。少年刑務所の中で亡くなっているのが発見されたそう。死因がまだ分からないみたいだったけど……なるほどね。吐き気がするほど恐ろしい奴だわ」
「ねえ、急がないとアキノちゃんが危ないんじゃない……!?」
あれこれ考えるヨウノお姉ちゃんに、ミオくんがそう投げかける。
確かに、黒木がアキノを狙っているなら、一秒でも早く駆けつけないと危険な気がする。
「でも、どこを探せばいいんだろう……」
記憶世界から連れ去られたアキノ。あの子の魂が今どこへ連れていかれたのか……それが分からない。
「向かう場所は決まってるよ。あの子のところに行けばいいだけさ」
「あ……」
マスミさんの答えは、とてもシンプルだった。
「三神院だ」
アキノが静かに眠り続ける場所。
そこが、最後に行くべき場所だ。
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