この満ち足りた匣庭の中で 一章―Demon of miniature garden―

至堂文斗

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Twelfth Chapter...7/30

彼女の行方

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 終業式の後、僕は双太さんに、他の子がいなくなったら職員室へ来るように、と言われた。帰っていく生徒たちに背を向けて、鞄を肩から引っ提げ、職員室の扉を開ける。中にいた双太さんはちょうど、仁科家へ電話を掛けている最中だった。

「……はあ、そうなんですね。今日帰ってこなかったら、伝えるつもりだったと……。それは、とても心配だと思います。僕の方でも探してみますので、そちらも何かあれば。……ええ、では」

 受話器を置き、深い溜息を吐く。そのまま振り返り、僕がいることに気付くと、バツが悪そうに頭を掻いた。

「……龍美ちゃんだけど。朝起きたら、ちょっと出かけるって書置きがあったんだって。昨日の夜まではいたらしくて、その後いつ出ていったかは分からないそうだ。聞いてたかもしれないけれど、今日の昼ごろまで帰ってこなければ、僕や近所の人に伝えて、探さなくてはと思っていたみたい」
「もっと、心配してもいいような気がするんですが」
「自筆だったのと、前日に喧嘩みたいになっちゃったのとで、しばらく様子を見ようって判断したそうだよ」
「ううん……」

 それでも、と反論しかけたが、双太さんに言ったって仕方のないことだ。
 仁科家には仁科家の事情がある。

「帰ってくるといいけどね」
「……ですね」

 早く帰ってこい。聞きたいことが、山ほどあるのだから。

「虎牙のことも、あれから双太さんへ連絡とか、ないんですよね」
「家で休養中と、佐曽利さんはそれだけしか言わなかった。……何かを隠してると、僕も感じるけれど、親族がそう言っている以上、立ち入ったことは、ね」
「……そうですか」
「その辺りも、お互い分かったことがあったら、すぐ伝えることにしよう」
「了解です」

 僕はそう答えて、軽く頷いた。

「さて……そろそろ僕は、病院に行かないといけない時間だな」
「もう、ですか? 昨日のこと聞きたかったりするんですけど」
「うん……、優亜ちゃんがいないから、診察が忙しくなりそうでね」
「……大変ですね」
「とは言っても、例の鬼騒動もあって、病院に診察へ来る人は減って来てるんだけどさ。入院患者の中にも、家族が自宅療養にさせてくれって言ってくるところもあって」

 鬼の祟りの影響は、そんなところにまで現れているのか。何というか、不可抗力で病院が悪者扱いされている気がしてしまう。初めは永射さんの掲げる電波塔計画を、瓶井さんが非難するという構図だったのに、永射さんの死によって貴獅さんが最後を引き継いだことで、貴獅さんや病院が非難の対象に移り変わったような感じだ。勿論、電波塔計画は病院側も推奨していたことなので、それがなかったら非難されていない、というわけではないだろうが。

「だから、昨日のことを聞きたいなら、お昼過ぎ……そうだね、大体三時ごろ、病院まで来てもらえるかな。少しなら、話せる時間はとれると思う」
「すいません、わざわざ。じゃあ、そうします」
「うん。……よし、それじゃ出ようかな」

 双太さんは机の上をある程度片付けると、服をパンパンと叩いて立ち上がる。

「ありがとうございます、双太さん」
「いや、構わないよ。先生として良いことかは分からないけど……玄人くんも、巻き込まれた手前、色々と気になるだろうしね」
「……ええ」

 巻き込まれた、か。
 一体、僕は、皆は、どんな悪意に巻き込まれているというのか。
 鬼……その言葉ばかりが、主張するように浮かんでくるけれど。
 僕らはいつまで、その悪意に翻弄され続けなくてはならないのだろう。
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