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第二章 ルケードの狼姫
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ルシアードは書架の少し奥でその光景を見ていた。
我が兄ながら、どこまで国の恥をさらすのか。
この時のルシアードの脳裏にあるのは、たった一つ。
母国の安寧。
それだけだ。
第一王子が愚か者か、それとも何かに秀でているのか、そんなことはどうでもよかった。
その奥深くに用心深くかくした第一王子アルバートの本心、その素顔。
それがまだつかめないのが、どうにも気に入らない。
彼はそう思っていた。
エイシャはアルバートを見送ると、書架をぐるりと一回りしてルシアードの座るソファーの前に立つ。
「本当に見えないし、気づけないわ。
なんなのよ、その宵闇の魔眼って‥‥‥」
拗ねるようにして、エイシャはルシアードの膝の上に腰かけた。
その魔眼の持ち主が許可を与えたもの以外、存在にも、匂いにすら気づかれることのない。
すべての感覚に作用する盗賊や暗殺者がこぞって欲しがる羨望の眼差しをおくるであろうその珍しい魔眼。
「卑怯ね、ルーってば‥‥‥。
あなただけはどんなことがあっても安全なのだから」
ルシアードの片手が乱暴に狼姫を抱き寄せる。
「お前と、だ。
あとの者など知るか」
ふうん、とエイシャは尾を振りながらルシアードの耳元でささやく。
「なら、なぜわたしを抱かないの、ルー?
あの、竜公女の性欲のはけ口にされている、アシュリー様のように‥‥‥」
やめろ、そう言い、黒髪に青い瞳の第三王子は狼姫の口元を押し戻した。
「あれはー‥‥‥アシュリーは情が深い。
いくらお前でも、利用すればーー」
アルバートの言う悪の華はすでにルシアードの心に咲いていた。
すこしばかり、枯れればいいほどに。
「なによ、アシュリーだけは。
大事なのね?
この魔眼の中にいれば、例え、この場で抱いても誰にもわからないのに!」
いけずな人!
そう、狼姫はアシュリーとエリスの状況に嫉妬して見せる。
「なら、脱いでみたらどうだ?
その全身で、この場で俺を誘惑しろよ?」
エイシャの尾が膨れ上がる。
怒りを抑えきれないらしい。
「卑怯者!!
あの夜に‥‥‥正々堂々との一騎打ちなどと言いながらーー」
「ああ、そうだ。
この学院に来て六年目。
お前が最初の発情期を迎えた春か?
愚かにもあのイゼアなんぞに向かい、夜に潜もうとするからだ」
だって仕方がないじゃない。
エイシャは顔を曇らせる。
黒狼の貴族は他にはいない。
強い亜人のトップはイゼア竜公子だ。
その子を成したい。
そう願うのは、本能なのだから。
「夜に向かうその道上で、勝負だなんて言いながら。
その魔眼でわたしを一撃のもとに下すなんて、ね。
仮にも黒狼のわたしを‥‥‥」
いま思い出しても腹が立つ。
ルシアードの魔眼は二つ。
もう片方の効果にあっけなく敗れ去った。
そしてーー
「あの勝負の条件を出したのはお前だぞ?
負ければ、その者に服従する、とな」
だろう?
ルシアードはその翌日からエイシャが首に飾るネックレスを指差す。
「なんなら、犬用の首輪にするか?」
「ルー!!?」
牙を向くエイシャをルシアードは優しく抱きしめた。
「嘘だ。
でも、子は我慢しろ。
王になれば迎えに行く。
必ず、な」
もう戻れ、そうルシアードはエイシャをあっけなく付き放しその場を去る。
「ま、王位が取れれば。
いるのはルケード大公国の王族だ。
お前じゃないんだよな‥‥‥」
そう心で呟きながら。
我が兄ながら、どこまで国の恥をさらすのか。
この時のルシアードの脳裏にあるのは、たった一つ。
母国の安寧。
それだけだ。
第一王子が愚か者か、それとも何かに秀でているのか、そんなことはどうでもよかった。
その奥深くに用心深くかくした第一王子アルバートの本心、その素顔。
それがまだつかめないのが、どうにも気に入らない。
彼はそう思っていた。
エイシャはアルバートを見送ると、書架をぐるりと一回りしてルシアードの座るソファーの前に立つ。
「本当に見えないし、気づけないわ。
なんなのよ、その宵闇の魔眼って‥‥‥」
拗ねるようにして、エイシャはルシアードの膝の上に腰かけた。
その魔眼の持ち主が許可を与えたもの以外、存在にも、匂いにすら気づかれることのない。
すべての感覚に作用する盗賊や暗殺者がこぞって欲しがる羨望の眼差しをおくるであろうその珍しい魔眼。
「卑怯ね、ルーってば‥‥‥。
あなただけはどんなことがあっても安全なのだから」
ルシアードの片手が乱暴に狼姫を抱き寄せる。
「お前と、だ。
あとの者など知るか」
ふうん、とエイシャは尾を振りながらルシアードの耳元でささやく。
「なら、なぜわたしを抱かないの、ルー?
あの、竜公女の性欲のはけ口にされている、アシュリー様のように‥‥‥」
やめろ、そう言い、黒髪に青い瞳の第三王子は狼姫の口元を押し戻した。
「あれはー‥‥‥アシュリーは情が深い。
いくらお前でも、利用すればーー」
アルバートの言う悪の華はすでにルシアードの心に咲いていた。
すこしばかり、枯れればいいほどに。
「なによ、アシュリーだけは。
大事なのね?
この魔眼の中にいれば、例え、この場で抱いても誰にもわからないのに!」
いけずな人!
そう、狼姫はアシュリーとエリスの状況に嫉妬して見せる。
「なら、脱いでみたらどうだ?
その全身で、この場で俺を誘惑しろよ?」
エイシャの尾が膨れ上がる。
怒りを抑えきれないらしい。
「卑怯者!!
あの夜に‥‥‥正々堂々との一騎打ちなどと言いながらーー」
「ああ、そうだ。
この学院に来て六年目。
お前が最初の発情期を迎えた春か?
愚かにもあのイゼアなんぞに向かい、夜に潜もうとするからだ」
だって仕方がないじゃない。
エイシャは顔を曇らせる。
黒狼の貴族は他にはいない。
強い亜人のトップはイゼア竜公子だ。
その子を成したい。
そう願うのは、本能なのだから。
「夜に向かうその道上で、勝負だなんて言いながら。
その魔眼でわたしを一撃のもとに下すなんて、ね。
仮にも黒狼のわたしを‥‥‥」
いま思い出しても腹が立つ。
ルシアードの魔眼は二つ。
もう片方の効果にあっけなく敗れ去った。
そしてーー
「あの勝負の条件を出したのはお前だぞ?
負ければ、その者に服従する、とな」
だろう?
ルシアードはその翌日からエイシャが首に飾るネックレスを指差す。
「なんなら、犬用の首輪にするか?」
「ルー!!?」
牙を向くエイシャをルシアードは優しく抱きしめた。
「嘘だ。
でも、子は我慢しろ。
王になれば迎えに行く。
必ず、な」
もう戻れ、そうルシアードはエイシャをあっけなく付き放しその場を去る。
「ま、王位が取れれば。
いるのはルケード大公国の王族だ。
お前じゃないんだよな‥‥‥」
そう心で呟きながら。
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