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第一章 天空大陸の主
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しおりを挟む冬場に近い気候だった天空大陸とは違う、大陸東部。
アリスティアと共に、ブランシェ辺境国と枢軸連邦という名前のこの大陸の北部山脈一帯と一部、東部地域を支配するその国境付近のアルバートは移動していた。
「ありがとう、リアルエルム」
見上げるそらは大陸の端と端にあってかいまから陽が落ち込む雰囲気を醸し出していた。
とりあえず、今夜は誰にも見つからない場所を‥‥‥
アリスティアに安息の睡眠を与えてやりたい。
「とはいえ、この大森林の中では‥‥‥難しいよねえ。
せめて野戦用の装備でもあればテントなんてものもあったんだけど」
残念ながら学院の倉庫に忍び込み、いろいろと準備する手間はなかった。
かといって誰かがあとから追いかけて来られてもーー
「せっかくの新婚旅行を邪魔されたくはないしね」
ダンジョン攻略を新婚旅行と言ってのけるこの王子は、リアルエルムがもし聞けば、やはり嘆息するだろう。
さて、どうするか。
大地と隔絶されていた天空大陸とは違い、ここは魔素の宝庫である大地に森林、地脈など様々なものがある。
利用しない手はなかった。
「上、かな?」
天を塞ぐようにして青々と茂り、その葉を幾層にも生やしている針葉樹林の合間を抜けて、アルバートは天眼を開き空へと駆けあがって行く。
まだ目を覚まさないでくれよ?
君を‥‥‥もう恐がらせたくないから。
大樹の枝と枝を蹴り上げて進む様はまるで羽毛が空にひらひらと舞い上がるようようだ。
その中で銀色の髪のアリスティアは静かに寝息を立てている。
振り落とさないように抱きしめて木々の上を目指すこと数分。
アルバートは数十エダはあろうかと思われる大樹の一つの頂点にいた。
「これは凄い‥‥‥ブランシェ辺境国が林業でその財を成しているわけだ。
見渡す限りの大森林だ。
二割を削ったとしてもこの木々ならば、新芽を植えれば十年でそれなりに育つ。
第四王子のアジェス男爵領は早いうちに接収されるかもしれないな‥‥‥」
ああ、だめだ。
こういう政治に関することならば幾らでも配慮なり、画策なりできるのに。
「女性とまともに接してこなかった僕の愚かさでもあるな。
エリスの時も容赦なかった。
あれはあれでよかったが‥‥‥」
ふと、銀毛におおわれたその耳が、エリスの単語にピクリと反応した気がした。
まさか、もう目覚めているのかな?
余計な一言を間の悪い時に発したかもしれない。
自分は本当に、ついていない。
「ごめんよ、下に降りたらちゃんと話すから。
嘘は言わない。
アリスティア、空の上が苦手なら目を開けないで」
空の上、その単語に弱かったらしい。
新妻となってくれた? 少女はアルバートの背中に必死にしがみついて目を閉じていた。
こういうところは可愛んだけどなあ。
手が早くなければ。
まあ、それは置いておこう。
太陽が西に落ちるということはあちらに向かえば、アジェス男爵領。
リアルエルムはアギトの地下神殿の入り口まで送ると言ってくれた。
そうなるとーー
「このあれが、その入り口、か」
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