王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第二章 暗黒神の地下神殿へ

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「あ、あのねえ、その脅しはどうかとーー思うんだけどね??
 僕はまだほら、病人だし??」
 これはまずいことになった。
 逃げ場なんてどこにもないぞ。
 嘘をついて、数年後にバレた時は‥‥‥どうなるか想像にはかたくない。
「うん、大丈夫よ。
 その天眼で治療できる程度の傷にしておくから?
 さあ、おっしゃってくださいな、旦那様?」
 笑顔の奥にどれだけの怒りがあるのかな?
 いや、まだ爆発しない爆弾がたくさん眠っている。
 さて、これは困った。
 身体はーーまだ、逃げ出せるほどに回復していないな‥‥‥
「はあ‥‥‥全部、話すから。
 もうその爪はやめようよ?
 人間と魔族じゃ、元の性能がーー」
「あら、アシュリー様はイゼアと互角に戦ってたわよ?
 天眼使いがなにを情けないことを言うのかしら。
 でもーーこうしたのは、ごめんなさい」
 愛してる、そうささやかれて濃厚なキスを迫られる。
 灰狼族のお姫様はとても情熱的だった。
「君が一番、ずるいよアリスティア。
 僕に勝ち目がないもの。
 さっきの牙の毒とかそんなことを抜きにして、さ。
 僕も‥‥‥大好きだよ」
「あら、愛している、僕だけのアリスティア。
 くらい言って欲しいわ、アルバート。
 あの天空大陸から飛び降りた時のあなたは今より数百倍、情熱的で勇ましかったわよ?」
「あの時、かーー。
 本当に自由になれたと思った。
 そして一番欲しかったものを手にできたんだ。
 君と、リアルエルムへの恩返し、かな。
 彼女は十年近くに渡っていろんなことを教えてくれた。
 全部か終わった喜びも大きかったかもね」
 もう、本当に本音を言わない人ね。
 アリスティアはアルバートがいま寝込んでしまった原因が自分だと理解しながらもーー
 それでも本当に欲しい一言をくれないことに不満を漏らしてしまう。
「アルバートのばか‥‥‥。
 エリスを抱いたなら、抱いたっていえばそれで済むのに。
 一生かけて噛み続けてやるんだから」
「冗談になってないよ、アリスティア。
 あの夜はね、二回あったんだ。
 最初は冗談で、二回目は魔石を奪った時。
 どちらとも何もなかったよ。
 最初の時は、バレて火をはかれてさ‥‥‥」
 火を吐かれた?
 もしかして昨年の、いきなり夜中に起きた火事のことかしら?
 記憶を探り、アリスティアはまさか、と夫を見つめる。
「あなた、竜族の炎に焼かれてよく生きてたわね!?」
「無事じゃないよ、また見せるけど。
 背中にはそれなりの火傷の跡がある」
「呆れた‥‥‥他の女に手を出そうとした報いだわ。
 それくらい我慢なさい」
 ふん、いい気味だわなんてアリスティアは言いのけるが、正直、それでアルバートが死ななくてくれたことに感謝はしている。
 ただーー
「なんで入れ替わろうなんて思ったの?
 アシュリー様って、そんなに悪戯心があったかしら?」
 それを聞かれて、アルバートは目をそらすしかない。
 言いなさいよ、と爪先で脅されてようやく観念した。
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