王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第二章 暗黒神の地下神殿へ

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「しかし、あれだねえ、アリスティア。
 君は本当に僕のために悲しんでくれるんだね」
 アルバートは気恥ずかしそうに妻の頬にそっと手を当てて呟いた。
「アシュリーも双子の弟だけど、途中からはエリスに気が向いてしまってた。
 ‥‥‥まあ、あれは妊娠がわかったから仕方ないんだけどね」
 家族ができると人はそうなるんだろうね。
 寂しそうに、それでも甥か姪か。
 どちらかの誕生が待ち遠しいアルバートだった。
「あの二人はうまくやれるかなあ?
 僕が全部、押し付けたルシアードは、姉上や妹や恨んではないだろうか?
 メアリージュンにしても側室になる予定がいきなり途端、未亡人だ。
 僕はどれだけ‥‥‥」
「そこまでよ、旦那様!」
 アリスティアはその先の言葉を言わせまいとする。
 もう、過去を捨てて生きても彼は充分、シェスのために尽くしたと思ったからだ。
「あなたはもう、単なるアルバートなの。
 アルバート・デル・シェスは死んだのよ‥‥‥。
 罪深いなんて絶対に言わせない!」
 あはは、とアルバートは苦笑いする。
 全部、バレている。
「君はいつも僕を見ていてくれたんだね。
 たった一人だけの、僕だけを見てくれる理解者だったんだ。
 他の何もかもをーー後回しにしても、か。
 エンバス卿が来ていた時も近くで聞いていたでしょ?」
 なんで知ってるのよ?
 アリスティアは苦笑する。
 彼の部屋の一番近い生徒が休めるあの場所は‥‥‥天空大陸の夕方の冷え込みもあって寒かった。
 そんなことを思い出した。
「あなたがあの時、王位なんていらない。
 ただ、シェス王国なんて看板を出しながら弟夫婦とお母様を守るためだけに死ぬ、なんて言いだした時は発狂しそうになったわよ。
 このバカ王子!!
 もっとうまくやりなさいよ、ルシアードなんて‥‥‥嫌いじゃないけど。
 彼は王には向いているわ、平和な時代ならね。
 でも、他国との条約をいきなり破る決断をできる人じゃない」
 アリスティアは言葉に詰まってしまう。
 それを言っていいのかどうか、妻として迷うところだったから。
「ねえ、アルバートは‥‥‥王になれば、いざとなれば弟でも妻でも。
 他国との条約なんて無視していきなり侵略する。
 あなたはそんな決断力?
 うーん‥‥‥違いますね、なんでしょうか?
 非道さ?
 そんなのを発揮する人よね?」
 ごめんね、ひどいことを言って。
 アリスティアはそう謝るが、その指摘はーー
「あー‥‥‥一番、心が痛いよ。
 エリスから魔石を奪った時もそうだし、メアリージュンと姉上たちをシェスにいきなり取り込んだ時もそうだと思うよ。あのエイシャ様を、医務室で殺しかけた時もそうだ。
 王には必要なのかもしれない。
 でも、僕は民衆に慕われる王にはなれないよ。
 イゼアと同じだ。
 イゼアは王族と自分の為に自分から動く。
 僕は、王国の為に周りを巻き込んで動いてた。
 一番ひどい人間だよ。
 最後にーー」
 言いかけて、アルバートは横に向いてしまう。
 視線を合わせるのがなによりも恥ずかしい。
 そこだけはまだ少年らしさをもっていて、アリスティアはそれが可愛くて仕方がない。
 顔をこちらに引き寄せて、上から至近距離で質問する。
「最後に何?
 わたしみたいな、最高の女が残ったのが一番のたった一つの救いだった?」
「‥‥‥知らないよ。
 言わない」
 また少年は横に向いてしまう。
 純朴ねえ、そんなとこだけは。
 まるで母親になった気分だ。
「あら、逃げるなんて卑怯ですわ、旦那様?
 エリス様から魔石を奪った時なんて、どうせ、アシュリー様に成り代わってされたのでしょう?
 ベットの中で抱き寄せたまま。
 無理矢理。
 まさか、一夜を共にしたことがあるとかは‥‥‥言わないわよね?」
 なんとなく返事は、イエスな気がして見せびらかすように爪先を伸ばして質問するアリスティア。
 返事の内容によっては覚悟してくださいね?
 そんな、意志表示だった。

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