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第三章 いざ、ダンジョン攻略へ
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しおりを挟む「あー‥‥‥いや、それは何と言うか。
そんな宣言、とてもじゃないけど僕には出来ないなあ、凄いよ、アリスティアーー」
将来、僕は魔王の夫!?
彼女が女王陛下で僕はー‥‥‥。
アルバートはこの時、それ以降の人生のすべてを彼女に主導権を握られることを覚悟した。
いや、俗な言い方をすれば尻に敷かれて生きる未来が見えてしまった。
「なによ?
なにか悪いこと考えているでしょ、旦那様?」
うっ‥‥‥鋭い!?
そんなことはないよとはー、言えないよね。
君はこれから僕の全てを見るんだから。
そう‥‥‥僕の汚れた一面も。
それだけは、見て欲しくないし見せたくない。
もう、王子じゃないんだ。
仮面なんて要らなんだから‥‥‥
「うーん、うん。
思ったよ」
「へえー?
どんなことを考えてたの?」
アルバートはちょっとだけ、アリスティアから目を逸らした。
アリスティアはこの後、これが彼がなにか本音を言いたいが言えずに別の言葉で誤魔化そうとする。
そんなサインだな、と知ることになる。
「ううん、いいんだ。
君といたい、ごめんね、アリスティア」
いきなり謝り出すアルバート。
その意図がわからずアリスティアは困惑してしまう。それでも、彼が何か隠し事をしていることだけは理解できる気がしていた。
そうはさせませんよ、とアリスティアはアルバートを真上から睨みつける。
「ごめんね、は許しません!
いいですか、旦那様?
年下で可愛らしい、わたしだけのアルバート?
ねえ、もう隠し事はやめてね?
さっきの目を逸らす仕草。
あなたの悪い癖よ。
どうせ、あの学院内でルシアードに似たようなことをもっと深い所でやってたんでしょ?
そんな過去なんてどうでもいいわ、興味がないわよ。
あなたはいまは普通のアルバート。
そしてわたしの大事な大事な愛する人。
前をむいて、アルバート!
もう、王国もなんにも考えなくていいの!
好きなことをすればいいの!」
ずっと付いていくから。
ほら、そろそろ起きて、準備をしましょう?
そう、アリスティアは語り掛ける。
地下神殿に降りていくのだ。
それととてつもなく深いかもしれない。
どれだけの食糧に衣類、武器、装備が必要か考えなくてはいけなかった。
しかし‥‥‥
「あのねえ、アルバート‥‥‥。
こういうこと、いつから準備していたの???」
天眼使い、数百種類ある魔眼の全てを使える存在。
これほど、便利?
いや、小器用というかーーアリスティアは呆れていた。
「まあ、入ってみてよ。
中にはそれなりに部屋もあるんだ」
「ほんっとうに、信じられないわ‥‥‥。
移動できる屋敷?
それとも、部屋だけ?
別の空間を隣に作ってそこにものを収納するだけならともかく‥‥‥」
言われて、彼が開いた四角い窓のような入り口からそこに入るとー‥‥‥。
「まあ、小さな農家程度だけどね。
寝室に、浴室、トイレに台所。
食糧は凍土を召喚して凍らせてあるし、衣類もあの学院で要らなくなった古着ばかりだけど。
女性の鎧や装備もきちんとあるよ」
「あのねえ、あるよ、じゃないの!!
こんな異空間作って、まるでここで生活‥‥‥。
まさか、あなたーー」
ふとあることにアリスティアは気付いた。
彼はあの死んだとされた後、孤独にここで死ぬまでいきようとしていたのではないか、と。
「図書館もあるよ、アリスティア。
魔石も豊富に学院から盗んできたしね、なんでそんな悲しそうな顔をしているのさ?
もし、かなわないモンスターに出会っても、ここなら安全だし。
歩かなくても、異空間を移動できるんだよ???」
「そうじゃないわよ、アルバート。
ここで死ぬ気だったでしょ?」
ずばりと質問すると、彼は笑顔を凍り付かせた。
やはりそうか、この孤独の王子は‥‥‥
「もう、ダメだからね?
わたしとあなたの子供も生まれたらもっと死にたいなんて。
孤独だなんて言わせないからね?」
君にはかなわないよ。
アルバートは諦めて、彼女に全てを見せて行こうと誓った。
長い時間をかけて。
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