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第三章 いざ、ダンジョン攻略へ
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しおりを挟む「だけど本当に呆れたものね‥‥‥ダンジョン攻略するなら、自力で降りていかなきゃ意味ないじゃない?
安全な場所を最初から確保していて、それもいつでも利用出来て。
それって冒険者なの‥‥‥?」
ちょっとだけ呆れた視線を向けるアリスティア。
冒険者ってもっと自分で努力して、経験して、攻略するものじゃないの?
そんな視線だった。
「う?
うん、まあ‥‥‥だって、寝てる時とかに襲われてもねえ?」
「だから、それを克服するのが冒険者じゃないの?」
「でも、アリスティアをそういう危険にはー‥‥‥」
どの口が言うのよ?
アリスティアはアルバートの頬を引っ張ってやる。
「もう巻き込んでるでしょ?!
魔王なんかにいきなりあわせるし!!
本当にわたしが大事なの?」
そんな!?
アルバートは焦って、もちろんだよ!
そう力説する。
「だって、君が来るなんてー‥‥‥。
いや、来てくれてありがとう。
それで死にかけたけど。
でも、愛してるってずっと言われたのは嬉しかったよ???」
あ、尻尾が膨らんだ‥‥‥
面白い。
感情がよくわかる。
「ふん、アルバートなんて大っ嫌い。
ほら、行きましょ?
あの神殿の階段上るだけで、半日はかかるわよ?」
さっさと異空間の入り口から飛びだすアリスティアは、朝日に輝く暗黒神の神殿を見上げる。
あの入り口、相当上よねえ、と。
後から追って出てきたアルバートは、
「え?
だったら異空間の扉を開いてーー」
と言い出し、アリスティアに睨まれて黙り込んだ。
「あのね!
冒険者なるんでしょ?
よほどの危険が迫らない限り、その天眼は使うの禁止!
魔眼だけでなんとかしなさいよ、旦那様?」
「うっ!?
はいー‥‥‥」
これを登るんだね、はあ。
一日かかりそうだ。
魔族のアリスティアと人間の僕では体力が違うんだけどなあ。
「しかし、この階段のサイズ。
人間向けではないね?
まるでトロールや巨人族向けのようにも思うよ。
暗黒神は誰に崇拝されていたんだろう?」
不思議そうな顔で辺りを見渡すアルバート。
それもそのはずで、階段にはホコリ一つ落ちていないからだ。
誰かが掃除をしているのか。
それともそういった自然のものを排除する魔法でもかかっているのか。
人間が歩くよりも、少しだけ背の高い階段を大股であがりながらアルバートは不思議だ、とばかり呟いている。
アリスティアはそれがなぜか、誰に信仰されていたかを知っていたが、あえて答えずにいた。
冒険者。
それは男心をくすぐるのだろう。
暗殺者。
それは人の恐怖心と不安と不信感を煽る。
(わたしは、暗殺者。
だった‥‥‥なんて言えないわよねえ。
エイシャ様を殺そうとする前にもそんなことをしていた女が、幸せを望んでいいのかな?
それもこんなにいい夫を貰って‥‥‥)
同様にアルバートも考えていた。
(六歳で学院に入ってから、ルシアードがしないような薄暗い闇の中を這うようにして‥‥‥
そう、僕は人も殺したし、家族の為なら陥いれもした。
こんな薄汚い人間がいいのかな。
こんなに明るい、たった一人だけの理解者を得るなんて)
--わたしは
--僕は
『許されるのだろうか』
二人はそう考えていた。
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