ギルド嬢のひとりごと

星ふくろう

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第二章 難航するギルド開設と黒い翼の姫君

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 さて、一同がそれぞれ満腹になったところで、シェイディアに視線が集まった。
 どうしよう、この子?
 アイニスの天然は発言が、まだ茹でられていればいいシェイディアに衆目を引き付ける。
 
「どうしようもなにも、アッシュがまだ戻らないし、ね。
 どこかで何してるのかしら?」

「まあ、悪いことはしていないみたいよ?」

 ふうん、離れていてもさすが精霊女王様。
 ちゃんと見ているんだ。
 茜は感心しつつ、彼が新しい何かを引き込んできそうな予感もしていた。
 それも、茜が嬉しくない方向性の何かだ。
 アイニスはそれを知っていて、あまり多くを語らない。
 そんな気がしないでもなかった。

「そう。ならいいんですけど。 
 従業員もいるし、あの上に並べられた制服の数。
 数十人単位でものを考えているようだった。
 何より、制服、ねえ」

「まるで軍隊の予備軍でも、作りそうないきおいね、あの子」

 アイニスのその一言が全てを語っていた。
 軍隊? 
 本当にそんな生易しいものかな?
 この館をギルドの母体にするとしても、束縛嫌いの冒険者なんてはっきり言って日雇い労働者でしかない。
 まあ、モンスターだの敵国からの小競り合い程度には太刀打ちできるだろうけど。
 国家間の戦争にはまるで役立たないし、そういった村落規模の問題点があればまず国を通すように。
 それがこのハイフという国の統治機構だ。
 警察や軍隊が扱わない仕事をするとなると‥‥‥

「どうするつもりなのかしらね?
 まあー‥‥‥ゲームで言うところの酒場・売春宿・不遇な奴隷、そして、物語のヒロインは‥‥‥茹でられてる。かな?」

「ゲーム?」

「ああ、気にしないで。
 ボードゲームよ。
 紙に書かれたゲーム盤で、サイコロ振ってでた目だけ移動して、そこにあらかじめ書かれてるクエストを達成したらレベルアップして。
 そんな感じ。
 レベルとかどうやって決めるんだろ‥‥‥?
 魔法の学校とかある???」

 アイニスは少し考えて、あることにはあるわよ?
 そう言った。

「あるけど、問題あるの?」

「そうではなくてー‥‥‥ハルフゲインの十の大陸を統べる国家の子弟子女たちが集まるアルバーニ学院ってのがあるの。
 竜もいれば魔族もいるし、中には神族の若者も。
 リッカのような魔獣や神獣だっているわよ。
 まあ、それもあるからややこしいのよね」

 ややこしい?
 なにがどうややこしいのか理解できない。
 
「そのね、リッカが探している兄の方?
 彼が守護していた一族がシワクという名前の貴族だったんだけど。
 数年前、ダル・エールの計略にはまり一族そのものが消えたのよ。
 それからは、各国の従えてたり守護していたりする神や精霊もこの王都には集まっていてね、わかる?」

「つまり、世界中の大きな力を持つ者たちが、ここには――いる?
 だから、アイニスも好きなようにはできないんだ?
 あの三人の精霊剣士たちも、能力をフル活用できない、と?」

「まあ、そんなとこね。
 どこの国の守護しているものもまだ若いんだけど‥‥‥」

 まだ若い?
 しかし、このアイニスはいまどれくらいの年齢なのか――そして、都合よく聞くのはだいたいシェイディアだ。

「ねえ、熱いんだけど‥‥‥何より、若いってアイニス何歳??」

「この世界の各国を守護している神や魔、他の精霊王たちよりはずっと年上よ?
 でもそれは妖精界とこの世界の時間の流れが違うから仕方がないの。
 で、そんなことより本題よね?
 でも、彼は戻ってこない、か。
 茜はどうしたいの?」

 どうしたいの?
 そりゃ、こんな首輪のけてしまって元の身体に戻りたいし、異世界から転移してきた仲間たちも助けたい。
 でも、彼等は茜がいた地球とは別の地球からきたのだ。
 茜ともう一人は特別で、彼等は誰かによって送り込まれている可能性が高い。
 まずはそれを排除したいし、リッカがいう兄を見つけてやりたいし、何より‥‥‥

「正妻は望めない。
 それは理解しているの。
 あと、シェイディアも助けなきゃ出し、この子の仲間だけど。
 そして、旦那様の願いもかなえてあげたい。
 で、その本人はどこで何をしてるのかしら!?」

 いい加減、半日以上経過しているんですけど!!
 茜の怒りの声は、とある場所で頭を悩ませていたアッシュに寒気を感じさせていた。

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