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第三章 スレイプニール峡谷
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するとルクナツァグはこれまた、更に悩まし気に頭を振って答えた。
「それが我が国の‥‥‥国王様。
鏡の国の妖精王の妻になったからだ」
「それは・・・・・・喜ばしいことなのでは??」
「いいや、喜ばしくない。
王はそれまで妻がおらず、あの御方の美しさと性格に惚れて正妃にしたと言うのに‥‥‥。
まったく側室などと言い出すからーー」
これは、聞いてはいけない妖精王のお家事情に踏み込んだのかもしれない。
ナターシャは失敗したかもしれない、そう思った。
ルクナツァグは誰かにぼやきたかったのだろう。
さらに話を続けた。
「お陰で王妃様は‥‥‥我が国の経済は経ちいかず、あの御方の器量で持ち直したと言うのに。
お怒りになり、生まれ故郷へと戻られてしまった。
今ではエイジスで王妃になる前になされていた守護官などをされている始末だ‥‥‥」
エイジス?
あの、東にあるという大国の都市の名前だろか?
水の都。六大大陸最大の都市であり、大国の王都でもあり、その国の名でもある。
エイジス共和国の守護官?
それがどんな役職なのかは想像がつかなかったが、伝説に聞いた存在がそんな間近にいるなんて。
「そのお方には会いに行けば‥‥‥会えるのでしょうか?」
ん?
ルクナツァグは不思議そうな顔をする。
「まあ、妖精界とこの人間界では時間の流れが違う。
あの御方が去ってから戻るまでたった数年だ。
エイジスの蒼い髪と言えば、すぐに伝わるだろう‥‥‥それより、そうだなーー」
ケルピーは魔法を使ったのか分からないが、木の枝の刺された状態で焼かれた魚を差し出してきた。
「食するならそれで食べるがいい。
もう一匹は毒があるのでな。
我慢しろ」
食べろと言われても‥‥‥このまま?
そんなはしたないことをーーそうね、もう貴族ではなかったのだと思いなおしてナターシャはそれにかぶりついた。
「そうそう、その食べ方でいい。
あの御方もよくそうされていた。シーナ王妃‥‥‥」
「!?
ふっ‥‥‥ぐっ!?
シーナ王妃ですか??
それ、もう数百年前の伝説の王妃ですよ!!??」
とんでもない名前が飛び出して、魚が喉につまりそうになった。
このケルピーはなんてことを言い出すんだ。
ナターシャは驚き、呆れの連続だった。
「人間と妖精では時間の流れが違うからな。
そういうこともある。
だが、いま。
そう、この時代にあの御方はおられる。ところで、その太刀だが、背中のな。
それは魔を払い、その剣の時間を止める魔法がかかっている」
「つまり‥‥‥聖なる太刀、だと?」
「似てはいるが、まあそのようなものだ。
革は火竜のウロコをなめしたもの。どこで手に入れたかは‥‥‥語っていたな。
その亡者たちとの契約はどうしたものか。
数百年の怨念は簡単には消えない。
何より、ナターシャは契約を交わしている。
あの者たちが、その場所で殺された理由は簡単だ。
教会の」
「魔女裁判、ですか‥‥‥?」
「そうだ。
それを辞めさせ、その上で死んでいった全ての者の無罪を神の前で司祭。
いや、それでは足らないな。
王か、教皇に認めさせなくてはならない。
どうしたものか‥‥‥」
そんな大きなことを成し遂げないといけないんだ‥‥‥
ナターシャは改めて、あの場での約束の重さと命のありがたみに気づいた。
同時に王子や、教会に対する怒りも沸いてそれは怨嗟となり、彼女の心を闇色に染めようとする。
「ナターシャ。
恨むのであれば、もうやめることだ。
亡者たちにはわたしが言って聞かせよう。
その代わり、お前のそうだな‥‥‥その緑の長い髪を貰えればいい」
え?
そんなこの程度のもので済むものなの?
あの声はもっと重苦しくて、寂しそうで、何よりーー
「それはーーできません、ルクナツァグ様‥‥‥
恨みが間違いなのであれば、それは正します。
彼らの嘆きを、無罪を認めさせることだけは‥‥‥命と引き換えに教えてもらったのです。
あの塔からの抜け出し方を。
その恩義は‥‥‥返さないと」
妖魔は意地悪く笑ったような顔をする。
「そうだな、ナターシャはそれでいい。
もし、お願いしますと言われれば、断る気でいた。
そんな簡単な気持ちでいたのでは、いずれあの亡者たちの怨念に喰い殺されるぞ?
心に闇を張るな」
そんな‥‥‥
教えてくれようとしたのはわかるけど。
ずるい、そうナターシャは思った。
「意地悪な御方ですね‥‥‥でも、この髪は差し上げます」
魚を平らげた少女は、髪と束ねて根元からそれを自分の短剣で切り取った。
「おいおい、わたしはそのようなつもりでは‥‥‥」
ケルピーは困ったような顔をするが、少女は、いいんです、と髪の束を渡す。
「命を救って頂き、食事まで与えて頂いて。
その上、亡者たちとの距離の取り方まで教えて下さいました。
足りないかもしれませんが、御受取ください、ルクナツァグ様」
真摯な瞳でそう言い、それを差し出す少女の言葉に嘘はないようだった。
ふん、それは面白い。
なら、こちらももう一つ、教えてやるか。
ルクナツァグはそう思い、髪をくわえた。
「ナターシャ。
その髪は妖精の加護がある。
森の妖精族を尋ねることだ。
ああ、もう一つ。
グラン王国の建国王は、この先にある滝つぼに住む竜王からあの土地を借り受けて国を築いた。
わたしの名をだして良い。
尋ねてみることだ。解決策があるかもな」
髪はありがたく頂いておこう、森の姫よ。
そう言い、妖魔は水の中へと降りていき消えてしまった。
「竜王様‥‥‥???」
この先ね。
なら、行きましょ。
ナターシャは少し食べ過ぎたかも。
そうぼやいて、歩き始めた。
「それが我が国の‥‥‥国王様。
鏡の国の妖精王の妻になったからだ」
「それは・・・・・・喜ばしいことなのでは??」
「いいや、喜ばしくない。
王はそれまで妻がおらず、あの御方の美しさと性格に惚れて正妃にしたと言うのに‥‥‥。
まったく側室などと言い出すからーー」
これは、聞いてはいけない妖精王のお家事情に踏み込んだのかもしれない。
ナターシャは失敗したかもしれない、そう思った。
ルクナツァグは誰かにぼやきたかったのだろう。
さらに話を続けた。
「お陰で王妃様は‥‥‥我が国の経済は経ちいかず、あの御方の器量で持ち直したと言うのに。
お怒りになり、生まれ故郷へと戻られてしまった。
今ではエイジスで王妃になる前になされていた守護官などをされている始末だ‥‥‥」
エイジス?
あの、東にあるという大国の都市の名前だろか?
水の都。六大大陸最大の都市であり、大国の王都でもあり、その国の名でもある。
エイジス共和国の守護官?
それがどんな役職なのかは想像がつかなかったが、伝説に聞いた存在がそんな間近にいるなんて。
「そのお方には会いに行けば‥‥‥会えるのでしょうか?」
ん?
ルクナツァグは不思議そうな顔をする。
「まあ、妖精界とこの人間界では時間の流れが違う。
あの御方が去ってから戻るまでたった数年だ。
エイジスの蒼い髪と言えば、すぐに伝わるだろう‥‥‥それより、そうだなーー」
ケルピーは魔法を使ったのか分からないが、木の枝の刺された状態で焼かれた魚を差し出してきた。
「食するならそれで食べるがいい。
もう一匹は毒があるのでな。
我慢しろ」
食べろと言われても‥‥‥このまま?
そんなはしたないことをーーそうね、もう貴族ではなかったのだと思いなおしてナターシャはそれにかぶりついた。
「そうそう、その食べ方でいい。
あの御方もよくそうされていた。シーナ王妃‥‥‥」
「!?
ふっ‥‥‥ぐっ!?
シーナ王妃ですか??
それ、もう数百年前の伝説の王妃ですよ!!??」
とんでもない名前が飛び出して、魚が喉につまりそうになった。
このケルピーはなんてことを言い出すんだ。
ナターシャは驚き、呆れの連続だった。
「人間と妖精では時間の流れが違うからな。
そういうこともある。
だが、いま。
そう、この時代にあの御方はおられる。ところで、その太刀だが、背中のな。
それは魔を払い、その剣の時間を止める魔法がかかっている」
「つまり‥‥‥聖なる太刀、だと?」
「似てはいるが、まあそのようなものだ。
革は火竜のウロコをなめしたもの。どこで手に入れたかは‥‥‥語っていたな。
その亡者たちとの契約はどうしたものか。
数百年の怨念は簡単には消えない。
何より、ナターシャは契約を交わしている。
あの者たちが、その場所で殺された理由は簡単だ。
教会の」
「魔女裁判、ですか‥‥‥?」
「そうだ。
それを辞めさせ、その上で死んでいった全ての者の無罪を神の前で司祭。
いや、それでは足らないな。
王か、教皇に認めさせなくてはならない。
どうしたものか‥‥‥」
そんな大きなことを成し遂げないといけないんだ‥‥‥
ナターシャは改めて、あの場での約束の重さと命のありがたみに気づいた。
同時に王子や、教会に対する怒りも沸いてそれは怨嗟となり、彼女の心を闇色に染めようとする。
「ナターシャ。
恨むのであれば、もうやめることだ。
亡者たちにはわたしが言って聞かせよう。
その代わり、お前のそうだな‥‥‥その緑の長い髪を貰えればいい」
え?
そんなこの程度のもので済むものなの?
あの声はもっと重苦しくて、寂しそうで、何よりーー
「それはーーできません、ルクナツァグ様‥‥‥
恨みが間違いなのであれば、それは正します。
彼らの嘆きを、無罪を認めさせることだけは‥‥‥命と引き換えに教えてもらったのです。
あの塔からの抜け出し方を。
その恩義は‥‥‥返さないと」
妖魔は意地悪く笑ったような顔をする。
「そうだな、ナターシャはそれでいい。
もし、お願いしますと言われれば、断る気でいた。
そんな簡単な気持ちでいたのでは、いずれあの亡者たちの怨念に喰い殺されるぞ?
心に闇を張るな」
そんな‥‥‥
教えてくれようとしたのはわかるけど。
ずるい、そうナターシャは思った。
「意地悪な御方ですね‥‥‥でも、この髪は差し上げます」
魚を平らげた少女は、髪と束ねて根元からそれを自分の短剣で切り取った。
「おいおい、わたしはそのようなつもりでは‥‥‥」
ケルピーは困ったような顔をするが、少女は、いいんです、と髪の束を渡す。
「命を救って頂き、食事まで与えて頂いて。
その上、亡者たちとの距離の取り方まで教えて下さいました。
足りないかもしれませんが、御受取ください、ルクナツァグ様」
真摯な瞳でそう言い、それを差し出す少女の言葉に嘘はないようだった。
ふん、それは面白い。
なら、こちらももう一つ、教えてやるか。
ルクナツァグはそう思い、髪をくわえた。
「ナターシャ。
その髪は妖精の加護がある。
森の妖精族を尋ねることだ。
ああ、もう一つ。
グラン王国の建国王は、この先にある滝つぼに住む竜王からあの土地を借り受けて国を築いた。
わたしの名をだして良い。
尋ねてみることだ。解決策があるかもな」
髪はありがたく頂いておこう、森の姫よ。
そう言い、妖魔は水の中へと降りていき消えてしまった。
「竜王様‥‥‥???」
この先ね。
なら、行きましょ。
ナターシャは少し食べ過ぎたかも。
そうぼやいて、歩き始めた。
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