婚約破棄~二度目の人生を手にした侯爵令嬢は自由に生きることにしました!!

星ふくろう

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第五章 神々の山脈

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 もしかしたら、あの王国の狂った制度を。
 教会の蛮行を止めれるかもしれない、と。
 そう、思い始めていた。同時に、竜王がこのまま向かってもそれが揉め事や争いの元になるのだとすれば何かいい方法はないだろうか?
 そんな考えを巡らせていて、ふと思い出したことがある。
 蒼い髪。
「エイジスの蒼い髪‥‥‥」
 エイジス?
 竜王が何か嫌そうな顔をする。
「それはまさか‥‥‥シーナのことか?」
「え?
 あ、はい。
 あの、ルクナツァグ様が。
 スィール国のシーナ王妃がー‥‥‥王様の浮気に怒り、人間界に戻ったと。
 いま、エイジス国の首都、エイジス市で守護官をなさっていると。
 お知り合いですか?」
 はあああ‥‥‥
 竜王が大きなため息をついた。
「また、離縁したのかあいつは。
 二世紀前にも迎えに行ったことがある。
 あれの故郷にいる、オルンベルヌのフラニス公がな。
 わたしの従兄弟なのだ。
 二度目とはもう、なんとも情けない王だな、鏡の国の妖精王は‥‥‥
 で、そのシーナがどうしたと?」
 お知り合いなんですね、それも苦労されたようで。
 そう言うしかなかったナターシャは、苦笑しながら答えた。
「エイジス国、もしくは鏡の国スィールの妖精王様からの正式な使者を立てればあるいは、と」
 なるほど。
 それは良いかもしれん。
 しかしまたあのあてんば王妃に振り回されたくはないなーー
 竜王は悩むがいきなり数百年も経過して債権を回収に来たと言われれば誰でも困るだろう。
 何より、人間の国とはいえ一国の王に対しての請求だ。
 払わなければ小さな田畑ならば水を止めればそれで済む。
 だが、あれだけ広大な土地を貸している。
 そこには多くの罪のない人間が住んでいる。
 彼らにまで、王族の罪を被れというのはあまりにも酷い話だ。
 やり過ぎれば、逆に自分の属する竜族の王からお叱りを受ける可能性もある。
「エイジス、か‥‥‥。 
 虚空をまたげばすぐだが、ナターシャは人間だ。
 何があるかもわからんしなー‥‥‥行くとすればあの山脈を越えるべきか。
 ナターシャ」
 竜王はまだ泣いたり怒ったりと感情の波が治まらないんだろう。
 困り果てて泣いている少女を、大丈夫だよ、泣くなよ。
 そうあやしているアルフレッドも視界に入れて考えた。
「なんでしょうか、竜王様。
 申し訳ありません、なんだか、涙がーー」
「ほら、心配ないってば。
 手でもつなぐかい?
 まあ、仕方ないよな。
 そんな死にそうな目にあったんだ。
 安心したら誰でもそうなるって!」
 これはいい。
 二人ではあれだが、三人ならーー
「ナターシャにアルフレッド。
 どうだ、わたしと共に神々の山脈を旅してみたくはないか?」
 え?
 と、二人はいきなりの申し出に驚いてしまった。
 

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