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第六章 水の精霊女王
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自分の言葉を聞いた周りの騎士や剣士、魔導士から次に発せられたのは無言の沈黙とそれ以上に強い失望感、そして彼ら特有の怒り、無念の悲しみ。
そういった怨霊としての感情が渦巻き、ナターシャはその毒気に当てられてしまう。
一瞬、気を失いそうになるが目の中に入ったアルフレッドを見てどうにかその場に踏ん張ることが出来た。
「なぜ?
わたしは、あななたちを失望させるようなことを言いましたか?
それほどに自信と威厳と正義に溢れる皆様方が‥‥‥」
緑の髪の女性を見る、剣士を騎士を、カーティスを――そして、髑髏の騎士を。
誰もが一様にしてナターシャに消えてくれといわんばかりに怒りの波動をその身から、目から、態度とその口から発せられた言葉を自分たちの主に向けていた。
「まったく‥‥‥出来ないと言っているのに」
「そうだ、ここは虚無の世界。
神の世界でもあり、暗黒の世でもある。
人間が紛れ込んでいい場所じゃないのに」
「そうよ、あなたを一人戻すだけで大変なのに。
あの子を救いだせ?
なんの関係も、恩義もないじゃない。
行きたいならあなた一人でやればいいのよ‥‥‥でも、その前にその身体は置いて行きなさい。
みんなが戻れない」
「そうだ、お姫様。
俺たちの力はあなたを守り、現世に戻すまで。
それで力は尽きる。
あなたはまだやることがあるはずだ」
「そうよナターシャ。
そのわたしと同じエメラルドの髪。
あなたの奥には先祖の力があるわ。
それでわたしたちを戻して頂戴?
こんな世界、誰も居たくないのよ。まだ、消滅したくないの。
みんな、現世できちんと魂の担い手である死神に守られて、来世へと向かいたいの。
ここでは‥‥‥」
あの森の人が優しくナターシャに語り掛ける。
もう、時間が無いの、と付け加えながら。
「あの髑髏の騎士は暗黒に仕える存在。
あなたのその魂を欲している。
戻らなければ、時間がないの。理解してくれないかしら?」
あくまで怒りを最小限度に抑えて、彼女は理性的に話しかけて来る。
その言葉には嘘はないようにナターシャには感じ取れた。
カーティスを見やると彼もその通りだとうなづいている。
戻るのが正しいのかしら?
では、あそこにいるアルフレッドは偽者?
それとも――???
「森の人、質問です。
なぜ、彼を助けれないのですか?
時間がかかるから?
時間がないとは?
それよりも、彼は本物ですか?
あのあなた方が呼ぶ髑髏の騎士の作り出した偽物?
それをまず知りたいわ」
それはー‥‥‥と、辺りのだれもが返事を渋っていた。
真実でも、嘘でもない虚構の存在だとしたら否定も肯定もできないということ?
ナターシャにどこか不自然な彼らの行動に違和感を覚える。
時間がないというのはどういうことだろう、それにそれほど自慢する腕なら時間はかからないはず。
だってわたしを無事に連れ戻すだけの余裕のあるあの笑顔は嘘には見えなかった。
彼らは助けたくないのかしら。それとも、助けれないのかしら?
ナターシャは考えていた。
数百から千に近い視線にさらされながら、彼等がその気になれば無理強いしてでも自分を戻せるはずなのにそれをしようとしないことにも。
ただ、一つだけ正しいのはあの髑髏の騎士の悲し気な視線と、周囲の怨霊たちは彼から自分を守ろうとしていることだった。
「それは答えにくいわね、ナターシャ。
ここは虚無の世界。
現実であり、非現実であり、真実は嘘であり、正義と悪は表裏一体。
幻と現実の境目だから。
それと見抜くことは、難しいのよ」
森の人はそう教えてくれるが‥‥‥
「なら、わたしを守ろうとするなら無理矢理にでも連れ戻すべきなのに。
時間が無いと言いながらそれを出来ないあなたたちは本物なの?
いいえ、違う‥‥‥あなたたちは本物でその言葉には真実しかないわ。
でも、その裏には‥‥‥全てを語らなければいけないという契約は無い‥‥‥????」
「その質問には戻れば答えるわ、ナターシャ。
でも、時間がないのだけはなによりも正しい事実よ。
戻らなければ‥‥‥」
「戻らなければどうなるの?
戻ってもあの巨大な口に呑み込まれてどこかに行き着くなら、ここでアルフレッドを助けて戻るのも同じだと思います」
彼等が自分に触れない理由はなんだろう?
なぜ、一定距離をおいてまるでそこには見えない壁があるようにするのは何故だろう?
助けに来てくれたはずなのに、お姫様なんて呼んでくれるのに。
どうして、わたしのわがままを聞いてくれないんだろう?
待って?
誰もが同じ事を言っている。
時間がない。
ここは別世界。
そして――わたしが死ねば消滅するのだ、と。
「戻るべき居場所が‥‥‥なくなった?」
ふと漏らしたその一言に、その場にいた全員に動揺が走った。
なんだろ、この感覚。
どうしてそんなに怯えるようにしてわたしを見るの?
まるでわたしが望めば、消えてしまうかのような顔をするなんて――もしかして???
突然、心に産まれてきたその考えが正解かどうかは分からない。
でも、もしかすればー‥‥‥。
「誰かが、戻るべき場所を無くしたのですか?
あの遺骨だらけの嘆きの塔も、あの遺体だらけで腐臭の凄まじい大穴も‥‥‥???
まさか、何があったの??」
沈黙がもたらす答えに、ナターシャはどこか確信を得た気がした。
彼等は戻れないのだ。
自分の中にしか居場所がない。
だけど、わたしの中には良く分からない力があってそれをカーティスに無制限で貸し与えたから‥‥‥
「奪いたい、の?
この力とこの身体を?
意識を失っている間にそれをしたいけど、無理強いはできない。
それにー契約があるから触れることはわたしと貴方たちを生かすことにしか使えない?
でも、拒否権はある‥‥‥そういうことですか?」
どこかからため息が上がる。
ああ、気付かれてしまった、と。
失笑も起こり、それは嘲笑となり、ナターシャは大きな悪意の奔流に巻き込まれていく。
ここで諦めたらアルフレッドを助けてあげれない。
でも、カーティスも彼等の仲間だ。
なら、することは一つしかない・‥‥‥
ナターシャは覚悟を決めてある言葉を発した。
そういった怨霊としての感情が渦巻き、ナターシャはその毒気に当てられてしまう。
一瞬、気を失いそうになるが目の中に入ったアルフレッドを見てどうにかその場に踏ん張ることが出来た。
「なぜ?
わたしは、あななたちを失望させるようなことを言いましたか?
それほどに自信と威厳と正義に溢れる皆様方が‥‥‥」
緑の髪の女性を見る、剣士を騎士を、カーティスを――そして、髑髏の騎士を。
誰もが一様にしてナターシャに消えてくれといわんばかりに怒りの波動をその身から、目から、態度とその口から発せられた言葉を自分たちの主に向けていた。
「まったく‥‥‥出来ないと言っているのに」
「そうだ、ここは虚無の世界。
神の世界でもあり、暗黒の世でもある。
人間が紛れ込んでいい場所じゃないのに」
「そうよ、あなたを一人戻すだけで大変なのに。
あの子を救いだせ?
なんの関係も、恩義もないじゃない。
行きたいならあなた一人でやればいいのよ‥‥‥でも、その前にその身体は置いて行きなさい。
みんなが戻れない」
「そうだ、お姫様。
俺たちの力はあなたを守り、現世に戻すまで。
それで力は尽きる。
あなたはまだやることがあるはずだ」
「そうよナターシャ。
そのわたしと同じエメラルドの髪。
あなたの奥には先祖の力があるわ。
それでわたしたちを戻して頂戴?
こんな世界、誰も居たくないのよ。まだ、消滅したくないの。
みんな、現世できちんと魂の担い手である死神に守られて、来世へと向かいたいの。
ここでは‥‥‥」
あの森の人が優しくナターシャに語り掛ける。
もう、時間が無いの、と付け加えながら。
「あの髑髏の騎士は暗黒に仕える存在。
あなたのその魂を欲している。
戻らなければ、時間がないの。理解してくれないかしら?」
あくまで怒りを最小限度に抑えて、彼女は理性的に話しかけて来る。
その言葉には嘘はないようにナターシャには感じ取れた。
カーティスを見やると彼もその通りだとうなづいている。
戻るのが正しいのかしら?
では、あそこにいるアルフレッドは偽者?
それとも――???
「森の人、質問です。
なぜ、彼を助けれないのですか?
時間がかかるから?
時間がないとは?
それよりも、彼は本物ですか?
あのあなた方が呼ぶ髑髏の騎士の作り出した偽物?
それをまず知りたいわ」
それはー‥‥‥と、辺りのだれもが返事を渋っていた。
真実でも、嘘でもない虚構の存在だとしたら否定も肯定もできないということ?
ナターシャにどこか不自然な彼らの行動に違和感を覚える。
時間がないというのはどういうことだろう、それにそれほど自慢する腕なら時間はかからないはず。
だってわたしを無事に連れ戻すだけの余裕のあるあの笑顔は嘘には見えなかった。
彼らは助けたくないのかしら。それとも、助けれないのかしら?
ナターシャは考えていた。
数百から千に近い視線にさらされながら、彼等がその気になれば無理強いしてでも自分を戻せるはずなのにそれをしようとしないことにも。
ただ、一つだけ正しいのはあの髑髏の騎士の悲し気な視線と、周囲の怨霊たちは彼から自分を守ろうとしていることだった。
「それは答えにくいわね、ナターシャ。
ここは虚無の世界。
現実であり、非現実であり、真実は嘘であり、正義と悪は表裏一体。
幻と現実の境目だから。
それと見抜くことは、難しいのよ」
森の人はそう教えてくれるが‥‥‥
「なら、わたしを守ろうとするなら無理矢理にでも連れ戻すべきなのに。
時間が無いと言いながらそれを出来ないあなたたちは本物なの?
いいえ、違う‥‥‥あなたたちは本物でその言葉には真実しかないわ。
でも、その裏には‥‥‥全てを語らなければいけないという契約は無い‥‥‥????」
「その質問には戻れば答えるわ、ナターシャ。
でも、時間がないのだけはなによりも正しい事実よ。
戻らなければ‥‥‥」
「戻らなければどうなるの?
戻ってもあの巨大な口に呑み込まれてどこかに行き着くなら、ここでアルフレッドを助けて戻るのも同じだと思います」
彼等が自分に触れない理由はなんだろう?
なぜ、一定距離をおいてまるでそこには見えない壁があるようにするのは何故だろう?
助けに来てくれたはずなのに、お姫様なんて呼んでくれるのに。
どうして、わたしのわがままを聞いてくれないんだろう?
待って?
誰もが同じ事を言っている。
時間がない。
ここは別世界。
そして――わたしが死ねば消滅するのだ、と。
「戻るべき居場所が‥‥‥なくなった?」
ふと漏らしたその一言に、その場にいた全員に動揺が走った。
なんだろ、この感覚。
どうしてそんなに怯えるようにしてわたしを見るの?
まるでわたしが望めば、消えてしまうかのような顔をするなんて――もしかして???
突然、心に産まれてきたその考えが正解かどうかは分からない。
でも、もしかすればー‥‥‥。
「誰かが、戻るべき場所を無くしたのですか?
あの遺骨だらけの嘆きの塔も、あの遺体だらけで腐臭の凄まじい大穴も‥‥‥???
まさか、何があったの??」
沈黙がもたらす答えに、ナターシャはどこか確信を得た気がした。
彼等は戻れないのだ。
自分の中にしか居場所がない。
だけど、わたしの中には良く分からない力があってそれをカーティスに無制限で貸し与えたから‥‥‥
「奪いたい、の?
この力とこの身体を?
意識を失っている間にそれをしたいけど、無理強いはできない。
それにー契約があるから触れることはわたしと貴方たちを生かすことにしか使えない?
でも、拒否権はある‥‥‥そういうことですか?」
どこかからため息が上がる。
ああ、気付かれてしまった、と。
失笑も起こり、それは嘲笑となり、ナターシャは大きな悪意の奔流に巻き込まれていく。
ここで諦めたらアルフレッドを助けてあげれない。
でも、カーティスも彼等の仲間だ。
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