69 / 90
第七章 闇の希望と炎の魔神
3
しおりを挟む
ナターシャの視線は希望に満ち溢れていて、彼はそれをうけることがとても苦しかった。
さっきまでの悲しい感覚を彼女に向けていたのに、いまは別の感情が彼を襲っていた。
彼、髑髏の騎士は森の人にまた余計なことを、と毒づきながらナターシャにある事実を伝えなければならなかった。
「すまないー‥‥‥。
ここには君が望む者はいないんだ、アルフレッドも竜王のかつての親友も。
いないんだよ」
本当に済まないと、後悔しているそぶりを見せる彼を、ナターシャは責めれなかった。
ここまでこれたのも、自分がこの場所にいるのも彼等のお陰だからだ。
「いいえ‥‥‥いいの。
あなたたちは悪くない。
それでもさっきの話は気になりますけど、どうもわたしと彼の話のようだからそれはもういいわ」
「ああ‥‥‥。
未来は自分たちで得るものだ。
俺たちのように刈り取られなければ、な?」
「刈り取り‥‥‥?
それは、王家と教会のことでしょうか?
教会は一体、何をしようとして貴方達をあの場所で断罪したの??」
それは困った質問だ、そう騎士は呟いた。
知るべきではないこともあるんだ、と。
「そうだな、人は神を恐れることをやめたんだ。
新たに自分たちに都合の良い神を作り上げた。
古き神は去り、中身のない、力もなにもない神が作らえて祭り上げられた」
「神様を‥‥‥人間が!?」
ナターシャは驚いていた。
偉大なる神々を越える行為を、人間がするなんて、と。
だが、髑髏の騎士はそれを笑っていた。
「なにがおかしいのですか?
神様を作るなんてー‥‥‥」
ナターシャは笑いが止まらない彼に憤然とする。
騎士はひとしきり満足するまで笑い続けると、すまないと言って話を続けた。
「西方教会の神は存在しない。
まあ、それでも千年もあればその聖典にある内容の神を、人の信仰心が産み出すだろう。
その神は他の宗教や神々を弾圧し、征服して勝利を治める。
それはつまり、人類国家群が世界を支配する。
そういうことだ。
宗教を武器として人は人のままで、古き神々や魔や精霊の支配から解放されるべきだと考えたのがあの西方教会の最初の法王であり、俺たちの国の数代目の国王はそれに賛同した。
だから、歴史が書き換えられたのさ。
わかるだろ?
あのお姫様が男装するはずだった演目が、そのいい例だ」
「でも、それでは人は誰にも頼れないわ。
神様は見守っているだけで、何かをしろなんて言わないはずなのに‥‥‥」
「そうかな?」
髑髏の騎士は少しだけ皮肉を交えてそう言うが、ナターシャはそれを受け入れることがどうにも抵抗を感じてしまい納得できなかった。
「だって、竜王様だって無理強いはしなかったし‥‥‥人の世界に神様は口出ししてはいけないって」
「ああ、あれな。
エバーグリーンはかなり古い神だからな。
頭の中が硬いのさ。
考え方も生き方もな。
待つなんてせずに、さっさと嫁を追いかけていればよかったものを‥‥‥」
「嫁?
だって、いまその王妃様は上に―‥‥‥!!」
うん?
髑髏の騎士は不思議そうにそれを聞いているが、ああ、そういう事かと理解する。
このお姫様、まだ誤解しているのかと。
「なあ、そんなことはどうでもいいだろ?
教会は何なんでも、神に関わる存在を消しにくるぞ?
それは、あの人類最大国家エイジス連邦でも同じ事だ。
もっとも、エイジス連邦は外の異世界とも多く交易をする国でもあるし、その窓口でもあるからな。
だから、人類最大国家になれたんだが‥‥‥」
「待って!?
異世界との窓口だの、交易だの言われても分からないわ――。
何より、国家の転覆を図って罪を受けるならわたしだけで、アルフレッドは関係ないでしょ??!」
そんな余計なことよりも彼はどこにいるのかを、ナターシャは早く教えて欲しかった。
彼等が言う、時間がない。
その期限は刻々と近付いているようにナターシャは感じていた。
さっきまでの悲しい感覚を彼女に向けていたのに、いまは別の感情が彼を襲っていた。
彼、髑髏の騎士は森の人にまた余計なことを、と毒づきながらナターシャにある事実を伝えなければならなかった。
「すまないー‥‥‥。
ここには君が望む者はいないんだ、アルフレッドも竜王のかつての親友も。
いないんだよ」
本当に済まないと、後悔しているそぶりを見せる彼を、ナターシャは責めれなかった。
ここまでこれたのも、自分がこの場所にいるのも彼等のお陰だからだ。
「いいえ‥‥‥いいの。
あなたたちは悪くない。
それでもさっきの話は気になりますけど、どうもわたしと彼の話のようだからそれはもういいわ」
「ああ‥‥‥。
未来は自分たちで得るものだ。
俺たちのように刈り取られなければ、な?」
「刈り取り‥‥‥?
それは、王家と教会のことでしょうか?
教会は一体、何をしようとして貴方達をあの場所で断罪したの??」
それは困った質問だ、そう騎士は呟いた。
知るべきではないこともあるんだ、と。
「そうだな、人は神を恐れることをやめたんだ。
新たに自分たちに都合の良い神を作り上げた。
古き神は去り、中身のない、力もなにもない神が作らえて祭り上げられた」
「神様を‥‥‥人間が!?」
ナターシャは驚いていた。
偉大なる神々を越える行為を、人間がするなんて、と。
だが、髑髏の騎士はそれを笑っていた。
「なにがおかしいのですか?
神様を作るなんてー‥‥‥」
ナターシャは笑いが止まらない彼に憤然とする。
騎士はひとしきり満足するまで笑い続けると、すまないと言って話を続けた。
「西方教会の神は存在しない。
まあ、それでも千年もあればその聖典にある内容の神を、人の信仰心が産み出すだろう。
その神は他の宗教や神々を弾圧し、征服して勝利を治める。
それはつまり、人類国家群が世界を支配する。
そういうことだ。
宗教を武器として人は人のままで、古き神々や魔や精霊の支配から解放されるべきだと考えたのがあの西方教会の最初の法王であり、俺たちの国の数代目の国王はそれに賛同した。
だから、歴史が書き換えられたのさ。
わかるだろ?
あのお姫様が男装するはずだった演目が、そのいい例だ」
「でも、それでは人は誰にも頼れないわ。
神様は見守っているだけで、何かをしろなんて言わないはずなのに‥‥‥」
「そうかな?」
髑髏の騎士は少しだけ皮肉を交えてそう言うが、ナターシャはそれを受け入れることがどうにも抵抗を感じてしまい納得できなかった。
「だって、竜王様だって無理強いはしなかったし‥‥‥人の世界に神様は口出ししてはいけないって」
「ああ、あれな。
エバーグリーンはかなり古い神だからな。
頭の中が硬いのさ。
考え方も生き方もな。
待つなんてせずに、さっさと嫁を追いかけていればよかったものを‥‥‥」
「嫁?
だって、いまその王妃様は上に―‥‥‥!!」
うん?
髑髏の騎士は不思議そうにそれを聞いているが、ああ、そういう事かと理解する。
このお姫様、まだ誤解しているのかと。
「なあ、そんなことはどうでもいいだろ?
教会は何なんでも、神に関わる存在を消しにくるぞ?
それは、あの人類最大国家エイジス連邦でも同じ事だ。
もっとも、エイジス連邦は外の異世界とも多く交易をする国でもあるし、その窓口でもあるからな。
だから、人類最大国家になれたんだが‥‥‥」
「待って!?
異世界との窓口だの、交易だの言われても分からないわ――。
何より、国家の転覆を図って罪を受けるならわたしだけで、アルフレッドは関係ないでしょ??!」
そんな余計なことよりも彼はどこにいるのかを、ナターシャは早く教えて欲しかった。
彼等が言う、時間がない。
その期限は刻々と近付いているようにナターシャは感じていた。
0
あなたにおすすめの小説
冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました
鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」
そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。
しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!?
だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。
「彼女を渡すつもりはない」
冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!?
毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし!
さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜――
リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される!
政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー!
「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
婚約破棄された侯爵令嬢ですが、帝国の次席秘書官になりました ――王の隣ではなく、判断を誤らせない場所へ
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として王宮に仕える侯爵令嬢ゼクレテァ。
彼女は華やかな場に立つことはなく、ただ静かに、しかし確実に政務と外交を支えていた。
――その役割が、突然奪われるまでは。
公の場で告げられた一方的な婚約破棄。
理由はただひとつ、「愛している相手がいるから」。
ゼクレテァは感情を見せることなく、その決定を受け入れる。
だが彼女が王宮を去った後、王国には小さな歪みが生じ始めた。
些細な行き違い、遅れる判断、噛み合わない政策。
それらはやがて、国家全体を揺るがす事態へと発展していく。
一方、行き場を失ったゼクレテァの前に、思いもよらぬ「選択肢」が差し出される。
求められたのは、身分でも立場でもない。
彼女自身の能力だった。
婚約破棄から始まる、
静かで冷静な逆転劇。
王の隣に立つことを拒んだ令嬢は、
やがて「世界を動かす場所」へと歩み出す――。
-
婚約破棄された伯爵令嬢ですが、国の経済を掌握しました
鍛高譚
恋愛
「経済を握る者こそ、世界を動かす――」
前世、日本の証券会社で働いていた**瑞穂紗羅(みずほ さら)**は、異世界に転生し、サラ・レティシア伯爵令嬢として生まれ変わった。
貴族社会のしがらみや婚姻政策に巻き込まれながらも、彼女はひそかに動き始める。
「まずは資金を確保しなくちゃね」
異世界の為替市場(FX)を利用し、通貨の価値変動を読み、巨額の富を得るサラ。
次に狙うは株式投資――貴族の商会やギルドに出資し、国の経済に食い込んでいく。
気づけば彼女は、両替所ネットワークと金融システムを構築し、王国の経済を裏から支配する影の実力者となっていた。
そんな中、彼女に公爵令息との婚約話が舞い込む。
しかし、公爵令息は「格下の伯爵令嬢なんて興味がない」と、一方的に婚約破棄。
それを知った公爵は激怒する――
「お前は何も分かっていない……! あの女は、この国の経済を支配する者だぞ! 世界すら掌握しかねないのだ!」
サラの金融帝国の成長は止まらない。
貴族たちは彼女にひれ伏し、国王は頼り、王太子は取り込もうとし、帝国は彼女の影響力に戦慄する。
果たしてサラは、異世界経済の頂点に立ち、さらなる世界の覇権を握るのか――?
今度は、私の番です。
宵森みなと
恋愛
『この人生、ようやく私の番。―恋も自由も、取り返します―』
結婚、出産、子育て――
家族のために我慢し続けた40年の人生は、
ある日、検査結果も聞けないまま、静かに終わった。
だけど、そのとき心に残っていたのは、
「自分だけの自由な時間」
たったそれだけの、小さな夢だった
目を覚ましたら、私は異世界――
伯爵家の次女、13歳の少女・セレスティアに生まれ変わっていた。
「私は誰にも従いたくないの。誰かの期待通りに生きるなんてまっぴら。自分で、自分の未来を選びたい。だからこそ、特別科での学びを通して、力をつける。選ばれるためじゃない、自分で選ぶために」
自由に生き、素敵な恋だってしてみたい。
そう決めた私は、
だって、もう我慢する理由なんて、どこにもないのだから――。
これは、恋も自由も諦めなかった
ある“元・母であり妻だった”女性の、転生リスタート物語。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』
鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」
王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。
感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、
彼女はただ――王宮を去った。
しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。
外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、
かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。
一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。
帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、
彼女は再び“判断する側”として歩み始める。
やがて明らかになるのは、
王国が失ったのは「婚約者」ではなく、
判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。
謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。
それでも――
選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。
これは、
捨てられた令嬢が声を荒げることなく、
世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる