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第二章 女神さまとモフモフ‥‥‥
あっらー‥‥‥月どころか大地母神まで食べたよモフモフ神狼
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「これがいい」
あたしの一言にフェンリルは困った顔をする。
「どれも変わらんだろう?」
「やーだ!!
あれがいいの!!!
これは色が違う!!」
色?
少しだけ着ている衣装と飾りが薄いか濃いかの差ではないのか?
モフモフ神狼は不可解な顔をしていた。
なにがどう違うのかさっぱりわからん。
そんな顔つきだ。
「これではー‥‥‥だめなんだな。
わかった」
ぶーっ、てむくれてるあたしを見て彼は狼バージョンと同じ時のようにふう、やれやれなんて顔をする。
「あの右側のやつか?
上から二番目の台の一番、端の?」
一応、確認はしてくれる。
またごねられたらめんどくさいからか、優しさで聞き返してくれたのかはわかんないけど。
「うん、それ。
あれでなきゃ、いや!!」
神様(人間型)バージョンで、あたしとお揃いのジーンズ生地の上下のシャツとパンツに革製の靴。
わがまま言って二人でいるときはこれを着て欲しい、そうお願いしたら聞いてくれた。
「うーん。
まあ、頑張ってはみる。
待てよ?」
もうこれで三十回目のトライ。
筒に簡単な仕掛けをして、空気圧で打ち出す射的ゲームの景品。
フェンリルはそういった経験がないのか、本当にうまくない。
まあ、狼が基本だから近眼ってのもあるかもしれない。
二メートルも離れてない的を相手に延々、一時間前後。
あたしのあれだって、これじゃない。
そんなわがままに当たらない弾を撃っては外し、屋台のおじさんを毎度、にんまりさせている。
あたしが満足するまではこの客は帰らない。
そう、おじさんも見抜いているからだ。
ポンッ。
乾いた音とともに弾が発射されてーー
「あー兄ちゃん、残念だなあ。
また外れだ」
「ぬう‥‥‥」
横目であたしをフェンリルは見てくるけど、ここで文句は言わない。
下手くそーとか使えない、とか。サターニアみたいなことは。
こっちも横目で欲しいなって。
そう見返すだけ。彼の男を下げるようなことは言わない。
ただ、期待していい? そんな顔をするだけ。でも嫌味はないよ?
本心だから。
最初の数回の頃は、
「もういいだろう?」
「やだ。あれがいい」
「しかし、よく見えん」
「だめなの?」
「だめとは言ってない」
「なら、期待してる」
「お前‥‥‥サター」
その単語にだけは怒りの視線を投げかけると、禁句だと理解したらしいから言わなくなった。
十回くらい無言で頑張って、チラっとこっちを見る。
待ってるよ、そんな笑顔で返事。
二十回くらい頑張って、どうだ? そんな顔でこっちを見る。
期待したのに、そんな悲しそうな顔で返事。
三十回目で、
「もう、いいか?」
飽きたというより、無理かもしれない。
すまん、そんな顔で見てくるから、
「やだ」
「お前ー」
「あれがいい!!」
「-‥‥‥」
屋台のおじさんに銅貨を1枚渡して再度、数回トライ。
そして冒頭部分に戻り、いまーー
何も言わずにこちらも見ない。
いきなり、銅貨十枚分。
銀貨一枚を屋台のおじさんに放り投げた。
「続けていいか?」
視線が変わってる。
狼の、狩人の目つきにフェンリルはなっていた。
「ど、どうぞ‥‥‥」
そして六回目。
あたしが欲しがったもの。
それと同型で色違いを残り四回で全部ゲット。
「なにか袋はないか?」
「あ、ああ。
頑張ったな、兄ちゃん。
もら、もう一つもってけ」
一段上の高そうなのを一緒に詰めてくれた。
「おい、帰るぞ?」
「はーい」
静かだけど、優しい一言。
信じて良かったろ?
そんないちべつをあたしにして、フェンリルは袋を背中に背負う。
あたしが欲しがったやつだけは、丁寧に手渡して。
あたしは彼の後ろを追いかける。身長差が大きいけど、歩幅を合わせてくれる。
人混みに紛れないように、手を繋いでくれる。
色んな種族がそれぞれの神様からあたしを討伐する命を受けているのを知ってるから、繋ぐというより。
懐に抱きしめて歩いてくれる。
「髪と肌、瞳の色を魔法で変えたのか?」
「え?
あ、これ?
光の反射でそう見えるように調整させてんの。
こいつに」
そう言って、ピアスみたいにした聖典の制御装置を指差す。
あたしは右耳に青いやつ。彼は左耳に赤いやつをつけてくれた。
似た形の違う色を寄越せ。そうぶっきらぼうに言ってから。
「そうか。
光の反射かーーいろいろな使い方があるな。知識があるのはいいことだ」
必ず誉めてくれる。
いい男だ。
「しかし、雑多な種族がこんなにも集まる市場があるとは。
大地母神ミネルヴァとはよほど、信仰が厚いのだな」
あー、確かに。
この神殿前のお祭りみたいな屋台の並びといい、そこかしこで並んでる飲食の店や雑貨店といい。
数千人はこの広い神殿前の広場に広がる市場でなにかをしている。
まあ、裏道的な場所では怪しい取引も少しだけ見え隠れ。
これを認可して放置しているのも、懐の広さなのか、それとも。
「なあ、お前」
へ?
お前、なんて。そんな唐突。いや、いつもお前なんだけど‥‥‥。
「は、はい?」
「なぜ、警護や管理する衛兵がいない?
人間はーーまあ、人間以外も多くいるが。
そんなに法を守るものか?」
神殿の入り口と、広場の片隅には定期的な位置で彼女の種族であるドワーフやゴーレムがいるけど。
でも、市場のなかには誰もいない。たまにその真ん中を神官や司祭、巫女かな?
そんな関係者が通り抜けるくらい。
ここに来て、朝から既に半日。
「そうだね、見ないね。
なんか知らないけど、ルールがあるのかも」
ふん‥‥‥なんとなく気に入らないみたい。狼の群れには厳しいルールがあるっていうからかな?
「ねえ、フェンリル」
あれ、睨まれた。
また、あれを言わせる気かな?
まだ、そうなった訳じゃないんだけど‥‥‥。
「ディアスだ」
「は?」
「フェンリルは氏族の名称だ。
わたしはディアスだ」
え、その名前。
月の双子のーー
「うん、ディアス、ね。
で、あんたさ」
あれ、また睨まれた。
「あなた、と言え。
元聖女なら、場所くらいはわきまえろ。
ここは、お前の格を試されてる場所だ。戦争にきたならそれでもいい。
いまは外交に来たのだ。その呼び方は二人だけの時にしろ。
サターニア様の前でもだ。常に全種族が見ている。その責任を感じていなさい」
「あー‥‥‥はい。
ごめん、なさい」
素直に謝るあたし。なんかいつもと違う。
厳しい先生といるみたい。でも、価値観を押し付けてくるわけではないから文句も言いづらい。
「カイネの言動一つが一人の誰かの決意になるかもしれん。
これまでの信念がくつがえる可能性もある。それを理解しないとな。
神とは既成概念だ。それと戦うには、嫌でも対立できるものを用意しなければならん」
「それって?」
「正義ではないな。
まあ、言うなれば、大義か。
それとも、名誉か。尊厳かもしれん。
まあ、どれがあっても一族は養えん。だが、心を突き動かすのは大きな衝動。
理性を越えたもの。神の導きではない。言うなれば-」
頭を軽く撫でられた。
「お前がしたような、自己を捨てた善きこと。だろうな」
悩むな、わたしがいまは側にいる。
そう言われて、泣きそうになるのはあたしだけかな。
オルブ・ギータはこんな事は言わない。
ただ、信じてついて来てくれる。どこまでも信じ抜く。
それがあの人の強さ。みんな違うものがあるんだね。
「さて、何か食事でもしていくか。何がいい?」
「え、でも。
目の前に相手がいるのに?」
なにを今更、フェンリルはーううん、ディアスは不敵に笑う。
「ここに来て半日。わたしたちは外交には来たが、誘いに来たわけではない。
来るなら、向こうから来たいように仕向ければいい。
選ぶのはあちらの自由だ。それは、カイネの宣言ではないのか?」
「それはそうだけど。
でも、夫を殺してるし‥‥‥」
「謝罪ならサターニア様が来ればいいことだ。
あれはあれ。これはこれだ。混同すると多くが集まった席で疑惑を招くぞ。
思想も文化も違うだけならいいが。今度は種族が異なる。
主義は貫け。その先に謝罪を求めるなら、その時に考えればいい」
「だけど、それじゃあ大地母神が可哀想ーー」
「それは個人対個人ならな。サターニア様を連れてきた。
今回は神殺しの代表対神の代表の一人との対談だ。
私的な感情をだすような長ならば、その集団は自滅する。
まあ、もうそれは露呈しているがな。
慈愛と信頼をはき違えた結果がーー」
え?
あたしはいきなり、右腕から左腕へとーー
「いててーー!!」
あ、スリか。
どんな攻撃も効かないからって放置しすぎてたわ。
目の前をハエが飛んでるようなもん。目障りだけど、別に放置してもいいやつ。
「これだ。おい、次にやればその腕を切り落とすぞ。
真面目に働いて家族を養おうとは思わないのか?
恥知らずめ」
そしてディアスは広場奥の衛兵を大声で呼びつけた。
「おい、異国から来た客人にこの程度のもてなししかできないのか?
安全も提供できずに何が慈愛だ。
慈しみを叫ぶなら、他者からの信頼を得ることも考えるんだな。
連れて行け」
「あ、渡すんだ?」
「当たり前だろう。ここはあいつらの国だ。
その国にはその国の法がある。それを無視して行われたのがあの蛮行。
ダーシェどものゲームだ。その地の法に従えないなら、出て行けばいい。
それだけだ、だろう、お前?」
「は、はい‥‥‥ディアス」
あー、なんか調子がおかしい!!!!
絶不調!!!
「さあ、食事にしよう。
いささか、小腹が空いた。何がいい? 好きな物を選べ」
常にあたしを優先してくれる。
それは神殺しの代表として上に立ててくれてるからなのか、それともーー
少しだけ遅い昼食を取りながら、いろいろと話をしていた時。
彼らは現れた。まるで歓迎してやる。
そんな静けさとともにーー
「来たか」
「来たねーーようやく」
「カイネ様とお見受け致します。
我が主がお待ちです」
あたしが席を立とうとしたら、
「へ?」
連れ戻された。なんで?
「帰れ」
「--は???」
うん、あちらもそんな顔をしてるよ。なんで? って。
「主の名も先に出せない愚鈍な従者にもてなされるほど、我等は安くない。
礼儀を知るならば、それなりの者かーー
ミネルヴァ神、御本人が来られるべきだろう。
帰れ」
凄まじい威圧感。神としての怒りの静かな咆哮。
市場そのものが、ディアスに注目していた。
どこまでも、信義と礼節を貫く古代神。
そっか、ディアスは、フェンリルは神殺しだけじゃないんだ。
死神様も、サターニアも、そして、地球の自分の神族の代表としてもここにいるんだ。
かつて世界を二分する戦いをした神々の一人としても、世界を賭けるゲームにも怒るしそれを黙認した他の神を許せない。そして、あたしに見ろ、そう言っていた。
世界を賭けることの覚悟を持て、と。その背中で。
あたしは甘やかされたりとか、女扱いとか。そう思ってたけど。
違うんだね、ディアス。あんたは教えたかったんだ。
それを背負うことの辛さを。大きさとか重さじゃない。
失うことの辛さを知れ、そう言いたかったんだ。それを分からなきゃ、多くの犠牲に顔向けができない。
あの優しさは、それをやわらげてくれてたんだね。
その辛さを知っているから。このバカモフモフ神狼。
あのぶつくさ言ってたのは文句じゃなかったんだ。
サターニアは補佐しながらきちんと復讐も果たした。でも、それは知恵と経験があったから。
それを誰かがあたしに伝えなきいゃいけない。そう、自問自答してたんだね。
「主はそなたたちの様な、下位のものには興味はない。
あくまで、好意で来てやったのだ」
この物言いはさすがに神狼を怒らせた。
「そうか。
ならば、その発言は主の本意。
そう受け止めていいのだな?
もう一度聞くぞ。それでいいのだな?」
あーだめだよモフモフ神狼。
そんなに威圧したら‥‥‥。
でも、大地母神は出てこない。恐れをなしたのか、それとも?
その時だ。
神殿から青い炎のようなものが昇ったのは。
「おお!!
我が主。かしこまりました」
かしこまりました???
なんかの意思疎通は聖典経由では感知できなかったけど。
つまり、あの炎の色でイエスかノーが来まる、と。
そんな仕組みらしい。
「神殺しよ、主の本意である。
そう、告げられていらされる」
あーあ。
せっかく来たのに。じゃあ、切込み、か。
そう思って席を立とうとしたら、膝の上に抱き上げられた。
「動くなよ、いいな、お前」
えーと‥‥‥。もう口が勝手に反応してるよ?
「はい」
って。あたしなんか調教されてない???
「命惜しい者は去れ。
しばしだけ、待ってやる」
「愚問を。
あの神殿に入れるのは我等のみ。
いまは主だけよ」
この返事がいけなかった。
モフモフ神狼。
サターニアなんて目じゃない。
本当に残酷な神の目でそいつらに言ったもん。
「愚問‥‥‥か。
まあ、いい。
お前の答えが主の死期を早めた、そう生涯悔いて生きるのだな」
「なっー!?」
それがーー合図だった。
誰もなにもしていないはず。
その場にいた誰もの目にはそう映っただろう。聖典を通じて、それを知ったあたし以外は。
「はああああああっ!???
し、神殿がーーー」
多分、一番偉いさんだろうね。
立つ気力すら失ったらしい。
そう、ディアスが神殿を見た瞬間。
それはあまりにも暗く、そして明るい白い何か。
それによって、消滅していた。
「ディアス‥‥‥あれってーー」
ふん、狼の時なら荒い鼻息を出していただろう。
彼は得意そうに微笑んで言った。
「月を食べた狼だ。
そういうことだ」
と。
「おい」
彼はあたしを膝に抱きかかえたまま、そのお偉いさんを見下して言い放った。
「死期を早めたのはお前だが、死を選んだのはあの女神本人だ。
そこを間違えるなよ。お前の罪は前者だけだ。
それだけを悔いていればいい。あとはーーここにいる者たちを導くのだな。
大地母神の教義とともに。そうすればーー」
「そっ、そうすればーー??!!」
偉いさんは悲鳴しか出ない。でもどこかホッとした顔もしていた。
「神は死んでも信仰があれば甦る。
いまではないが、まあ、千年もあればな。
その時までに、傲慢な信者や従者から変えるのだな。
この大陸全てを。教えの中にある真理を求めて学ぶがいい。
それが真理に達した時、女神はよみがえる。
早ければ明日にでもな?
まあ、そうそう簡単に考えは変わらん。
お前がもし、大地母神の教えに敬愛し、真理と信仰を求めるなら。
誰もが等しく生きれる世界を考えろ。誰もが相手を敬える世界をな。
それが、慈愛というものだ。
これはわたしの一存ではないぞ。大地母神より上位の神としての‥‥‥」
「神託、ですか?」
どこまでも神にすがりたいんだろうなあ。この人たち。
ディアスは優しく否定したよ。
「いいや、頼みであり、願いだ。
同じ神の一人として、彼女の教えを尊んでくれたことを。
この場にてその信者全てに礼を言う。同時に女神を奪った謝罪もな。
だが、これは神と神との対話。
お前たちには非はない。そして、できるならーー恨むならわたしを恨め。
青き惑星から来た異世界の神。このフェンリルをな」
「ディアス、それじゃあ、あんたが‥‥‥」
「いいのだ、お前。
神の愚行、蛮行を裁くのが同族の役目。
お前は神以外を見ていればいい。この腐りきった世界の神は、わたしとサターニア様が罪を背負う。
それが、神の責任だ。たとえ、異世界の神であってもな」
どこまでも、あなたは神としての存在を信じたいんだね。
「はい、ディアス」
この返事は素直に言えた。
「では、帰ろう。
ああ、そうだーー」
ディアスが指を鳴らすと、えええーーー
「しっ、神殿が!!??」
そりゃそうだよね。
あれだけ崩壊して消えた神殿がそこには戻ってる。
「おい、神官長、でいいのか?」
呼ばれた偉いさん、青い顔してひれ伏してる。
「は、はい。それで間違いございません!!!」
なんて返事が返ってくるし‥‥‥。
「先程の依頼、どうだ、やれるか?」
「そ、それは。あなた様を恨めと、そういうーー???」
「違う」
「申し訳ございませんーー!!!!」
あーあ、土下座だよ、これ。
「誰もが等しく生きれる世界を考えろ。誰もが相手を敬える世界をな。
そう言っただろう?」
「はい、確かに伺いました!!」
「できるか?
わたしの目を見て返事をしろ。これは神などと思いあがった依頼ではない。
一つの存在として、お前に尋ねている。身分などいらん。
そんな枠を取り払い、お前の本心で返事が欲しい。できるか?」
神官長、唖然としていたよ。
こんな神様見たことない。そんな顔だった。
でも、何万人いるのか知らないけど。あっちも組織の長だね。
決心したみたい。
「はい。慈愛がなにであるか。
それは等しく慈しむ心。すべてを許す心。
そして、時には裁定を下す勇気を持つこと。そこには、身分などありません。
誰もが等しく生きれる世界を。もはや、この大神官などという名すら不要です」
あ、大神官だったんだ。被ってた多分、それを表す帽子。
自分からどっかにぽーいって捨てたし。
「ではー‥‥‥主を迎えにいくがいい。
多分、数時間すれば目覚めるはずだ。主を諫め導くのも従者の務め。
頼んだぞ」
え、あんた。滅ぼしたんじゃ‥‥‥。
意地悪そうにニヤってしたよ、ニヤって。
大神官、慌てて駆けだしてくし。
「さあ、帰ろうか。
わたちたちの仕事は終わりだ。後は彼等が決めるだろう」
そう言って、ディアスは神狼になり、あたしを載せて飛び立った。
「ねえ、あれでよかったの?
本当に?」
全部、一人で終わらせちゃった。モフモフ神狼。
最近、出番ないなー。爽快にざまぁやりたいのにーー
まあ、その左耳には赤いあれが光ってるし、いいか。
でもなんとなく、元気ないんだよね。
「ねえ、どしたの?
なんで元気ないの?」
って聞いてみた。あーまたしぶーい顔してる。
「あのさー全部話してくれないと妻にならないからね、あたし」
むう‥‥‥そんな声だしてぼやく始末。
「ねーえ、旦那様!?」
耳元で怒鳴ってやった。まだだけどね、とそっとささやいて。
(サターニア様だ。
次は女神同士の女の戦いになる。南も北も女神だ。
また後始末だ‥‥‥)
あーそんなことで悩んでたんだ。情けないなー
「なら言えばいいんじゃない?
そろそろ自分で後始末までして下さいって。
主人なんだから。そんなことも言えないならー‥‥‥」
あ、なんだろ?
なんか必死になってるぞ、モフモフ神狼。
(わかった。
まったく‥‥‥)
なんて、返事来たけど。さて、あたしを取るの、サターニアを取るの?
そんな馬鹿な質問はしないけど。
言わないなら捨てるからなーモフモフ神狼。
そしてあたしたちが天空大陸を目指す。
さーて、そろそろ暴れ時だよね???
あたしの一言にフェンリルは困った顔をする。
「どれも変わらんだろう?」
「やーだ!!
あれがいいの!!!
これは色が違う!!」
色?
少しだけ着ている衣装と飾りが薄いか濃いかの差ではないのか?
モフモフ神狼は不可解な顔をしていた。
なにがどう違うのかさっぱりわからん。
そんな顔つきだ。
「これではー‥‥‥だめなんだな。
わかった」
ぶーっ、てむくれてるあたしを見て彼は狼バージョンと同じ時のようにふう、やれやれなんて顔をする。
「あの右側のやつか?
上から二番目の台の一番、端の?」
一応、確認はしてくれる。
またごねられたらめんどくさいからか、優しさで聞き返してくれたのかはわかんないけど。
「うん、それ。
あれでなきゃ、いや!!」
神様(人間型)バージョンで、あたしとお揃いのジーンズ生地の上下のシャツとパンツに革製の靴。
わがまま言って二人でいるときはこれを着て欲しい、そうお願いしたら聞いてくれた。
「うーん。
まあ、頑張ってはみる。
待てよ?」
もうこれで三十回目のトライ。
筒に簡単な仕掛けをして、空気圧で打ち出す射的ゲームの景品。
フェンリルはそういった経験がないのか、本当にうまくない。
まあ、狼が基本だから近眼ってのもあるかもしれない。
二メートルも離れてない的を相手に延々、一時間前後。
あたしのあれだって、これじゃない。
そんなわがままに当たらない弾を撃っては外し、屋台のおじさんを毎度、にんまりさせている。
あたしが満足するまではこの客は帰らない。
そう、おじさんも見抜いているからだ。
ポンッ。
乾いた音とともに弾が発射されてーー
「あー兄ちゃん、残念だなあ。
また外れだ」
「ぬう‥‥‥」
横目であたしをフェンリルは見てくるけど、ここで文句は言わない。
下手くそーとか使えない、とか。サターニアみたいなことは。
こっちも横目で欲しいなって。
そう見返すだけ。彼の男を下げるようなことは言わない。
ただ、期待していい? そんな顔をするだけ。でも嫌味はないよ?
本心だから。
最初の数回の頃は、
「もういいだろう?」
「やだ。あれがいい」
「しかし、よく見えん」
「だめなの?」
「だめとは言ってない」
「なら、期待してる」
「お前‥‥‥サター」
その単語にだけは怒りの視線を投げかけると、禁句だと理解したらしいから言わなくなった。
十回くらい無言で頑張って、チラっとこっちを見る。
待ってるよ、そんな笑顔で返事。
二十回くらい頑張って、どうだ? そんな顔でこっちを見る。
期待したのに、そんな悲しそうな顔で返事。
三十回目で、
「もう、いいか?」
飽きたというより、無理かもしれない。
すまん、そんな顔で見てくるから、
「やだ」
「お前ー」
「あれがいい!!」
「-‥‥‥」
屋台のおじさんに銅貨を1枚渡して再度、数回トライ。
そして冒頭部分に戻り、いまーー
何も言わずにこちらも見ない。
いきなり、銅貨十枚分。
銀貨一枚を屋台のおじさんに放り投げた。
「続けていいか?」
視線が変わってる。
狼の、狩人の目つきにフェンリルはなっていた。
「ど、どうぞ‥‥‥」
そして六回目。
あたしが欲しがったもの。
それと同型で色違いを残り四回で全部ゲット。
「なにか袋はないか?」
「あ、ああ。
頑張ったな、兄ちゃん。
もら、もう一つもってけ」
一段上の高そうなのを一緒に詰めてくれた。
「おい、帰るぞ?」
「はーい」
静かだけど、優しい一言。
信じて良かったろ?
そんないちべつをあたしにして、フェンリルは袋を背中に背負う。
あたしが欲しがったやつだけは、丁寧に手渡して。
あたしは彼の後ろを追いかける。身長差が大きいけど、歩幅を合わせてくれる。
人混みに紛れないように、手を繋いでくれる。
色んな種族がそれぞれの神様からあたしを討伐する命を受けているのを知ってるから、繋ぐというより。
懐に抱きしめて歩いてくれる。
「髪と肌、瞳の色を魔法で変えたのか?」
「え?
あ、これ?
光の反射でそう見えるように調整させてんの。
こいつに」
そう言って、ピアスみたいにした聖典の制御装置を指差す。
あたしは右耳に青いやつ。彼は左耳に赤いやつをつけてくれた。
似た形の違う色を寄越せ。そうぶっきらぼうに言ってから。
「そうか。
光の反射かーーいろいろな使い方があるな。知識があるのはいいことだ」
必ず誉めてくれる。
いい男だ。
「しかし、雑多な種族がこんなにも集まる市場があるとは。
大地母神ミネルヴァとはよほど、信仰が厚いのだな」
あー、確かに。
この神殿前のお祭りみたいな屋台の並びといい、そこかしこで並んでる飲食の店や雑貨店といい。
数千人はこの広い神殿前の広場に広がる市場でなにかをしている。
まあ、裏道的な場所では怪しい取引も少しだけ見え隠れ。
これを認可して放置しているのも、懐の広さなのか、それとも。
「なあ、お前」
へ?
お前、なんて。そんな唐突。いや、いつもお前なんだけど‥‥‥。
「は、はい?」
「なぜ、警護や管理する衛兵がいない?
人間はーーまあ、人間以外も多くいるが。
そんなに法を守るものか?」
神殿の入り口と、広場の片隅には定期的な位置で彼女の種族であるドワーフやゴーレムがいるけど。
でも、市場のなかには誰もいない。たまにその真ん中を神官や司祭、巫女かな?
そんな関係者が通り抜けるくらい。
ここに来て、朝から既に半日。
「そうだね、見ないね。
なんか知らないけど、ルールがあるのかも」
ふん‥‥‥なんとなく気に入らないみたい。狼の群れには厳しいルールがあるっていうからかな?
「ねえ、フェンリル」
あれ、睨まれた。
また、あれを言わせる気かな?
まだ、そうなった訳じゃないんだけど‥‥‥。
「ディアスだ」
「は?」
「フェンリルは氏族の名称だ。
わたしはディアスだ」
え、その名前。
月の双子のーー
「うん、ディアス、ね。
で、あんたさ」
あれ、また睨まれた。
「あなた、と言え。
元聖女なら、場所くらいはわきまえろ。
ここは、お前の格を試されてる場所だ。戦争にきたならそれでもいい。
いまは外交に来たのだ。その呼び方は二人だけの時にしろ。
サターニア様の前でもだ。常に全種族が見ている。その責任を感じていなさい」
「あー‥‥‥はい。
ごめん、なさい」
素直に謝るあたし。なんかいつもと違う。
厳しい先生といるみたい。でも、価値観を押し付けてくるわけではないから文句も言いづらい。
「カイネの言動一つが一人の誰かの決意になるかもしれん。
これまでの信念がくつがえる可能性もある。それを理解しないとな。
神とは既成概念だ。それと戦うには、嫌でも対立できるものを用意しなければならん」
「それって?」
「正義ではないな。
まあ、言うなれば、大義か。
それとも、名誉か。尊厳かもしれん。
まあ、どれがあっても一族は養えん。だが、心を突き動かすのは大きな衝動。
理性を越えたもの。神の導きではない。言うなれば-」
頭を軽く撫でられた。
「お前がしたような、自己を捨てた善きこと。だろうな」
悩むな、わたしがいまは側にいる。
そう言われて、泣きそうになるのはあたしだけかな。
オルブ・ギータはこんな事は言わない。
ただ、信じてついて来てくれる。どこまでも信じ抜く。
それがあの人の強さ。みんな違うものがあるんだね。
「さて、何か食事でもしていくか。何がいい?」
「え、でも。
目の前に相手がいるのに?」
なにを今更、フェンリルはーううん、ディアスは不敵に笑う。
「ここに来て半日。わたしたちは外交には来たが、誘いに来たわけではない。
来るなら、向こうから来たいように仕向ければいい。
選ぶのはあちらの自由だ。それは、カイネの宣言ではないのか?」
「それはそうだけど。
でも、夫を殺してるし‥‥‥」
「謝罪ならサターニア様が来ればいいことだ。
あれはあれ。これはこれだ。混同すると多くが集まった席で疑惑を招くぞ。
思想も文化も違うだけならいいが。今度は種族が異なる。
主義は貫け。その先に謝罪を求めるなら、その時に考えればいい」
「だけど、それじゃあ大地母神が可哀想ーー」
「それは個人対個人ならな。サターニア様を連れてきた。
今回は神殺しの代表対神の代表の一人との対談だ。
私的な感情をだすような長ならば、その集団は自滅する。
まあ、もうそれは露呈しているがな。
慈愛と信頼をはき違えた結果がーー」
え?
あたしはいきなり、右腕から左腕へとーー
「いててーー!!」
あ、スリか。
どんな攻撃も効かないからって放置しすぎてたわ。
目の前をハエが飛んでるようなもん。目障りだけど、別に放置してもいいやつ。
「これだ。おい、次にやればその腕を切り落とすぞ。
真面目に働いて家族を養おうとは思わないのか?
恥知らずめ」
そしてディアスは広場奥の衛兵を大声で呼びつけた。
「おい、異国から来た客人にこの程度のもてなししかできないのか?
安全も提供できずに何が慈愛だ。
慈しみを叫ぶなら、他者からの信頼を得ることも考えるんだな。
連れて行け」
「あ、渡すんだ?」
「当たり前だろう。ここはあいつらの国だ。
その国にはその国の法がある。それを無視して行われたのがあの蛮行。
ダーシェどものゲームだ。その地の法に従えないなら、出て行けばいい。
それだけだ、だろう、お前?」
「は、はい‥‥‥ディアス」
あー、なんか調子がおかしい!!!!
絶不調!!!
「さあ、食事にしよう。
いささか、小腹が空いた。何がいい? 好きな物を選べ」
常にあたしを優先してくれる。
それは神殺しの代表として上に立ててくれてるからなのか、それともーー
少しだけ遅い昼食を取りながら、いろいろと話をしていた時。
彼らは現れた。まるで歓迎してやる。
そんな静けさとともにーー
「来たか」
「来たねーーようやく」
「カイネ様とお見受け致します。
我が主がお待ちです」
あたしが席を立とうとしたら、
「へ?」
連れ戻された。なんで?
「帰れ」
「--は???」
うん、あちらもそんな顔をしてるよ。なんで? って。
「主の名も先に出せない愚鈍な従者にもてなされるほど、我等は安くない。
礼儀を知るならば、それなりの者かーー
ミネルヴァ神、御本人が来られるべきだろう。
帰れ」
凄まじい威圧感。神としての怒りの静かな咆哮。
市場そのものが、ディアスに注目していた。
どこまでも、信義と礼節を貫く古代神。
そっか、ディアスは、フェンリルは神殺しだけじゃないんだ。
死神様も、サターニアも、そして、地球の自分の神族の代表としてもここにいるんだ。
かつて世界を二分する戦いをした神々の一人としても、世界を賭けるゲームにも怒るしそれを黙認した他の神を許せない。そして、あたしに見ろ、そう言っていた。
世界を賭けることの覚悟を持て、と。その背中で。
あたしは甘やかされたりとか、女扱いとか。そう思ってたけど。
違うんだね、ディアス。あんたは教えたかったんだ。
それを背負うことの辛さを。大きさとか重さじゃない。
失うことの辛さを知れ、そう言いたかったんだ。それを分からなきゃ、多くの犠牲に顔向けができない。
あの優しさは、それをやわらげてくれてたんだね。
その辛さを知っているから。このバカモフモフ神狼。
あのぶつくさ言ってたのは文句じゃなかったんだ。
サターニアは補佐しながらきちんと復讐も果たした。でも、それは知恵と経験があったから。
それを誰かがあたしに伝えなきいゃいけない。そう、自問自答してたんだね。
「主はそなたたちの様な、下位のものには興味はない。
あくまで、好意で来てやったのだ」
この物言いはさすがに神狼を怒らせた。
「そうか。
ならば、その発言は主の本意。
そう受け止めていいのだな?
もう一度聞くぞ。それでいいのだな?」
あーだめだよモフモフ神狼。
そんなに威圧したら‥‥‥。
でも、大地母神は出てこない。恐れをなしたのか、それとも?
その時だ。
神殿から青い炎のようなものが昇ったのは。
「おお!!
我が主。かしこまりました」
かしこまりました???
なんかの意思疎通は聖典経由では感知できなかったけど。
つまり、あの炎の色でイエスかノーが来まる、と。
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「神殺しよ、主の本意である。
そう、告げられていらされる」
あーあ。
せっかく来たのに。じゃあ、切込み、か。
そう思って席を立とうとしたら、膝の上に抱き上げられた。
「動くなよ、いいな、お前」
えーと‥‥‥。もう口が勝手に反応してるよ?
「はい」
って。あたしなんか調教されてない???
「命惜しい者は去れ。
しばしだけ、待ってやる」
「愚問を。
あの神殿に入れるのは我等のみ。
いまは主だけよ」
この返事がいけなかった。
モフモフ神狼。
サターニアなんて目じゃない。
本当に残酷な神の目でそいつらに言ったもん。
「愚問‥‥‥か。
まあ、いい。
お前の答えが主の死期を早めた、そう生涯悔いて生きるのだな」
「なっー!?」
それがーー合図だった。
誰もなにもしていないはず。
その場にいた誰もの目にはそう映っただろう。聖典を通じて、それを知ったあたし以外は。
「はああああああっ!???
し、神殿がーーー」
多分、一番偉いさんだろうね。
立つ気力すら失ったらしい。
そう、ディアスが神殿を見た瞬間。
それはあまりにも暗く、そして明るい白い何か。
それによって、消滅していた。
「ディアス‥‥‥あれってーー」
ふん、狼の時なら荒い鼻息を出していただろう。
彼は得意そうに微笑んで言った。
「月を食べた狼だ。
そういうことだ」
と。
「おい」
彼はあたしを膝に抱きかかえたまま、そのお偉いさんを見下して言い放った。
「死期を早めたのはお前だが、死を選んだのはあの女神本人だ。
そこを間違えるなよ。お前の罪は前者だけだ。
それだけを悔いていればいい。あとはーーここにいる者たちを導くのだな。
大地母神の教義とともに。そうすればーー」
「そっ、そうすればーー??!!」
偉いさんは悲鳴しか出ない。でもどこかホッとした顔もしていた。
「神は死んでも信仰があれば甦る。
いまではないが、まあ、千年もあればな。
その時までに、傲慢な信者や従者から変えるのだな。
この大陸全てを。教えの中にある真理を求めて学ぶがいい。
それが真理に達した時、女神はよみがえる。
早ければ明日にでもな?
まあ、そうそう簡単に考えは変わらん。
お前がもし、大地母神の教えに敬愛し、真理と信仰を求めるなら。
誰もが等しく生きれる世界を考えろ。誰もが相手を敬える世界をな。
それが、慈愛というものだ。
これはわたしの一存ではないぞ。大地母神より上位の神としての‥‥‥」
「神託、ですか?」
どこまでも神にすがりたいんだろうなあ。この人たち。
ディアスは優しく否定したよ。
「いいや、頼みであり、願いだ。
同じ神の一人として、彼女の教えを尊んでくれたことを。
この場にてその信者全てに礼を言う。同時に女神を奪った謝罪もな。
だが、これは神と神との対話。
お前たちには非はない。そして、できるならーー恨むならわたしを恨め。
青き惑星から来た異世界の神。このフェンリルをな」
「ディアス、それじゃあ、あんたが‥‥‥」
「いいのだ、お前。
神の愚行、蛮行を裁くのが同族の役目。
お前は神以外を見ていればいい。この腐りきった世界の神は、わたしとサターニア様が罪を背負う。
それが、神の責任だ。たとえ、異世界の神であってもな」
どこまでも、あなたは神としての存在を信じたいんだね。
「はい、ディアス」
この返事は素直に言えた。
「では、帰ろう。
ああ、そうだーー」
ディアスが指を鳴らすと、えええーーー
「しっ、神殿が!!??」
そりゃそうだよね。
あれだけ崩壊して消えた神殿がそこには戻ってる。
「おい、神官長、でいいのか?」
呼ばれた偉いさん、青い顔してひれ伏してる。
「は、はい。それで間違いございません!!!」
なんて返事が返ってくるし‥‥‥。
「先程の依頼、どうだ、やれるか?」
「そ、それは。あなた様を恨めと、そういうーー???」
「違う」
「申し訳ございませんーー!!!!」
あーあ、土下座だよ、これ。
「誰もが等しく生きれる世界を考えろ。誰もが相手を敬える世界をな。
そう言っただろう?」
「はい、確かに伺いました!!」
「できるか?
わたしの目を見て返事をしろ。これは神などと思いあがった依頼ではない。
一つの存在として、お前に尋ねている。身分などいらん。
そんな枠を取り払い、お前の本心で返事が欲しい。できるか?」
神官長、唖然としていたよ。
こんな神様見たことない。そんな顔だった。
でも、何万人いるのか知らないけど。あっちも組織の長だね。
決心したみたい。
「はい。慈愛がなにであるか。
それは等しく慈しむ心。すべてを許す心。
そして、時には裁定を下す勇気を持つこと。そこには、身分などありません。
誰もが等しく生きれる世界を。もはや、この大神官などという名すら不要です」
あ、大神官だったんだ。被ってた多分、それを表す帽子。
自分からどっかにぽーいって捨てたし。
「ではー‥‥‥主を迎えにいくがいい。
多分、数時間すれば目覚めるはずだ。主を諫め導くのも従者の務め。
頼んだぞ」
え、あんた。滅ぼしたんじゃ‥‥‥。
意地悪そうにニヤってしたよ、ニヤって。
大神官、慌てて駆けだしてくし。
「さあ、帰ろうか。
わたちたちの仕事は終わりだ。後は彼等が決めるだろう」
そう言って、ディアスは神狼になり、あたしを載せて飛び立った。
「ねえ、あれでよかったの?
本当に?」
全部、一人で終わらせちゃった。モフモフ神狼。
最近、出番ないなー。爽快にざまぁやりたいのにーー
まあ、その左耳には赤いあれが光ってるし、いいか。
でもなんとなく、元気ないんだよね。
「ねえ、どしたの?
なんで元気ないの?」
って聞いてみた。あーまたしぶーい顔してる。
「あのさー全部話してくれないと妻にならないからね、あたし」
むう‥‥‥そんな声だしてぼやく始末。
「ねーえ、旦那様!?」
耳元で怒鳴ってやった。まだだけどね、とそっとささやいて。
(サターニア様だ。
次は女神同士の女の戦いになる。南も北も女神だ。
また後始末だ‥‥‥)
あーそんなことで悩んでたんだ。情けないなー
「なら言えばいいんじゃない?
そろそろ自分で後始末までして下さいって。
主人なんだから。そんなことも言えないならー‥‥‥」
あ、なんだろ?
なんか必死になってるぞ、モフモフ神狼。
(わかった。
まったく‥‥‥)
なんて、返事来たけど。さて、あたしを取るの、サターニアを取るの?
そんな馬鹿な質問はしないけど。
言わないなら捨てるからなーモフモフ神狼。
そしてあたしたちが天空大陸を目指す。
さーて、そろそろ暴れ時だよね???
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