Scrap Regenerations ー不思議な金色の次元猫と、宇宙コロニー修理工の少女の物語ー

星ふくろう

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第二章

死神と流体犯罪捜査官

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 人類が天空大陸として、アトランティスを海底から引き揚げた時。
 幾つかの古い神々が目覚めた。
 そのうちの一人。
 彼が目覚めたときは、アトランティスが天空に引き上げられて、数週間後だった。

 はるかむかしに海底に沈んだ故郷。
 仲間たちは眠りにつき、彼もこの惑星が滅びるその時まで。
 目覚めることはないはずだった。
 しかし、目覚めの時はいきなり訪れる。
 彼の記憶にない見知らぬ新たな文明。
 人類は、彼とその仲間の眠る墓所をはるか天空へと引き上げてしまっていた。

「なんだ、これは。
 なぜ、海底にいたはずがーー
 天空にいる……」

 彼の驚きは当然のものだった。

「なぜだ、我らはこの惑星が滅びるその時まで。
 この星と死をともにするはずだったのに‥‥‥」

 古き神々との戦いに敗れ、仲間ははるか遠い異界へと旅立った。
 もはや、この惑星で目覚めることはないと思っていたのにーー
 悠久の眠りは、数万年で破られた。

 まあ、それはまだよかった。
 彼の怒りを買うような暴挙が地上で行われていた。
 仲間が眠る墓所を、人類が整地し、ビルを建て、植物を生やし。
 大切な、仲間の墓が荒らされた。 

 これには温和な彼も、我慢がならなかった。
 彼は人類に対する、仲間を汚した報復を始めることにした。
 まず、この天空大陸の位置を確認する。
 古い時代の星図と、現代の星々の配置からーー
 自分がどれほどの年月を眠っていたかを確認する。

「数万年、か。
 意外にも短い時間だったなー‥‥‥」

 そう、彼は呟く。
 もっとはるかな時間。
 十万年ほど経過したかと思っていた。

「しかし、この身体では力が足らぬ‥‥‥」

 数万年前の戦いと、その間に眠っていた期間。
 この時間は彼から、力の多くを奪っていた。

「人間、人類というのか。
 あの鉄の塊を操る新しい種族はーー」

 目の前で、死んだ仲間の眠る土地が平坦に変えられていく。

「あれは、脅威になるかもしれんなーー」

 彼が眠りにつく以前。
 あのような機械を操る文明は、この地球にはなかった。
 人類はどこまで繁栄しているのか。
 まずはーそれを知る必要がある。

 彼は行動を開始した。
 彼の付近にいた個体を捕獲しようとする。
 しかし、それは光の障壁に跳ね返された。

「なんとー‥‥‥!?
 我の力を遮るとはーー」

 驚きだった。
 阿蘇や碧、敬吾が身に着けているものと同じSUIT。
 それは、彼の干渉を跳ねのけていた。

「かつて、この星の神や魔ですらも捉えた我が力をこうもやすやすと‥‥‥」

 力が弱まっているせいか。
 それとも、この人類は彼が知らない未知の力を手にしているのか。
 彼はまず、前者だと考えた。

「ふむ。では仲間を探さねばならぬー……」

 それから、彼は数か月をかけて大陸を探索した。
 かつての仲間。
 眠りについていて、まだ目覚めぬ仲間たち。
 それらがいないかどうか。
 残っていて、どこかに潜んでいないか。
 それを希望に、孤独にアトランティス大陸を捜し歩く。
 かつての部下に当たる、下位の同族を十数体、目覚めさせることができた。

「力が足らぬ。
 だが、この者たちはーー」
 目覚めた仲間のうちには、全盛期であれば、彼と同程度かそれ以上。
 それほどに大きな力を秘めた仲間もいた。
 だが、誰もが力を大きく失っていた。

 どうするべきか。
 仲間たちは相談に相談を重ね、ある結論にたどり着く。
 人間たちを餌にできないならば、かつて戦った相手。
 神や魔を捕獲し、食糧にしよう、と。

 そして、彼らは世界各地に散ることになる。
 餌という名の、神族狩り、魔族狩りを行うために。
 そしてまた、彼らは思い出していた。

 種族名。
 捕食者という意味を持つ、オルブ、という彼らの名を。
 オルブは考えた。

 神や魔を狩ると同時に、この人類を狩る方法も得ようと。
 そして行動を開始する。
 何度も何度も試行錯誤を重ね、小さな破片。

 つまり、内臓や手足なら。
 SUITのはる障壁のすきまから、抜き取る方法を見つけた
 まずは小さなものから手に入れよう。
 そして多くの破片を多くの人間から寄せ集め、人の使うことのできる力を手に入れよう。

 その為にはまず、欠片を集めることが必要だ。
 こうして、彼らの尖兵による静かな静かな、人間の内臓狩りが始まった。
 それはアトランティスから始まり、やがて世界を巡るようになった。

 集めた臓器は、個々の人間によって異っていた。
 他人の臓器を寄せ集めてみると、拒否反応を起こし、簡単に機能しなくなった。
 人間の肉体のものもろさに驚き、その繁殖力に驚嘆した。

 眠りについていた間に、この新文明は彼らが知らない宇宙の果てまで勢力を伸ばしる事にも。
 天空に数億とまたたく星霜の彼方までその版図をのばしている。
 そしてオルブは脅威を感じた。

 かつて戦った神族や魔族よりも、人類は強くなる。
 もし、異界へと旅立った仲間がこの宇宙に戻ってきた時。
 再びこの惑星をいやーー

 今度は、広大な宇宙を舞台にした争いへと転じるだろう。
 この脅威を、はるか異界にいる仲間に伝えなくてはならない。
 それにはまず、少ない個体数を維持しながら。
 能力の回復を待って安全圏に避難するべきだ。
 それが急務であり、生き残ったオルブの責務だと考えた。

 その為には神や魔を狩り、人を狩り力を蓄えることが優先事項になる。
 こうして世界各地にオルブは散り、スカルパーと呼ばれる行為を繰り返すことになる。
 その行為は人類に更なる進化を促し更なる脅威を呼び込むことになった。
 そう、ロイの肉体を借りた死神の登場である。



「で、ミスターブラック。
 これからどうするんだい?」

「そうよ、わたしたちどうするのかなにも聞いてないわ」

 ロイとアマンダがそう、死神に言う。
 死神の能力は便利だった。
 アストアにあったロイとアマンダの身体は、空間と空間を繋ぐワームホールを自在に作り出せた。
 ゼウスやサタンたちの会合へと顔を出し、更に一時間程度の散歩をする。
 それだけで、極東に位置する島国の首都にその存在を運んでいた。

「よくSF映画であるような瞬間移動ってわけにはいかないのかい?」

「そうね、これはかなりキツイわ」

 ロイとアマンダはワームホールの移動に酔っていた。
 空間から空間まで。
 数百キロの距離を歪めて移動するその方法は、便利だが、おまけがついていた。
 通常空間に現出した時に妙な眩暈が彼を襲っていた。

「ありゃあ、どうにも慣れないな」

(すまないな、ロイ、アマンダ。
 瞬間移動は、君たちの肉体では消費するエネルギーの対価の支払いに耐えれないのだ。
 あれは純粋なエネルギーに近い物。
 もしくは守られたものでなくてはならない。君のSUITのようにな。
 だが、その装置では不十分だ。危険は犯したくないのでな)

 脳内で死神の声が響き渡る。

 どうにも自己の中に別の誰かがいるというのは、これもまた恐怖であり奇妙な感覚だった。

「なあ、ミスターブラック」

 ふと、ロイは気になった。
 死神は永遠に近い命を与えると約束してくれた。
 では、その終りまで自分たちは、同一の肉体に共生するのか?

 そんな疑問がロイの中に生まれた。
 もし、どこかで離れるのならば自分は誰と共に生きればいいんだ? 
 永遠の孤独を生きるのだろうか、と。

(その質問ならば心配しなくていいぞ、ロイ。
 君の種族は近いうちに死を克服する。肉体的な死をな)

「え、何よそれ。人間が不老不死になるっていうの!?」

「あんた、そんなこと俺に言っていいのかよ。未来の話だろ?」

 そんな未来のことを教えて良いの?
 街中を歩きながらロイとアマンダは、あきれた顔をする。
 未来改編などにつながったりしないのか。そういう疑問が生まれてくる。

(時間は連綿とした泡のつながりだ。
 多少の横槍が差し込まれた程度で変わるほど甘くは無いよ。
 なぜならば、これはーー
 そう時間は君たちだけではないはるかな大多数。
 大いなる宇宙によって共感されているからだ)

「良く分からない話だな、ミスターブラック」

「まったくね。理解できないわ。
 それで……ねぇ、ミスター・ブラック。
 ここで良かったの?」

 たどり着いたそこには、二人の男がいた。
 多分、日本人だろう。
 そして、死神が探していたであろう誰か神に近い存在。
 それは、今では肉塊になってしまっているがーー

「どうするんだい、ミスターブラック」

 それはあの二人の男たちとやりあうのかい? 
 そういう意味だった。

「あたし、バトルなんて出来いわよ‥‥‥」

 不安そうにアマンダが言う

(心配は要らないロイ、アマンダ。
 まずは挨拶と行こう。
 私たちと彼らは、出会うべくして出会ったのだ)

 そんなものかね、とロイは肩をすくめて阿蘇と敬吾に向かって手を振りながら歩きだす。

「ちょっ、ちょっと待ってよ」

 慌てて、アマンダがそれに続いた。
 その時、ふとロイは考えた。
 この一連のことを書き留めておこう、と。
 いつか自伝的に出せば、売れるかもしれないと。

 しかし、考えてしまう。
 俺とアマンダは、一体なんなんだ?
 死神に肉体を貸し、生きている自分たちは、いったいなんというべきかな?

 昔読んだ、ホラー小説を思い出す。
 あのキャラクター、なんて呼ばれてたっけ?
 ああ、そうだ思い出した。
 Wraith(レイス)だ。

 魔法使いが術に失敗して生きながら、肉体と精神に別れるやつだ。
 そうなると、さしずめそこにある肉塊は、死人の塊だからGhost(ゴースト)とでも言うべきだろう。
 触れないしなーー
 さて、題名は何にしようか。

 そうだ。Wraith written the Ghostにしよう。
 洒落も利いていていいじゃないか。
 まあ、まずは挨拶と行こう。

 ロイは片手をあげると、そこにいた二人の流体犯罪専門捜査官。
 いきなり現れたロイトアマンダに対して警戒を怠らない彼ら。
 阿蘇と敬吾に軽く手を振って、ハローと挨拶をした。
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