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プロローグ
断罪? やってみなさいよ。
しおりを挟むくそー。
なんでこうならなきゃいけないのよ。
グレイエルフの姫にして歌姫たるこのアリス様が。
後ろでに縛られた両腕、胸にも縄がかけられていてそれにはご丁寧に竜族でも解くのが難しいほどの魔力封じのまじないがかけられている。
このままだとこいつらの思うつぼだわ‥‥‥
「ムッ――!! フムムっう!!!」
「おい、暴れるなよ。もうここまで来たんだ、大人しくしなよ、グレイエルフの姐さん」
「グヌっっ!!!!」
「その口枷も解けないよ。魔族が音を操る魔法を使えないようにと作られた特別製だ。いまの姐さんは、そこらの非力な人間の女以下かもんしれないね」
「クッ‥‥‥」
確かに。
グレイエルフの腕力、脚力、それに体力もそう。
それらは何の魔力補助を受けなければ人間の成人女性より非力になってしまう。
現に、いまでも引かされてる両足の枷についた鎖の先にあるおもり。
丸いこの鉄球を振り回すことすら辛い。
こんなままで断罪されたら、まさしく首と胴体がさよならしてしまう。
そうなったら例え不老不死に近いエルフ族といっても、死ぬのは確実。
このまま処刑されるなんて、アリスは嫌だった。
「さて、どうするつもりだ、歌姫様?」
「フム?」
ふと足元を見ると、魔法で姿を消したあの猫もどき――ランディスがとことことのんびりとついてきていた。
こっちは処刑役人に首輪につながる鎖を引かれて、たたらを踏みながら歩かされているっていうにの!
「ムフっ、(この嘘つき)、フムッフムムっグヌっ、(助けたくて仕方ない、悔しいって言ったくせに)、グムヌ、グヌヌっ、(役立たずの用心棒!!!)」
「おいっ、うるせーぞ!? 静かに歩けねーのかよ‥‥‥仕方ないだろう。あんたは大罪人なんだから」
なんで私が大罪人なのよ!?
ふと、その理由を聞いていないことにアリスは気付く。
あの時、王子を血まみれにした時はランディスの助言もあって、大人しく捕まったのだが――
「おや、そんなことも知らないのかな、アリスは?」
「ムウー‥‥‥」
「はいはい、では役立たずの用心棒が最後に教えて差し上げよう」
「むっ!?」
「そこの処刑役人には聞こえていないよ。まだ処刑場につくまでは間がある。聞きたいかね」
アリスはうんうん、と処刑役人の気を荒くしないように目で合図をする。
もし、死ぬにしても理由は知りたかった。
それはこの先の処刑場で述べられるような、どうでもいい適当にとってつけた理由ではなく、生きた被害者による真実の言葉を知りたいからだ。
「ではまあ‥‥‥ゆっくりと話すかな。ああ、嘘嘘。いいかねアリス。この国のグレイエルフの大半は故国から逃げてきた者たちだ。それは、王子ナバルから聞いたはずだ」
「ふむふむ」
「では、王子の正室がなぜグレイエルフの娘か。これも簡単で、ある氏族の御家騒動で派閥争いに負けた王族の娘がこの国にたどり着いた。それを王子が見初めたらしい。つまり、グレイエルフの見た目が嫌いという訳ではないらしいな?」
「むふっ? ン―――??? フヌッフフっ!??」
「いや、そうではないよ。王子妃様はアリスにまあ‥‥‥氏族同士のいさかいの中にあって助けてもらえなかった恨みは少しはあるかもしれない。だが、アリスの氏族とはだいぶ遠い土地に住んでいたからそれはあまり関係ないだろう。問題は、君の歌声だ、アリス」
「ウルルル‥‥‥っ」
「あのなあ、そうまるで獣のように吠えるのはやめたまえ。威嚇しても我には関係ないことだ」
「フンッ!」
「知りたくはないのかね? 君の歌声は確かに素晴らしい。だが、歌われる内容ははるか古代のこと。それも、グレイエルフの貧富の差が激しい頃に、王族出身の英雄が一族をまとめあげ、大陸を制覇した時の英雄譚だ。それは――庶民や虐げられた者たちにとっては苦痛であり、祖先の遺伝子は心に悲しみをもたらすのだよ」
「‥‥‥っ!?」
青天の霹靂。
自分の歌はこの世のものどころか、あの世の存在すら癒すと思っていたのに――
アリスは信じられないと首を振っていた。
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