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イゼア・スローン卿はあることで思い悩んでいた。
彼は王都でここ二十年ほどの間に、飛躍的に技術の発展してきた活版印刷を利用する方法を考えてきた
これを普及させるには紙が必要になるだろう。
そう思い良質な紙の原料である木材の原生林の調査とその所有権の買い占めを友人数名と行い一財産作り上げた人物だ。
その後、次は誰もが文字を読めるようになり、知りたい時代が来るだろうと予見した彼は新聞社を作り上げた。
いま、その成功した会社の一室で、彼は思案に耽っていた。
彼がまだ若い頃からの友人であり、製材事業からこの新聞社の設立に至るまで。
苦労を共にしてくれた友人が数人いた。
その一人、レオン・ウィンダミア子爵が今回の彼の脳裏を悩ませている人物だった。
長身で、まだ三十代手前であり、資産もあるレオンは誰からも好かれる好感度のある紳士だ。
武芸に秀で、数か国語を話し、オペラ等を観客として見に行けば、主演俳優そっちのけで観客は彼を見てしまう。
そんな、金髪碧眼の、まるで絵に描いたような貴公子だった。
歴史にも明るく、道端に浮浪者は孤児がいれば施しを忘れない。
追い剥ぎやスリにあっても、
「僕の財布程度で、これから数日は誰かが狙われずに済む。
とてもいいことじゃないか」
と笑うのけてしまうほどのお人よしでもあった。
時には、庶民の恰好をしたいと下男から服を借り、近場の貿易が盛んなロッセム港に行き、日雇いの仕事をすることもあった。
「親方、今日はなんかないかい?
俺は家で家族が待っていてなあ‥‥‥」
南方大陸を数年かけて十代の頃からスローン卿とともに駆け巡ったレオンは貴族というよりは、平民として過ごす期間が長かったからか、平民になりきるのがとてもうまかった。
「なんだよ、レオン。
ここ数日、見かけてなかったが。
どこにいたんだ。
仕事なら山ほどにあるんだぞ?」
その港の裏を取り仕切る親方はレオンにそう声をかける。
まさか公務があるとは言えない。
「いやーすまない。
うちは俺が好きすぎて、その多産でな‥‥‥」
「カミさんが大変だなあ、おい。
まあ、たくさんいれば十五年頑張ればお前も逆に楽になるだろう。
ほれ、今日は三番の桟橋だ。
いいか、怪我をするんじゃないぞ?」
「ありがとう、親方」
そんな会話を交わしてレオンは言われた場所に行き、朝から晩までポーターと呼ばれる。
一人では抱えれないような、旅人たちの荷物を運んだ。
ある時、スローン卿はレオンにこう声をかけたことがある。
「なぜ、そんな重労働をするんだ?
財産は孫の代まで遊んでも余るほどにあるだろう?」
と。
するとレオンは険しい目つきで答えた。
「イゼア、あそこはこの王国の闇と光りの始まりなんだ。
どの大陸が、どの国が。
どこの侯爵が何をした、誰と誰が。
どこの王族が結婚をするらしい。いま何が売れそうだ。
どの土地が旱魃に襲われそうだ。
そんな話が全部、まことしやかに耳に入ってくる。
身分を隠して入りこむ連中もいる。
君の新聞社の最大のネタはあそこにあるんじゃないのかい」
そう言い、ついでに彼はこうも言った。
彼は王都でここ二十年ほどの間に、飛躍的に技術の発展してきた活版印刷を利用する方法を考えてきた
これを普及させるには紙が必要になるだろう。
そう思い良質な紙の原料である木材の原生林の調査とその所有権の買い占めを友人数名と行い一財産作り上げた人物だ。
その後、次は誰もが文字を読めるようになり、知りたい時代が来るだろうと予見した彼は新聞社を作り上げた。
いま、その成功した会社の一室で、彼は思案に耽っていた。
彼がまだ若い頃からの友人であり、製材事業からこの新聞社の設立に至るまで。
苦労を共にしてくれた友人が数人いた。
その一人、レオン・ウィンダミア子爵が今回の彼の脳裏を悩ませている人物だった。
長身で、まだ三十代手前であり、資産もあるレオンは誰からも好かれる好感度のある紳士だ。
武芸に秀で、数か国語を話し、オペラ等を観客として見に行けば、主演俳優そっちのけで観客は彼を見てしまう。
そんな、金髪碧眼の、まるで絵に描いたような貴公子だった。
歴史にも明るく、道端に浮浪者は孤児がいれば施しを忘れない。
追い剥ぎやスリにあっても、
「僕の財布程度で、これから数日は誰かが狙われずに済む。
とてもいいことじゃないか」
と笑うのけてしまうほどのお人よしでもあった。
時には、庶民の恰好をしたいと下男から服を借り、近場の貿易が盛んなロッセム港に行き、日雇いの仕事をすることもあった。
「親方、今日はなんかないかい?
俺は家で家族が待っていてなあ‥‥‥」
南方大陸を数年かけて十代の頃からスローン卿とともに駆け巡ったレオンは貴族というよりは、平民として過ごす期間が長かったからか、平民になりきるのがとてもうまかった。
「なんだよ、レオン。
ここ数日、見かけてなかったが。
どこにいたんだ。
仕事なら山ほどにあるんだぞ?」
その港の裏を取り仕切る親方はレオンにそう声をかける。
まさか公務があるとは言えない。
「いやーすまない。
うちは俺が好きすぎて、その多産でな‥‥‥」
「カミさんが大変だなあ、おい。
まあ、たくさんいれば十五年頑張ればお前も逆に楽になるだろう。
ほれ、今日は三番の桟橋だ。
いいか、怪我をするんじゃないぞ?」
「ありがとう、親方」
そんな会話を交わしてレオンは言われた場所に行き、朝から晩までポーターと呼ばれる。
一人では抱えれないような、旅人たちの荷物を運んだ。
ある時、スローン卿はレオンにこう声をかけたことがある。
「なぜ、そんな重労働をするんだ?
財産は孫の代まで遊んでも余るほどにあるだろう?」
と。
するとレオンは険しい目つきで答えた。
「イゼア、あそこはこの王国の闇と光りの始まりなんだ。
どの大陸が、どの国が。
どこの侯爵が何をした、誰と誰が。
どこの王族が結婚をするらしい。いま何が売れそうだ。
どの土地が旱魃に襲われそうだ。
そんな話が全部、まことしやかに耳に入ってくる。
身分を隠して入りこむ連中もいる。
君の新聞社の最大のネタはあそこにあるんじゃないのかい」
そう言い、ついでに彼はこうも言った。
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