17 / 20
第二話 ハッシュバルの森
10
しおりを挟む
「これは、認めたくはないが、ある偉いさんの紋章だ」
「偉いさん?」
「ああ、ハイエルフのな。
まあ、それは後から話すが。
遊ばれて放り出されただけならまだいい。
見てみな、この糸。眼の部分は眼球がどうなってるかわからんから、糸を除けないがな。こんな金糸。普通は使わない」
「どういうことだい?
いや、拷問じゃないってことかい?
貴族様の遊びだと?」
「いや、そのどちらでもないと俺は思ってるんだよ」
「意味がわからないねえ。
ただー」
あたしなら、どうするかね。
アリシアはそう考える。
「この子、まさか口まで縫われてたのかい?」
そうだ、とロッソはうなづく。
「あくまで水中で息ができないようにしたかった。
それだけなら、縫い付けるだけでいい。
でも、歯や舌まで抜く必要はない」
弄びながら、口封じをしたかった。
そういうことかい。
「気分が良くないねえ……。
その紋章ってのはどこのどいつだい?」
「聞いていいのかい?」
抜けれなくなるぜ?
そうロッソは言いたそうだった。
「ここまで見せといて、今更何言ってんだい。
少なくともー」
「少なくとも?」
「同胞がこんな目に合わされて黙って見過ごすほど、あたしらダークエルフは甘くないよ」
あんたはもうちょい殺気を抑えな!
とリザの頭を軽くはたいてアリシアは言う。
「そういうとは思ってた。
ブラグレムのある貴族様のだ。
そう、ある司教のな、やつだよ」
ハイエルフの王族か……。
「また、厄介なことになったね」
「ああ、もう一つ厄介なことがある」
「もう一つ?」
「ああ、あんただ。
この街にダークエルフが入ったってのがな。
噂になってる」
「どういうことだい?
まだ来てから数時間じゃないか」
甘いな、とロッソは言う。
「ここは平原の上流に当たる街だぜ?
いわば、ハイエルフの領域に近い街だ」
ああ、そういうことか。
「なるほどね」
なら、この街には長居はできなにねえ。
この子も、だけど。
そうアリシアは思う。
「抜けるなら、河だろうね?
舟かい?」
「そうだな。
馬よりは安全だろう。
だが、彼女はすぐには動かせない」
互いに困ったな、そういう顔になったその時だ。
ドンっ。
部屋の外で鈍い音がする。
「どうした?」
リザが外を見て、目を伏せる。
「また、あれか……」
「あれ?」
ロッソは深いため息をついた。
「もう一匹、人間族の拾いものがあるんだよ。
これが、言葉がな……通じなくてな。
しかもー」
「強いんです。おかげで、魔法の檻に入れても破ろうとして……」
と、リザが困ったように言う。
この強者たちをして困らせて、しかも魔法の檻でも抑えきれない人間がいる?
なんだその面白そうなやつは。
アリシアはその人間族とやらに会ってみようという気になった。
「偉いさん?」
「ああ、ハイエルフのな。
まあ、それは後から話すが。
遊ばれて放り出されただけならまだいい。
見てみな、この糸。眼の部分は眼球がどうなってるかわからんから、糸を除けないがな。こんな金糸。普通は使わない」
「どういうことだい?
いや、拷問じゃないってことかい?
貴族様の遊びだと?」
「いや、そのどちらでもないと俺は思ってるんだよ」
「意味がわからないねえ。
ただー」
あたしなら、どうするかね。
アリシアはそう考える。
「この子、まさか口まで縫われてたのかい?」
そうだ、とロッソはうなづく。
「あくまで水中で息ができないようにしたかった。
それだけなら、縫い付けるだけでいい。
でも、歯や舌まで抜く必要はない」
弄びながら、口封じをしたかった。
そういうことかい。
「気分が良くないねえ……。
その紋章ってのはどこのどいつだい?」
「聞いていいのかい?」
抜けれなくなるぜ?
そうロッソは言いたそうだった。
「ここまで見せといて、今更何言ってんだい。
少なくともー」
「少なくとも?」
「同胞がこんな目に合わされて黙って見過ごすほど、あたしらダークエルフは甘くないよ」
あんたはもうちょい殺気を抑えな!
とリザの頭を軽くはたいてアリシアは言う。
「そういうとは思ってた。
ブラグレムのある貴族様のだ。
そう、ある司教のな、やつだよ」
ハイエルフの王族か……。
「また、厄介なことになったね」
「ああ、もう一つ厄介なことがある」
「もう一つ?」
「ああ、あんただ。
この街にダークエルフが入ったってのがな。
噂になってる」
「どういうことだい?
まだ来てから数時間じゃないか」
甘いな、とロッソは言う。
「ここは平原の上流に当たる街だぜ?
いわば、ハイエルフの領域に近い街だ」
ああ、そういうことか。
「なるほどね」
なら、この街には長居はできなにねえ。
この子も、だけど。
そうアリシアは思う。
「抜けるなら、河だろうね?
舟かい?」
「そうだな。
馬よりは安全だろう。
だが、彼女はすぐには動かせない」
互いに困ったな、そういう顔になったその時だ。
ドンっ。
部屋の外で鈍い音がする。
「どうした?」
リザが外を見て、目を伏せる。
「また、あれか……」
「あれ?」
ロッソは深いため息をついた。
「もう一匹、人間族の拾いものがあるんだよ。
これが、言葉がな……通じなくてな。
しかもー」
「強いんです。おかげで、魔法の檻に入れても破ろうとして……」
と、リザが困ったように言う。
この強者たちをして困らせて、しかも魔法の檻でも抑えきれない人間がいる?
なんだその面白そうなやつは。
アリシアはその人間族とやらに会ってみようという気になった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる